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【新製品レビュー】ミノックス「DSC Digital Spy Camera」
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~あの“スパイカメラ”がデジタルで登場
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Reported by
中村文夫
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ミノックスはバルト海に面したラトビア国のリガで1936年に誕生した9.5mm幅のフィルムを使う超小型カメラだ。第二次世界大戦を挟んで、生産拠点がドイツに移動。現在でもTLX、ECXの2機種の生産が続けられている。
ミノックスは誕生当時から、スパイカメラと称されてきた。本物のスパイが実際の諜報活動に使ったかは別にして、手のひらに収まるコンパクトさと洗練されたデザインは、まさにスパイの持ち物にぴったりだ。さらにプッシュ&プル方式のフィルム巻き上げ、ボディを横に引っ張ると現れるファインダーと撮影用レンズ、本体上面にレイアウトされたダイヤルなど、優れた操作性とデザイン的な美しさを両立。撮影を楽しむだけでなく所有する喜びも味わえる超小型カメラの決定版だ。
今回レポートするミノックスDSC(Digital Spy Camera)は、このミノックスの伝統を受け継いで誕生した超コンパクトデジタルカメラだ。写真を見れば分かる通り、ミノックス特有の箱形スタイルを踏襲。撮影用レンズや光学ファインダー、ボディ上面にあるモードダイヤルなどのレイアウトも、オリジナルそっくりだ。もちろんカメラを両手で支え、双眼鏡を覗くように顔の前に構える撮影スタイルも同じ。スパイになったような気分が手軽に味わえる。
DSCはカメラ本体と外付け外部モニター/ストロボユニットで構成される。カメラ本体には撮影するための最小限の機能を凝縮。メインスイッチをオンにして撮影モードをダイヤルで選択、光学ファインダーで構図を決めシャッターボタンを押すだけで撮影できる。
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Digital Spy Camera
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パッケージ
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1958年に発売されたミノックスB型。ボディ内に追針式の露出計を内蔵している。9.5mm幅のロールフィルムを使用し、ボディのプッシュ&プル操作でフィルムを巻き上げる。レンズの絞りは開放固定で、シャッタースピードと内蔵NDフィルターで露出を調整。ピントは目測式だ。DSCはこのカメラのデジタル版として誕生した。(機材協力:カメラのきむら日本橋店) |
DSC(左)とミノックスB型(右)の上面。B型のピント合わせダイヤルが、DSCでは撮影モード切り替えダイヤルになっている |
■ シンプルな撮影機能
撮影機能はとてもシンプルで、各設定はカメラ任せが基本。露出はAEのみ、ホワイトバランスはオート、ピントは1メートル以遠がシャープに写るパンフォーカスだ。またテクニカルデータのシャッタースピードの項目には、単に「自動」と記載されているが、正確には絞り優先AEだ。ただし絞りは開放固定でシャッタースピートを変えて露出を調節している。さらにISO感度についても記載はないが、今回撮影した画像のExifデータを見る限りISO100固定のようだ。また時計機能を内蔵していないので撮影時刻はExifに記録されない。
レンズはオールガラス製の4枚構成。焦点距離は8.7mmで35mm判に画角を換算すると42mmに相当する。レンズ開放F値は3。絞りは非内蔵で常時開放で撮影する。なお、Exif情報だと開放F値は2.8で、ドイツ本社のホームページに記載されたテクニカルデータにもF2.8と記載されている。
シャッターはいわゆるローリング式で、ラインごとに順次露光してゆくタイプ。機械式シャッターを内蔵していないので、露光中にカメラが激しく動いたり高速で移動する被写体を撮影すると像が歪むことがある。シャッタースピードは非公表だが、今回撮影した画像では、1/4~1/5,800秒の間でシャッターが切れていた。
イメージセンサーのサイズも公表されていないが、レンズの焦点距離と画角から推測すると1/3インチクラスの小型センサーが使われていると思われる。また有効素数は500万だが、実装されているCMOSセンサーの画素数は320万画素で、画像補間によって記録画素数のアップを図っている。また動画モードは640×480ピクセルで記録される。
電源は充電式リチウムイオン電池で、USBケーブルを接続して充電するタイプ。電池はカメラ本体に内蔵されており自分で交換できない。そのため予備電池を持ち歩くことができず、ちょっと不便だ。記録媒体はmicroSDカードでmicroSDHCメモリーカードにも対応。最大16GBまでのメディアが使用できる。また本体に128MBのフラッシュメモリーを内蔵。メディアがなくても約37カットの記録ができる。
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レンズの焦点距離は8.7mmで、画角は35mm判の42mmに相当。ピントはパンフォーカス式で、1メートル以遠がシャープに写る
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カメラ本体には、逆ガリレオ式の光学ファインダーを内蔵
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記録メディアはmicroSDカード。microSDHCカードにも対応し、最大16GBのメディアが使用可能。カメラ本体サイドのカバーを外して装填する
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■ モニターとストロボは外付け式
一般的なコンパクトデジカメは、カメラ本体に液晶モニターやストロボを内蔵しているが、DSCではこれを分離することでカメラ本体の小型化を図っている。モニター/ストロボユニットの取り付け方法は、ボディサイドどうしを押しつけ底部のスイッチをスライドさせるだけ。IOポートを兼ねたジャックと樹脂製のフックによって固定される。ただしモニター/ストロボユニットを取り付ける際は、カメラ本体からストラップを取り外さなければならず、モニター/ストロボユニット使用時はストラップが使えなくなる。
モニター/ストロボユニットは、ユニット側のスイッチのオン/オフに関係なく、カメラ本体に取りつけるだけで外付けストロボとして機能。カメラ本体の△ボタンを押すとストロボスイッチがオンになる。ガイドナンバーは、12(ISO100・m)と光量は十分だ。ストロボは低輝度時に自動的に発光するモードのみで強制発光はできない。電源はユニット側に充電式リチウムイオン電池を内蔵。カメラ本体と同様、自分で交換はできず充電も専用ケーブルを介して行なう方式だ。なお電池容量の関係で、場合によっては充電時間が30秒ほど掛かることがある。
モニター/ストロボユニット上面のスライドスイッチをオンにすると、モニターに画像が現れ、ライブビューで撮影ができる。モニターは固定式なのでウェストレベル撮影専用。カメラを顔の前に構えることなく、さりげなく撮影できる。もちろんモニターで撮影画像が確認できるほか、カメラ本体の△▽ボタンを操作すれば、メディアのフォーマットや電源オートオフ時間の設定などができる。
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カメラ本体にモニター/ストロボユニットを取り付けた状態。モニターを見ながら撮影するときはウェストレベルにカメラを構える
