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【New Kiss Digital活用講座】
鉄道写真編~小田急新型ロマンスカーを撮る


 色々な人が写真やカメラを楽しんでいるが、中でも鉄道を趣味とする人たちの情熱は熱い。という自分もいわゆる“鉄”で、車両を中心に撮り続けて既に40年が経つ。最初は身近な電車から撮り始め、高校生になってからは話題になっていたSLを追いかけた。当時はもちろんフィルムカメラで、愛用していたのはペンタックスSPという一眼レフカメラだった。

 民生用のデジタルカメラが発売されて10年が経つが、その発展ぶりには目を見張るものがある。特に昨年は10万円を切る製品がオリンパスやペンタックスから発売され、アマチュアカメラマンにとって一気に身近な存在になった。そんな中、低価格機の元祖、キヤノン「EOS Kiss Digital」も「EOS Kiss Digital N」(New Kiss Digital)にリニューアル。ちょうど発売とほぼ同じ3月19日から、小田急電鉄に新型ロマンスカーVSE(50000形)が走り始めたので、今回はこの小田急の電車を中心にKiss Digital Nを使ってみた。(写真と文・小山伸也)





鉄道写真とNew Kiss Digital

 Kiss Digital Nの魅力は何といってもボディのみで10万円、レンズキットで12万円を切る価格だろう。その上でCMOSイメージセンサーが初代Kiss Digitalの約630万画素から約800万画素へ、映像エンジンが「DIGIC」から「DIGIC II」へと代替わりしたことが大きい。

 そのほか、約3コマ/秒で14コマの連続撮影や、約0.2秒の高速起動、スーパーインポーズ付き7点測距AF、ホワイトバランス補正やホワイトバランスブラケティング機能の搭載など、上級機種譲りの魅力的なスペックが光る。鉄道写真にどう生かせるか楽しみだ。

 使用レンズはキヤノンの「EF-S17-85mm F4-5.6 IS USM」、「EF75-300mm F4-5.6 IS USM」、タムロンの「SP AF17-35mm F2.8-4 Di LD Asperical[IF]」の3本。鉄道車両は車体幅が約3m、高さは車輪からパンタグラフの最高部までが4~5mある。そして列車の全長は、120~200mと蛇のように長く、望遠レンズの圧縮効果を積極的に使いたい被写体だ。このあたりのポイントをご理解いただいた上でご覧いただきたい。


キヤノンEF-S17-85mm F4-5.6 IS USM(正面) キヤノンEF-S17-85mm F4-5.6 IS USM(左側面)

キヤノンEF75-300mm F4-5.6 IS USM(正面) キヤノンEF75-300mm F4-5.6 IS USM(左側面)

タムロンSP AF17-35mm F2.8-4 Di(正面) タムロンSP AF17-35mm F2.8-4 Di(左側面)




まず小田急について

 小田急といえば、老若男女を問わず箱根に行くロマンスカーを思い浮かべるだろう。小田急のロマンスカーは、1両の車体長を通勤用車両の約6割程度に抑え、車体と車体の間に台車を配した連接構造が特徴だ。サービスはJRの特急列車以上でありながら、新宿から箱根湯本まで乗っても特急料金は870円で、運賃と合わせても2,020円と安く、約80分間を堪能できる。

 ロマンスカーは昭和の初めに誕生し、一躍有名になったのは3000形で、連接構造に朱色とグレー塗装が今までの特急用車両にはないデザインで注目された。高性能なので東海道新幹線の検討のために145km/hを試験運転で記録するなど、その歴史は華々しい。次いで'63年に登場した3100形では運転席を2階に上げ、先頭部に客席のある展望車スタイルで登場し、小田急ロマンスカーの地位を不動のものとした。その後、7000形、10000形と展望車が続いたものの、20000形、30000形では展望車方式が廃されていたが、今春に50000形で復活。3000形と3100形は既に廃車され、現在では7000形以降の5形式が走っている。

 もうひとつ、小田急は名だたる通勤路線でもある。白い車体にブルーの帯を巻いた4扉の小田急スタイルが特長だったが、最近の新車はステンレス車体となり、マットな銀色に同じく青い帯を巻いている。その白い車体の電車は製造後すでに18~35年を経ており、ここ数年のうちにほとんどが新車に置き換えられると聞いている。

 路線は小田原までの本線(小田原線)に、藤沢や江ノ島に行く江ノ島線と多摩ニュータウン(終点は唐木田)に向かう多摩線があり、また代々木上原からは地下鉄千代田線へ乗り入れている。





