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2007年

2006年

2005年

【インタビュー】山田久美夫が占う2007年のデジタルカメラ(後編)


 2007年もその進化を止める気配のないのデジタルカメラ。弊誌はじめ各カメラ誌でおなじみのプロカメラマン 山田久美夫氏に、2007年のデジタルカメラについて伺ったインタビュー、後編では各メーカーの動向を占っていただいた。

※本記事は、1月19日に行なったインタビューを再構成したものです。

前編はこちら
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/special/2007/01/29/5441.html


カメラ事業だけではやっていけない現状

HOYAの鈴木洋CEO(左)、ペンタックスの浦野文男社長
──後編は主要メーカーの動向を予測していただきたいのですが、その前に大きな状況として、2006年にはコニカミノルタの撤退や、HOYAとペンタックスの合併という出来事がありました。

 ええ、これで“純血”のカメラメーカー大手はニコン、キヤノン、オリンパスだけになりました。しかしキヤノンは“カメラメーカー”と呼んでいいのかどうか。“カメラ出身メーカー”になりましたね。

 しかも、HOYAとペンタックスの合併で、HOYA側は、ペンタックスのカメラ事業ではなく、医療系分野に魅力を感じたと語っています。( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2006/12/21/5291.html )

──たしかに、いまやカメラ事業はどのメーカーでも主流の事業ではなくなってしまいましたね。

 事務機や医療、半導体製造装置などB2Bの事業で利益を出し、民生向けのカメラ事業は会社の“看板”として維持されている状況です。メーカー全体の調子が悪くなれば、カメラ事業は簡単に切り捨ての対象になってしまう可能性もあります。実際、HOYAのCEOも、利益が出なければカメラ事業を転売するという趣旨の発言したようですし。

 ただ、ビジネス向けの事業ばかりだと、収益が上がって事業が安定しても、世間的な親しみやすさや知名度はどんどん下がっていきます。近年、一般投資家が増えてきていますから、あまり民生向けの事業を軽視するわけにもいかないという事情もありますね。もちろんビジネスと割り切ればいいのでしょうが、だからこそ、コンシューマー向けの事業は維持しなければなりません。自社の創業時の事業が大切になるでしょう。

 私はカメラ事業が収益面でメインでないのは、むしろいいことだと思ってるんです。カメラで稼がなければならない状況では、出す製品が必ずヒットしなければならない。だから、失敗できなくなる。しかも、新たなチャレンジができなくなるので、製品に魅力がなくなって行くわけです。銀塩時代ですが、かつてキヤノンは、全事業に対するカメラ事業の売り上げ比率が下がっていった時期に、カメラ事業の方向性を見直しました。つまり、利益よりも、同社のイメージを向上させる事業として方向転換したわけです。結果として、キヤノンのカメラはとてもよくなりました。

──そのキヤノンは、経団連会長を輩出するまでの企業になりましたが、死角はないのでしょうか。

 キヤノンには、通信機器がないのが心配ですね。大手家電メーカーには携帯電話がありますが、キヤノンにはない。

 前編の無線LANのところでも話しましたが、カメラは単体で撮影するものから、カメラが情報を受け取るような世界になっていくでしょう。カメラと通信がなんらかの形で補い合い、融合していく。そのときに通信関連製品がないのが、ウィークポイントになるでしょう。通信は、後から参入するのが大変な世界でもあります。

 それと、コンテンツを持っていないのも気になります。コンシューマー向け製品は人を楽しませるのが目的だと思いますから、カメラといえども人を楽しませるコンテンツの有無は重要になるのではないでしょうか。


EOS-1Ds Mark II
 製品という意味では、EOS系は、2008年のオリンピックに向けて高速モデルが出てくるかもしれませんね。秒間12コマとか18コマが可能なモデルだったり、ペリクルミラーの採用もあるかもしれません。

 あるいは、1Dsと1Dがもう1度、ひとつに融合されるかもしれません。1Dsでクリップ連写ができるようになって、連写速度が上がれば、2つのボディを使い分ける必要はなくなるわけです。

 まあ、Kiss Digital X以外の機種はどれも後継機が登場してもおかしくない状況ですし、1Ds Mark IIがいまだに2.5型液晶になっていないのも、より高画素の後継機が控えているからといった見方ができます。そんな高画素が必要かどうかは別の話ですが。

 まだまだ、製品面での死角はあります。たとえば、D40やK100Dのような6~8万円クラスのモデルもない。センサーシフト式手ブレ補正のモデルもない。ダストリダクションもKiss Digital Xのような完成度では困りますし。課題山積ですね。


フルサイズニコンはあるのか?

