特別企画
キヤノンEOS 7D Mark IIが絶好調なワケ
過去最高の予約数!「5年ぶりの大物」にカメラファンの期待高まる
Reported by 秋山薫(2014/11/19 08:00)
数字に現れた快進撃
さる9月16日に発表され、10月30日に発売となったキヤノンのAPS-Cサイズフラッグシップデジタル一眼レフ「EOS 7D Mark II」(以下、7D Mark II)。
「EOS 7D(2009年10月発売)の後継機として、連写・AF性能をさらに向上させた」とキヤノン自らがうたうように、約2,020万画素のCMOSセンサー、デュアルDIGIC 6、最高約10コマ/秒の高速連写、65点の全点クロス測距、AF精度のさらなる向上など、あらゆる面でEOS 7D(以下、初代7D)を越えるような高性能機に仕上がっている。
発表後の反響も上々のようで、「発売までの予約数も過去最高」(キヤノンマーケティングジャパン)といい、記事執筆時点の11月13日現在でも価格比較サイトの売り上げランキング第一位になるなど、その快進撃は続いているようだ。キヤノンマーケティングジャパンの商品企画担当に裏事情を聞いた。(文中敬称略)
キャンペーンエントリー数が発表日午後に急上昇
−−価格比較サイトで見ても、一眼レフカテゴリで売り上げランキング第一位が続いています。
私たちもとても驚いています。まず驚かされたのが、バッテリーグリッププレゼントキャンペーン「GET BGキャンペーン」のエントリー数でした。これは予約者特典としてバッテリーグリップBG-E16をプレゼントするキャンペーンを9月16日の発表日から12月26日まで行なっているものです。
当初は先着1万名様にプレゼントという予定でしたが、発表日の午後に4,000を越えるエントリーがありました。そのままの勢いでエントリー数が伸び続け、1週間ほどでエントリーが1万名を越えました。そのため、発売日に店頭で混乱をきたすのを避けるために、さらに1万名分の追加を急遽、行いました。10月30日の発売時には1万7,000件を突破し、本日では、1万8,400件を越えています(取材時。11月17日現在では1万9,000件)。
実際の予約数も、過去最多だった5D Mark IIの約1.5倍、初代7Dと比べても約3倍と過去最多の数をいただきました。
−−過去最多というのはすごいですね。販売も好調なのでは?
当社の調査では、10月30日の発売日モデル別シェアで7D Mark IIは12.2%(1位)となり、上々の立ち上がりでした。2位はEOS Kiss X7iとEOS Kiss X5(ともに9.2%)で、それ以下のランキング上位にある機種も自社、他社を含めてエントリーからミドルクラスの機種でした。価格が20万円を越える一眼レフボディでこの数字ということには、とてもありがたく思っています。
今の世の中、景気のいい話はなかなか少ないですから、「モノが売れる」という明るい話題が拡がってくれれば良いと思います。
一方で、7D Mark IIのお届けに時間がかかっているという点では、お待ちいただいているお客様には大変申し訳なく思っています。
7D Mark IIは国内工場で作られていますが、製造にはそれなりに時間を要するカメラでもあります。現状では、店頭で手にとってご確認していただけるカメラも少ない状態ですので、キヤノンショールーム(銀座、品川、名古屋、大阪梅田)のほか、修理や点検を受けつけるサービスセンター(札幌、仙台、千葉幕張、新宿、横浜、大阪中之島、広島、福岡)でも展示を行っています。ぜひ、こちらもご利用いただければと思います。
−−バッテリーグリップがもらえるキャンペーン自体もユーザーとしてはうれしいでしょうが、このエントリー数の多さはみなさんが「5年間のあいだ首を長くして7D Mark IIを待っていたよ」という気持ちの表れなのかもしれませんね。
