ミニレポート
純正初のAF対応!待望のDA AFテレコンバーターを試す
(PENTAX K-3)
Reported by 大高隆(2014/6/30 08:00)
「HD PENTAX-DA AF REAR CONVERTER 1.4X AW」は、DAレンズに装着して焦点距離を1.4倍にするテレコンバーターだ。従来、PENTAX Kマウント用純正テレコンバーターは4種類あったが、いずれもAFに対応していなかった。このDAテレコンは、純正品としては初のAFテレコンバーターになる。
実のところ、このテレコンの開発は、DAレンズの初期ロードマップで既に発表されていた。しかし、その後、大変な難産になってしまい、発売までずいぶんと待つ事になった。超望遠レンズのラインナップが手薄と言わざるを得ないPENTAXのユーザーが、首を長くして待っていた“約束のレンズ”である。
マウントシステムはいわゆるKAF2マウントで、ボディから駆動されるAFカプラーと、レンズ内モーター(SDM/DCレンズ)用の電気接点と、両方のAFメカニズムを備える。PENTAX用AFレンズであれば、駆動システムに関わらずAFが可能だ。
シンプルな3群4枚の光学系に奢られたHDコーティングの効果で、フレアの増大は極小に抑えられ、クリアで抜けのよい描写が実現した。鏡筒の構造は簡易防滴のWR仕様ではなく、高い防塵・防滴性能をもつAW仕様を採用する。防塵・防滴のボディやレンズと組み合わせれば、きびしい悪天候も余裕でクリアしてくれるはずだ。
このテレコンの1番のポイントは、いわゆるExif変換機能が組み込まれた事だ。
1.4×のテレコンバーターを使うと焦点距離は1.4倍になり、F値は1段暗くなる。マスターレンズの値にたいし、その係数で補正した値をボディに伝えないと、Exifが正確に記録されず、手ブレ補正の誤動作が起きる。特にズームレンズの場合、Exif変換機能がないと手ブレ補正OFFで使わざるを得ないが、この製品は補正に対応しているので特に意識する必要がない。
他社のシステムでは既に当たり前のことだが、これも永く待った甲斐のある点の1つだ。
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使い始める前に注意すべき事がいくつかある。まず始めに、このDAテレコンを使うには、カメラのファームウェアを対応バージョンにアップデートする必要がある。K-3の場合はVer1.03がそれにあたる。
このファームウェアにアップすると、DAテレコンバーター+マスターレンズの組み合わせを1個のレンズとして、AF微調整の個別設定が可能になる。この調整を行なわないと、本来のAF性能が発揮できないので、必ず調整を行なおう。
組み合わせるレンズにも注意が必要だ。マスターレンズの後玉や連動機構の形状によっては、テレコンバーターの先頭レンズと干渉して破損してしまうレンズがあり、これは取付けできない。例えばDA limitedシリーズの15mm/21mmやDA 40mm XSなどが該当する。
ファームウェアや対応レンズ一覧などの情報はWebサイトで公開されているので、必ず確認しておこう。
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テスト撮影は、「DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDM」との組み合わせで行なった。
まず、絞りを開放F5.6からF45まで変えて撮影し、解像力の変化を試した。焦点距離は望遠端350mm。最小絞り時のシャッター速度を確保するため、ISO400で撮影した。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
開放F5.6では、解像力は十分だがハイライトのにじみがあり、コントラストが低い。しかし、マスターレンズであるDA* 60-250mm F4そのものが、開放では球面収差を残した柔らかい描写を持つレンズなので、これは画質が落ちているというより、マスターレンズの性格が強調された結果だといえる。
1段絞ったF8では解像力とコントラストが共に向上し、シャープな描写になる。F11辺りが全画面で見た場合のベストで、F16まではほとんど変わらない。F22からは回折の影響が目立ち始め、F32までが許容範囲で、F45はさすがに避けた方が無難だ。
もっとも、ここまで絞ると日中屋外でもシャッタースピードが1/100秒以下になるので、開放からF16で撮ることがほとんどのはずだ。絞り過ぎを避けるという意識の頭の隅に置いておけば、それで十分だろう。
色収差はF16まで絞っても完全には消えないが、実写で目立つほどではない。現時点では、カメラの持つ収差補正機能はこのテレコンに対応していないので、気になる場合はRAWで撮って展開時に補正をかける事になる。
羽田の国内線第2ターミナルからC滑走路上を離陸する旅客機を狙った。望遠端が350mmまで伸びるので、マスターレンズの250mmでは難しい小型機の離陸や、離昇して行く中型機のフォローもこなす事ができる。陽炎の影響で少し像が乱れているが、レンズ性能は良好だ。
次に、動物園に持ち込んでみた。このシチュエーションは大気の影響を受けないので、レンズの持つ高性能が遺憾なく発揮される。たかが1.4×の倍率でも、マスターレンズ単体では届かない遠い被写体を、一歩引きつける事ができるメリットは大きい。
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テレコンバーターの魅力の1つは、パッキングがコンパクトになる事だ。このDAテレコンを機材に加えれば、わずかな重量とスペースで、超望遠ズームを持ち歩くに等しい効果が得られる。カメラバッグに忍ばせて常に持ち歩き、日常の風景を超望遠独特の迫力ある構図で切り取るのも楽しい。
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PENTAX純正DAレンズ群のラインナップは、DA★ 60-250mm F4 あるいは 「DA★ 300mm F4 ED [IF] SDM」 の上が、いきなり 「HD PENTAX-DA 560mm F5.6 ED AW」になってしまう弱点があった。
そのギャップを補完し、DA★ 60-250mm F4と組み合わせて85-350mm F5.6相当のDA★ズーム、あるいはDA★ 300mm F4との組み合わせで420mm F5.6相当のDA★超望遠として機能するこの製品は、テレコンバーターという枠を超えた大きな意味を持っている。
巷では、テレコンにしては価格が高いとささやかれているようだ。しかし、その位置づけと性能に照らせば、単品で5万円前後、DA★ 60-250mm F4とのセット販売で18万円前後という価格は、リーズナブルだとも思える。例えば、あなたが既にPENTAXの超望遠レンズを所有しているユーザーならば、まさに待った甲斐のあるレンズと言えるのではないか。