F6
──ニコンもオリンピックに向けてハイエンド機種の更新が予想されています。

 ええ、ニコンは35mm判フルサイズのボディを出さなきゃいけないでしょう。発表会のたびにニコンの人は「35mmサイズのデジタルカメラをやらないとは言わない。まずはDX(APS-Cサイズ)をひととおりやって、次のステップでより大きなセンサーを」と言っています。D40、D80、D200、D2Xsと、各クラスが第2世代に進化したので、そろそろ次のステップに進んでもいいんじゃないでしょうか。

 F6のメカをどうするのかも気になります。「F」は読み方によっては「フルサイズ」ですしね(笑)。ライカがデジタル版のMに「M8」と付けたこともありますし、F6のメカ部分と35mm判フルサイズセンサーを組み合わたようなデジタル一眼を「F7」と名づけるのもやりやすくなったのでは。

 ニコンがフルサイズ機を出したら、もう1回ハイエンド機が楽しくなります。システムカメラは、ハイエンド機が高性能で、ローエンドから遠ければ遠いほど楽しいものです。

 ニコンで気にかかるのは、デジタル一眼のステータスだけでコンパクトデジタルカメラを売っているように見えるところ。これからデジタル一眼市場が厳しくなっていくと思われますが、そのときにニコンがコンパクトデジタルカメラでどんな戦略を立てていくのかに注目しています。


E-400
──“純血カメラメーカー”の最後、オリンパスはPMAでの大攻勢が予想されています。( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2006/09/28/4727.html )

 E-400ですねぇ。E-450になるのかもしれませんが。オリンパスが、フォーサーズがE-400のサイズになればメリットがあるともっと言うべきです。よく言われることですが、あのサイズのモデルを、フォーサーズの最初に出すべきでした。

 E-1の後継機はやるべきなんでしょうけど、今の状況ではハイエンドより、中堅クラス。Eシリーズの二桁型番のほうが重要かもしれません。

 あるいは、フォーサーズじゃないシリーズがあってもいいでしょう。たとえば小型カメラやライブビューなどの技術はフォーサーズ系でやって、画質にこだわるフルサイズ系を打ち立てるというやり方もあるでしょう。まあ、体力次第ではありますが。

 コンパクト機では、海外発表された18倍ズーム機が楽しみですね。オリンパスのチャレンジ精神が感じられます。よりオリンパスらしい魅力あふれるコンパクト機も大いに期待したいですね。

 個人的に期待しているのが、Photokinaに参考出品された「木製外装」です。このクオリティは非常に高く、持ってることがステータスになるカメラを作れるでしょう。


E-1後継機のコンセプトモデル
木製外装を備えたデジタルカメラの試作品

645は35mm判の上位ではない

FinePIx F40fdのxD/SD共用スロット
──富士フイルムはいよいよSDメモリーカードを採用しました。( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/compact/2007/01/25/5416.html )

 いい判断だったと思います。xDピクチャーカードも悪くないけれど、やっぱり値段が高いし、SDメモリーカードがデファクトスタンダードになるなら、それに従ったほうがみんな安心というものでしょう。

 前編でも話したように、富士フイルムは高感度撮影の進化が期待されます。感度はそこそこでも、“使える画質”を実現してくるのではないでしょうか。富士フイルムの高感度はやはり一味違いますから、期待しています。

 それから、ハニカムSRにも注目しています。SRはものすごいポテンシャルを持っていると思います。FinePix F700のような、SRを搭載したコンパクトが期待されます。