そう言ってもらえると、私も嬉しいです。このキャンペーンを実施するのは初代7Dのバッテリーグリップ装着率が高かったことが、大きな理由の一つですが、新モデルを今か今かと待っていただいていたお客様への、私たちからの感謝の意味もあるんです。
−−Webエントリー時にお客様の声を書き込むようになっています。どういった反応がありましたか。
野鳥撮影、鉄道撮影、スポーツ撮影をするユーザーなどからの高速連写やAFについての声がとても多くあります。私たちとしてもそういう声を期待していたのですが、それでも予想以上のコメント数をいただきました。
機種別では、5D Mark IIIとの併用を検討している方や、キヤノン以外からの買い替えの方もたいへん多いですね。もちろん、初代7Dユーザーにもたくさん書き込みいただいており、「5年間、初代7Dを使い続けてくださった」という感謝の気持ちで読みました。
何より嬉しかったのは、「いままで撮れなかったものが撮れるようになった」という声を多くいただいていることで、これほどうれしいものはありません。
実際に寄せられた声より(一部抜粋)
「ついに、真打ち登場といったところでしょうか。鉄道写真を趣味とする者にとって、これ以上の相棒がいるなら教えてほしいです」
「初代7Dの後継機がいつ出るのか心待ちにしておりました。小動物の微妙な動きを撮るためには、10コマ/秒はすばらしい。AFの進化にも驚愕です」
「APS-C版の1Dというべきスペックじゃないかと思っています」
「息子のバドミントンの試合に、7D Mark IIで汗と涙を記録することができれば、父親からの素敵なプレゼントになりそうです」
「業務用として初代7Dを3機所有していますが、これまでのどの機種よりも満足しています。さらに進化した7D Mark IIにもそれ以上の期待を抱いています」
「いままで他社機をずっと使っていたのですが、カタログを拝見してこちらにしようかと思っています。ふだん鳥を撮っていますので」
「他社製品を長く愛した者ですが、今回キヤノンで7D Mark IIが発表されてとても感動しています。早く好きな航空写真を撮ってみたいと思っています」
−−現在、APS-Cサイズフラッグシップ機種にライバルがいません。
確かに同じようなスペックのカメラはないですね。EOSのラインナップのなかでも、7D Mark IIよりも上位機種になると5D Mark IIIやEOS-1D Xになってしまいます。
35mmフルサイズの画質のよさはもちろん必要ですが、動体撮影を行なうユーザーや、望遠域での撮影が多いユーザーにはAPS-Cサイズフラッグシップ機の存在意義があると思っています。
カタログ撮影は写真家の本気モードで
−−今回はカタログも7種用意され、発表会でもその撮影に携わった写真家が登場するなど、プロモーション活動に特徴がありますね。
被写体別と統合版をあわせて7種類のカタログを用意したのは初めての試みです。7D Mark IIを検討する方は、AFと連写性能をフルに活用した撮影をされる方です。そういう方に手に取ってもらえる魅力的なカタログにしたいと考えました。そのため、カタログをはじめとする制作物では本気の写真に拘りました。
通常のカタログ写真の撮影では、スタジオでのモデル撮影や、スポーツでの撮影の場合でもシーンを作り込むのが一般的です。もちろん、そういった作り込んだ写真でもカタログは作れますが、選手の身体から弾ける汗とか野生動物の本物感とか、カタログを手に取ってくれた人に、ありふれた写真ではなくリアリティのある写真を見てほしかったんです。
なによりも7D Mark IIが「本気で使える」ことを強くアピールしたかったので、野鳥撮影、鉄道撮影、航空機撮影、野生動物撮影、スポーツ撮影、モータースポーツ撮影に被写体を絞ったカタログとし、それぞれのジャンルの写真家18名に本気で撮影してもらいました。
−−え?野鳥やスポーツも、すべて本気モードで撮影してもらったのですか!?
