ベルボン「ULTRA REXi L」

~70-200mm F2.8クラスでも使える高速セットアップ三脚

 スピーディーなセッティングが特徴のベルボン製三脚「ULTRA」シリーズに、中級デジタル一眼レフカメラ対応の新製品「ULTRA REXi L」が登場したのでレポートしたい。ULTRAシリーズは、独自の脚ロック機構「ダイレクトコンタクトパイプ」を採用したことで、素早いセッティング&収納と高伸縮比を実現しているのが特徴だ。

ULTRA REXi L。発売は5月で価格は3万8,325円。5段式だ全高1,660mmだが縮長は50cmを切る

 ダイレクトコンタクトパイプは、“脚の先端を約半回転させる”→“一気に全段を引き伸ばす”→“脚の先端を約半回転させてロックさせる”、という3つの動作で脚を伸ばすことが可能なため、一般的なナットロックやレバーロックのように節々のロックをする必要が無く簡単に早くセッティングができる。

 またパイプ自体がほかのパイプと直接固定する機構と併せて5段式を採用したため、伸縮率も高くなっている。同じ耐荷重3kgのロックレバー式カーボン三脚「ジオカルマーニュE545」(4段)が伸縮率約2.4倍なのに対して、ULTRA REXi Lは同約3倍となっている(いずれもエレベーターを伸ばさない場合)。ダイレクトコンタクトパイプが回転させただけでロックできるのは、パイプの断面が円形ではなく半円をずらして合わせたような独自の形状になっているからだ。


【動画】セッティングの様子

最大パイプ径を30mmとし、耐荷重3kgを実現

 さて、このように便利なダイレクトコンタクトパイプだが、これまでミニ三脚~中小型三脚への採用に留まっていた。最も大きなタイプだった「ULTRA LUXi L」も全高こそ1,610mm(エレベーター伸長時)あったが、耐荷重は2.5kgと一眼レフカメラの入門機クラス向けのモデルとなっていた。

 今回のULTRA REXi Lでは、最大パイプ径をULTRA LUXi Lの25mmから30mmに太くし、耐荷重を3kgに向上させた。キヤノン「EOS 5D Mark II」、ニコン「D700」、ソニー「α900」といった35mmフルサイズセンサーを搭載した中級クラスのデジタル一眼レフカメラへの対応を謳っている。5段式ではあるが、一番細いパイプでも直径18.2mmを保っている。伸長時のたわみも特に大きくは感じられなかった。

 ULTRA REXi Lのスペックは、全高1,660mm(エレベーター伸長時)、エレベーターのスライド幅240mm、最低高230mm、縮長482mm、重量1,920g。ULTRAシリーズでは最も全高のある三脚だ。エレベーターを少し伸ばせば筆者の身長(約172cm)でアイレベルを得ることができる。この三脚はアルミパイプ製だが、実は重量がジオカルマーニュE545と全く同じなのだ。アルミ三脚としては、耐荷重の割に軽量といえる。


脚をすべて伸ばしたところエレベーターを適度に引き出すとアイレベルを得ることができる。モデルの身長は約178cmエレベーターをすべて伸ばしたところ

 ダイレクトコンタクトパイプの伸ばし方にはコツがあり、「三脚の脚を持って抱き込み、タオルを絞る要領で回転させつつ引き伸ばすと良い」(取扱説明書から)。慣れると即座に脚を引き出せるようになる。脚を引っ張って伸ばす三脚といえば、コンパクトカメラ向けの安価ないわゆる「アンテナ三脚」がある。アンテナ三脚は、脚パイプをすべて引き出さないと使用できないが、ダイレクトコンタクトパイプはナットやレバーでロックする三脚と同様に、任意の長さで固定できる。中間の長さに設定するには若干の慣れが必要と思われるが、筆者はすぐに慣れることができた。

伸ばすときには2つのグリップを両方回転させる。上側のグリップのみを回すと、1段のみ引き出せて便利だ独特のパイプ形状なのがわかる。最も細いパイプでも直径18.2mmと5段式としては太め

 付属の雲台も従来モデルから大きく変わった。ULTRA LUXiでは「PHD-41Q」という比較的小型の雲台だったが、ULTRA REXi Lでは「PHD-63Q」になった。PHD-63Qは耐荷重4kgのしっかりした雲台で、サイドティルトハンドル(右側のパン棒)が伸縮式になっている。水準器は3軸式だ。クイックシューのプレートは、同社上位シリーズと共通の「QRA-35L」が使用できる。なお、PHD-63Qは手前のパン棒でチルトとパンの両方をロック&リリースできる1ストップタイプで使いやすい。

雲台はジオカルマーニュでも採用している3ウェイ雲台「PHD-63Q」が付属横のパンハンドルは伸縮式だ(伸ばしたところ)
雲台には3軸の水準器も装備エレベーターのロックが素早く行なえる「イージーロックレバー」も採用

 脚の開脚は「セミオートラチェット」により3段階に設定できる。センターポールを分割することでローポジションにもなる。センターポールは直接上下させるラピッド式。エレベーターのロックは、独自の「イージーロックレバー」を採用。文字通り簡単にロックと解除が行なえる。

セミオートラチェット機構で3段階に開脚できる中位に開脚したところ
センターポールを分割すれば、ローポジションも可能

 今回はEOS 5D Mark II、シグマ「APO 70-200mm F2.8 II EX DG Macro HSM」、同「12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSM」などとともに試用してみた。

 カメラ本体とAPO 70-200mm F2.8 II EX DG Macro HSMで2.3kg弱になる組み合わせだが、5段三脚とは思えないほど安定して使うことができた。撮影時は風がほとんど吹いていなかったこともあり、スローシャッターでもブレたカットはほとんど無かった(エレベーターは不使用)。もちろんシャッターはリモコンを使って切っている。

 一方、12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSMは重量600g。三脚座がないためフロントヘビーになる組み合わせだが、思ったよりもパイプのたわみが無かったため安心して使用できた。超広角レンズなので、そもそもブレは目立たないということはあるが、使用時の安定性に問題は無かった。


 今回の試用で気になったことといえば、サイドティルトハンドルを装着した状態では付属ケースに収納できないという点だ。ケースに仕舞う度にサイドティルトハンドルを回して外し、手前側のパン棒のうしろにねじ込まなければならず非常に面倒だった(ケースから出して使うときもまた同様)。

 せっかくサイドティルトハンドルが伸縮式になったのだから、ケースをもう少し大きく作るなどして、そのまま収納できるような工夫が欲しかった。ただこの問題はベルボン以外のメーカーでもしばしば見られるので、ぜひ改善をお願いしたいところだ。

伸縮式パンハンドルも縮めた収納状態(左)。このままでは付属ケースには収まらない。右のように、サイドのパンハンドルを取外して、手前のパンハンドルの後に装着する必要がある
付属のケースに収納したところ

 ULTRA REXi Lは、これまでダイレクトコンタクトパイプの便利さを知りながら、カメラが大きいために購入を躊躇していたユーザーには朗報だろう。アルミ三脚とあって、カーボン三脚よりも買いやすい価格になっているのもポイントだ。ナットやレバーとは別のロック機構の中型三脚として、ラインナップが増えたことを歓迎したい。

【2010年8月9日】付属の雲台「PHD-63Q」について、「ジオカルマーニュ・限定版と同じ」と表現していましたが、ジオカルマーニュ・限定版に付属する雲台とは異なります。




(本誌:武石修)

2010/8/9 00:00