オリンパス・ペンライトE-PL2【第3回】

魚眼、ワイド、マクロの「コンバーターレンズ」3兄弟を試す

Reported by 北村智史


 今回のお題はM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II用のコンバーターである。E-PL2と同時に発表されたものだが、生産の都合で発売が延期になってしまった例の製品だ。

 フードと同じようにバヨネット式で装着できるフロントコンバーターで、セミ魚眼の「フィッシュアイコンバーターFCON-P01」、広角の「ワイドコンバーターWCON-P01」、接写用の「マクロコンバーターMCON-P01」がある。セミ魚眼と広角はM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II専用だが、マクロはアダプターを取り外すことでM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6とM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6にも使用できる。

今回のお題のコンバーターはM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II専用。筆者は持ってないので借り物。というわけで、ボディと色が違います

 価格はそれぞれ、2万1,000円(大手量販店の店頭価格は約1万6,800円)、1万2,600円(同9,980円)、8,820円(同6,980円)だが、3本まとめてそろうセットは3万7,800円(同2万9,800円)でちょっとお得。マスターレンズとなるM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 IIはレンズキットで買えば実質1万円で手に入るから、合計約4万円の出費。これで標準ズームが、広角やセミ魚眼、マクロレンズとして使えるのだから、お買い得感はバッチリだ。

 もっとも、これだけ安いと性能的に納得できるかどうかが心配になる。なにせセミ魚眼は対角線画角が120度しかないし、ワイドもフロントコンバーターは歪曲収差が目立つ傾向があるのが気になるし、マクロだっていわゆるクローズアップレンズ(しかも1枚玉である)なわけで、“なんちゃって感”は否めない。というのもあって、試してみたいなぁと思った次第である。

 で、今気づいたんだけれど、E-PL2の長期リアルタイムレポートは3:2比率でと決めてたから前回までは本当の四隅が写ってないわけで、それはちょっとよろしくない。なので、今回は同時記録のRAWをOLYMPUS Viewer 2で現像したのを掲載する。トリミング指定を外しただけであとは成分未調整である。


フィッシュアイコンバーターFCON-P01

 倍率0.74倍、対角線画角が180度にはかなり足りない120度で、大きなタル型収差による魚眼らしさも少し控えめな感じ。反面、画角が広すぎてジャマモノが画面に入りまくる本格魚眼よりも画面が整理しやすいし、画面効果も強烈すぎないので扱いやすいと思う。

「フィッシュアイコンバーターFCON-P01」を装着した状態。長くなるので、かっこうはあまりよくない

 魚眼としては狭いとはいえ、M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 IIのワイド端が75度だから、見比べればかなりの違いである。画面中心部の解像感は十分に高く、四隅の画質劣化もごくわずか。倍率色収差もほんの少し。思っていた以上の実力派といってよさそうだ。

路上に停車中のコンテナトラックのタイヤに迫ってみた。アップにすると、それなりに魚眼っぽい画面効果は出てくれる。E-PL2 / 4,032×3,024 / 1/50秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 14mm遠景になると少し迫力不足な感じ。画角的には扱いやすくていいが、もう少し派手に曲がってくれたほうが面白いとは思う。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+FCON-P01 / 4,032×3,024 / 1/1,000秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 14mm
何度か撮っているお台場海浜公園のトイレ。湾曲したデザインのおかげで、すごく魚眼っぽくなった。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+FCON-P01 / 4,032×3,024 / 1/1,000秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 14mm画角が広いだけに天気がいいと空がとても濃く表現できる。風景を撮るには楽しい。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+FCON-P01 / 3,024×4,032 / 1/640秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 14mm

ワイドコンバーターWCON-P01

 35mmフィルムカメラ換算22mm相当で、超広角と呼べるほどではないが、それなりにワイド感は味わえる。マイクロフォーサーズの超広角ズームは、オリンパス純正のM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6が7万4,550円、パナソニックのLUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH.が12万4,950円するのを考えると、お手軽かつお手ごろに広角撮影が楽しめるのは悪くない。

「ワイドコンバーターWCON-P01」を装着した状態。レンズが前縁ぎりぎりなので、指で触らないように注意しないと

 画面中心部の解像感はまったく文句なしで、四隅の画質劣化も少ない。倍率色収差は少々といったところ。ただし、予想どおりタル型の歪曲収差がけっこう大きいのが気になるところ。直線をうまく避けるなどの工夫が必要だ。

