E-P1の発売からまだ日も浅いのに、上位機種という位置づけで「E-P2」が12月4日に登場した。スペック的には、電子ビューファインダー(EVF)に対応したのが大きなポイントで、さらに「i-FINISH」、動体追尾AF、新しいアートフィルターの追加といった機能が追加されている。
ハードウェア的な変更点は、EVFで利用されるアクセサリーポートの新設程度で、それ以外はソフトウェアによる変更点。個人的にはEVFは不要なので、それ以外がファームウェアや現像ソフトの機能として追加されるのであれば、E-P2の登場も大きな問題にはならない。オリンパスにはがんばってもらいたい。
さて、E-P2でも新たに2種類が追加された「アートフィルター」。E-P1の代表的な機能の1つといっていいだろう。オリンパスのデジタル一眼レフカメラ「Eシリーズ」から搭載されてきた独自の画像処理機能だ。撮影した画像にさまざまな効果を適用して、独特の写真を撮ることができる。
E-P1に用意されているアートフィルターは「ポップアート」、「ファンタジックフォーカス」、「デイドリーム」、「ライトトーン」、「ラフモノクローム」、「トイフォト」の6種類。E-P2にはこれに「クロスプロセス」と「ジオラマ」が追加されている。
アートフィルターは、実際に見た光景を切り取る記録的な意味での写真ではなく、自分の感性で写真を作り上げるという意味で、その名の通りアートを意識した写真を撮るための機能。というわけで、目で見た景色と出来上がる写真は違うので、ある意味撮影が難しい機能ではある。しかし、ライブビューでリアルタイムに液晶モニターで効果を確認しながら撮影できるため、それほど難しく考える必要はないだろう。
実際の撮影には、モードダイヤルを「ART」に設定して、適用したいフィルターを選ぶだけ。画面ががらりと変わって、アートフィルターがリアルタイムで適用されるので、それを見ながら撮影すればいい。トイフォトはリアルタイムでの処理が間に合わないため、液晶モニターの表示がコマ落ちしたようになってしまうが、静物撮影であれば特に問題はない。
アートフィルターは6種類。写真は「ファンタジックフォーカス」を選んだところ | モードダイヤルにある「ART」に設定するとアートフィルターが起動する |
こうした画像処理系の撮影機能の場合、フルオート撮影になってしまうカメラは多いが、E-P1の場合、Pモードと同じレベルの撮影機能が利用できる。つまりISO感度、ホワイトバランス、AFポイントの選択などが利用できるし、プログラムシフトを使えばシャッタースピードや絞りも選択できるので、それなりに自分の意図を加えた写真が撮れるのだ(ただ、ホワイトバランスはフィルターを切り替えるたびにオートに戻ってしまう)。
アートフィルターに設定していても、いろいろな設定は変更できる。ただし、こちらのスーパーコンパネからはアートフィルターの設定が変更できないので、ライブコントロールを使う方がいい | なお、アートフィルター時は仕上がりと階調が選択できない |
ライブコントロールでのアートフィルター選択画面 |
撮っていると、撮影が楽しくなるのがアートフィルターのいいところだ。目で見た風景を記録するだけでなく、そこに自分の意図を分かりやすく入れ込むことができるので、あとから見返しても楽しい。じっくり考えながら撮影する癖が付くのもいい。
とはいえ、アートフィルターの撮影には時間がかかる。どのフィルターを使うか考える時間も必要だし、フィルターを適用するのにはそれなりの処理時間もかかる。そのため、アートフィルター撮影の時間がない場合や、普通の写真も撮っておきたいという場合もあるだろう。カメラ付属の画像管理ソフト「OLYMPUS Master 2」では、RAW画像にアートフィルターを適用する機能を備えているので、RAWで撮影してあとからフィルターを適用することが可能だ。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像、またはOLYMPUS Master 2で現像した画像を別ウィンドウで表示します。
※共通設定:E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.8MB / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / 30mm
・JPEGで撮影
ポップアート | ファンタジックフォーカス | デイドリーム |
ライトトーン | ラフモノクローム | トイフォト |
・RAWで撮影後、OLYMPUS Master 2で現像
ポップアート | ファンタジックフォーカス | デイドリーム |
ライトトーン | ラフモノクローム | トイフォト |
付属ソフトのOLYMPUS Master 2では、RAW画像を選択して「RAW現像」を選択し、「基本2」タブにある「アートフィルター」から設定を変更できる。あとからPC上でじっくりフィルターの効果を確認しながら設定できるので、後処理したい人には有効だ。ただし、撮影時と同様にそれなりの時間がかかるので注意が必要。特に、画像の内容によって処理に時間がかかり、複雑な画像ほど時間がかかるようだ。
OLYMPUS Master 2での現像画面 |
個人的には撮影するその場で考えながらフィルターを適用するのが楽しいと思うので、RAW+JPEGでの撮影を多用している。RAWとJPEGの同時記録にしておくと、JPEGにはアートフィルターが適用され、素のRAW画像も同時に記録される。あとから別のフィルターを適用したくなったり、記録用に通常の画像も欲しい場合にも重宝する。
アートフィルターは、撮るだけで撮影が楽しくなる機能で、あまり深く考えなくてもドラマチックな写真が撮れてしまうので、初心者でも写真を撮る気にさせてくれそう。まずはここから写真の楽しさを知って、その後、普通の撮影にも気を配るようになる、そんなきっかけとしての役割も担ってくれそうだ。
現時点で、アートフィルターはE-P1の6種類に加え、E-P2では2種類が追加されている。せめてOLYMPUS Master 2のアップデートでE-P1の画像にも新しい2種類が適用できるようになって欲しいし、ファームウェアでE-P1自体にもアートフィルターが追加されていったら楽しいと思う。
さて、この連載も今回が最終回。発売日からつきあってきたが、改めてE-P1は、レンズ交換式デジタルカメラの世界に新風を巻き起こしたカメラだと感じる。これまでにないコンパクトで高級感のあるデザインで、女性にも扱いやすいが、キッチリとカメラとしての機能も盛り込み、撮っていて楽しいカメラに仕上がっている。
何より、「長く使っていきたい」と思わせるデザインと作りの良さが、E-P1の大きなポイントだと思う。オリンパスには、定期的なアップデートで「飽きの来ないカメラ」としてE-P1を育ててもらいたいと思う。
2009/12/9 00:00