赤城耕一の「アカギカメラ」
第151回:変態的ミラーレスカメラ「PENTAX K-01」再び
2026年10月20日 07:00
秋葉原の老舗中古カメラ店「にっしんカメラ」さんが10月23日(金)をもって閉店します。突然の報せに驚きましたが、店長のSさんには、イベントなどでお世話になったこともありまして、先日挨拶に伺ったのですが……。
折りからの閉店セールが開催され、いやSさんによればステルス開催っぽいです。そこで目が合うわけです、筆者の場合。悲しい時だというのに。
いや、目が合わないようにしていたのです。店員さんに好きな人がいたというわけではなくて、ペンタックスK-01とガチで目が合ってしまいました。
「おまえ、もうK-01持ってるだろうが」
ココロの声が囁きます。はい、そうです。所有しておりまして、仕事では使ったことないけど、時おり思い出したように持ち出して、この大胆な変態的発想のカメラに感心しているわけであります。
ほんとか?
本当です。
でも、もう公式にメンテはできないカメラですし、壊れてしまうと私の変態カメラ履歴に穴が空いてしまいます。
密かに予備機の導入は考えておりました。ただ、なかなか気に入った個体が見つからない。というか、K-01には様々なカラーモデルがあったのですが、筆者の気に入ったものがみつからなかったわけです。今回目の合ったものはボディは黒基調のブラック×ブラックですから、以前から所有していた個体と白黒逆転のイメージがあり、探していたものでした。
閉店記念に購入するカメラとしては少し悲しいようにも思いますけど、筆者のフトコロはより悲しい。購入のイイワケはこれくらいにしておかないと余計なことを探られかねないので、本題に行きたいと思いますが、久しぶりに本気モードでK-01を使ったらとても楽しかったという話であります。そう、またしても今回はペンタックス話になってしまいました。お急ぎではない方はおつきあいくださいまし。
ペンタックスK-01の話は、本連載でも過去に取り上げました。少しおさらいをしておきます。
K-01発売は2012年でした。時代は一眼レフからミラーレス機方向に進んでいたわけですが、ペンタックスの開き直り的な設計思想が良かったですね。
早い話が「一眼レフからそのままミラーを省けば、ミラーレス機になるではないか」ということが発想にあるわけで、これは単純ではあります。いや変態です。
交換レンズをひっくるめた新規のミラーレス機のシステムの開発には莫大な資金が必要ですから、とりあえずミラーは取り外したカメラを作ってみたのですが、いかがですかね?という雰囲気がありますね。
フランジバックも一眼レフと同じですから、ボディの厚みは一眼レフと同等でありまして。ファインダーがないわけだからペンタプリズムとミラーボックスがないわけですし、その分軽量にはなり、おそらくコストも抑えられると思われますが、実際にはどうかは存じません。
とはいえ、まったく新しいカメラであることから、何らかのアドバンテージは必要なわけです。
デザイン担当は著名なインダストリアルデザイナーのマーク・ニューソンです。じつは筆者はK-01のデザインは嫌いじゃないのです。
「不朽」「信頼」「感触」というコンセプトをもとに考えられたデザインということなのですが、筆者は知性に欠けているのでしょう、このコンセプトは完全に理解できません。
ストロボを内蔵したこともあるのでしょう、上部は少しだけ盛り上がりました。これがこれまでのペンタックス一眼レフと比較するとかなり謙虚な感じがします。ダイヤル類はアルミ製で質感重視、トルク感も良好です。これはコンセプトのひとつ「感触」の要素なのでしょう。
「PENTAX」ロゴの大きさもバランスが良くて、ミラーレス機になっても違和感なく自然と入り込んでゆく感じがしました。カメラ上部を盛り上げるんだったら、EVF入れろと言われかねませんが、そうなるとどんどん“一眼レフ”っぽくなり思想が揺らぎかねません。
ボディ外装はエンジニアリングプラスチックですが、仕上げは秀逸です。ただ、白い面積の多いボディは筆者のジジイ脂で黄ばんできそうで不安です。
それよりも、おにぎりを思い出すのですね。うちにあるのは黒白のカラーバージョンですから、東京は大塚の名店「ぼんご」のおにぎりみたいなイメージです。こういう面白さがなければ複数台を揃えるとかしないですよ。
K-01に合わせて超薄型の交換レンズ「smc PENTAX-DA 40mm F2.8 XS」も用意されました。このパンケーキどころか、「ビスケット」と呼ばれるそうですが、これもマーク・ニューソンのコンセプトから生まれたものでしょう。
レンズを薄くすることで、全体をミラーレス機っぽく薄くみえるように考えたのでしょう。落涙しそうなほどの涙ぐましさを感じますが、焦点距離が40mmなので、K-01に装着すると、35mm換算画角は60mmレンズ相当になりますから日常持ち歩くには筆者には狭角すぎます。ま、これは何よりも全体のデザインを優先させたかったのでしょうね。それはそれである意味では思想が明確であることを示しているようです。
センサーはAPS-Cサイズ有効画素数約1,628万のCMOS。画像処理エンジンはPRIME M。設定感度はISO100-12800。カスタムでISO25600まで。動画も1,920×1,080/30fpsでの記録が可能。
