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【新製品レビュー】キヤノン MEDIA STORAGE M80

~EOS Digitalとの親和性
Reported by 本誌:織原 博貴

MEDIA STORAGE M80
 キヤノン初の液晶モニター搭載型フォトストレージ「MEDIA STORAGE M80(以下、M80)」が発売された。価格はオープンプライスだが、店頭価格は8万円前後。3.7型TFT液晶、HDD容量80GB、CF用とSDHC/SDメモリーカード用の2種類のメモリカードスロット、PictBridge対応プリンタで撮影画像をプリントできるなど、近年の液晶モニター搭載フォトストレージとして平均的なスペックを備える。

 しかし、本機の製品特徴を求めるならば、注目するべきはスペック以外のところにある。それらは何よりもスペック表には直接に現れない、操作性と拡張性に見られるからだ。フォトストレージとしては、かなり特徴的なM80のコンセプトを説明するために、共に3,000万画素JPEGの表示を可能とするライバル機であるエプソン「Multi Media Storage Viewer P-5000(以下、P-5000)」と比較しながらレポートしたい。


EOS Digitalユーザー向けフォトストレージ

視野角160度の高輝度・広視野角3.7型TFT式カラー液晶モニターを搭載
 M80は、キヤノンがEOS Digital用にデザインしたと思われるフォトストレージ。HDDの両サイドをゴムカバーで保護するなど、耐衝撃性の向上を図り、衝撃吸収率は約50%を実現したという。対応メモリーカードはCF、Microdrive、SDHC/SDメモリーカード、MMC。HDDの容量やメモリカードスロットの数と種類に関しては、ライバル機のP-5000とまったく同等。液晶モニターは、M80は高輝度・広視野角の3.7型TFT式カラー液晶モニターで視野角160度、P-5000は4型透過型低温ポリシリコンTFT液晶でAdobe RGB対応だ。


 M80は、静止画形式として、3,000万画素までのJPEG、TIFF(TIFF-RGB)、キヤノン製デジタルカメラのRAW形式の表示に対応する。カタログに記載されているRAWデータ対応機種は、EOS-1Ds Mark II、EOS-1D Mark III、EOS-1D Mark II N、EOS-1D Mark II、EOS 5D、EOS 30D、EOS 20D、EOS 10D、EOS D60、EOS D30、EOS Kiss Digital X、EOS Kiss Digital N、EOS Kiss Digital、PowerShot G6 、PowerShot S70、PowerShot S60の16機種。また、動画ファイル形式では、Motion JPEG、MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4の4種類、音声ファイル形式はMP3、WAVEの2種類に対応する。


Multi Media Storage Viewer P-5000
 P-5000は、静止画形式は3,000万画素までのJPEGと、キヤノンを含めた多くのメーカーのRAW形式の表示に対応する。また、動画ファイル形式は、Motion JPEG、MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4、DivX、H.264、WMV9の7つ、音声ファイル形式はMP3、AAC、WMAの3つに対応する。


M80のHDDチェック画面にはファイルシステムチェックとフォーマットという項目がある
 M80はP-5000と異なり、HDDにファイルが正常にコピーされたかをチェックする「バックアップ・コピー時の確認」、M80のHDDとシステムの状態をチェックする「ファイルシステムチェック」、「HDDのフォーマット」も単体で行なえる。PCの取扱いに不安を感じるデジタルカメラユーザーなら、これらの機能を目的にM80を選ぶという選択もあるかも知れない。


基本仕様と外観

両吊り式のストラップを付けるとよりカメラっぽく見える

M80を両吊ストラップでたすき掛けにすれば、撮影の邪魔にならないので、常時携帯できる
 本体サイズは139.5×33.5×80.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量で370g(バッテリー含む)。一方、P-5000は本体サイズ148.4×32.6×85.2mm(幅×奥行き×高さ)、438g(バッテリー含む)と、M80より一回り大きいという印象だ。持ち歩くならM80の方を選びたくなるくらいに、この重量差は実感できる。

