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【特別企画】デジカメ水中撮影超入門

~コンパクトデジカメ編

 近年はデジカメブームとともに、メーカーが用意する低価格な水中ハウジングが充実してきた。水中撮影時にカメラを守るハウジングは、装着すると光学ファインダーがすこぶる使いにくくなる。しかし液晶ディスプレイをファインダーとして利用できるコンパクトデジカメなら、水中マスクと水中ハウジングを通して撮影する場合でも、扱いやすい。

 まずは水中撮影の超入門ということで、コンパクトデジタルカメラを前提に、水中で撮影する場合の注意点やコツなどを取り上げてみることにしよう。


水中が地上と違うところ

 水中での撮影は地上での撮影と異なるポイントがある。まずは、その違いを把握するところから始めよう。


●水中では画角が狭くなる

 水と空気は屈折率が異なるため、水中では地上よりも物体が大きく見える。カメラでの撮影の場合、画角にして約1.33倍となるのだ。このため、ワイド系が弱いレンズでは、多少画角が狭く感じる事になる。

 コンパクト系のズーム機の場合、35mmスタートの設定が多いが、できれば28mmからのズーム機の方が使いやすい。

 レンズ交換式カメラの場合は自由度は高まるが、APS-Cサイズセンサー機の場合は、少々悩むことになる。レンズ選びに関しては、別の項で書くことにしたい。


枯れ葉のように見えるハダカハオコゼ。これを撮影した時は水がやや悪く、砂も舞っていた。こういう時は、ワイド端で可能な限り近づき、風景写真のように撮影するといい
●水中には浮遊物が多い

 透明度の高い海だと思っていても、被写体との間には意外に浮遊物が多いものだ。特に珊瑚の砂は軽く、ちょっとしたことでも舞う。もちろん、透明度の海ならばなおさら見通しは悪くなる。

 そこで、被写体には可能な限り近づくのが基本となる。もちろん、マクロ撮影の場合は近づきすぎると魚が逃げるため、ある程度の距離を取ったうえでテレマクロで撮影したいこともある。また、ワイド系では近づきすぎると意図した構図で撮影できないこともあるだろう。そのあたりのバランス感覚は、撮影しながら身につけていくとして、レンズと被写体の間にある水を減らすことは常にアタマの中に入れておきたい。


●最短撮影距離を重視

 マクロ撮影はもちろん、ワイド系でも近接撮影を行なうことが多い。たとえば崖のような地形の部分にクマノミの住むイソギンチャクを見つけたとしよう。これをワイドマクロで画面の角に入れつつ、海面の反射や透過してくる太陽を画角に入れたいといった場合、イソギンチャクになるべく近づいておいて、ワイドマクロでアオるように撮影したい。もしくは、小さな子どもの魚を見つけたら? もちろん、近寄って撮影したい。テレからワイドまで、均等にマクロ性能の高いカメラを選んだ方が、後々は使いやすいだろう。


カクレクマノミの子ども。ワイドマクロでもっと寄って撮影したいところだが、最短撮影距離の関係でこれがギリギリの拡大率(使用したのは私物のPowerShot S30)。近距離撮影の多い水中用には最短撮影距離も重要なスペック バラクーダの群れとギンガメアジの群れが混ざり合うところ、太陽の方向にアオリながらストロボ併用で撮影。良い例が無かったので、この写真だけフィルムカメラで撮影したものだが、ワイドマクロで被写体に寄りつつ、超広角で撮影というのが、誰でも簡単に迫力を出せる定番の手法

●ホワイトバランスの違い

 水中は長い波長の光ほど減衰が速い。このため、赤が急速に減衰し、緑が次に減衰。最後は真っ青になる。通常、オートホワイトバランス機能は水中でのホワイトバランスについて考慮されていないため、そのまま持ち込んでも安定したホワイトバランスは得られない。そこで水中ではホワイトバランスを昼光に固定して使う事が多い。

 ただし、昼光設定では浅い場所ほど緑の減衰量が少ないため、海のイメージから想像されるような、紺碧の海を映し出すことはできない。そこで勧めたいのが、昼光と蛍光灯の切り替えだ。ホワイトバランスを蛍光灯に設定すると、適度に緑かぶりを取り除いてくれるため、気持ちの良い青がきれいに出てくる。