 F700は、本当に欲しい人、その魅力が理解できる人が出てくる前に製品化されたカメラですが、前編でも話したように、今年はより画質や質感にこだわった高級コンパクトの年になる可能性があります。そうなったら、SRは高級機向けセンサーとして重要な要素になるでしょう。画素数はいらないけどダイナミックレンジはほしい、というユーザーにぴったりですね。1/1.7型のハニカムSRなんて楽しいんじゃないでしょうか。

 また、S5 Proもすばらしいポテンシャルを備えたカメラです。あまり一般向けではありませんけど、ものすごい画質へのこだわりを感じさせます。そのノウハウをもっと活かした製品が欲しいですね。


Photokina 2006に参考出品された645 Digital
──ペンタックスはHOYAと合併したことで、どんな影響があるでしょう。

 HOYAは世界最大のガラスメーカーですから、面白い硝材を持っているでしょう。合併したことで、ペンタックスが面白いレンズを作ってくれないでしょうか。K10Dはすばらしいカメラですが、レンズが足りないと感じるときがあります。とくに超望遠がありませんね。

 ペンタックスで気になるのは、645 Digitalを頂点とするラインナップを作ろうとしているように見えることです。Mamiya ZDを使って思うのですが、大きなフォーマットのセンサーは、35mm判とは違うものとして操作しなければ、そのポテンシャルを引き出せません。EOS-1Ds Mark IIがフェラーリなら、Mamiya ZDはF1です。アクセルを踏めば走るというものではない。( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2006/09/21/4651.html )

 やはりペンタックスはKの1桁シリーズを作るべきでしょう。K1桁を645でやろうとするのは間違っていると思います。

 ペンタックスのコンパクトはぱっとしませんね。もともとペンタックスにコンパクトはなかったですし、本音はデジタル一眼のおいしいところだけほしいのでしょうけど、コンパクトをやるならやるでちゃんとしたいですね。特に、同じようなクラスの製品しかラインナップされていないのがじれったいところです。いまの延長だと、10月の合併までに転売話が具体化する可能性もありそうですね。昨年はK100DやK10Dがヒットしましたが、2007年が正念場ですね、ペンタックスは。


サイバーショットは「フルラインGPS」に?

──ここでちょっと、家電メーカーの動向を占ってみたいと思います。ソニーとパナソニックについてお聞かせください。

 ソニーとパナソニックはひとくくりにできないと思います。ソニーはマビカからずうっとデジタルカメラをやっている、いわば老舗です。ソニーという企業体から見ると違うかもしれませんが、ある意味では実は“カメラメーカー”でもあるのです。

 パナソニックはカメラの世界では新興勢力と言っていいでしょう。実は昔からカメラメーカー向けにデジタルカメラをOEM供給していますが、実質的なデジタルカメラビジネスはやはりLUMIXになってからです。

 さて、まずαの次の一手にはいろいろな選択肢があります。α-7 DIGITAL後継の中堅機、ハイエンド機、α100よりも安いローエンド機。自前でセンサーを作れるのですから、35mm判もいけそうですね。ツァイスレンズがフルサイズに対応していて、DTレンズに力が入っていない感じがするのも、気になります。

 あるいは、サイバーショット DSC-R1のレンズを交換できるようなモデルもあっていいでしょう。ライブビュー路線はフォーサーズだけでなく、もうひとつあっていいと思います。


GPS-CS1K
 それから、ソニーは2006年にデジタルカメラ用のGPSユニット「GPS-CS1K」を出しましたね。( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/compact/2006/08/02/4346.html )

 あれでGPSとデジタルカメラの組み合わせの面白さを知ったユーザーが増えたわけですが、やはりGPSはデジタルカメラに内蔵されているほうが便利です。

 GPSがデジタルカメラに搭載されれば面白いことはわかっているのに出てこない理由は、値段です。どうしてもデジタルカメラの価格が上がってしまう。しかし、ドコモの903iシリーズやauのように、大量に販売される携帯電話にGPSが積まれるようになりましたから、GPSユニットは安くなるはずです。サイバーショットが全機種GPS付き、なんて展開は面白いでしょう。