 ボディのシルエットや滑り止めの配置具合を眺めていると、一昔前のフィルムカメラのような印象を与える。カメラを構えるように持ち上げてみると、Canon表記側が実はスライド式レンズバリアになっていて、レンズがあるのではないかと疑ってしまう。シャッターボタンに相当する位置に「BACKUPボタン」がある点なども含めて、カメラ好きに訴えるデザインであると言える。

 M80にはカメラのような両吊り式のストラップが付属する。ストラップと組み合わせた時の使い心地が実に良く、首から吊るしたり、たすき掛けにもできる。





電源にはEOS 5DやEOS 30Dと共用のバッテリーパックBP-511Aを採用 メモリカードスロットはCFスロット、SDHC/SDメモリカードスロットの2つを搭載

カバーの内側には、USB 2.0、映像/音声出力端子、ACアダプタ端子、リセットボタンを搭載する 押すだけでメモリカードのコピーができるBACKUPボタンがシャッターボタンを思わせる位置にある

MENU、INFO、削除ボタンが並ぶ。EOS 5DやEOS 30Dとよくにた配置 拡大/縮小、十字キー、プリント、キャンセルなどのボタンと電源が見える

リチウムイオンバッテリーBP-511A(左)と充電器CB-5L 同梱品は充電器、バッテリー、キャリングケース、USBケーブル、バッテリーチャージャー用電源コード、ビデオケーブル、ショルダーストラップ

セミハードケースが付属する

EOS 5D(背面)との比較

EOS 5D(右)

P-5000(右または下)との比較



EOS Digitalライクなメニュー画面

 電源を入れて最初に表示されるのが「ホーム画面」。ホーム画面には「バックアップ」、「再生」、「サウンド」、「ムービープレーヤー」、「設定」の項目がある。それらの中から十字キーで行なう作業を選択する。なお、メモリカードからのバックアップを行なうだけなら、メニューからの選択だけではなく「BACKUPボタン」を押して行なうことができる。


ホーム画面 バックアップ

再生 サウンド

ムービープレーヤー 設定

基本操作

本体上面にあるBACKUPボタンを2秒長押するだけで、バックアップ作業を開始できる
 ボタン配置は、デジタル一眼レフカメラ「EOS Digital」シリーズに似せられている。電源スイッチなども含めて、EOS Digitalユーザーには見慣れた位置にボタン類が配置されている。直観的に操作できるのでマニュアルはいらないのではと思ってしまう。電源を入れると、無反応な約4秒後に、ワンテンポ遅れて「Canon」の文字が液晶モニターに現れる。その後、さらに8秒かけて起動する。メーカー名が表示されるまでは、フリーズしているのではないかと不安になってつい電源スイッチに手をやってしまう。

 P-5000は操作開始から2秒後に「EPSON」の文字が表示され、約5秒で起動する。メーカー名の表示までなら時間差は、わずか1秒程度なのだが、筆者のようなせっかちな者にはM80の起動が長く感じる。このあたりはまだ、フォトストレージとしてキヤノン第1世代のM80よりも、エプソン第3世代となるP-5000の方が1枚上手のようだ。

 撮影画像のバックアップ作業は、最初に電源スイッチを入れるところから始まる。すると液晶モニターにホーム画面が表示される。ホーム画面にはバックアップ、再生、サウンドプレーヤー、ムービープレーヤー、設定の5つの基本機能が並んでいる。エプソンがかつて使用していたアイコン型インターフェイスでなく、EOS Digitalのメニュー画面そっくりのインターフェイスとなっている。

 続けて、本体底面にある2つのメモリカードスロットに記録メディア(CF、Microdrive、SDHC/SDメモリーカード、またはMMC)を挿入する。この時、2つのスロットの両方にメモリカードを挿入してもよい。

 バックアップを簡単に済ませたいのならば、そこで本体上部にあるBACKUPボタンを2秒ほど長押しすればよい。自動的にメモリカードスロットに挿入されているメモリカード内に記録されたデータをすべて内蔵HDDにコピーしてくれる。ただし、BACKUPボタンを使用すると、2つメモリカードスロットに挿入したどちらか1方のデータを選ぶことはできず、2つを連続でコピーする。

