自分の色を表現する。私のColor PENcil

見慣れた風景を新鮮かつ幻想的に表現したい〜藤原嘉騎さん

その場で得た印象をその場で再現できる“カラープロファイルコントロール”

陸続きでありながら、孤島のように見える美しい棚田。日が昇ると同時に朝霧が立ち込めて山間から太陽の光が差した。このあとすべてが黄金色に包まれていく。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 9mm(18mm相当) / マニュアル露出(F8、1/500秒) / ISO 200
仏閣の屋根にある「九輪」に似ていることから名づけられたクリンソウ。木々の間から紅紫色の花を照らす朝の柔らかい光を、暖かい色味で表現。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 7mm(14mm相当) /マニュアル露出(F8、1/60秒) / ISO 1000
時折、ツキノワグマも水を飲みに降りてくる清流。黄色の彩度を上げることで、勢いよく流れる水の流れに挟まれながらも力強く育つ草の緑を鮮やかな色彩で描写した。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) /マニュアル露出(F5.6、15秒) / ISO 400

発売以来、人気を集めているOLYMPUS PEN-F。端正な正統派カメラデザインや、最新機能の数々が評価されています。

この連載では若手写真家によるPEN-Fの作品を中心に、写真家になるきっかけや、写真への想いを聞きます。

今回お話をうかがったのは、東京カメラ部10選で一躍名を馳せた藤原嘉騎さん。PEN-Fのカラープロファイルコントロールについても印象を語ってもらいます。藤原さんがこだわる色(Color)とは一体?(編集部)

藤原嘉騎さん

写真・キャプション:藤原嘉騎
イラスト:ナカムラエコ

現在、どのような写真関連の仕事をされていますか?

カメラ雑誌での活動、広報誌・情報誌の表紙ポスター等、写真講習会などを行っています。仕事の依頼はFacebookや各種SNSメッセージにていただいております。

写真を撮るようになったきっかけは?

以前、スノーボードにおいて数社のメーカーをスポンサーにつけ、ライダー活動を行っていましたが、3階建ての高さ程の崖から道路を飛び越える撮影の際(ロードギャップ)にバランスを崩し道路に叩きつけられ生死を彷徨いました。

事故後、私生活には支障がない程度に回復しましたが、後遺症により選手生命は絶たれました。これまでスノーボードだけに時間を費やしてきたので、それを失った時の悲しさはとても大きなものでした。

事故から4年後の2011年10月、気分転換に屋久島への旅行を計画し、一眼レフカメラを購入。何気なく買った一眼レフの写真は、スマートフォンで撮った写真とは違い、透き通るような美しさと鮮やかさで感動をあたえてくれました。

その後、写真撮影について調べるにつれ、長時間露光などさまざまな撮影方法があると知りました。自分もこんな写真を撮ってみたい! と思うようになり、ネットで写真を見てはどうやったら撮れるのかを考え、その考えが正解なのかを確かめるために写真を撮りに行き、失敗や成功を繰り返しているうちに徐々に写真の魅力に引き込まれていきました。

山間の森の中、放射冷却により薄い霧が発生していた。薄暗い森の中に太陽の光が差し込むことで光芒が現れた。その輝きをはっきりと描こうと思った。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 40mm(80mm相当) / マニュアル露出(F8、1/40秒) / ISO 1000

影響を受けた写真家、写真集、メディアは?

スノーボードで活動していた時、とにかく海外にはすごいライダーが多数いらっしゃって、少しでも追いつけるようにと、海外ライダーばかりをみていました。

その延長でカメラでも海外サイトを自然に検索していました。その中で500pxというサイトと、元々好きで購入していたナショナルジオグラフィック誌海外版の写真サイトを見つけ、不特定多数のたくさんの写真を見ています。

写真集はナショナルジオグラフィックとスティーブ・マッカリーの写真集を持っています。

その影響は自分の作品のどんなところに現れていると思いますか?