 あと、ワンセグ搭載機という可能性も十分ありそうですね。電池の問題はありますけど。


LUMIX DMC-TZ1
──では、“純血家電メーカー”のパナソニックは。

 パナソニックで気になるのは、DMC-TZ1の後継機です。一眼レフのような形でなく、胸ポケットに入るコンパクトデジタルカメラ1台で、すべてをやろうというカメラです。屈曲光学系で高倍率とコンパクトなボディの両立をめざしましたが、ちょっと大きかった。それから、パナソニックは広角ズームに熱心ですが、屈曲光学系が挟まっているTZ1は広角にしにくい。高倍率ズームを維持しつつボディを小さくするのか、驚くような手法で広角を実現するのか、非常に楽しみですね。
( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/compact/2006/02/14/3207.html )

 できればDMC-L1も進化させて欲しいですね。とくに画質をワンランク向上させて欲しいですね。

 そして、デザイン。ここ数年、LUMIX系のデザインはほとんど変わっていない。それは一概に悪いことではありませんが、そろそろ別系統のデザインも見たいところですね。


カメラでどう楽しむのか、が重要になる

EXILIM Hi-ZOOM EX-V7
──カシオは光学手ブレ補正に高倍率の屈曲レンズ、H.264の採用など、意欲的な製品を米国で発表しています。( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/compact/2007/01/09/5330.html )

 そろそろカシオは「びっくり箱」が開いてもいい頃ですね。

 カシオは意外に通信に強いんです。通信と絡めたことをやりやすい会社なんです。ちなみに、QVシリーズを作った人は、今は携帯電話を作ってるんですよ。「QVシリーズの理想はケータイ」とまで言っていたくらいです。この人は「カメラを作りたいんじゃなくて、新しいものやみんなが喜ぶものを作りたい」とも言っています。


Photokian 2006でのリコーの予告
──先ほども出た高級コンパクトといえば、GR DIGITALのリコーですね。

 もうPhotokinaで予告していますが、GR DIGITALの後継機か上級機が期待できますね。APS-Cサイズのセンサーを積むシグマのDP1にも、刺激されていると思います。( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2006/09/30/4748.html )

 GR DIGITALは熱狂的なユーザーを獲得しましたが、やっぱり1/1.8型搭載機なわけです。これをそのまま1,000万画素にしても誰も喜ばない。フォーサーズやAPS-Cに行くしかないのでは。

 それから、通信機能付きデジタルカメラはリコーが元祖です。ただ、リコーの場合はビジネス向け展開になるでしょう。


DP1はデジタル一眼レフ「SD14」と同じAPS-Cサイズの撮像素子を搭載する
──そのDP1を発表したシグマはどうでしょう。( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/compact/2006/09/26/4672.html )

 DP1については、考え方はみな賛成してます。シグマはこれまで、デザインやボディのつくりで損をしてきました。Photokinaで発表したことで、この点についてはみんなに言われていますし、フットワークのいい会社ですから、ちゃんとして出てくるのではないでしょうか。発売日もちゃんと発表してませんしね。スタイリッシュなボディで出てきたら、いい高級コンパクトデジタルカメラになりますね。

 SD14も感触がとてもいいので期待しています。高級機に近い感触を持ったボディですよ。

 それから、レンズメーカーとしてのシグマにも期待しています。カメラメーカーはボディにかかりっきりで、なかなかレンズを出せない状況にありますから、シグマを始めとするレンズメーカーには大いに期待しています。レンズメーカーの中でも、手ブレ補正や超音波モーターを持っているのはシグマだけですから。

──最後に、2007年のデジタルカメラについて、まとめをお願いします。

 2006年は「今までの延長ではだめ」とわかった年でした。価格競争だけで生きていくのは難しい。2007年はデザインや操作性はもちろん、無線LAN、ワンセグ、GPSなども駆使して、「デジタルカメラってこんなに楽しいんだよ」といった提案がほしいですね。

 気がかりなのは、えてしてカメラメーカーはどうも新技術をカメラに積んだだけで満足してしまうことです。「どう楽しむのか」というところまでカバーできて、新しいデジタルカメラの世界は成立します。それには光学技術だけでなく、通信、放送といった技術も重要でしょうし、コンテンツも必要になるでしょう。“純血”カメラメーカーにも、どう楽しむのかまでカバーできる力をつけてほしいと思いますね。




本誌:田中 真一郎

2007/01/30 01:32
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