ちょうど左右の建物のあいだから陽が射している状態。こういう構図だと歪曲収差は目立ちにくいはずだけど、けっこう目立っている。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+WCON-P01 / 3,024×4,032 / 1/1,000秒 / F4 / 0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mmフロントコンバージョンだけに歪曲収差はやっぱりかなりある。倍率色収差もちょっと目立つ感じ。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+WCON-P01 / 4,032×3,024 / 1/400秒 / F4 / 0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mm
背景との距離が違うシーンだと、四隅が少し流れたようになって画質が落ちるが、まあ許容範囲だと思う。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+WCON-P01 / 4,032×3,024 / 1/200秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mm建物などの直線的なものが入らなければ歪曲収差は気にならない。なので、画角の広さだけをばっちり楽しめる。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+WCON-P01 / 1/200秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 14mm

マクロコンバーターMCON-P01

 コンバーター本体とアダプターリングがセットになっていて、アダプターを外すとM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6やM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6に装着できる。

「マクロコンバーターMCON-P01」を装着した状態。当然だけど、めいっぱい望遠側にしたほうが倍率は高くなる

 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 IIとの組み合わせでは、撮影距離範囲は撮像面から0.24〜0.51m。焦点距離42mmの状態で、撮像面からコンバーター前縁まで12cmほどあるので、ワーキングディスタンスは11-40cmほど。クローズアップレンズでいうと、だいたいNo.2とNo.3のあいだくらいになる。M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II単体での最大撮影倍率は0.19倍、コンバーター装着時は0.28倍。めいっぱい寄ると61.8×46.4mmほどの範囲が画面いっぱいに写せる計算だ。

シーンモードの中に堂々とコンバーター用のモードがあったりする

 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II単体とコンバーター付きで撮り比べると、そんなに倍率が高くなった感じはしないが、ズームの光学端でも使えるし、解像感もいい。普通のクローズアップレンズよりも高価になるものの、バヨネット着脱の便利さは魅力だと思う。

サビの浮いたガードレールのネジの頭をめいっぱいのアップで。ボケも悪くない感じ。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+MCON-P01 / 4,032×3,024 / 1/400秒 / F8 / 0.3EV / ISO200 / WB:オート / 42mm砂浜で見つけた貝殻。マイクロフォーサーズはファインダーをのぞき込まなくてもいいので、ローアングルが楽ちんでいい。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+MCON-P01 / 4,032×3,024 / 1/640秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 42mm
これはあまり寄らずに撮ったカット。絞り開放だと周辺光量が少し落ちる。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+MCON-P01 / 4,032×3,024 / 1/800秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 42mm広角端でも寄れるので、まわりを入れ込みつつアップを狙いたいときにも便利。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+MCON-P01 / 4,032×3,024 / 1/320秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mm

画角の違い(フィッシュアイとワイド)

 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 IIの広角端と、FCON-P01付き、WCON-P01付きで同じ位置から撮り比べてみたもの。FCON-P01もWCON-P01もそれほど強烈にワイドというわけではないが、四隅でもそんなに画質が落ちていないのはいいところ。

M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II / E-PL2 / 4,032×3,024 / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mmM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+FCON-P01 / E-PL2 / 4,032×3,024 / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mm
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+WCON-P01 / E-PL2 / 4,032×3,024 / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mm

最大撮影倍率の違い(マクロ)

 もとがけっこう寄れるレンズなので、それほど倍率が上がったようには見えないかもしれないが、35mm判換算で0.56倍相当なのだから、フィルム時代なら立派にマクロレンズの倍率。気軽な接写には十分に対応できる。望遠端にセットしたつもりが1mm短くなってた。

M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II / E-PL2 / 4,032×3,024 / 1/500秒 / F11 / 0.3EV / ISO400 / WB:オート / 41mmM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+MCON-P01 / E-PL2 / 4,032×3,024 / 1/500秒 / F11 / 0.3EV / ISO400 / WB:オート / 41mm

【2011年3月7日】マクロコンバーターの作例に3:2の画像が混ざっていたため、4:3のものに差し替えました。



北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2011/3/7 00:00