ケンコー「PRO1DサーキュラーPLスーパースリム」

驚異的な薄さのPLフィルター

 レンズフィルターの定番といえば、PLフィルターがまず念頭に浮かぶ人は多いだろう。デジタル処理で代用しづらい効果を持つことから、今でも高い人気を誇る製品ジャンルだ。とりわけ風景・ネイチャー撮影における使用率は高く、読者の皆さんもご愛用のことと思う。

PRO1DサーキュラーPLスーパースリム。価格は1万500円(49mm径)から2万3,100円(82mm径)。写真の77mm径は1万9,950円

 そんな定番アイテムのPLフィルターだが、2枚のガラスを必要とする構造のため、ほかのレンズフィルターより厚みが生じる。結果、広角レンズではフィルター枠が映り込みやすいという欠点があった。

 今回紹介するPRO1DサーキュラーPLスーパースリムは、ケンコーが「世界最薄」を宣言したサーキュラーPLフィルター。偏光膜を張り合わせた後のガラスを研磨し、ガラス厚0.5mm、フィルター全体で8mm(82mm径製品、ネジ部分含む)を実現したのが特徴だ。実際に製品を見ると「これがPLフィルターなの?」と驚くことだろう。

 ちなみにケンコーの従来製品のうち、薄型タイプ「PRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)」のガラス厚が2mm。両製品を並べてみると、PRO1DサーキュラーPLスーパースリムの薄さがよくわかる。

既存のPLフィルターと厚みを比較。左は薄枠タイプとして登場した「PRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)」
マルチコートタイプの「MCサーキュラーPL」と比較
右は現行製品のうち最もベーシックな「PL(偏光)フィルター」

 薄いだけではない。前枠を回すとちゃんと回転するし、操作感も悪くない。あまりに薄いため、最初は内側に触れないよう気を使う必要があったが、慣れてしまえば問題なし。もちろん、効果は通常のPLフィルターと同等だ。円偏光なのでAF一眼レフカメラでも使用できる。最新の製品だけあって、ガラス周囲への墨入れなど、デジタル一眼レフカメラ対策も万全なのもうれしい。

トキナーAT-X 116 PRO DXに装着。レンズ先端の薄いローレット部周辺がPRO1DサーキュラーPLスーパースリムになるフィルター非装着状態のAT-X 116 PRO DX
PRO1DサーキュラーPLスーパースリムを装着PRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)を装着
MCサーキュラーPLを装着PL(偏光)フィルターを装着

 超広角レンズにおけるケラレ具合を検証するため、PRO1DサーキュラーPLスーパースリムを含むケンコーの4製品を比較してみた。サンプルとして選んだレンズは、トキナーのAT-X 116 PRO DX。ニコンD200で使用しており、広角端での35mm判換算の焦点距離は16.5mm相当になる。

 結果は興味深いものとなった。PRO1DサーキュラーPLスーパースリムでケラレが見られないのは当然ながら、PRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)でもまったくケラレが生じていない。

  • 作例のリンク先は800×600ピクセルです。
  • ニコンD200、AT-X 116 PRO DXで撮影。
フィルター非装着
PRO1DサーキュラーPLスーパースリムを装着PRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)を装着
MCサーキュラーPLを装着PL(偏光)フィルターを装着

 では、プロテクトフィルターとの2枚重ねはどうなるかというと、今度はPRO1DサーキュラーPLスーパースリムでも軽くケラレが発生した。使用したプロテクトフィルターは、薄枠タイプの「PRO1Dプロテクトフィルター(W)」。この場合もPRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)とケラレ具合はあまり変わらない。

PRO1Dプロテクター(W)のみ装着
PRO1DサーキュラーPLスーパースリム+PRO1Dプロテクター(W)PRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)+PRO1Dプロテクター(W)
MCサーキュラーPL+PRO1Dプロテクター(W)PL(偏光)フィルター+PRO1Dプロテクター(W)

 ついでにAF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VRにステップアップリング(ケンコー製67mm→77mm)を介して、77mm径の各PLフィルターを装着。費用のかかるレンズフィルターは大きめの77mm径で用意し、小径レンズにはステップアップリングで使い回すというテクニックはありがちだろう。ただし24mm相当ともなると、どのPLフィルターでもケラレはまったく現れなかった。

AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VRにステップアップリングを装着さらにPRO1DサーキュラーPLスーパースリムを装着
ステップアップリングのみ装着
PRO1DサーキュラーPLスーパースリム+ステップアップリングPRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)+ステップアップリング
MCサーキュラーPL+ステップアップリングPL(偏光)フィルター+ステップアップリング

 結局、PRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)の時点で、超広角レンズにおけるケラレ対策はすでに完了していた模様。ことケラレ対策という意味において、あえて定価で3,000円ほど高価なPRO1DサーキュラーPLスーパースリムを買う意義をあまり見いだせない結果になった。一般的に超広角域ではムラが気になるため、PLフィルターを使うことは少ないことから、さらにPRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)との差はなくなる。もっとも、プロテクトフィルターとの併用で、PRO1DサーキュラーPLスーパースリムの超薄枠が威力を発揮する焦点域もありそうだ(今回はケラレてしまったが)。

 何よりも、消耗品のイメージが強いPLフィルターながら、これほどモノとしての魅力を放つ製品は珍しい。装着状態の見た目も格好良く、フィルター製品にかけるケンコーの意気込みとこだわりが伝わってくる一品だ。

一応お約束でPL効果の作例。一般的にPLフィルターを使わないことが多い、超広角域で試してみた。左がPRO1DサーキュラーPLスーパースリム装着時、右が非装着時

【2010年7月28日】プロテクトフィルターとの2枚重ねの作例が誤っていたので、正しいものに差し替えました。



(本誌:折本幸治)

2010/7/28 00:00