交換レンズ実写ギャラリー
HD PENTAX-DA 15mm F4 ED AL Limited
リニューアルした“超広角入門レンズ”
Reported by 大高隆(2013/10/4 08:00)
リニューアルされたペンタックスのDA Limitedシリーズのうち最も広角にあたる焦点距離を持つのが、「HD PENTAX-DA 15mm F4 ED AL Limited」。15mmというスペックからは強烈な超広角レンズという印象を受けそうだが、35mm判換算で23mmに相当する画角は広角から超広角への橋渡しに位置し、“標準ズームの17mmあるいは18mmより少し広角側をカバーするレンズが欲しい”という用途にもピタッとはまる。「超広角入門編」ともいえるレンズだ。
HD DA Limitedシリーズの5本すべてにいえることだが、基本構造や光学系はsmc版と変わりない。アルミ合金から削り出された鏡筒が指先に伝えてくる、高品質な機械特有のみっしりとした感触もそのまま。外形寸法もほぼ同じだ。カメラに装着するとほとんど重さを感じさせないバランスのよい仕上がりは、レンズのコンパクト化を可能にするボディ内モーター方式の長所と、AFとMFのシームレスな連携とを両立させるクイックシフトフォーカスシステムに拠るところが大きい。前玉最前面には汚れを防ぐSPコーティングが施される。
花形フードが鏡筒に巧みに組込まれ、使用時には画角ギリギリまで伸び、広角レンズの大敵である画角外の光源からの直射光を有効にカットする。フードを縮めればほとんど突出はなく、携行性も優れている。フード内面には静電植毛が施され、フードそのものからの反射がフレアの発生源になってしまうこともない。15mmという短い焦点距離のレンズでありながら前玉の突出はなく、必要なら49mm径のフィルターを使うこともできる。
光学系に目を向けると、1枚目に大径の非球面レンズを使い、超広角レンズとしては異例に少ない6群8枚という構成枚数を実現している。そのため内面反射が根本的に少ないのが特長だが、HDコーティングを得たことで逆光性能はさらに高められている。一方、構成枚数が少ないことは倍率色収差の補正には不利な面もあり、後玉にEDガラスレンズを1枚使うことでそれを補っている。
実写に先立ち、チャート代わりにタイル壁を撮影して各絞りごとの性能を読んでみた。大まかにいえば、画面中央付近は開放から高い解像力を発揮する。画角周縁部の解像力は、F4では収差の影響で少し落ちるが、中心はF4が最良だ。絞り込んでいくにつれて収差は軽減され、F5.6半辺りで周縁の解像力低下も気にならなくなり、F8からは全画面でレベルの高い画質になる。F11でさらに均質になり、F16から回折による解像力の低下が少しみられるが、F22に絞っても実用的な画質を保つ。
歪曲収差は極めて優秀に補正されており、建築物を撮影しても歪みをほとんど感じさせない。倍率色収差もよく抑え込まれている。実写では、開放に近い絞りの近距離撮影で非点収差の影響と思われる放射方向の流れが画角の周辺部にごくわずかに現れるが、15mmとしては軽微なもので、総じていえば遠景から室内まで、さまざまなシーンで高い性能を持っている。
絞り込んだ時の回折の影響は、同じF値でも焦点距離が短いほど強く表れ、実写では解像力の低下のほか、夜景の点光源のまわりに光芒として観察できる。smc版の15mm Limitedはクロスフィルターでも掛けたかのような大きな光芒が1つの個性になっていたが、円形絞りの導入に伴って小絞り時の絞り開口部の形も変わり、HD版の15mmでは光芒は若干抑えられたものになっている。この一点においてsmc版のほうを好むファンもあるかもしれないが、HDコーティングにより暗部のディテールの出方は改善されており、夜景撮影時の性能が大きく向上したことは間違いない。その辺りは好みで選択すればよいと思う。
smc版を愛用してきた経験から、もう1つ、このレンズの持つ特徴として挙げたいのは「ボケ味」の良さだ。超広角レンズを語る時にこの言葉は普通出てこないが、開放からF5.6くらいの絞りで被写体にぐっと迫って撮ると、前ボケ/後ボケのいずれにもくせのない、美しい表現が得られる。中望遠レンズでいわれるような大ボケとは意味が違うが、周囲の環境まで捉えながらそれを適度にぼかし、被写体に視線を集中させるような撮り方が出来る。これこそ“Limitedの真骨頂”というべきだろう。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。