 もう少し細かく作業を行なうためには、電源スイッチを入れた後に液晶モニター上に並んだ項目の中からバックアップを、十字キーを使って指定してSETボタンで決定する。すると液晶モニターに、カード1、カード2、カード1&2の3つの項目が表示される。カード1はCFスロット、カード2はSDHC/SDメモリーカードスロット/MMC、カード1&2は2つのスロット両方を表す。バックアップしたいメモリカードがCFならカード1、SDHC/SDメモリーカード/MMCならカード2を選ぶ。両方のスロットに挿入したメモリカードを同時にバックアップしたいのならカード1&2を選べばよい。次に、メモリカード内のデータをすべてバックアップするか、特定のデータを選んでバックアップするか選ぶことができる。なお、バックアップ作業の所要時間は、BACKUPボタンとホーム画面から十字キーとSETボタンのいずれを使っても同じだ。


バックアップするメモリカードを選ぶ メモリカードに記録されたすべてのデータをバックアップする

バックアップ作業中を伝える画面。BACKUPボタンを使用するとこの画面が最初から表示される メモリカードが挿入されていないスロットを選ぶとエラーが表示される

M80のパスワード設定画面。ソフトウェアキーボードで数字を入力する
 なお、M80とP-5000のいずれも不正アクセス防止機能を搭載する。パスワードロックによって、フォトストレージにバックアップした画像の無断閲覧を防止できる。


バックアップ速度の検証

左からバックアップ速度の計測に使用したCF、SDメモリーカード、バックアップされたデータのプロパティをMac OS Xで表示させた
 M80には、HDDへ撮影データが正しくコピーできたかどうかを確認する「バックアップ・コピー時の確認機能」が搭載されている。デフォルトでは「入」になっているのだが、設定画面で「切」にすることもできる。「切」にするメリットは、バックアップの作業時間を短縮とバッテリー消費の節約だ。

 バックアップ作業時の転送速度(メモリカードに記録されたデータのHDDへのコピー)と、バッテリー満充電時のバックアップ作業可能回数は下記の通り。

 サンプル回数は10回行ない、その平均値を記載した。使用したメモリカードはサンディスクの「Ultra II」ブランドのCFおよびSDメモリーカード。容量はいずれも1GBのモデルで、キヤノン製デジタルカメラでFAT16形式にフォーマットした。メモリカードに記録されたデータは「EOS 5D」と「EOS Kiss Digital X」で撮影したRAW+JPEGの画像。データ容量は962.9MB。ファイル数は120個。バックアップ方法は本体上面にあるBACKUPボタンから行なった。同ボタンは約2秒の長押しで作業を開始するので、M80の実際の作業時間は記載された時間から−2秒となる。


●デフォルト設定「バックアップ・コピー時の確認 入」+「バックアップ後のファイル消去 しない」
CFからのバックアップ所要時間は9分42秒。バックアップ作業可能回数は12回
SDメモリーカードからのバックアップ所要時間は10分44秒。バックアップ作業可能回数は10回

●設定「バックアップ・コピー時の確認 切」+「バックアップ後のファイル消去 しない」
CFからのバックアップ所要時間は4分12秒。バックアップ作業可能回数は32回
SDメモリーカードからのバックアップ所要時間は4分18秒。バックアップ作業可能回数は23回


●参考データ P-5000によるバックアップ速度
 P-5000にはコピー時の確認などの機能がなく、純粋なバックアップ作業のみを行なう仕様になっている。
CFからのバックアップ所要時間は2分55秒(M80より1分17秒高速)
SDメモリーカードからのバックアップ所要時間は3分12秒。 (M80より1分6秒高速)

※キヤノンのWebサイトによれば、満充電のバッテリーを使用した場合、CFのバックアップは最大で約40GB、SDメモリーカードのバックアップ可能容量は最大で約32GBとなっている。また。転送速度はCFが約4.1MB/秒、SDメモリーカードが約3.8MB/秒となっている。

 使用した固体特有の問題かもしれないが、SDメモリーカードよりもCFの方が安定してバックアップが行なえた。CFバックアップ時には何の問題も起こらなかったが、SDメモリーカードでは一度フリーズし、また2度認識しなくなったために抜き差し作業を行なって再認識させた。それと、P-5000はバックアップ作業終了を音で知らせてくれる機能がある。これが非常に便利なので、M80でもファームウェアのアップデートなどで対応して欲しい。

