新製品レビュー

キヤノンPowerShot G9 X(実写編)

こんなにスリムで高画質。日常サイズの1型コンパクト

先般、外観・機能編をお伝えした、裏面照射型の1型CMOSセンサーを搭載するキヤノン「PowerShot G9 X」。より明るめのレンズを搭載する「PowerShot G7 X」から更にシェイプアップし、1/1.7型クラスのコンパクトデジタルカメラと見間違えそうな小型軽量のボディに仕上がっている。ボタン操作と液晶タッチ操作を組み合わせた独自の操作系も特徴的だ。

同社が2009年に投入した「PowerShot S90」から始まる“第2世代Sシリーズ”とも呼べるハイエンドコンパクトの流れを汲む1台だが、果たしてその“影のコンセプト”である「暗い居酒屋でも美しい写真の撮れるカメラ」をどう継承しているか気になるところ。今回、実写で検証してみたい。

遠景描写

ワイド端とテレ端で撮影している。それぞれ焦点距離は35mm判換算で28mm相当と84mm相当、絞り値はそれぞれF5.6に設定している。なお、撮影時の天候は晴れ、大気中の水蒸気は比較的少なめであった。描写はいずれの画角も画面中央部はシャープ。1/1.7型センサーのカメラで撮影した画像の場合、パソコンの画面で拡大していくと次第に鮮明さに欠けてくることが多いが、本モデルで撮影した画像はそのようなことが少ない。

同程度の画素数のAPS-Cセンサーを搭載するデジタルカメラとくらべてしまうとさすがに劣るところが見受けられるが、マイクロフォーサーズとならよい勝負ともいえるだろう。同様に階調再現性なども、まったく不足を感じさせないものである。なお、ワイド端およびテレ端ともわずかに画面周辺に像の乱れがあるのは少々残念な部分だが、コンパクトデジタルカメラとして考えるとさほど悪い結果ではない。

広角端(28mm相当)
望遠端(84mm相当)

感度

感度の設定範囲はISO125からISO12800までとする。作例を見るかぎりISO800までなら、ノイズや解像感の低下などほとんど気になるようなことはない。色のにじみも皆無といって問題ないものだろう。1段上がったISO1600になるとわずかにノイズが発生しはじめ、エッジのキレもISO800の場合と比べると気持ち劣るように感じられる。

ISO3200ではノイズ、解像感の低下とも目に付くようになる。特にエッジのキレは緩くなりはじめ、シャープネスの低下による色のにじみも見受けられるようになる。ただし、1/1.7型センサーの同感度の場合と比べると、それでもノイズは少なく感じられ、解像感の低下も小さい。この感度であれば、暗い居酒屋のようなところでも手持ちでの撮影が可能で、さらに美しい仕上がりの写真が得られることだろう。

以下のサムネイルは、青枠部分の等倍切り出しです
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

ISO3200よりも高感度となると、あきらかにノイジーに。特に最高感度であるISO12800はノイズの現れ方が顕著で、色のりもベタッとした感じに仕上がる。あくまでも記録用と述べてよいものである。

なお、G9 Xには3段分の減光を行うNDフィルターが搭載されている。明るい屋外で少しでも絞りを開きたいときや、可能な限り遅いシャッター速度で撮影を行いたいときなど、ベース感度のISO125では感度が高すぎるときに積極的に活用したい機能である。

見た目の印象を覆す画質

面積比で1.7型センサーの3倍近い受光面積を持つ1インチセンサーは、実に心強い。ノイズの発生がはるかに少なく、階調再現性も余裕あるものだからだ。加えてレンズの描写特性も余すこと無く再現する。

製品カテゴリーやサイズ感は確かにコンパクトデジタルカメラだが、その絵はカメラの小さな見た目の印象を覆すものである。ハイエンドコンパクトのライバルにはAPS-C以上の大きなセンサーに単焦点レンズ、といった製品も多いが、このG9 Xも1型センサー+ズームレンズのポケットサイズカメラとしてよく頑張っているといえる。

さらにブレに対しては、遠景撮影で発生することの多い角度ブレと、近接撮影で発生しやすいシフトブレを同時に補正するハイブリッドISを装備するという贅沢さ。6コマ/秒のコマ速もコンパクトデジタルカメラらしからぬものである。

多機能なスマートフォンを所有しながらこうしたデジタルカメラでも撮影を楽しもうとする人は、その描写に期待している部分が大きいと思う。本モデルはそのような期待に十分応えられるものであり、そのつくりのよさなどから、持つ喜びも同時に得られる。1型センサーのG9 Xは、いまや“暗い居酒屋”だけでなく、薄明かりのショットバーでも美しく撮れるカメラに進化した。

作品集

撮影に直接関する操作は従来通りなので、操作に迷うようなことは少なく、シャッターチャンスを見逃すようなことない。起動に関しては、際立って速くはないものの、不足を感じるようなことはない。

ISO125 / F5 / 1/320秒 / 29.0mm

テレ端84mm相当、開放F4.9での撮影だが、思ったよりもボケは大きくない。実焦点距離(30.6mm)から、開放F値は「もっと明るく!」とつい思ってしまうが、ボディの大きさ、重さを考えると現状で納得せざるを得ないだろう。

ISO125 / F4.9 / 1/60秒 / 30.6mm

こちらはワイド端28mm相当、開放F2での近接撮影。目立った周辺減光は見当たらず、ピントの合った部分のキレも高い。ボケ味は柔らかく、合焦面から滑らかにボケていることが分かる。

ISO125 / F2 / 1/500秒 / 10.2mm

テレ端、開放絞りでの撮影。合焦面のシャープネスはコンパクトカメラとしては上々だ。背景のボケに関しては、正直にいえばさほど美しいものではなく、一部二線ボケも見受けられる。周辺減光に関しては、ワイド端同様皆無といってよいレベル。

ISO125 / F4.9 / 1/1,000秒 / 30.6mm

シャッター速度は1/30秒。強力な手ブレ補正のお陰でシャープネスの高い描写だ。画面の隅々まで良好なキレである。液晶モニターは固定式だが、視野角が広いので、ある程度のローアングル撮影は可能。

ISO125 / F8 / 1/30秒 / 10.2mm

AFは迷いが少なく合焦までに時間を要しないため、ストレスのない撮影が楽しめる。レンズ根元のコントローラーリングには露出補正を割り当てて作例撮影に望んだが、掲載した写真のような露出の決定の難しいシーンでは、直感的に補正できたいへん快適であった。

ISO125 / F5.6 / 1/640秒 / 30.6mm

コンパクトデジタルの魅力はウエアラブルであることに尽きると思う。常に携帯でき、最高の瞬間を見逃さない。PowerShot G9 Xはそんなユーザーの期待に応えられるもので、起動・AFとも速く、さらに1インチセンサーの搭載で高画質ときている。

ISO125 / F8 / 1/500秒 / 10.2mm

ワイド端28mm相当、絞りはF4.5としているが、画面周辺部の描写はやや暴れ気味。階調再現性は1インチセンサーらしく、ハイライトおよびシャドー部ともよく粘り、コンパクトデジタルとしては文句のないものである。

ISO125 / F4.5 / 1/1,250秒 / 10.2mm

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。