新型ロマンスカーを撮る

 新型ロマンスカー50000形は昨年11月に製造され、昨今では珍しく発表会が開かれた。また今年の2月には試乗会もあるなど、小田急の熱い思いが感じられる。筆者も両方に参加し、50000形とは3回目のご対面だ。今回は新宿から箱根湯本まで乗るつもりでいたが、平日にもかかわらず大人気で満席だった。というわけで、そのあとに発車する最古参の7000形に乗車したが、サービスはほぼ同じ内容だ。

 まず撮影したのはロマンスカーの終点、箱根湯本駅に進入してくる新型ロマンスカー50000形。季節がもう少しあとなら、背景にもっと緑が多かったはずだが、あいにく今年の春は遅くちょっと寂しかった。箱根湯本駅の特急ホームの先端に立ち、ゆっくり入ってくる列車をカーブで1カット、直線区間で1カット、ホーム直前で1カットと3カットの予定だった。

 カメラのセッティングは、評価測光、絞り優先AE、ワンショットAFを使ったが、操作系は従来のKiss DigitalやEOS 10Dなどとほぼ同じなので迷うことはなかった。キヤノンの評価測光は定評あるが、最近の電車のヘッドライトは強力なプロジェクションタイプでなおかつ昼間でも点灯しており、影響を受けることもある。

※作品のリンク先は撮影画像をコピー後、リネームしたものです。縦位置で撮影した画像も横位置で表示します。

※キャプション内の撮影データは使用レンズ / 画像解像度(ピクセル) / 露出モード / ISO感度 / 露出時間 / 絞り値(F) / 露出補正値(EV) / ホワイトバランス / レンズそのものの焦点距離(mm)です。

※ホワイトバランスはすべてオートです。現像パラメータ1(コントラスト、シャープネス、彩度すべて+1)に設定しています。


 ●箱根湯本駅に進入する新型ロマンスカー50000形


EF75-300mm F4-5.6 / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 200 / 1/2,000秒 / 5.6 / -0.5 / 105
 最初のカットは、ロマンスカーの先頭部を画面の半分程度入れて撮影したが、白い車体とヘッドライトの影響か、若干アンダーになった。

 箱根湯本で撮影したのはかれこれ20年くらい前。架線(電車が電気を取り込む電線。レールの上5mくらいのところに張られている)を支える支柱が、いつのまにかそれまでの片側1本から両側2本になり、車両のサイドビューはNG。3カット予定していたが、最後のホーム直前に迫ったものだけを選んだ。

 こういうときズームレンズは便利で、単焦点レンズではレンズ交換に焦って上手く撮影できないことが多い。ピントはAFだが置きピンで、枕木に合わせてフォーカスロックした。





風景を入れる

 鉄道写真の中心はやはり車両だが、カッコイイ車両は風景の中に置きたい。撮影は4月1日から3日にかけて実施。当初、桜をバックにと考えていたが、開花が遅目だったため、予定していた「桜の下を走るロマンスカー」は企画倒れとなってしまった。残念。

 筆者の場合、列車など動いているものでも絞り優先AEを使う。理由は被写界深度で、細かく分けると2つある。ひとつは主要被写体である列車と背景の関係で、列車にピントを合わせたときに背景のボケ具合をどのくらいにするかを考える。背景が好みでないときは、絞りを開放側にもっていき、何だかわからないようにぼかしてしまう。背景を活かしたいときはF8あるいはF11を使い、背景をある程度見せるようにする。

 もうひとつは列車の撮り方そのもので、正面だけにピントを合わせていればよいときは開放側にセットし、後ろの車両にも多少ピントが欲しいときはF8あるいはF11に絞る。

 もちろんシャッター速度も意識していて、列車が高速で通過する場合は被写体ブレを抑えるために明るくし、また手持ちの場合は手ブレを防ぐため、1/250~1/500秒が得られるように絞りを開ける。

 つまり、「鉄道写真=シャッター速度優先」とは決めていない。あくまでも絵作り中心で、被写体の動き・背景・明るさの要素を考えて露出値を決めている。筆者にとってそれらを具現化するのに合うのが絞り優先AEというわけだ。

 筆者は絞り優先AEで、さらに露出補正を多用するが、傾向としてはマイナス補正が多い。他のキヤノンボディではサブ電子ダイヤルで補正するが、EOS Kiss Digital Nでは、サブ電子ダイヤルが省略されているので、露出補正は背面のAV±ボタン(絞り数値/露出設定ボタン)を押しながら電子ダイヤルを操作する。