まだ遠い道のりですが、日本の方が見慣れている風景をまるで海外の風景のように、いつも見ている日本の風景なのに新鮮で幻想的だと感じてもらえる写真を撮っていきたいと思っています。

もし、自分の写真を観ていただいた方がそう思ってくださったのならば、その影響が少しは作品に表れているのかな。と思います。

木々の隙間から月の光が差す風のない夜。その森の中で1匹のホタルが光り、連鎖しはじめた。数百のホタルが織り成す幻想的な光の風景。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO /40mm(80mm相当) / マニュアル露出(F2.8、50秒) / ISO 1600

PEN-Fのカラープロファイルコントロールについて。

オリンパス PEN-Fのカラープロファイルコントロールは、撮影時に12色それぞれの彩度を細かく調整でき、自分が想い描く表現に近づけます。しかも撮影現場で追い込める。そこが非常に気に入っています。

構図の中で見せたいものの彩度を上げ、見せたくないものの彩度を下げる。今までのカメラでは行えなかった細かな表現をその場で行い、確認までできるので、これを主題として目立たせて撮ってみるともっと写真がおもしろくなるのでは!? と、これまでの撮影現場では浮かばなかったアイデアが浮かぶことが何度もありました。

私の作品に多いのが、彩度が高めの色鮮やかなものです。これにカラープロファイルコントロールが良く合いました。逆に、彩度を落としてシックで落ち着いた大人な写真表現もできますし、モノクロも細かく調整できます。さまざまなスタイルの方に気に入ってもらえる機能だと思います。

藤原さんにとって色(Color)とは? 写真と色の関係について。

人それぞれの考えはあると思うのですが、私は写真を「真実を写す」ものとして捉えておらず、「光を表現するアート」、Photographyだと思っています。きっと、カメラを手にした時から海外サイトばかり見ていたので、こうした考えになったのでしょう。日本ではよく「記憶色」「記録色」などといわれますが、私の場合は、自分の脳に記憶されるその情景の色が「記憶色」だと考えています。

PEN-Fのカラープロファイルコントロールは、記憶色派の私には本当に重宝するシステムです。いつもなら自宅に帰ってから作品作りを行なうのですが、自宅に帰らずともその場で自分のイメージになります。

撮影地から街までの距離が近いため、迫力ある夜景が間近に広がっている。色とりどりのイルミネーションに包まれたこの光景は恋人たちにも人気のデートスポットだ。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 9mm(18mm相当) /マニュアル露出(F8、1/500秒) / ISO 200

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

最近は花のアップ写真にはまっています。風景を絡めた花の写真だと、背景選びや雲・太陽の位置関係など細かく調べ、その位置関係が気に入らない場合、撮影を断念することもあります。しかしアップで撮ると、家の庭や道路横に咲いてる花など、何気ない場所でどこでも撮影できるのがすごく楽しいです。そういう手軽さに加え、ちょうど今が花の季節ということもありハマっています。花をテーマとしたシリーズなどやっていきたいですね。

あとは、ポートレートや海外などもテーマにしていきたいなと考えています。写真を始める前は年2回海外旅行に行っていたので、次に行くときは撮影をメインにしようと計画中です。

写真展の開催や写真集の発売など、告知があればぜひ!

「東京カメラ部2016写真展 in Hikarie」が、東京・渋谷ヒカリエ9階にて6月23日(木)〜26日(日)まで開催されます。私もプリントで5作品、4Kディスプレイに5作品の計10点で参加しております。

大橋の先に広がる港町。徒歩だと渡り切るのに20分ほどかかる橋だ。夜の光が海面に反射することで、さらに輝きを増していた。人工光の色が鮮やかに表現できた。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 11mm(22mm相当) / マニュアル露出(F8、13秒) / ISO 400
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デジタルカメラマガジン2016年7月号では、藤原嘉騎さんがあみだしたOLYMPUS PEN-F「カラープロファイルコントロール」テクニックが掲載されています。あわせてごらんください!

協力:オリンパス株式会社

デジカメ Watch編集部