はい。あくまでもリアルな現場の雰囲気を伝えることに拘りました。たとえば野鳥撮影では、福田啓人さんにアカショウビンの撮影をお願いしたのですが、相手が野生動物ですのでいつ現れるかわかりませんし、カメラも台数が多くはないので撮影期間が限られてしまいます。なかなか狙った被写体が現れず、結果的にかなり無理を言って撮影していただきましたが、最後の最後で素晴らしい写真を撮影していただくことができました。
スポーツ撮影でも、実際に行なわれた試合や大会で撮影していますし、鉄道撮影でも来春開業する北陸新幹線向けの最新型車両E7系を撮影してもらうなど、写真家のみなさんには本当に頑張ってもらいました。短い期間で写真家の方にこれだけ多くの素晴らしい写真を撮影してもらうことができたのは、幸運だったと思います。
写真家の活躍はテレビ放送や写真展にも
−−そうなると、カタログ撮影にまつわるさまざまなドラマがありそうですね。
そうなんです。撮影ロケの後、写真家の方々に撮影時の苦労話や撮影に掛ける想いを聞く機会がありました。そこで聞いた写真家の方々のドラマに感動して、15名の方の撮影に密着した特別番組を制作することにしました。
番組では、写真家のみなさんが1枚の写真のために様々な努力や熱意をかけてきたことが表現されています。被写体に出会うまでの様子や、みなさんがなぜ写真家になったのかという、「やむにやまれず写真家になった情熱」を語ってもらう内容です。
ご覧になった方には「写真って素敵な趣味だな」と感じてもらえると思います。決して7D Mark IIの性能を語るようなものではありませんので(笑)、是非観てください。
The Photographers −まだ見ぬ一瞬を追いかけて−(BS朝日)
- 第一回 鉄道・飛行機
放映日時:11月10日(月)21:00〜22:54(放送済み)
写真家:長根広和 山崎友也 ルーク・オザワ チャーリィ古庄 - 第二回 生物
放映日時:11月17日(月)21:00〜22:54(放送済み)
フォーカスする写真家:福田啓人 戸塚学 福田幸広 前川貴行 福田豊文 - 第三回 スポーツ
放映日時:11月24日(月)16:00〜16:55
写真家:中西祐介 田中宣明 水谷たかひと 田中伸弥 小林直樹 赤松 孝
第1回の「鉄道・飛行機」編を見た本誌編集者、武石修の感想は……
"鉄道パートの長根氏と山崎氏は兄弟弟子ながら、全く異なる作風を持つ両人。番組は2人の撮影に対する取り組み方の違いも露わにする。だが、理想の光を追求する姿はどちらも共通。流石プロと納得させられた。"
"飛行機パートでは、チャーリー古庄氏がロスでレアな旅客機の空撮に挑戦。長玉を駆使する氏にとって目下の悩みが腰痛とは納得だ。ルーク・オザワ氏は“ルーク流”と言われる雲を写し込んだ情景豊かな飛行機写真の現場を披露。筆者もすっかり鉄道や飛行機の写真を撮りたくなった"
※山崎氏の「崎」は本来違う漢字ですが、環境により表示できないため代用しています。
あわせて「EOS 7D Mark II特別企画展 The Photographers − 一瞬の世界へ − 」と題して、キヤノンギャラリーにて写真展も行います。カタログやWebでは掲載できなかった作品が多数掲示されますので、こちらもご期待ください。
EOS 7D Mark II特別企画展 The Photographers − 一瞬の世界へ −
- ・会場:キヤノンギャラリー銀座
- ・住所:東京都中央区銀座3-9-7
- ・会期:2014年11月20日(木)〜2014年11月26日(水)
- ・時間:10時30分〜18時30分(最終日15時まで)
- ・休館:日曜日・祝日
- ・会場:キヤノンギャラリー梅田
- ・住所:大阪府大阪市北区梅田3-3-10梅田ダイビル地下1階
- ・会期:2014年12月4日(木)〜2014年12月10日(水)
- ・時間:10時〜18時(最終日15時まで)
- ・休館:日曜日・祝日
- ・入場:無料
- ・会場:キヤノンギャラリー福岡
- ・住所:福岡県福岡市博多区綱場町4-1福岡RDビル1階
- ・会期:2014年12月25日(木)〜2015年1月13日(火)
- ・時間:9時〜17時30分
- ・休館:土曜日・日曜日・祝日
- ・入場:無料
- ・会場:キヤノンギャラリー名古屋
- ・住所:愛知県名古屋市中区錦1-11-11名古屋インターシティ1階
- ・会期:2015年1月22日(木)〜2015年2月4日(水)
- ・時間:10時〜18時(最終日15時まで)
- ・休館:日曜日・祝日
- ・入場:無料
- ・会場:キヤノンギャラリー仙台
- ・住所:宮城県仙台市青葉区一番町1-9-1仙台トラストタワー15階
- ・会期:2015年2月19日(木)〜2015年3月3日(火)
- ・時間:9時〜17時30分
- ・休館:土曜日・日曜日・祝日
- ・入場:無料
- ・会場:キヤノンギャラリー札幌
- ・住所:北海道札幌市中央区北3条西4-1-1日本生命札幌ビル高層棟1階
- ・会期:2015年3月12日(木)〜2015年3月24日(火)
- ・時間:9時〜17時30分
- ・休館:土曜日・日曜日・祝日
- ・入場:無料
−−発表会でも、カタログ撮影に参加した写真家のみなさんが使用感を語っていましたね。
ええ。みなさん、初代7Dや、5D Mark III、1D Xをお使いですが、7D Mark IIにはAPS-Cサイズのフラッグシップとしての意義を感じていただけたようです。
実際に現場で使っている写真家のみなさんの使用感は本当に重みがあります。
進化した性能面についていろいろお褒め頂いたこともそうなのですが、何より嬉しかったのは、お使いいただいた写真家のみなさんに7D Mark IIもお買い上げいただいたことです!