 同じくマニュアル露出時の絞り操作もAV±ボタンを押しながら操作する。カメラを持ちながら同時に親指と人差し指を使うのは一抹の不安があるので、慣れないうちは左手でカメラをしっかり保持した状態で操作したい。


 ●秦野~東海大学間を行く30000形ロマンスカー


EF75-300mm F4-5.6 / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 200 / 1/750秒 / 8 / -0.5 / 125
 東海大学駅~秦野駅の間にあるトンネルの上で、ここも大昔に訪れた場所である。ここでは俯瞰といわれる見下ろす撮影をした。菜の花にピントを合わせ、30000形ロマンスカーの方はややピントを外した形で撮影した。

 都会の列車や都市間を結ぶ列車は、何両も連結しており、小田急線もほとんどが6~10両編成で、長さは120~200mになる。上から列車全体を入れて撮影するには、縦位置の方が不要な被写体を入れないで済むので好都合だ。


 ●多摩川橋梁を渡る7000形ロマンスカー


SP AF17-35mm F2.8-4 Di / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 100 / 1/750秒 / 5.6 / -0.5 / 21
 小田急線の高架複々線化は、多摩川を渡って登戸駅まで行われる。その工事の関係でこのあたりの風景は一変してしまった。

 30年以上昔のTVで「岸辺のアルバム」という番組でよく出てきた場所だが、その面影はない。広角レンズを使って、小田急線、空、多摩川など全部を入れて撮影した。「休日の午後」がテーマだ。





基本は駅撮りだが注意も必要

 鉄道写真を手軽に楽しむには、ホームからの撮影が良い。通過列車ではなく停車列車なら、ゆっくりと構図を確認しフォーカシングや露出補正もして撮影できる。特に相対式ホームといって、上り線と下り線のホームが別々の場合は、下り列車であれば上りホームから撮影すると誠に都合がよい。

 ただ注意しなければいけないのは、撮影に集中していると後ろからくる電車に気が付かないことだ。撮影者が大丈夫と思っても、運転士が危ないと思えば非常ブレーキをかける。本人に何もなくても、一度止まった列車には遅れが出て、多くの人に迷惑をかける。もちろん、列車に触れてしまえば怪我で済まないこともある。

 ホームで撮影するときは、できるだけ目立つ服装をして運転士から見やすくすること。もし警笛などが聞こえたら、どんなときでも撮影をやめること。また通過列車など撮影しない列車でも、必ず安全な位置から先頭部を見ていること。などなど、撮影より安全を最優先するのは当たり前のこと。ひとたび事故が起きればホームで撮影できなくなることはいうまでもない。

 もちろんマナーも大切。乗り降りする人に迷惑がかからないようにホーム端で撮影し、ホームが短い、あるいは狭いところでは撮影しない。また自分のゴミは必ず持ち帰るなどは基本的なことだ。


 ●生田駅に停車中の2000形各駅停車


EF-S17-85mm F4-5.6 / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 200 /1/125秒 / 8 / -0.5EV / 50
 鉄道写真の基本といえるパターン。50~100mm程度のレンズを使う。作例では7点あるフォーカスフレームのうち右から2番目を使用した。もし中央を使って先頭部を写真の真ん中にもってくると、右側が大きく開いてしまい無駄になる。

 またステンレス車体の車両は、露出補正を使うと印象が大きく変わり、好みでマイナス側に補正している。そうすると全体的に金属感が出るようだ。


 ●和泉多摩川駅を発車する3000形各駅停車ほか


EF75-300mm F4.5-5.6 / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 200 / 1/125秒 / 6.7 / -0.5 / 300
 広々とした複々線区間では、たくさんの列車を撮影できる。和泉多摩川と狛江間はわずか数百m。また背景に空ではなく山を入れられるので、こんな逆光状態でもさまになる。焦点距離300mmでは圧縮効果が高く、長い列車でもご覧の通り撮影できる。


 ●代々木上原駅で並ぶ東京メトロ6000系とJR203系


SP AF17-35mm F2.8-4 Di / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 200 / 1/180秒 / 5.6 / -0.5 / 17
 小田急線内では、小田急のほかにJR東日本、JR東海、東京メトロの電車を見ることができる。JR東日本の車両は常磐線~千代田線を経てこの代々木上原駅にきて折り返すので、小田急線内には乗り入れない。しかし東京メトロは、唐木田まで相互直通運転で乗り入れてくる。