 なお、デフォルト設定の「バックアップ・コピー時の確認 入」+「バックアップ後のファイル消去 しない」で8回を超えるバックアップを続けると、本体がかなり熱くなる。


 続いて、M80にバックアップした画像データ、さらにM80搭載の各メモリカードスロットに挿入したメモリカードに記録された画像データを、PCやMacへ転送する所要時間を計測してみた。使用したデータ、CF、SDメモリーカードなどは、メモリカードからM80へのバックアップ時間の計測に使用したものと同一。


●Macへの転送時間
 Power Macintosh G4、OSはMac OS X 10.4.9をインストールしたMac(CPUはPPC G4 400Mz、HDDは日立製120GBのモデル、HFS Plus形式でフォーマット)とM80をPCIスロットで増設したUSB 2.0で接続して計測した。
M80のHDDからMacのHDDへのデータ転送所要時間は2分39秒
 M80のCFスロットに挿入したCFからMacのHDDへのデータ転送所要時間は2分6秒
M80のSDHC/SDメモリカードスロットに挿入したSDメモリーカードからMacのHDDへのデータ転送所要時間は2分12秒

●PCへの転送時間
 CPUはIntel Core 2 1.86GMz、Windows VistaをインストールしたエプソンEndeavor MT7800とM80をUSB 2.0で接続して計測した。
M80のHDDからPCのHDDへのデータ転送所要時間は2分51秒
M80のCFスロットからPCのHDDへのデータ転送所要時間は2分18秒
M80のSDHC/SDメモリカードスロットからPCのHDDへのデータ転送所要時間は2分20秒

 蛇足だが、「HDDチェック」内にある「ファイルシステムチェック作業には、バックアップデータの量にかかわらず4分10秒かかった。また、M80が搭載するHDDを自ら初期化する「フォーマット」の所要時間は、バックアップデータの量にかかわらず10秒だった。


撮影画像の表示

 ホーム画面で再生の項目を選択してSETボタンを押すと、バックアップされた撮影データの集まりである「アルバム一覧」が現れる。閲覧したい画像グループのアイコンを選んで進むと「画像一覧」が表示される。さらに閲覧したい画像を選ぶと「シングル表示」に切り替わる。なお、シングル表示時にINFOボタンを押すと、情報あり→ヒストグラムあり→情報なしの順番で3種類の表示が繰り返される。


アルバム一覧 画像一覧

情報表示あり ヒストグラム表示あり

情報表示なし

 M80の液晶モニターは、約30.7万画素の3.7型。解像度は640×480ピクセル。最大輝度は280cd(カンデラ)/平方m。P-5000の液晶モニターは、4色カラーフィルターを搭載するAdobe RGB対応4型液晶モニターで、解像度は640×480ピクセル。液晶モニターの写りは、甲乙付けがたい。しかし、勝敗を求めるなら、やはり液晶モニターサイズの大きなP-5000に軍配が上がる。

 また、微妙にお互いの嗜好というかチューニングの傾向は異なる。M80はシャープでコントラストが高く、やや階調が狭いとの印象を受けた。撮影画像の表示を一般的な「キレイな描写」に合わせていると思われる。

 一方、P-5000はシャープだが、コントラストは抑えめで柔らかい描写だ。そのせいか、明部や暗部の再現性がM80より高いという印象を受けた。また、P-5000には白トビや黒トビ警告などの機能もあるので、PCやMacなどにデータを転送した後でPhotoshopなどの画像編集ソフトでどう調整するかを検討するのに役立つ。


 視野角と写り込みの2点ではM80はP-5000を超える性能を持つ。P-5000の液晶ディスプレイの視野角もとても広く、上・左・右の3方向に限ればM80と互角だが、下方向から斜めに眺めると突然に画面表示が見えなくなる。また、写り込みでもP-5000の方がクッキリと浮かび上がるので、液晶ディスプレイをのぞき込む角度を微妙に調整したくなることがM80よりも多かった。


