ミニレポート

手ブレ補正付きコンパクトズームを動画撮影に活かす

LUMIX G VARIO 12-32mm+LUMIX G6

マイクロフォーサーズ機のキットズームといえば、広角端14mm(35mm判換算28mm)のものが主流だったが、最近は、12mmから始まるズームレンズキットの設定が増えている。マイクロフォーサーズの12mmは超広角の入り口にあたるが、スクウェアに近い4:3の矩形比に14mmでは引きが足りないシーンも多く、12mmの普及が進むのは自然なことだ。

今回の御題である、パナソニックのLUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.も、そうした流行に添ったレンズの一つだ。LUMIX GMシリーズ向けにデザインされたレンズだが、私は、LUMIX G6とのペアでステディカム撮影に使うために、これを買った。

LUMIX G6につけたG VARIO 12-32mm。G6は動画撮影を重視してチューニングされたLUMIX Gシリーズの中堅機種だ。

4K動画にこそ非対応だが、G6はFull HD 60pモードで2時間を超える長尺の動画撮影ができ、外部マイク端子を使ったクリアな音声収録も可能で、プラスチック外装なので軽い。今となっては地味なスペックであることは隠しようもないが、使い方次第では面白い機種だ。

例えば自動車の後部座席から車窓風景の動画を撮影するとき、狭いので大型のステディカムは使いにくい。そこでアクションカメラ/小型ビデオカメラ用に設計された小さなステディカムに、外部マイクを取付けたG6を載せて使う。重量のあるGH4にはできない芸当だ。

この目的に私が使っているのはマンフロットのModosteady(モデル585-1)だ。Modosteadyは汎用性が高く軽いことが利点だが、材質の強化プラスチックにたわみが避けられず、大型のステディカムより振動を拾いやすい。その欠点を補うため、手ブレ補正機構を内蔵したレンズが有効だ。

どれほどの効果かを示すため、補正オンと補正オフで撮った2本のクリップを繋いでみた。前半が補正オン、後半が補正オフで撮っている。かなり早足で歩いているため、補正オンでもけっこう揺れてしまっているのはご愛嬌だが、補正オフでの揺れがガタガタと尖った動きなのに比べ、補正オンでは全体に滑らかな動きになっているのがわかるはずだ。

Modesteadyに載せて使う機材についてはそれなりの試行錯誤があった。カメラはLUMIXのGH2に始まり、より軽量なGX1も試した。

レンズは、まず14-42mmの電動ズームを使った。しかし、このレンズはズームレバーと電動MFレバーの位置が近く、カメラを構えると自然に指がかかる位置にあるため、撮影中に誤操作してしまうことがある。スチル撮影なら間違ってもやり直せばいいが、動画撮影中にズームのつもりでフォーカスを動かしたりすると、その失敗は取り返しがつかない。

その次に使ったのが14mmの単焦点。これは軽量でMFも使いやすく具合が良かったが、しばらく経って、以前の14-42mmよりも振動を拾ってしまっていることに気がついた。その原因を考えた結論が、今回とり上げた、光学手ブレ補正の有無の問題だ。

オリンパスの12-50mm電動ズームレンズも持っているが、これには手ブレ補正がない。さらにレンズが少々長いので、重心が前寄りになってしまいModosteadyで使うには適さない。今はもっぱらGX7につけてスチル用に使っている。

そんないきさつの末、GH2をG6に入れ替えたのを契機に、光学手ブレ補正を備えた短くて軽いレンズがやはり欲しいと考えた。できれば広角側が12mmをカバーするもの……ということで検討した結果、この12-32mmに行き着いたというわけだ。

ズームリングのローレットは角にまで回り込んで刻まれる。この処理のおかげで、どのようなホールディングでも指がかりがいい。
G6とのバランスも好印象。カメラとして小さすぎる嫌いもあるGMシリーズより、しっかりと構えられる。

小型化のためにフォーカスリングまで省略されたこのレンズはMFの操作性が難点だ。しかしその反面、ズームリングには充分な幅があり、ありがちなコンパクトズームのように、指先でつまむような操作を強いられることがない。余計なスイッチや突起がないので、ズームイン/ズームアウトも滑らかに操作でき、じつにホールディングしやすい。光学手ブレ補正と相まって、動画のブレも効果的に抑えてくれるので、手持ちでもブレの少ない見やすい映像を残すことができる。

まとめ

LUMIX Gレンズの純正のラインアップを見ても、広角系で光学手ブレ補正を組み込んだレンズは多くない。この12-32mmはその中でも12mmの画角をカバーする貴重な1本だ。

小型化のために開放値や最短撮影距離までは欲張れない面もあり、これ1本で何でも撮れるという性格のものではないが、スチルの作例でもわかるように遠景の周辺描写もしっかりしているし、大きなボケは期待できないまでも、ボケ味も自然で悪くない。

ソロで行動し、少ない機材で機動的に仕事を進めたいカメラマンにとって、このLUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.は、とても具合のいいレンズだといえる。

作例

ISO160 / F7 / 1/1,000秒 / ±0EV / 25mm
ISO200 / F9 / 1/60秒 / +1.3EV / 32mm
ISO160 / F9 / 1/80秒 / -0.3EV / 32mm
ISO160 / F9 / 1/160秒 / +1.3EV / 28mm
ISO200 / F6.3 / 1/60秒 / -0.3EV / 20mm
ISO200 / F5.6 / 1/60秒 / ±0EV / 32mm
ISO320 / F10 / 1/60秒 / +0.3EV / 25mm
ISO160 / F8 / 1/100秒 / -1EV / 30mm
ISO160 / F8 / 1/60秒 / +0.7EV / 32mm
ISO400 / F5.6 / 1/40秒 / -0.3EV / 32mm

大高隆

1964年東京生まれ。美大をでた後、メディアアート/サブカル系から、果ては堅い背広のおじさんまで広くカバーする職業写真屋となる。最近は、1000年存続した村の力の源を研究する「千年村」運動に随行写真家として加わり、動画などもこなす。日本生活学会、日本荒れ地学会正会員

http://dannnao.net/