夕方から夜にかけて

 鉄道写真において、ストロボを使った撮影は、昼夜を問わず運転士に大きな負担をかけるので絶対してはいけない。もちろん列車の長さなどからストロボ光が有効にならず、使ってもよい結果は得られない。それよりもロングタイムシャッターを上手く使っていろいろな効果を得る方が、はるかによい写真が得られる。

 鉄道には信号機(赤、黄、緑)、車両の前照灯や尾灯、その他の合図に使われるさまざまなランプがあり、さらにビルや家の明かりもある。つまり夜でも鉄道撮影は可能で、特に今回のKiss Digital Nのように、ローノイズ化が格段に進歩したカメラはお奨めだ。

 ロングタイムシャッターを使った撮影には三脚が必須だが、鉄道撮影においては少し注意を要する。電車など箱と呼ばれる人載せる車両でも20~50t、カマと呼ばれる機関車になると50~100tもある。これが鉄のレールの上を走っていくわけだから、振動が発生する。三脚を立てた位置がいくら固いコンクリートのホーム上であっても振動は伝わり、まして高架上のホームなどではなおさらだ。

 線路の近くで三脚を使って撮影するときは、昼夜を問わず振動に注意しなければならない。抑えることは不可能なので、列車が近くを通っていないときを狙ってシャッターをレリーズするしかない。

 今回の撮影では、昼間でISO200、夕方から夜間にかけては400~1600での撮影を中心にした。少しでも速いシャッター速度を使いたかったためで、フィルムと違ってコマ単位で感度を調整できるデジタルカメラは、撮影時間を大幅に増やしてくれる。


 ●代々木八幡駅を進入するJR東海371系


EF75-300mm F4.5-5.6 / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 1600 / 1/125秒 / 5.6 / -0.5 / 110
 小田急線と御殿場線は途中の新松田駅付近で線路がつながっており、特急「あさぎり」は新宿から乗り換えなしで沼津に行ける列車だ。小田急は20000系ロマンスカー、JR東海は371系をこの「あさぎり」に充当しているので、小田急線内でJR東海の車両を見ることができる。周囲は暗くなってきていたが、感度を1600まで上げて撮影。ノイズは少ない。


 ●新宿へ向かう9000形


EF75-300mm F4.5-5.6 / 3,465×2304 / 絞り優先AE / 1600 / 1/125秒 / 5.6 / -0.5 / 110
 いよいよ暗くなってきた18時33分に撮影したのがこの写真だ。本当はこちらに向かってくる下り列車を狙っていたが、ヘッドライトが強すぎて絵にならなかった。そのためケツウチと呼ばれる列車の後部を撮影。各種信号機やビルの明かり、さらにはレールに反射する光が入り交じり何ともいえない雰囲気を出してくれる。





使用レンズごとの作例

 ◆EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM


EF-S17-85 F4-5.6 / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 200 / 1/90秒 / 8 / -0.5 / 17
 EOS 20Dと同時に投入されたデジタル専用レンズ。焦点距離17-85mmは35mm判換算で28-135mmに相当する。使いでのあるものだ。

 作例の箱根湯本駅のホームは狭いうえにやや暗い。三脚を使うわけにいかないので、手持ち撮影をした。シャッター速度は1/90秒であったが、手ブレなく撮影できた。しかし、車体の白い部分とドアの黒い部分の境界線や、赤帯の下にある細い黒帯の境界線に偽色が発生しているのが気になる。


 ◆EF75-300mm F4-5.6 IS USM


EF75-300mm F4.5-5.6 / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 200 / 1/500秒 / 6.7 / -0.5 / 75
 特に新しいわけでもなく、またデジタル用ともいわれていない。しかし手ブレ補正機構やUSMを搭載していながら、標準価格が10万円を切るお値打ちレンズだ。鉄道写真に望遠レンズは必須だが、少しでも安いものをと思って使ってみた。Kiss Digital Nで使用しても特に違和感はない。

 最広角側なら、複々線区間で作例のように撮影できる。もし鉄道撮影のためにレンズを1本だけ選ぶとすれば、広角側が75mm前後で望遠側が200mm以上あるズームレンズだろう。

 作例は最古参となった5000形通勤車。撮影した和泉多摩川駅は、複々線で中2線が急行線でその外側に緩行(各駅停車)線があり、ホームからの撮影がしやすい。5000形の最も古い車両は既に35年以上も活躍しているが、あと数年で確実に廃車されるので、撮影するなら今のウチだ。


 ●SP AF17-35mm F2.8-4 Di LD Asperical[IF]