反応速度

 メニューの反応速度は可もなく不可もなくという印象だ。しかし、P-5000と並べて比べるとモタつく気がする。P-5000のインターフェイスは、黒地と白線を中心としたシンプルなGUI(グラフィカル・インターフェイス)なので、M80のカラー表示のGUIと比べて処理速度に余裕があるのは当然かもしれない。

 画像の表示速度では、M80はP-5000に明らかに劣る。特に画像の拡大・縮小速度ではP-5000と比べるとフリーズしているのではないかと疑いたくなる速度だ。

 HDD内にバックアップしたEOS 5D撮影の1,280万画素のRAW+JPEG形式のLサイズ画像を、アルバム一覧を表示させるに5秒、アルバムを4×3の12個の画像一覧を表示するまでに9秒、同JPEG形式の画像をシングル表示するまでに5.5秒ほどかかる。拡大ボタンを2秒長押するショートカット操作で、最大表示サイズまで拡大(100%表示)までに18秒かかる。


 一方、P-5000では同じ画像を、アイコン一覧のアルバム一覧を表示させるのに1秒(表示は速いがアルバムの内容はわかりづらいなどの問題もある)、アルバムを4×3の12個の画像一覧を表示するまでに2つの作業を行なうので2+3秒で合計5秒、同JPEG形式の画像をシングル表示するまでに2秒ほどかかる。OKボタンをダブルクリックとショートカット操作で、最大サイズへ拡大(100%表示)までに2秒かかる。また、M80にはできない200%表示に2秒、400%表示に2秒かかる。


M80の標準表示(全画面表示) 拡大ボタン1回

拡大ボタン2回 拡大ボタン3回

拡大ボタン4回 拡大ボタン5回

拡大ボタン7回(100%表示)

PictBridgeによるプリント

PictBridge対応プリンタによる印刷など、撮影画像の取扱いはシングル表示画面から行なえる
 M80もP-5000もPictBridgeをサポートしているので、対応プリンタを接続してPCなしでプリントできる。PictBridge対応プリンタによる印刷など、撮影画像の取扱いはシングル表示画面から行なう 。実際に両機を、インクジェットプリンタのキヤノン「PIXUS iP4200」につないでプリントの所用時間を計測してみた。プリントサイズはLサイズ、フチナシ印刷という条件では、おもしろいことにどちらも1分58秒とまったく同じ値がでた。これは両機のフォトストレージとして実力というよりも、PictBridgeという規格によるものと思われる。

 M80は、印刷の設定の項目に関しては、日付印刷、印刷効果、印刷枚数、用紙サイズ、用紙タイプ、レイアウト、トリミングなどの機能などが選べる。特に印刷効果では、標準設定だけでなく、VIVID、NR(ノイズリダクション)、VIVID+NRを選ぶなど積極的にプリント画像の発色傾向を制御できるコマンドが多くなっている。


PictBridge対応プリンタに接続すればPCレスでバックアップした画像を印刷できる
 一方、P-5000は、用紙サイズ、用紙種類、レイアウト、日付印刷、印刷モードを選べるが、どれも撮影画像のプリント画像の発色傾向へ積極的に関与しようという態度はみられない。

 両機のプリントの発色傾向なのだが、おもしろい結果が出た。M80を使ってデフォルト設定のままプリントすると、P-5000の液晶モニターで映し出されるような暖かみのあるややソフトな描写でプリントしてきた。一方、P-5000を使ってデフォルト設定のままプリントすると、M80の液晶モニターで映し出されるようなシャープでコントラストの強く、澄んだ色合いにプリントしてきた。M80とP-5000の液晶モニターの描写傾向とPictBridgeでのプリント描写傾向は、まったく逆となった。

 なお、M80からPictBridgeでプリンタに接続する場合は、設定画面からあらかじめ「USB」の項目で「プリンターモードへ切り替え」を実行しておく必要がある。逆にPCへ接続する場合は「ストレージモードに切り替え」を実行しておく必要がある(このあたりは融通がきかない不便な点だ)。


