Windows 7で“マルチタッチ対応ディスプレイ”を試す

~コーレル「Digital Studio 2010」を使ってみる
Reported by 本誌:鈴木誠

LCD-AD221FB-T

 アイ・オー・データ機器が11月下旬に出荷を開始した21.5型ワイド液晶ディスプレイ「LCD-AD221FB-T」は、光学式のタッチパネルセンサーを搭載し、指で触れた2点の同時認識が可能。Windows 7のタッチ操作機能「Windows Touch」に対応する。実勢価格は4万9,800円前後。

 本機のタッチスクリーンは、ベゼル内から指やスタイラスなどの位置を検出する光学式。最大解像度は1,920×1,080ピクセルでフルHDに対応する。スタンド込みの本体サイズは513×228×393mm(幅×奥行き×高さ)、重量は6.2kg。

 Windows Touchは、画面をタッチすることでポインタを操作したり、ジェスチャーで特定のコマンドを行なえるWindows 7の新機能。ノートPCなどのタッチパッドでも利用できるが、今回は本機のタッチスクリーンを用いて試してみた。

 PCとの接続はデジタルDVI-DもしくはミニD-Sub15ピン。タッチ操作の通信はUSBで行なう。ドライバのインストールなどは必要なく、すぐにタッチ操作を利用することができた。検出位置の微調整を行ないたい場合は、コントロールパネルの「ハードウェアとサウンド」→「Tablet PC設定」に設定画面を用意している。

Webブラウザの拡大縮小もジェスチャーで行なえる

 マルチタッチで行なえる操作は、基本的にマウスと同様。画面上の1点をタップ、ダブルタップすれば「クリック」、「ダブルクリック」で、プレスしたまま指を滑らせると「ドラッグ」だ。初めてでも迷うことはなかった。ちなみに「右クリック」は、対象の1点をプレス(押し続ける)しながら別の指で画面のどこかをタップする。

 加えて、アップルの「MacBook」や「iPhone」でお馴染みの2本の指を開いたり閉じたりすることで拡大・縮小を行なう操作「ピンチ」も可能。プレスしている指を軸に、もう1本の指を回転させると「ローテート」(回転操作)となる。

 また、速いスクロールなどを行なうジェスチャーに「フリック」がある。指を画面上ではらうような操作をWindows Touchではフリックといい、その方向ごとに割り当てられたコマンドをワンアクションで行なえる。タスクバーの中にある「フリックトレーニング」を試してみたところ、実際には「はじく」ような感覚で行なうと認識しやすいようだ。


フリックで速いスクロールも可能フリックトレーニングはタスクバーから呼び出す

 デフォルトの機能割り当ては、上下左右の4方向のみを使う「ナビゲーションフリック」が上方向から時計回りに「上へドラッグ」(スクロール)、「戻る」、「下へドラッグ」、「進む」という設定。さらに8方向の「ナビゲーションフリックと編集フリック」は、右上から時計回りに「コピー」、「貼り付け」、「元に戻す」、「削除」といった4つの編集機能が加わる。割り当てのカスタマイズはコントロールパネルから行なえる。

フリックトレーニングの画面。機能割り当てと共にジェスチャーのコツを解説斜めも組み合わせた8方向の「ナビゲーションフリックと編集フリック」

 加えて、ソフトウェアキーボードもタッチ操作で利用可能。これにより、マウスとキーボードが机上になくてもPCのほとんどの操作が行なえることになる。画面上に無理のないサイズで表示されるため、ファイル名の入力など簡単な文字入力はストレスなくできた。複数台のPCを同時に使用しているとつい手元のデバイスを取り違えてしまいがちだが、タッチスクリーンなら画面上のキーボードや目的の表示に直接アクセスすればよい。

 また、LCD-AD221FB-Tのスタンド部は100mmピッチのVESAマウントに対応している。ディスプレイ単体から操作を行なえるため、PCの新たな設置場所が見つかるかもしれない。本体右下にはスタイラスを収納している。