SP AF17-35mm F2.8-4 Di / 3,465×2,304 / 絞り優先AE / 100 / 1/180秒 / F11 / -0.5 / 22
 レンズメーカーのタムロンから発売されているデジタル対応の「Di」レンズ。手ブレ補正もなく超音波モーター駆動でもないが、光学系に優れた広角ズームレンズだ。

 作例はJR東海区間に乗り入れる20000形ロマンスカー。動感を表現するため流し撮りを試みた。そろそろ来るころと思い時計を確認していると、音もなくやってきた。もう一段シャッター速度を遅くしておくべきだった。





まとめ―EOS Kiss Digital Nを使ってみて

 Kiss Digital Nを試用して最も気に入ったのは、ISO感度を上げてもノイズがよく抑えられていること。夕方の撮影で、シャッター速度を高くしたいときにノイズを気にすることなく撮影できる点は高く評価したい。

 あと、電池が圧倒的に持つ。今回は、バッテリーを2個搭載できるバッテリーグリップ「BG-E3」を使ったためもあるが、500カット近く撮影しても電池マークはフルのままだった。気温も高く、ストロボも使わなかったので長持ちする条件とはいえ、これはたいしたものだ。電池は720mAhのNB-2LHで、EOS 20DなどのBP-511と比べると大きさとともに容量も小さくなったが、省電力設計が功を奏して長持ちで安心して使える。


BG-E3装着時のKiss Digital N BG-E3操作部 BG-E3の電池ケース

 なお、縦位置撮影は横位置撮影に比べて手ブレを起こしやすいが、今回試用した縦位置グリップ「BG-E3」を使うと改善される。バッテリーも2個収納でき、また単三電池が使用可能となるのも見逃せない。シャッターレリーズボタン以外に電子ダイヤルなどの操作部も付いている。

 操作性も問題ない。サブ電子ダイヤルの有無はあるものの、キヤノンの各モデルとほぼ共通の操作性といえる。ただし、他機にある上面右側の液晶パネルが背面に移設され、その部分にモードダイアルが配置された。その結果、上面左側にはストラップ取り付け部ぐらいしか存在しない。逆に背面は賑やかになったが、迷うことは少ないだろう。

 もちろんストレスのない連写性能や、0.2秒での起動などもあるが、こちらはフィルムカメラに追いついただけだと思っている。


軍艦部左側 背面

 逆に気になったところは大きさだ。持ち運びなどを考えると小型軽量化はよいのだが、自分にはグリップが小さすぎて持ちにくかった。女性など手の小さな撮影者にはぴったりかもしれないが、男性にはどうかと思う。また軽いので、少々大きなレンズを装着するとバランスが悪くなる。

 もうひとつは、フィルムカメラを含めてAFカメラに共通することでもあるが、ファインダーがどうも見づらい。AFだからという割り切り方も考えられるが、やはり倍率も視野も大きくし、もっと見やすくピントの山も掴みやすいものがほしい。

 とはいえ、Kiss Digital Nはスペック以上に優れたデジタル一眼レフカメラといえる。現在、EOS 10Dを試用しているが、最高速度で表現すると80km/hの普通電車から120km/hの特急電車に乗り換えたようだった。

※初掲載時、新宿~箱根湯本の特急料金を680円としていましたが正しくは870円です。また、初掲載時に東京メトロから本厚木への乗り入れが行なわれているとの内容を記述していましたが、現在行なわれていません。お詫びして訂正いたします。



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報(EOS Kiss Digital N)
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissdn/
  製品情報(EF-S17-85mm F4-5.6 IS USM)
  http://cweb.canon.jp/ef/lineup/ef_s/ef_s17_85_f4_56/
  製品情報(EF75-300mm F4-5.6 IS USM)
  http://cweb.canon.jp/ef/lineup/tele_zoom/ef75_300_f4_56/
  製品情報(SP AF17-35mm F2.8-4 Di LD Aspherical[IF])
  http://www.tamron.co.jp/data/af-lens/a05.html
  小田急電鉄
  http://www.odakyu-group.co.jp/
  ロマンスカー情報
  http://www.d-cue.com/romancecar/



小山 伸也
中央大学理工学部卒業後、オーディオメーカー、カメラメーカーを経て2002年春にフリーになる。カメラ雑誌で写真やカメラの解説、鉄道や航空雑誌で車両や航空機の解説など幅広く活躍している。カメラメーカー勤務時には日本カメラショーなで講師を務めていた。1955年生まれ東京都出身。

2005/04/28 00:52
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