オリンパスE-620【第4回】

専用パワーバッテリーホルダーHLD-5を買う

Reported by 北村智史


 以前から買おうかどうか迷っていたパワーバッテリーホルダーHLD-5を手に入れた。E-620用の縦位置グリップで、リチウムイオン充電池のBLS-1が2本装填できる。もともと縦位置グリップは付けたい派だし、大手量販店の店頭価格がだいたい1万6,800円程度と決して高価でもないが、小型軽量というE-620の大きな美点を思い切りスポイルしてくれるアイテムであるのも間違いない。

 単体での重さは200gだが、E-620のボディが475gだから、実に約42%もの重量増になってしまう。サイズも似たような感じ。使用説明書にはいわゆる煙突部分も含めた数字しか書かれていなかったのでアバウトに測ってみたところ、ベース部分の厚みは42mmほど。コンパクトなE-620の背の高さが94mmだから、率でいうと約45%アップという計算になる。

 とはいえ、バッテリー2本のフル装備状態で767gの軽さは、持ち歩きが苦になるようなことはないし、オリンパスが「世界最軽量の拡張バッテリー装着システム」とうたうだけのことはあるとも思う。ただ、もとが小型軽量なだけに、それを大事にしたい気持ちもある。小さなカメラは小さなまま使うのがいいような気もするし、実際のところ、今まで使ってきて、グリップなしで困った記憶もない。そういうのもあって、長らく買いそびれていたわけである。

 そんなところにシグマの50mm F1.4 EX DG HSMなんかを付けたのが運の尽き。どうせ重いレンズを付けるんだから、カメラももう少し重くなってもいいか、などという気になってしまった。毒を食らわば皿まで気分である。二重にバチアタリだ。

 さて、このHLD-5。ベース部分にバッテリーを2本並べて装填する方式である関係で、奥行きがかなり大きい。ボディのグリップの奥行きがだいたい55mmなのに対して、HLD-5はだいたい68.5mm。13.5mmも大きいのである。これだけ違うと、横位置と縦位置とでホールド感もずいぶん変わってくる。まあ、仕方のない部分ではあるが、違和感をおぼえる人もいるだろう。ちなみに、2本のバッテリーを装填した場合は、両方均等に消費する仕様であるらしい。

 装備されている操作部材は、縦位置用のシャッターボタンとコントロールダイヤルだけ(あと、縦位置操作部材用ロックノブもあるけど)。シャッターボタンはボディのよりチープな感触だが、まあまあ許容範囲。ダイヤルは軽めであつかいやすいと思う。FnボタンとかAEL/AFLボタンはないので“親指AF”は使えない。個人的には“親指AF”愛用者なのだが、E-620は“人差し指AF”にしているので問題はない。というか、そうしている理由のひとつが、HLD-5で“親指AF”が使えないからだ。そのわりに、HLD-5を買うまでにずいぶん時間がかかってしまったのは間抜けっぽいけど。


バッテリーは2本装填可能。片方から使う仕様だと、使ったほうだけ充電すればいいので便利だが、両方を均等に消費する仕様とのことHLD-5を装着した状態で横から見ると、カメラのグリップ部よりも、HLD-5のグリップ部のほうが奥行きが大きいことがわかる

 また、露出補正ボタンもないが、カスタムメニューの「ダイヤル機能」のおかげで不便を感じない。この機能は、コントロールダイヤル単独操作で変化する要素(絞り優先AEなら絞り値)を、露出補正ボタン+ダイヤル操作で変化する要素(通常は露出補正)と入れ替えるもの。ようは、ダイヤル単独での露出補正を可能にする機能だ(絞り値の変更は露出補正ボタン+ダイヤル操作で行なう)。世間一般の操作系からは外れるものの、1ダイヤルのカメラでも快適に露出補正が行なえる便利機能なのである。おかげで、HLD-5に露出補正ボタンがなくてもまったく平気である。

 で、使ってみての感想だが、たぶんもう取り外すことはないんじゃないかと思うくらいにいい。もちろん、縦位置でも気持ちよくホールドできるのだが、横位置で持ちやすくなったのもツボだったりする。背が高くなってグリップが長くなる分小指があまらなくなるとかもあるし、個人的な構え方の問題もある。というのは、縦位置グリップ付きのカメラを構えるときに、左手の手のひらの手首寄りの部分にグリップの前縁を載せるようにして支えるクセがある。こうすると、機材の重さを左手だけで支えることになるが、ヒジをワキにぴったりくっつけてしまえば、かなり重い機材でも楽に支えられる。