ソフトウェアキーボード本体右下にスタイラスを収納

マルチタッチで画像管理・編集

Digital Studio 2010

 では、デジタルフォト関連への“恩恵”にはどのようなものがあるのだろうか。マルチタッチ対応を謳うアプリケーションのひとつ、コーレルの「PaintShop Photo 2010」を試用してみた。

 PaintShop Photo 2010は、パッケージソフト「Digital Studio 2010」(通常版1万3,440円)に含まれる画像管理・編集ソフトで、今バージョンからWindows Touchに対応。同シリーズの特徴である多彩な編集機能を継承し、タッチ操作と親和性の高い外観になった。

 インポートした画像のサムネイル表示画面では、フリックも併用したスクロールや、ピンチでサムネイルの拡大・縮小をしながら目的の画像を探す。意図しない向きで記録されてしまった画像は、サムネイルに対して直接ローテート操作を行なうと回転する。プルダウンメニューの中から目的のコマンドを探したり、小さなボタンをマウスで狙いすます必要はない。


PaintShop Photo 2010サムネイル表示の画像をジェスチャーで回転できる

 サムネイル表示で画像をダブルタップすると、「簡単編集」の画面になる。簡単編集では、画像の明るさやコントラストを自動で補正する「自動補正」のほか、「傾き補正」、「クロップ」、「赤目補正」を画面上部のボタンより直接利用可能。タップ前にボタンの機能を確認したい場合は、マウスオーバーの代わりに目的のボタンをプレスすることでキャプションを表示できる。これはOS自体の挙動でもある。

簡単編集の画面クロップの範囲選択を行なっているところ

 また、画面右の「その他のツール」には、セピアやソフトフォーカスなどの効果を適用できる「効果」、肌のシミや歯の色を補正する「美肌補正」などを装備。本格的な編集機能を利用できる。画像にスタンプを押したり手書きのペイントを行なえる「ピクチャチューブ」は、タッチスクリーンで利用するとまさにお絵かきをしているようだ。

 画像にはキャプションや分類タグをつけることもでき、もちろんソフトウェアキーボードでタッチ入力できる。

ピクチャチューブキャプションを入力

 編集した画像は、「アルバム」という形式にまとめて整理する。「作成」メニューからフォトブック作成画面へ進むと、出力前のプレビューが表示される。ページの端をドラッグすると指に追従してページがめくれるのだが、これがなかなか面白い。

作成メニューからフォトブック作成画面へフォトブックのプレビューは実際に本をめくるように行なえる

 こうして実際に本をめくるようにプレビューし、気になった点があればダブルタップで簡単編集の画面に移動できる。変更は即時に反映され、またほかの気になる点にも随時手を加えることができる。ページの構成と画像編集を同じアプリケーション内で行き来しながらアルバムを作成できるのは、わずらわしさがなくシンプルで良い。

タッチ操作環境の普及に期待

 Digital Studio 2010に含まれるソフトの外観は基本的に統一されており、いずれもボタン類が大きめで指でのタッチ操作がしやすい。ディスプレイの解像度にもよるが、本機においては何ら問題はなかった。あとになって気づいたことだが、Windows 7のスタートボタンやタスクバーのアプリケーションアイコンもWindows XPなどと比べると大きく、正方形や円に近い形状をしている。これも指でのタッチ操作を意識してのことなのだろうか。

指で押しやすいサイズのボタン傾きを直す際も四隅をつまむ必要がない

 ちなみに今回は試用環境がmsi「Wind Notebook U100」にインストールしたWindows 7 Ultimateだったため、マシンスペックの面で決して万全な環境ではなかったことをご了承いただきたい。

 タッチスクリーンの試用は初めてだったが、メインマシンよりもむしろ音楽再生や画像閲覧をメインに行なうようなサブマシンでの使い勝手が病みつきになりそうだ。フォトレタッチにおいても、範囲選択やペンツールなどへの応用が期待できる。今後どのようにタッチ操作がPCに浸透していくのか、対応ソフトウェアおよび対応機器の拡充に期待したい。





本誌:鈴木誠

2009/12/14 11:42