 水中地形を撮影し、その背景を海らしい青にしたい、といった場合には蛍光灯、それ以外の場面では基本的に昼光にするというように使い分ける。一部のデジタルカメラには、シーンセレクト撮影で水中モードを備えているものもある。このモードでは、基本的に昼光を基礎にしているようで、やはり青をきれいに出したい場合にはホワイトバランスの使い分けをした方がいいだろう。


【オートホワイトバランス】 【昼光】 【蛍光灯】

 上の3枚はホワイトバランスによる色の違いを比較。オートで撮影すると、たいていの場合は強い緑かぶりとなる。昼光設定ならかなり自然になるが、やや緑がのっている印象。この写真では比較的かぶりが少なめだが、深さや水の状況によっては、もっと黄緑色が混ざったような色になる。これを蛍光灯にすると緑かぶりが抜けて、旅行カタログのような青に。


 もちろんRAWモードでの撮影が可能なカメラの場合は、RAWモードを使うことをオススメする。水中での撮影は失敗ショットが地上よりずっと多くなる。

 以前、プロの水中写真家のロールを見せて頂いたことがあるが、プロでもなかなかよい写真ばかりとはいかない。そんな中で、露出とホワイトバランスの両方を後処理で救えるRAWモードでの撮影は、可能ならば必ず活用するようにしたい。


ストロボの活用

 ホワイトバランスの違いでも書いたように、水中ではRGBが異なるバランスで減衰する。このため、本当は鮮やかな赤の被写体も、水中では真っ黒に見えてしまうものだ。たとえば真っ赤なイソバナは水中では、黒あるいは濃い赤紫に見える。しかし、そこにストロボの光を当てると本来の色が浮かび上がり、水中で実際に見るのとは違う風景が浮かび上がる。

 特にマクロ撮影においては、ストロボの活用は必須。浅瀬で自然光を使って雰囲気を残したいといった場合は別だが、近接撮影ではストロボは常に使うのがいいだろう。ただし、ここでも地上とは多少異なるノウハウが必要だ。


ダイビングをしていると、至る所で見かけるイソバナ。目で見ると、単に黒っぽくてきれいじゃないイソバナだが、ストロボの光を当てると本来の色が現れる ポンと軽くストロボを発光させ、小魚の群れに当てると、ちょっとしたアクセントに


●内蔵ストロボを使う場合

 ストロボが届く距離も、水中は地上よりもずっと短い。光の減衰がずっと大きいためだ。コンパクトカメラ内蔵のストロボ程度では、2~3m先の被写体にはほとんど届かないと考えた方がいい。

 また近接撮影が多くなるため、水中で利用できるディフューザーが装着できる、あるいは内蔵した水中ハウジングを選んでおきたい。もちろんホワイトバランスは昼光もしくはストロボモードに合わせておく。


●外部ストロボを使う場合

 水中ではいろいろな意味で、理想的な環境では撮影できない。レンズに近い位置から発光する内蔵ストロボでは、影が目立って思ったような撮影ができない場合も少なくない。もちろん光量不足という面もある。

 水中撮影の楽しさを経験したら、次のステップとしては外部ストロボの追加へと進みたいところだ。

 水中用外部ストロボは、通常、多関節のアームに取り付けて利用する。実際の撮影時には、関節を動かして光を当てる方向を変えたり、アームを伸ばして砂地全体を照らしてみたりと、いろいろ創意工夫をしながら撮影を楽しめる。

 コンパクトデジタルカメラとの連携は、内蔵ストロボの発光を光ファイバーで受けてスレーブ発光させる仕組みで行なう。通常、コンパクトデジタルカメラはプレ発光でTTL測光し、その結果をフィードバックして光量を決定するため2回ストロボが光るが、プレ発光に対応したデジカメ対応ストロボを使えば、ちゃんと2回目の発光で同期してくれる。

 水中ストロボの調光は、地上と同じようにマニュアル、調光センサー内蔵オート、TTL調光があるが、コンパクトデジタルカメラではTTL調光が行なえるシステムはない。従って、マニュアルか調光センサー内蔵オートのいずれかを選択することになるが、必ずしもオートが簡単とは言えない。