鉄道や野鳥ファンの集まるイベントで大好評
−−ユーザー体験イベントは大変盛況だったとか。
東京(9月26日〜28日)と大阪(10月5日〜7日)で行ったユーザー体験イベント「CANON GRAND PRESENTATION 2014」はおかげさまで大盛況でした。東京会場は5,500名、大阪会場は4,000名とカメラ新製品の体験会としては過去最多の来場者数でした。特に、東京会場では開場前に入口に長蛇の行列ができてしまい、スタートを早めたほどです。
このイベントでも本物感を感じてもらうため、撮影被写体としてバスケットボール(3on3)のトーナメント大会を開催しました。本物のバスケットボールチームが参加する本当のトーナメント戦です。参加チーム募集の際は7D Mark IIの発表前でしたので、製品名を伏せて大会の出場チームを募りました。
体験イベント参加者にはスポーツ撮影をしたことのない方もいらしたようですが、素早く動く選手をうまく撮影できたという声もたくさんいただきましたので、多くの方にご満足いただけたのではないでしょうか。
−−そのほかにも、被写体別のイベントなどにも精力的に出展されているようですね。
先程もお話ししましたが、7D Mark IIを検討していただいている方は、撮影被写体が決まっている人が多いですから、そういった方々の集まるイベントに多数出展しました。
例えば、毎年10月14日は鉄道の日なのですが、その前後に、日比谷公園で行なわれる関連イベント「鉄道フェスティバル」があります。キヤノンとしては初めて、そしてカメラメーカーとして唯一出展し、鉄道写真家によるトークイベントなどを行いました。
また、野鳥関連では、我孫子市・手賀沼公園で行なわれた「ジャパン・バード・フェスティバル2014」(11月1日、2日)にも出展したほか、日本野鳥の会とのコラボレーションで支部連動イベントも各種行っています。こちらも予約がすぐに埋まってしまう状況ですので、ご興味のある方は是非早めにお申し込みください。
そのほか、モータースポーツや飛行機のイベントにも出展などを行いましたが、いずれのイベントでも参加されるみなさんの熱意は本当にすごいですね。そういったみなさんにカメラにも興味を持ってもらうべく、今後もご覧いただける機会を設けていきたいと思っています。
それから、ひとつお知らせなのですが、Facebook人気ページの「東京カメラ部」とのタイアップで、「鉄道風景写真館」「Birders Gallery」というページを開設しています。
すでに、「鉄道風景写真館」は1万7,000を超える「いいね!」を、「Birders Gallery」は1万0,000を超える「いいね!」をいただきました。素晴らしい写真が多数掲載されていますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。
まとめ
初代7Dの登場から5年間たち、いまやAPS-Cサイズ一眼レフのフラッグシップ機に、直接的なライバルは存在しなくなってしまった。初代7Dもいまでも立派なスペックを持つカメラではあるが、あらゆる分野でそれを越える性能を盛り込んだ7D Mark IIが好評なのは、想像に難くない。なにしろ、望遠レンズを多用するユーザーにとっては、APS-Cフラッグシップ機の有用性はいまでも変わらないはずだからだ。
インタビュー中にもあったように、7D Mark IIの売れ行きの好調さは、APS-Cサイズフラッグシップ機の存在意義を改めて証明したといえそうだ。
制作協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社