内蔵マイクはステレオですし、“ミラーレス” 機なのですから、動画にも静止画撮影にもフレキシブルなカメラにしたかったんだろうなと。
たしかに一眼レフで動画撮るのはオマケというかものすごく無理している印象がありました。
動画はミラーアップさせて撮影するわけですから、不自然に感じましたが、K-01はあたりまえですが、なじめる印象なのです。ただ登場時、最初に試用した感想は、フォーカルプレーンのメカシャッターで撮影を主にする静止画カメラという印象を持ちました。
連写性能は最高約6コマ/秒。ただ、RAW設定やRAW+JPEG設定にすると、連写速度はいきなり1コマ/秒になりますね。
筆者は基本的にRAW設定しか使いませんので、この仕様には暴れたくなりましたけど、もっとも、仕事の撮影で使うことはありませんので、実用上は問題ないわけです。
ちなみにRAW設定の連続撮影はコットン、コットンとまったりした音が聞こえます。昔の機織り機のようなのどかな雰囲気があります。
カメラ周りの操作ダイヤルやボタン類は最小限というか、シンプルです。ライカのミラーレス機みたいです。嘘です。でも個人的に気に入っている点であります。取説要らず、設定に迷うことも少ないですね。
背面LCDは3型、約92万ドットの固定式であります。フレーミングもピント確認も全部やってねということですが、当然拡大表示するとあまり鮮鋭にはなりません。
撮影後に確認した画像をみて、ったく、ピント外しちまったぜと思って、PCに取り込んで拡大表示をしてみると問題はなかったりします。
日中晴天下など周囲が明るい場合、液晶モニターの視認性はかなり悪化します。
どうするのか。筆者の場合は「心眼」で撮ります。けっこうマジで。別名「勘」とも呼びます。
装着レンズに合わせた、外付けの光学ファインダーでも装着するかなあとも考えたのですが、コンパクトカメラと異なり、本機に装着すると、なんだかいやらしい感じがしますね。
パフォーマンスとしては、本機を三脚に乗せて大判カメラ用の冠布を用意して撮影したほうがウケるかもしれません。いや、ウケ狙いで撮影するわけじゃないけど。実用的にはLCDを覆う、ルーペ型のフードを使うといいのかもしれませんが、それも面倒ですね。
SR(ボディ内手ブレ補正)搭載でその効果は約3段分であります。ファインダーレスなので、顔でカメラを支えることができません。
これは、低照度下で役立つというよりもホールディングの不安定さをカバーする機能と考えたほうがいいでしょう。
本機に長焦点レンズを装着して、手持ち撮影するという人は多くはないと思いますが、変態カメラであるからこそ、無茶なことをしたくなるわけです。
K-01は言うまでもなくKマウント(正確にはKAF2マウント)を採用しています。このため通常のペンタックス一眼レフとフランジバックも同じになります。これって本機コンセプトの「不朽」と「信頼」に繋がるところなのでしょうか。
登場時にペンタックスK-01を手にした時、最初に何をしたかと申しますと、レンズを外しマウント内部を見渡すことでした。
筆者は声が出ました。
「本当にミラーがない」
ミラーのないミラーボックスは深い井戸みたいに見えました。
奥にシャッター幕が閉じているのが見えます。はい、ミラーレス機で間違いありませんでした。自分を納得させることが必要でした。
Kマウント搭載ですが、メカ的に絞り位置をボディ側に伝えるレバーは省略されているので撮影モードの全てを使用できるのは、「Aレンズ」以降の電子接点が設けられたものになります。
ただ本機にも他のペンタックス機同様にグリーンボタンを装備していますから、旧タイプのレンズを装着し、マニュアルモードで使用する場合でもとりあえずカメラが示す適正露光で撮影できます。
AFはコントラストAFですが、例のごとくで、合焦位置を通り過ぎて最良の点に戻るようなオーバーサーチする動きがあります。使用レンズにもよりますが、AFのスピードはそこそこありますね。
KマウントのペンタックスAF一眼レフはエントリー機からフラッグシップまで内蔵のAFモーターは省かれ、ずマウント部にカプラーも設けられています。K-01も同じです。
ボディ内AFで動作するカプラー方式のレンズでは、AF動作音とともに、かなり暴力的な動きをすることがあります。
K-01は登場当初から、あまり受け入れられず、早々にディスコンになってしまいました。成功した製品とは言い難い。でも先に述べたように、楽しいのです使っていて。いや文句はたくさんあるのですが、愛嬌みたいなものであります。
登場時期によってはもしかするとこの変態性がもっと理解されたかもしれませんよね。仮に「K-02」があったならばという妄想してしまいます。
まだ見ぬ、来るべき新型「ペンタックス一眼レフ」がどのようになるのか謎ではありますが「一眼レフ」に固執しなくても、Kマウント互換のまま「なんちゃってミラーレス機」になれることはK-01により実証されたわけですし、ここは柔軟な発想をしていただくのもありかなと思います。
すみません、余計なことを申し上げました。
