 調光センサー内蔵オートストロボでは、カメラの絞り値を設定しておけば、あとは自動的にストロボ側が調光してくれるわけだが、実は絞り設定値は地上での値で設定しなければならない。

 水中ではストロボからの光が水中を通り、被写体に反射して戻ってきたところを測ることになるため、ストロボと被写体の距離、水の状態などによって、かなり露出がオーバーになってしまう事がある。また、ストロボを当てる角度によって、微妙に調光センサーが拾う光の量が変化するため、そこでも露出が変わる要素がある。

 このため、少し慣れてくると、人によってはマニュアル発光の方が撮影しやすいと感じるだろう。このあたりは、人それぞれ、撮影者の好みにも左右される部分なので一概には言えないが、筆者ならばマニュアルを選択する。


鼻のヒラヒラと体色が特徴のハナヒゲウツボ。1灯ストロボを斜めから当てているため、岩陰と被写体の影が両方、強く出て失敗気味写真になってしまった。できれば2灯ストロボが欲しいところ こちらもストロボの当て方を失敗。セスジクマノミの左側からストロボが当たり、影になっている部分が暗く、緑かぶりで写っている。この場合は正面上方からストロボを当てると良かったかも? ただ、この場合もやはりストロボが2灯あればもっと簡単

では実際に撮影してみよう

 さて、ウンチクはこの程度にして、実際の水中ハウジングの紹介と撮影の実践に入ることにしよう。今回の撮影は、筆者がプライベートで行った沖縄県・慶良間諸島の座間味島で行なっている。

 利用したダイビングサービス「SEA STEP DIVERS」にご協力いただいて、同サービスを利用している水中デジカメは初めてというダイバーに、簡単にレクチャーしたあとに、自由に撮影してもらった。


慶良間諸島・座間味島には沖縄本島・泊港から高速艇「クイーンざまみ」で約1時間 実際にモニターしてもらっているところ。ん! もう少しストロボの位置を工夫して、体を回転させてから両手で持って……と、水中では口に出して伝えられないのがもどかしい。いや他人に指摘をかましている場合じゃないんだけど

 というのも、撮影旅行というわけではなく、多人数でガイドに従って潜る普通のファンダイビングのため、複数のカメラを取っ替えひっかえで撮影することができないからだ。筆者自身は別途レポートするデジタル一眼レフカメラを用いた水中撮影を行ない、コンパクトカメラは初めて水中デジカメを使う女性たちに使ってもらったわけだ。

 このため、紹介する写真も初めて水中でデジカメを使った人たちによるもの。彼女たちの実際の感想を交えながら、初めてでもそれなりに楽しめる水中デジカメの世界を感じてもらいたい。


●IXY DIGITAL 600+WP-DC70

 メーカー純正の水中ハウジングと言えば、オリンパスがもっとも積極的なことで広く知られ、手軽に使えるダイバーのためのアイテムとして高いシェアがある。その次というとソニー、それにキヤノンが続くといった印象だ。コニカミノルタやニコンも、やはり水中ハウジングを一部機種で発売している。

 その中から今回はキヤノンの「IXY DIGITAL 600」と純正オプションの「WP-DC70」をチョイスした。WP-DC70は扱いも簡単かつコンパクトで、すべての操作をハウジングのボタンから行なえる。しかもIXYのイメージとは裏腹に、このハウジング、なかなかマニアックでよくできている。


メーカー純正ながら、なかなかマニアックな作りのIXY DIGITAL 600用ハウジング。すべての操作がハウジングを装着したまま可能で、液晶ディスプレイフードやストロボのディフューザーも標準で添付されている


 実は筆者は個人的にキヤノン「PowerShot S30」用の水中ハウジングを所有しているが、当時は操作できないレバーがあったり、レンズ前のガラスが曇りやすかったりと、少々苦労したものだが、バージョンアップを重ねてなかなか使いやすいハウジングに仕上がっている。

 レンズ部分に脱着できるストロボのディフューザーが付属しており、レンズ鏡胴や液晶パネル部分はゴムパッキンで覆うような設計。これは水中に持ち込んだとき、内部の湿気が結露して曇るのを防ぐ工夫だ。液晶パネル部分にはゴム製のフードも取り付け可能で、晴天時の浅瀬でも液晶表示が見やすい。