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モニター/ストロボユニットの裏面にあるロックレバーをロックの方向にスライドさせるとユニット側がらIOポートを兼ねたジャックが飛び出し、カメラ本体と固定される
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カメラ本体とモニター/ストロボユニットの取付部
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モニター/ストロボユニットを充電する場合は、ジャックに専用コードを接続する
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カメラ本体、モニター/ストロボユニットとも、付属のACアダプターあるいはUSB経由で充電する
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充電中は緑色のLEDが点灯
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■ まとめ
作例を見れば分かる通り、このカメラで撮影した画像は、一般的な製品に比べると決して高画質とは言えないが、Lサイズ程度にプリントするには十分な画質だ。とにかく、このカメラのコンセプトは、伝統あるスパイカメラ、ミノックスをデジタルで蘇らせたこと。高画質や使いやすさなどを追求するのではなく、あくまでも撮影スタイルを楽しむためのカメラだ。
いずれにしても70年以上を誇るミノックスの歴史に新しいページが開かれたことは確か。新機能や性能の高さが高く評価される昨今のデジカメ市場において、「こんな遊び心に溢れたカメラが1台くらいあってもよいのでは?」と思わせる珠玉の一台と言えるだろう。
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モニターに4つのサムネイルを表示させた状態。このほか1画面&ズーム、9サムネイル、スライドショーで撮影した画像が表示できる
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蛍光灯下でフリッカーによる影響を避けるため、周波数を設定するメニューがある |
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DSCにチェーンストラップを取り付けた状態
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ミノックスB型とチェーンストラップ。近距離撮影時にメジャーとして使うための印が突いている
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DSCとモニター/ストロボユニットの専用ケース。ストラップ、ケースともオリジナルのデザインにそっくりだ
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●作例
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
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Digital Spy Camera / 約2.4MB / 2,560×1,920 / 1/2,242秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.4MB / 1,920×2,560 / 1/1,720秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.4MB / 2,560×1,920 / 1/2,242秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.0MB / 2,560×1,920 / 1/257秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.4MB / 2,560×1,920 / 1/280秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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順光だとクリアに写るが、逆光に弱くフレアが発生しやすい。
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Digital Spy Camera / 約2.3MB / 1,920×2,560 / 1/1,879秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.3MB / 1,920×2,560 / 1/1,028秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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カタログスペックでは、1m以遠にピントが合うことになっているが、実際にはもう少し被写体から離れて撮影した方がよいようだ。
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Digital Spy Camera / 約2.4MB / 2,560×1,920 / 1/23秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.4MB / 2,560×1,920 / 1/59秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.4MB / 1,920×2,560 / 1/140秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.3MB / 1,920×2,560 / 1/3,170秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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Digital Spy Camera / 約2.3MB / 1,920×2,560 / 1/42秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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撮影中にカメラが動いたり、動きの速い被写体を撮影すると、被写体の形が変形する現象が起こる。この性質を上手く利用すると面白い効果が出せるだろう。
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Digital Spy Camera / 約2.2MB / 1,920×2,560 / 1/5,807秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)
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■ URL
駒村商会
http://www.komamura.co.jp/
製品情報
http://www.komamura.co.jp/minox/DSC.html
■ 関連記事
・ ミノックス、「DSC Digital Spy Camera」を国内発売(2009/01/30)
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中村文夫 (なかむら ふみお)
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。 |
2009/02/24 00:59
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