リコーGR DIGITAL III【第2回】

正方形で撮影してみた

Reported by 種清豊



 撮影できるフィルムサイズ(フォーマット)をいろいろと変更できるカメラはフィルムカメラのときから数多く存在していた。

 ただ本来は、1台のカメラでフォーマットを変えることで表現を変えて撮影するというよりは、カメラが高価だったため、複数のカメラを所有して、いろいろなフォーマットで撮影することが難しかったことによる苦肉の策というのが実状であった。結局、それらフォーマットを1台で変えて撮影できるカメラや装置というのは一部の高級機種にのみ残り、その多くは写真愛好家にはあまり受けいられなかったようだ。

 しかし、最近はカメラ本体がかつてのような高級品ではなくなり、かつ、多くの機能を1台に組み込むことが簡単になった。その1つに撮影できるフォーマットを変更する機能が入っている。フィルムという概念が無いので、撮影サイズというよりは、そのセンサーの撮影比率を変更といったほうがいいのかもしれない。

 「GR DIGITAL III」の通常の撮影比率は4:3である。この比率は、コンパクトデジタルカメラのほとんどがデフォルトで採用している比率だ。ほかにGR DIGITAL IIIは35mmフィルムの撮影比率である3:2のほか、1:1といった正方形の比率でも撮影できる。

 今回は撮影比率を1:1に固定して撮影してみた。その比率からわかるように真四角に写る写真は、普段見慣れている長方形の比率と異なり、ちょっと新鮮な感じがする。

GR DIGITAL IIIでは、700万画素相当で1:1の撮影ができる。JPEGのほか1:1のRAWも記録可能だ1:1の撮影画面

 当然正方形なので、縦位置横位置と変化をつけての撮影は無理だが、その正方形の画面比率は特に左右対称、シンメトリックに被写体を撮影したときに、強い緊張感を持った画面になる。横や縦に長くないので、画面内に目的のものをうまく配置しやすいということも言えるかもしれない。

 具体的には画面中心に主な被写体を配置する、日の丸構図的に撮影すると比較的うまく画面をまとめることができる。しかし、1:1の撮影で注意したいのが、広い風景などの写真だ。4:3や3:2のように横方向が長くないので、広い風景を撮影した場合に、画面の広さがなかなか伝わりにくい。当然のことだが、レンズ交換ができないので、4:3で得られる画角とは異なり、同様の広さを表現したい場合、自分が被写体からかなり離れないといけなくなってしまう。

 このように本来撮影できる比率と異なる比率で撮影する場合は、同じカメラで単に比率を変更して撮影しているというより、また別のカメラで撮影している感覚で撮影したほうがうまく使い分けができるのではないだろうか。要するに、あらかじめ4:3で撮影された画像を、PC上で比率変更して撮影するよりは、初めから比率を固定して撮影に臨むほうがうまく被写体を捉えやすいだろう。


作例

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

GR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/270秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO64 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/810秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/68秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/570秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO64 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/620秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/39秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/17秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/14秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/28秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/290秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/176秒 / F2.8 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/24秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 2,736×2,736 / 1/2,000秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm





種清豊
(たねきよ ゆたか)1982年大阪生まれ。京都産業大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、写真家竹内敏信氏のもとで約3年間のアシスタントを経て、2007年よりフリーランスに。主に日本各地に残る明治、大正、昭和初期のクラシックな素材から現代の街まで幅広く撮影中。また人物撮影や、東京の下町の祭も撮影。キヤノンEOS学園講師、NPO法人フォトカルチャークラブ講師。ブログはこちら

2009/12/2 00:00