縦位置撮影用のシャッターボタンは、感触がもう少し安っぽい。吊り金具を備えているのはめずらしい点。縦吊りもいいかもしれないコントロールダイヤルは比較的軽めで操作性はいい。Fnボタンなどはないので“親指AF”は使えない
カスタムメニュー「ダイヤル機能」の画面。Aモード(絞り優先AE)を「露出補正」にすると、ダイヤル単独操作で露出補正となる横位置のときの筆者の構え方はこんな感じ。左手だけでカメラの重さを支えるため、右手はほぼ完全にフリーとなる
こちらは縦位置。グリップの奥行きがある分手の大きな筆者には、横位置よりもホールド感がいい

 左手で機材の重さを支えられる分右手の負担を減らせるので、カメラの操作がやりやすくなる。グリップを握ってなくてもいいのだから右手の指を自由に動かせるわけで、特に“親指AF”を使うのにはとても都合がいいのである。一方の左手も指には重さがかからないのでフォーカスリングやズームリングをスムーズに回すことができる。とまあ、筆者にとってはメリットいっぱいな構え方なのである。

 ただし、こういうのは腕力がないのに大きなカメラが好き、かつ利き目が左(ファインダーを左目でのぞくとカメラの重心も左にズレるので、左手だけで支えるのに向いているわけだ)、かつ“親指AF”の愛用者という条件が重なり合った結果、たどりついた構え方というだけで、こんなのに当てはまる人のほうが少数派だろうと思うから、参考にはならないだろうけれど、筆者的にはHLD-5の威力は満点。軽さは犠牲になってしまったものの、1日撮り歩いての疲労はHLD-5付きのほうが少なくなったわけで、結果的には快適度アップにつながった次第。こんなことならもっと早くに買っておけばよかったなぁ、って感じである。今さらですけど。


石灰やらセメントやらを運ぶ貨物列車が走っていたらしい古い鉄道橋。錆びたレールは橋のこちら側で途切れている
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート
晴海や豊洲のあたりは再開発まっただ中で、工事現場だらけだったりする
E-620 / 10-20mm F4-5.6EX DC HSM / 4,032×3,024 / 1/640秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 18mm
造船所時代の名残のクレーンをそのままモニュメントとして残してあるらしい。デザインがすごく昔風
E-620 / 10-20mm F4-5.6EX DC HSM / 4,032×3,024 / 1/640秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 10mm
理由はわからないが、なぜかシグマのレンズはプラス補正の量を多めにしないといけないケースが目立つ気がする
E-620 / 10-20mm F4-5.6EX DC HSM / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F8 / +1.7EV / ISO200 / WB:オート / 15mm
水上バスが出入りするときは通行止めになる跳ね橋。クリスマス用のイルミネーションが取り付けられていた
E-620 / 10-20mm F4-5.6EX DC HSM / 4,032×3,024 / 1/1250秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 11mm
東京メトロの豊洲駅の出入り口なのだが、遠目にはガラスの鳥かご的オブジェのようにしか見えない
E-620 / 10-20mm F4-5.6EX DC HSM / 4,032×3,024 / 1/250秒 / F8 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 10mm
新しいほうの「晴海橋」の下をくぐる水上バス。橋の上からの眺めを撮っていたらちょうど「ヒミコ」が通りかかった
E-620 / 10-20mm F4-5.6EX DC HSM / 4,032×3,024 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 10mm
新月島公園のあたりの防潮堤。陸地側から見てるとただのコンクリート塀だけど。鉄筋でつくったハシゴは何に使われていたんだろう
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光
「朝潮大橋」からの運河の眺め。遠くかすんでいるのは芝浦あたり。ちょっと傾いちゃってるのがお見苦しいですけど
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/500秒 / F8 / +1.0EV / ISO200 / WB:オート
こういうシーンで+2.3EV補正というのは、純正レンズでは経験がない。やっぱりシグマレンズ特有の問題があるのかも
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/50秒 / F4 / +2.3EV / ISO200 / WB:オート
長らく動いていなさそうな回転灯。もとは、理容店は外科医を兼ねていて、だから動脈と静脈と包帯の3色が使われているんだそうな
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO200 / WB:太陽光
前回は開き気味の絞りで使ったが、今回はF5.6とかF8で撮った。載せたのは縦位置だけだけど、半分くらいは横位置だったりする
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/160秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO200 / WB:太陽光
佃地区と新川地区をつなぐ吊り橋「中央大橋」。夜のライトアップのための照明が設置されている
E-620 / 10-20mm F4-5.6EX DC HSM / 4,032×3,024 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 10mm
シグマの10-20mmは、純正のED 9-18mmよりも画角は狭いし、重いのが難点だが、歪曲が少なくて使い勝手はいい
E-620 / 10-20mm F4-5.6EX DC HSM / 4,032×3,024 / 1/1250秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 10mm


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/1/5 00:00