山岸伸の「写真のキモチ」
第79回:6人6色で表現する女性ポートレート
アイドルグループ SEIEN-星宴- 堀木さな
2024年9月30日 12:56
好きなカメラで、条件はほぼ一緒
私とアシスタント2名、私の写真塾によく通ってくれている3名でそれぞれ好きなカメラを使い、堀木さなちゃんを撮ってみた。場所は私のスタジオ周辺、持ち時間は1人約15分。
1枚目の私の写真が何故こうなったのか、理由は簡単。スタジオ周りのいい場所は先に5人が使っていて撮る場所がなかった。しかし私たち女性ポートレートを撮るカメラマンは女の子さえいればどんな場所でもいい。私の車に乗ってもらい、シャボン玉を窓ガラスに吹きつけてみた。このような撮影はしたことがなく咄嗟に思いついたこと。意外と面白い写真が撮れたので今後もう少し作品になるような撮り方をしてみたくなった。
塾生3名の撮影
スタートは塾生の蕨ちゃん。彼は私のところに通い続けてくれていてこの中では1番古い塾生。ヨドバシカメラの大撮影会で年度賞を取ったこともあるくらい、とても素敵な写真を撮るアマチュアカメラマン。キヤノンのEOS Rとオリンパス(現OM SYSTEM)のOM-D E-M1 Mark IIを持ち使い分けていた。
今回はその中から1点、とてもいい雰囲気の写真を撮ってくれた。女の子を撮るスタイルは優しく、彼の写真は柔らかい、とても好感の持てるカメラマンだ。今後もヨドバシカメラのような大きな撮影会で年度賞を取るくらい作品を撮り続けて欲しいと思う。
2人目の柳川さんはニコンのZ6Ⅲを使用。寡黙で自分の考えた通り写真を撮ってくれるアマチュアカメラマンだ。研究心が非常に強いことが語らなくてもわかる。恐らくいつも頭の中で悩みながら撮っていると思うがその悩みがなくなったらすごい写真を撮るようになると思う。
風を生かし女の子の持っている女性らしい面を引き出している、私が好きな写真。
背景に植物のグリーンを持ってくることで癒しや落ち着きの効果があったり、人物の肌色と補色関係にあるから人物がきれいに見えるね。
3人目は村上さん。彼も柳川さん同様、ブレずに長くニコンを使い、Z9を手にしていた。転勤で秋田に越したが車や新幹線でわざわざ来てくれている。嬉しいよね。IT系に勤めていて機械についても非常に詳しい。
同じ場所での引きとアップ。ここまで寄ってくれるのは非常に嬉しい。カメラが人物の顔を検出した場合、肌がなめらかになるように自動補正をしてくれる「美肌効果」を「弱め」で使用していた。撮って出しでもこれぐらい綺麗な写真があがる、とても素晴らしいポートレート向きのカメラだと思う。
引きからここまでのアップを撮る人はなかなかいない。たくさん撮った中から2枚を選ぶとしたら、やっぱり引きと寄り、縦と横とかそういう感じになるよね。
私とアシスタント2名の撮影
続いて山岸伸写真事務所の番。私がシグマfpL、近井はOM SYSTEM OM-1 Mark II、マッハ佐藤君はソニー α7R Vで撮影した。
まずはマッハ君。スタジオから20mほどのところなのでよく場所を知っている。
神田という都会、スタジオ周りで花が咲くのは珍しい。それを入れてこの笑顔。とてもマッハ君らしからぬ? いい写真だと思う。目線がバッチリきていないところもいいね。モデルのいろんな表情を引き出し魅力を見つけるためでもあるけど、全ての写真で目線がきていると複数枚選ぶときに少ししんどく感じる場合もあるし、撮影中は一度目線を反らしてもらうことでモデルさんの表情が和らいだりもする。
次に近井。1枚目は他の人が撮影しているときに傍で撮影したもの。メイキングと言い、よく人が撮っているときに邪魔しないように撮れと指示しているが、それは目線が外れ自然な雰囲気でとてもいいときがあるから。このレンガはハレるとレンガ色が肌に被るので私はあまり好きではないが、ちょうど天候が悪く光が直接当たらず、アンダー気味にしていい雰囲気で撮っていると思う。
引きでこの場所の雰囲気をうまく入れたね。私たちには見慣れた景色だけど他の人から見ると、あ、いいところだなと思ってくれることもあって非常に嬉しい。
はたしてこれはどこかな? と思うような1枚。看板の錆び、4分の1がトンネルの向こうのような奥行、綺麗ではない場所を綺麗に見せる努力をしたと思う。コントラストがつき、影とのバランスもこれはこれでいいね。写真はその場所をよく見ることが大切で、ただこの壁際に寄りかかればいいというわけではない。冒頭でどんな場所でも撮れると言ったが、その場所を把握することで写真が変わってくる。
そして私。みんなが外で撮影している間、みんながこの後スタジオ内で撮影するための準備をしていた。スタジオ内は水着撮影だったので作品は載せないが、久々にリファーライトを使ってはっきりと光と影がわかるようなライティングで撮ってもらった。
みんな好きなカメラで撮るということでチェキでも撮ってみた。チェキの難しさはチェキを撮る人でないとわからない。約1年ぶりに引っ張り出して撮ったが撮り方も忘れてしまっていたくらい。チェキはフィルム代などのコストもかかるのでもったいないというか、何のためにチェキで撮るのかというのが根本にあるから私にとって出番は少ない。今回は入っていたフィルムが前回から放置されているので写るかどうかというテストでもあった。
これは1番最初に見せた車内撮影のメイキング。
もう1枚はすぐ後ろのレンガで撮影。レンガに近づくと顔がレンガ色になるが、これはどうにもならないこと。カラーモードをティールアンドオレンジにし、肌だけにレンガ色が被るというよりも全体の色味を変えて世界観を作った。人によっては気になるかもしれないが、これはこれで良しとして撮影を進めないとキリがないので場合によってこだわりは捨てる。こだわり過ぎてシャッターを押す手が緩んでしまうのが1番よくないんだ。
最後に恒例の記念写真。いつも言うことだけど、この記念写真は私たちが楽しく仕事をしたという証でもある。堀木さなちゃん、お疲れさま。モデルを務めてくれてありがとう。