ペンタックスK-x【第3回】

K-rの登場を踏まえ、この1年を振り返る

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取材用の組み合わせ。DA 55-300mm F4-5.8 ED+K-x(右)とDA 17-70mm F4 AL [IF] SDM+K-7(左)

 K-xの発売から約1年、K-xの上位機種「K-r」が7日に発売される。K-rではスーパーインポーズの搭載や高感度性能の向上など、基本性能のさらなる向上が図られており、K-xユーザーとしても気になるポイントは多い。今回は、間もなく発売となるK-rとK-xのスペック上の対比を通して、K-xを振り返ってみたい。

 K-rに関して筆者が気になるポイントは、AF精度、連写速度、高感度、重量、スーパーインポーズといったところだ。


●AFセンサー

K-xK-r
SAFOX VIIISAFOX IX

 K-xを使っていて最も気になったのは、AFの迷う頻度が比較的多かったところ。例えば取材で壇上の人物を被写体とした場合、スポットライトを浴びていれば問題なく合焦するが、資料説明などで少し明かりを落とすとAFが迷い始めるといった具合。レンズはDA 55-300mm F4-5.8 EDを開放から一段絞って使うことが多かった。

 取材においてK-xはサブ機の位置付けにあったが、使用する場合は、併用していたK-7よりも高感度に強いということで、主にスタジオなど屋内での取材や、ISO1600以上を要するような暗所で多用した。せっかく暗い場所で使うことが多いにもかかわらず、AFがうまく合わないケースがたびたびあったのがK-xの不満のひとつだった。

 K-rでは補助光ライトを新搭載したので、近距離のAF精度に関しては向上が見込めそうだ。K-xや旧機種のK-mでも、内蔵ストロボをポップアップさせていれば補助光代わりに発光させることができたが、使い勝手は良くなかった。

 またK-rは「SAFOX IX」というAFセンサーを装備しており、これは645DやK-5で採用している「SAFOX IX+」から光源検知センサーを非搭載としたもの。K-xに搭載しているのは1世代前にあたる「SAFOX VIII」なので、どの程度AF精度が向上しているかは気になるところだ。

K-rの補助光ライト(左)とK-7の補助光ライト(右)。どことなくK-7の面影が見て取れる

●連写性能

K-xK-r
約4.7コマ/秒約6コマ/秒

 連写に関しては、フットサルの試合の写真を撮る機会があったので、その現場で活用した。気付いたのは、シャッタータイムラグにより、動きの激しい被写体は、「撮れた」と思った瞬間が、PCで見ると良いタイミングで撮れていないことがよくあるということ。

 普段は動体を撮らないし、取材で連写性能に困ったことはなかったので気にしていなかったが、スポーツを撮るという用途において「この2カットの間にもう1、2枚多く撮れていればドンピシャだったかもしれないのに」というケースがあり、約4.7コマ/秒では不足と感じることもあった。

 K-rのシャッタータイムラグについては発売前なのでまだわからないが、約6コマ/秒と高速化したので、結果として決定的瞬間をとらえるチャンスが増えたと考えていいだろう。

●拡張感度

K-xK-r
ISO100~12800ISO100~25600

 K-7では少々心許なかった高感度耐性に惹かれてK-xを購入したこともあって、K-rでさらに1段分高感度に強くなった点は歓迎したい。個人的な印象で恐縮だが、ライブ会場など暗所でシャッタースピードを稼ぎたいとき、K-xで納得できる画質が得られたのはISO3200までだった。

 高感度に強くなれば実用に堪える感度も上がっていくので、安心して高感度を使えるシーンが増えるのはありがたいことだ。

●重量(本体のみ/電池・SDメモリーカード込み)

K-xK-r
約515g/約615g約544g/約598g

 扱いやすいコンパクトさが売りのエントリー機だが、単3ニッケル水素充電池が4本も入るとさすがにズシリとくる。比較的軽量なキットレンズのDA L 18-55mm F3.5-5.6 AL(約200g)ならまだ気にならないが、筆者が取材で多用しているDA 17-70mm F4 AL [IF] SDM(約485g)を装着した場合は、長時間持っているとそれなりにつらくなってくる。

 その点K-rでは単3電池とリチウムイオン充電池「D-LI109」の両方を使える点がありがたい。以前触ってみた限りでは、D-LI109を使った場合は、かなり取り回しやすい軽さだったと記憶している。

 とはいえ、予備のバッテリーを買うにしても、デジタル一眼レフカメラのリチウムイオン充電池は比較的高額(D-LI109は5,500円)なので、いざというときに調達しやすい単3電池が使えるのはやはり安心だ。

 また、スーパーインポーズを搭載したこともあってか、K-rはK-xよりやや重くなっている。

K-r(左)ではリチウムイオン充電池D-LI109と単3電池の両方を利用可能になった。(別売りの電池ケースが必要)

●スーパーインポーズ

K-xK-r
なしあり

 ペンタックスがエントリークラスのデジタル一眼レフカメラにスーパーインポーズを搭載するのは、2008年2月発売の「K200D」以来、K-mとK-xをはさんで、3世代振りとなる。

 K-m、K-xの両機種は、以前からスーパーインポーズ非搭載であることが欠点視されていたふしがある。しかし、個人的に測距点は中央1点のみ使っていたので、必ずしもスーパーインポーズを必要とはしていなかった。

 ただ、これもK-mの頃から言われていたことだが、確かに「測距点切替」という機能があるのに、「測距点オート」を選ぶと、合焦位置がとっさに分からなくなるという仕様はどうかと思っていた。K-rにスーパーインポーズが搭載されたことで、より多くのユーザーが利便性を感じられるようになったのは評価したいポイントだ。

K-xではスーパーインポーズがないために、測距点をオートにすると、どこに合焦しているのかとっさにわからない点が残念だった。(画像はK-xの設定画面)

●そのほか

 上に挙げた以外のK-rの新要素としては、液晶モニターの大型化と高精細化(2.7型・約23万ドットから3型・約92.1万ドットに変更)、新カスタムイメージ「銀残し」やデジタルフィルターの追加、ライブビューのグリッド線への「黄金分割」の追加、といった点が挙げられる。

 K-rでは、当然ながらK-xと比べての基本性能が確実に向上している。電池の使い回しも効くし、操作性もほぼ変わらないので、K-xを使っていて、先に述べた点に不満のあったユーザーの買い替えにも適しているだろう。

●総評

 以上、いささか個人的な用途・経験に基づく見解が多く恐縮だが、約1年間に渡ってK-xを使っての所感と、K-rへの期待を述べさせていただいた。

 使い勝手という面からいえば特に大きな不満はなく、キーレスポンスも良かったし、高感度もほぼ期待通りに使えた。強いて苦言を呈するならば、先述の通り、時折AFが迷う点が気になったくらいだ。もう少し細かいことに言及するならば、モードダイヤルが若干ゆるくて意図せず回ってしまうことが多かったり、AFモードの切り替えがメニューからしかできないなど細かい不満もあるが、エントリーモデルということを考えれば目をつぶれるレベル。他社の一部エントリーモデルに見られるようなナビゲーション機能的なものはないが、ボタン数が少なく、自ずと押すボタンも限られてくるし、折しも上位機種の登場でかなり手頃な実勢価格になりつつある。コストパフォーマンス的な意味でも、まだまだK-xは元気なカメラだと思う。



2010/10/6 14:13