 三脚座の穴もあるため、ここにストロボアームを取り付け、外部ストロボでの撮影を行なうこともできる。機能的な面での不満はない。なおIXY DIGITAL 600には水中モードがあるため、シーンセレクトで水中を選んで撮影してもらった。

 ひとつ不満点を挙げるとすれば、各ボタンの意味が見た目には区別できないこと。ボタン配置はカメラ本体と同じであるため、IXY DIGITAL 600の操作に慣れていれば問題はないとはいえ、水中という特殊な環境下では焦ってしまい、操作を間違えやすいものだ。

 とはいえ、カスタム製作すると6~10万円はする水中ハウジングがこの価格(20,790円)、しかも純正で、しかもここまで高機能ならば文句はない。

 この組み合わせで使ってもらったのは、東京から来ていた20代のダイバー歴約2年の女性2人。曰く「単純にシャッター押しただけですが、意外に使いやすかったですよ。水中で操作を忘れると大変だけど、もう何回か潜れば慣れると思いますよ。マクロ撮影でも結構、AFが合ってくれました」とのこと。

 個人的にはキヤノンのコンパクト機はマクロに弱い! という印象があるのだが、PowerShotシリーズにあるスーパーマクロモードをはじめ、ここ1年ほどで劇的に改善してきているように思う。PowerShot S30で経験したマクロの弱さは過去のモノかもしれない。これでテレ端の最短撮影距離がもう少し短くなり、37mm相当のワイド画角がもう少し広がってくれるとベストだろう。


○IXY DIGITAL 600サンプル

 “近づいて撮る”というのは、なかなか実践できないもので、モニターの女性も最初はコツがつかめなかったようだ。しかし意外にAFの効きはよいようで、近接してもさほど苦労せずにピントが来たとか。すべてシーンセレクトの「水中モード」で撮影している。絵もコントラストが強めで見映えはいい。





●SEA&SEA 8000G+DX8000G+YS-25 AUTO

 水中での撮影に特化した機材を開発しているSEA&SEAが自社ブランドで発売しているデジタルカメラが「SEA&SEA 8000G」。その中身はリコーの「Caplio GX8」と同じ1/1.8インチ824万画素CCDによるコンパクトデジタルカメラだ。実際に使ってみると、メニュー構成を含めGX8と同一で、特に水中カメラ用にカスタマイズされているわけではない。


SEA&SEAの「8000G」。デザインからも解るとおり、中身はリコーの「Caplio GX8」と性能や機能は全く同じ。公式にはサポートできないそうだが、当然、ハウジングはCaplio GX8でも利用できる 専用ハウジング「DX8000G」は、使いやすさが身上。すべてのボタンにマーキングがある。もちろん、曇り防止の工夫や液晶ディスプレイフードも装備。ディフューザーが内蔵式でレバー操作だけでオン・オフできる点と、光シンクロコードを簡単に取り付けられる構造になっているなど、専業メーカーならではの工夫も多い



 しかし、Caplio GX8のレンズは水中で使いやすい設定になっており、それをそのまま活かす形で、専用ハウジングとの組み合わせにより、扱いやすい水中デジタルカメラに仕上げている。ワイド端の画角は28mmのうえ、ワイド端では1cmのマクロ撮影が可能で、85mmのテレ端でも10cmまで寄ることができる。これは水中撮影において、大きなアドバンテージだ。ダイヤル設定で絞りを変更できる点も扱いやすく、10cmのテレマクロ時にも白飛びしない内蔵ストロボによる撮影が可能という点もいい。ひとつ残念な点を挙げるとすれば、RAWモードでの記録が行なえないことだろうか。

 これに組み合わせるDX5000Gは、レバーひとつでオン、オフが可能なディフューザーや、レンズ鏡筒と液晶ディスプレイをゴムパッキンで分離し曇りを防止する構造、それにダイヤル操作にも対応可能な点など、さすがに水中撮影機材専門メーカーと言えるだけの機能性がある。

 また各操作ボタンには、すべてボタンの意味を記したプリントがあしらわれており、ハウジングに収めた状態でも一目で操作ボタンを判別できるようになっている。さらに外部ストロボ用の光ケーブルを取り付けるカプラーが簡単に装着可能で、最大2灯分の光シンクロケーブルを取り付け可能だ。

