ニコンD7000【第6回】

16-85mmと18-55mmを比べてみる(その2)

Reported by 吉森信哉


 前回のレポートでは、ボクがニコンD7000と組み合わせて使っている2本の標準ズームレンズ「AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR」と「AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR」を、画質を中心に比較してみた。それから早数カ月が経過(冷汗)。今回は予告通り、「重箱の隅をつつくような差」をレポートしよう。

手前がAF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR。奥がAF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR
  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 一部の作例はSILKYPIX Developer Studio Pro 5.5で現像しています(キャプションにその旨を記述)。

周辺光量

 まずは周辺光量をチェック。焦点距離および絞り別で撮影して比較してみた。縮小表示では「16-85mmはフラットで周辺光量低下が目立たない」「18-55mmは周辺部の落ち込みが少し目立つかナ」と感じた。でも、1点ずつ展開してみると、18-55mmの落ち込みは思ったほどは気にならない。むしろ16-85mmの広角端や望遠端の隅の部分の落ち込みの方が目立ったりして……。

 でも、これは作例のようなフラットな絵柄だから気になるだけかも。しかも、これも1段くらい絞れば改善されるから、そんなに目くじらを立てて追及するほどのコトでもないけどネ。

D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.4MB / 4,928×3,264 / 1/800秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.3MB / 4,928×3,264 / 1/640秒 / F4 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.5MB / 4,928×3,264 / 1/400秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.5MB / 4,928×3,264 / 1/200秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.2MB / 4,928×3,264 / 1/640秒 / F4.5 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 35mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.2MB / 4,928×3,264 / 1/400秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 35mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.4MB / 4,928×3,264 / 1/250秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 35mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.2MB / 4,928×3,264 / 1/640秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約4.3MB / 4,928×3,264 / 1/320秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.5MB / 4,928×3,264 / 1/1,000秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.5MB / 4,928×3,264 / 1/800秒 / F4 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.5MB / 4,928×3,264 / 1/500秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.5MB / 4,928×3,264 / 1/250秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.3MB / 4,928×3,264 / 1/640秒 / F5 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 35mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.2MB / 4,928×3,264 / 1/500秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 35mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.4MB / 4,928×3,264 / 1/250秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 35mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.3MB / 4,928×3,264 / 1/500秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.2MB / 4,928×3,264 / 1/250秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mm

逆光

 両レンズの広角端で、画面内に太陽を入れて逆光特性をチェックする。16mmと18mmを同じ位置から撮影したので、被写体の大きさなどが微妙に違うけど、画面上での太陽の位置は極力合わせるようにした。太陽に重なる雲は見られず、強い逆光状態になっている。はいっ、16-85mmと18-55mmの両方とも、ゴーストやフレアの目立たないクリアな描写でございますヨ!

 まあ、もっとキビシイ逆光条件はいろいろあるから(日の出とか)、すべての逆光でクリアになるとは限らないけど、この条件でこのくらい写れば、まずは「対逆光性能もまずまず良好!」と言ってもイイのでは?

D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約5.5MB / 4,928×3,264 / 1/500秒 / F11 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 16mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約5.6MB / 4,928×3,264 / 1/500秒 / F11 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 18mm

ボケ

 両ズームの望遠端で、被写体のポストの大きさや位置が極力同じになるよう調節して、開放絞りでの背景ボケの描写を比較してみた。

 ボケ量の違いの影響もあるだろうが、18-55mmの背景ボケは、ザワザワするというか、全体的にささくれたようなボケで、ちょっと目障りな印象を受ける。

D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約5.0MB / 4,928×3,264 / 1/30秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約5.3MB / 4,928×3,264 / 1/15秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mm

クローズアップ

 マクロレンズほど本格的じゃないにしても、花や小物を「そこそこアップで撮りたい!」、そう思うことも多いだろう。

 16-85mmの最大撮影倍率は1/4.6倍。もう一方の18-55mmの最大撮影倍率は1/3.2倍。ズームを望遠端に設定して最短撮影距離付近で撮影すると…ああ、けっこうアップ度が違うなぁ〜。18-55mmのクローズアップ能力、けっこう魅力的!