使ってみた

M80と一緒に今月2回目の大井鐵道に出かけてみた
 M80を、撮影現場に持ち出す機会に恵まれた。撮影データをバックアップするフォトストレージ機能は、かなり使い心地が良かった。撮影地でも移動中でも撮影後の宿でも、BACKUPボタンのおかげでバックアップ作業も気軽に行なうことができた。

 撮影中でもメモリカードをM80のスロットに差し込んでボタンを押すだけなので、作業だけの話ならP-5000よりも簡単に行なえる。P-5000よりも所要時間がかかることは間違いないが、実際に使用してみると「気が付いたらバックアップ作業が終わっている」という感じだ。

 しかし、バックアップした画像の液晶ディスプレイへの表示速度だけは、何としても高速化してほしい。EOS 5Dで撮影した1,280万画素のJPEGデータの場合、画像一覧からシングル表示(情報あり)で約5.5秒もかかる。画像一覧とシングル表示を繰り返して写真チェックするにもかなりの待ち時間を必要とする。また、シングル表示(情報あり)は写真の下がわずかながら表示されないので、写真のセレクトには全画面表示であるシングル表示(情報なし)にする必要がある。

 シングル表示(情報なし)には、INFOボタンを押してシングル表示(情報あり)からシングル表示(ヒストグラムあり)で約2秒かかり、さらにもう1度INFOボタンを押して約5.5秒かけてシングル表示(情報なし)に表示を切り替える必要がある。写真1枚を表示するのに約13秒もの待ち時間必要なので、数枚を続けて表示する必要のあるセレクト作業をするにはかなりの忍耐力が必要だ。


シングル表示(情報あり)では写真の一部が見えないので写真セレクト向きではない シングル表示(情報あり)では表示しない画面左隅に道路標識が写り込んでいる(わかりやすいように拡大率100%で表示した)

 充電に関しては、P-5000の方が便利だ。購入時の状態で本体内にバッテリーを入れたまま充電できるACアダプターが付属するだけでなく、外部電源としても使用できるので、大容量メモリカードでも安心してバックアップできる。M80は充電する時はバッテリーも本体内から取り出す必要があり。外部電源を使用するには別売りの「コンパクトパワーアダプターCA-570(8,000円)」を購入する必要がある。バッテリー切れを恐れて、M80の特徴でもある「バックアップ・コピー時の確認」を積極的に「入」にできなかったのが残念だ。

 なお、M80の他社製デジタルカメラへの対応(JPEG)は予想通りに良好だ。今回、同行者がペンタックスK100D Superで撮ったJPEG画像をバックアップしたが、問題なく表示・バックアップできた。また、610万画素クラスの画像ファイルなら、EOS 5Dの1,280万画素クラスのファイルと違ってかなり高速に表示できることがわかった。


まとめ

 M80の店頭価格は8万円前後、P-5000の店頭価格は7万円前後。新型とは言え、P-5000よりも1万円ほど高いが、P-5000と違ってコピー確認など便利な機能も搭載している。カタログのスペック表だけ見比べれば、JPEG形式による記録を主体とした撮影者なら、どちらを選んでも同じように思えるかもしれない。

 しかし、M80には「速度」という泣き所がある。P-5000と比べると、起動速度、メモリカードのバックアップ、十字キーやボタンによる操作時の反応速度、撮影画像の表示速度、撮影画像の拡大表示速度などすべてにおいて遅い。RAWデータ表示などの汎用性でもP-5000が優れているので、RAW形式による記録を主体とした撮影者なら、EOS Digital(とRAWファイルに対応する一部のPowerShot)所有者以外はP-5000を選択した方が賢明だろう。

 結論だがM80は、EOS 5D/30Dと共通のバッテリーを搭載するEOS 5D/30Dユーザーにこそオススメのフォトストレージとなる。筆者もEOS 5Dのバッテリー切れの際に、M80のバッテリーと交換して撮影を続行した経験がある。EOS Digitalとの併用環境においてこそ、もっとも活用できるだろう。



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報(M80)
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/accessary/m80/index.html
  ニュースリリース
  http://cweb.canon.jp/newsrelease/2007-07/pr-m80.html

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本誌:織原 博貴

2007/08/09 00:29
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