 今回、エントリーユーザー向けにちょうどいい組み合わせのシステムアップ例をSEA&SEAに選んでもらったところ、コンパクトデジタルカメラ用の軽量アーム「シーアーム・ライト」と、小型オートストロボの「YS-25 AUTO」をセットで貸し出していただいた。YS-25 AUTOはガイドナンバー15の調光センサー内蔵ストロボで、小型軽量かつ2本の単三乾電池で動作する低価格モデル。光シンクロケーブルを経由してスレーブ発光する。

 メーカー側では「ストロボ照射角が広い上位機種YS-90 AUTOの方が、実は撮影は優しい。また、できれば2灯使いの方が光が回って、簡単に良い写真が撮れる」とのことだったが、エントリー向けとしては合計価格が高くなりすぎる、ということで、今回はベーシックなストロボとの組み合わせとなった。

 実際、水の中では慣れないと距離感が取りにくく、コツをつかまないとストロボをターゲットの方向にうまく合わせられない。YS-25 AUTOの照射角は90×80度(YS-90 AUTOは105×95度)となっており、初めて使う場合にはやや扱いにくいかもしれない。予算があるならば、YS-90 AUTOを組み合わせた方が無難だ。

 このモデルを使ってもらったのは、ダイバー歴10年ながらカメラ撮影の経験がなかった30代の女性。撮影を始めるまでに、ストロボの絞りダイヤル設定とカメラの絞り値を合わせることや、被写体との距離やその場の撮影結果をフィードバックしながら、ダイヤル位置をずらしながら最適値を覚え込むといったことを教えてみたのだが、さすがに初めてだと厳しい。

 実際のところ絞り値ではなく、発光量をマニュアルセットするYS-90DXの方がわかりやすかったかもしれない。「よく解らないので、絞り設定値は常にF2.8で撮影しました」とのことだが、結果オーライで何枚かは写真が撮れたようだ。


 撮影している様子を見てわかったが、やはりボタン類に意味がプリントされているのはキヤノン純正ハウジングと比べてアドバンテージがある。手軽なコンパクトデジタルカメラだけに、年に1~2度ぐらいのダイビングやビーチリゾートで使いたい、ということも少なくないだろう。そんなとき、あれどうだっけ? と操作を忘れてしまうこともあるかもしれない。

 また「近くまできちんとピントが合いました。ストロボの向きを失敗したりで、なかなか良い写真が撮れませんでしたが、もう1回、次の旅行で使えば憶えられそう」とのこと。実際、使ってみるとマクロの強さがありがたい。

 実際に水の中で撮影していると、他に考えることが多く、マクロモードのままで遠景を撮影しようとしてしまうことがあるが、本機のマクロモードは無限遠までAFでピントが合うため、マクロモードに入れっぱなしで使っても、あれっ? と悩むことがないのがいい。

 また、今回の撮影では使っていないが、ホワイトバランスブラケットを用いれば、RAW記録が行なえない弱点もある程度は補うことができる。さらに0.6倍のワイドコンバージョンレンズが発売されている点も心強い。17mm相当の画角が使えるようになるため、ワイドマクロに強い本機の長所をさらに引き出せるだろう。これだけシステムアップの可能性があるなら、個人的にも次はこちらを使って遊びたいところだ。

 ということで、今回は手軽にコンパクトカメラで遊ぶことをテーマに話を進めたが、次回は一眼レフデジタルカメラでの水中撮影へと話を進めていきたい。


○8000Gサンプル

 たくさんのマクロ写真を撮影してもらっていたのだが、いずれも惜しいことに、ストロボが少しづつ外れ、被写体が照らされていなかった。ということで遠景が多いが、キンメスカシの群れとウツボには光が来ていた。初めてだとストロボの光軸を合わせるのはなかなか難しい。照射範囲の広いストロボを選ぶのが得策だろう。なおウツボの写真のみトリミングしてある。





URL
  キヤノン
  http://canon.jp
  SEA&SEA
  http://www.seaandsea.co.jp/
  SEA STEP DIVERS
  http://www.f5.dion.ne.jp/~seastep/



本田 雅一

2005/08/24 01:22
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