最短距離0.38m付近 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約6.5MB / 4,928×3,264 / 1/320秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mm最短距離0.28m付近 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約5.9MB / 4,928×3,264 / 1/500秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mm

最短撮影距離時の画角

 「85mmで最短0.38m」と「55mmで最短0.28m」。この焦点距離と最短距離の組み合わせだけみると、16-85mmの方が被写体をアップにできそう……。だが、このズームはインナーフォーカスを採用するなど光学の特性上、フォーカス位置が近くなるにつれ焦点距離が短くなる(画角が広くなる)ので、結果的にあまりクローズアップ性能は高くない。

 10m強離れたカリヨンを望遠端で「フォーカス位置が被写体のカット」と「MFでフォーカス位置が最短撮影距離のカット」の2パターンを撮影して比較してみた。たしかに、16-85mmの方は画角が広くなって、カリヨンのアップ度が少し低くなってるなぁ。この画角だと、だいたい「60mm」くらいかな? ちなみに、18-55mmの方もわずかに画角が広くなってる気がするけどね。

被写体の位置(10数m)にフォーカス。D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約3.1MB / 4,928×3,264 / 1/200秒 / F11 / -0.3EV / ISO100 / 85mm(SILKYPIX Pro 5.5でJPEGに現像)最短撮影距離(0.38m)にフォーカス。D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約2.4MB / 4,928×3,264 / 1/20秒 / F36 / -0.3EV / ISO100 / 85mm(SILKYPIX Pro 5.5でJPEGに現像)
被写体の位置(10数m)にフォーカス。D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約3.0MB / 4,928×3,264 / 1/200秒 / F11 / -0.3EV / ISO100 / 55mm(SILKYPIX Pro 5.5でJPEGに現像)最短撮影距離(0.28m)にフォーカス。D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約2.4MB / 4,928×3,264 / 1/20秒 / F36 / -0.3EV / ISO100 / 55mm(SILKYPIX Pro 5.5でJPEGに現像)

 両標準ズームを、D7000ボディに装着した際の印象(バランスなど)については前回も触れたけど、今回はブツ写真を見てもらいながら、いま一度その違いを確認してみよう。

全長85mm・重さ約485gの16-85mm装着。先端部、お辞儀します全長79.5mm・重さ約265gの18-55mm装着。先端部、お辞儀しません
16-85mm望遠端。鏡筒部、ビヨ〜ンと長めに伸びます18-55mm望遠端。鏡筒部、チョロンと短かく伸びます

 グレードの違いというか、値段の違いをモロに感じるのが、側面部の操作スイッチの仕様&作り&操作感だ。16-85mmの「フォーカスモード切り換えスイッチ」は(というより、レンズの製品仕様)、AFモードのままでMFも可能なタイプ。そして、18-55mmにはない「手ブレ補正モード切り換えスイッチ」を装備している。また、各スイッチの作りや操作感も、16-85mmの方が上質かつスムースなのである。

左手側スイッチ類の比較。こちらはAF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VRこちらはAF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR

 以前D5000を使っていた関係上……というか、実際は予算上の関係なんだけど、安価な標準ズームレンズ、18-55mmを購入して使っていたボク。でも、昨年秋にワンランク上のD7000を購入して、標準ズームレンズもワンランク上の16-85mmにした。でも、価格や仕様のランクは違っても、シャープネスをはじめとする描写性能に関しては、18-55mmも意外に……というか、かなりレベルが高いので感心した。そう、そのあたりの実力も、16-85mmを購入して比較することでハッキリしてきたのである。

 もちろん、D7000ボディとのマッチングや、総合性能では16-85mmの方が勝っている。あとは「標準ズームの役割をどう捉えるか?」によっても選択は変わってくるだろう。システムの“中軸的存在”として捉えるなら16-85mmを選ぶ。だが、他のレンズを中軸に据えて、標準ズームレンズは“押え的存在”として割り切るなら、小型軽量で気軽に携行できる18-55mmに手が伸びるね、ボクの場合は。また、気軽にクローズアップ撮影が楽しめるなど、撮影現場でのパフォーマンスの面でも「今日は18-55mmの気分かも」というケースが意外と多いのである。





吉森信哉
(よしもりしんや)1962年広島県庄原市出身。東京写真専門学校を卒業後、フリー。1990年からカメラ誌を中心に撮影&執筆を開始。得意ジャンルは花や旅。1970年代はカラーネガ、1980年代はモノクロ、1990年代はリバーサル、そして2000年代はデジタル。…と、ほぼ10年周期で記録媒体が変化。でも、これから先はデジタル一直線!? 自他とも認める“無類のコンデジ好き”

2011/10/19 00:00