新製品レビュー
キヤノンEOS 7D Mark II(外観・機能編)
全65点クロスAF+10コマ/秒連写…待望のAPS-Cハイエンドモデル
塙真一(2014/10/24 11:00)
EOS 7D Mark II(以下、7D Mark II)は、2,020万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーを採用するハイアマチュアモデル。10コマ/秒の高速連写機能を実現し、AFエリアも65点オールクロスとなった。5年ぶりのモデルチェンジとなるが、待たされた分だけの進化は感じられるスペックと機能に仕上がっている。
現在、APS-Cサイズのセンサーを採用するキヤノンの一眼レフモデルは、EOS Kiss X70、EOS Kiss X5。EOS Kiss X7、EOS Kiss X7i、EOS 70Dと今回の7D Mark IIの6モデル。その中でトップモデルとなるのが7D Mark IIである。
従来機となるEOS 7Dの発売は2009年10月なので、実に5年ぶりのモデルチェンジである。5年ぶりの新機種登場というだけあって、スペックもかなり進化していると感じる。画素数こそEOS 7Dの1,800万画素に対し、7D Mark IIは2,020万画素と控えめなスペックアップに見えるが、それ以外の部分に関しては各所に改善、進化が見られる。
AFが大幅に進化
もっとも大きな進化点はAFフレームが19点から65点へと大幅に増えたことと、連写が8コマ/秒から10コマ/秒へと高速化したことだろう。65点のAFフレームはF5.6光束対応の縦横クロス測距が可能で、中央ではF2.8とF5.6のクロス測距となる。しかも、APS-Cサイズのカメラだけあって、AFフレームもファインダー内の広範囲に配置されることとなる。
さらに、AFフレームの選択モードも通常の1点モードのほか、スポット1点、上下左右や周辺部のエリアも使用する領域拡大(上下左右)や領域拡大(周囲)、AFフレームを特定のゾーンに分けて測距するゾーン、ラージゾーンといったエリア選択モードを搭載する。これらのエリア選択を素早く行なえるよう測距エリア選択レバーも装備された。被写体によってAFを使い分けるというときにこのレバーはなかなか良く考えられていると感じる。
ファインダー撮影時のAF速度、精度に不満はない。使用するレンズにもよるだろうが、テストで使ったEF 24-70mm F4L IS USMではどのAFエリアを使ってもほぼ快適なピント合わせが行なえた。
また、像面位相差AFが可能なデュアルピクセル CMOS AFを採用することで、ライブビュー時のAFも高速化が図られている。実際の使用感としては、やはりファインダー撮影には及ばないが、まあまあ実用レベルではあるという印象であった。
10コマ/秒での連写が可能。カードスロットはデュアル仕様に
連写に関しては約10コマ/秒とこのクラスのカメラとしては格段に速い。ミラーの上下振動もよく抑えられており、気持ちの良い連写が可能だ。シャッター音も比較的低音で、キレの良い音というよりは上品な音だと感じる。また、静音モードでも約4コマ/秒の連写が可能なのも撮影シーンによっては重宝しそうだ。
カードスロットはSDとCFのデュアルスロットを採用する。従来機のEOS 7DではCFスロットのみだったが、CFとSDのどちらも使えるのは嬉しいし、デュアルスロットによりバックアップ機能なども充実する。ボディの厚みが若干増えたのはこのためかもしれないが、使い勝手を考えればメリットはあると考えて良いだろう。
高速連写と記録メディアの関係性をチェック
約10コマ/秒の高速連写が可能なEOS 7D Mark II。気になるのはどの程度連続して高速連写が可能なのか、カードへの書き込みはどれくらいの時間がかかるのかということだ。せっかくなのでテストしてみた。
テスト方法:RAW+JPEG(L/Fine)で5秒間の高速連写を行ない、その後、メモリーカードへのアクセスランプが消灯するまでの時間を計測した。テストを3回行ない、その平均を掲載している。
記録メディア | 転送速度表記 | 平均時間 |
---|---|---|
サンディスクExtreme PRO CF | 160MB/秒 | 6.37秒 |
サンディスクExtreme PRO SDXC | 95MB/秒 | 7.73秒 |
サンディスクUltra SDHC | 15MB/秒 | 48.92秒 |
これらのうち、Extreme PROはCF(UDMA7)、SDXD(UHS-1、Class10)とも現行の高速タイプ。Ultraはベーシックな性能で、かつ古い世代のものだ。
約10コマ/秒で5秒間(つまり計50コマ)、そしてRAW+JPEG(L/Fine)ということもあり、さすがに最新のExtreme PROを使用しても、連写後の書き込みには若干の時間を要した。ただし、その時間はExtreme PROのCFなら6秒台、SDなら7〜8秒台とわずかだ。これに対し、15MB/秒のUltraでは、48秒程度の待ち時間が発生した。
連写に強いEOS 7D Mark IIと組み合わせて使うなら、少しでも速いメモリーカードを使う方が、撮影時のストレスは大幅に少なくなることだろう。
(協力:サンディスク株式会社)
上級機と同一の操作性を実現
光学ファインダーは視野率100%で、ファインダー倍率も約1.0倍(50mmレンズ装着時)と大きい。厳密なテストをしたわけではないが、ファインダー端ギリギリのフレーミングも正確に写っていたので、視野率100%はほぼ正確と思って良さそうだ。
一方、背面の液晶モニターはワイド3型の104万ドット。バリアングルタイプではなく、固定式のモニターとなる。ライブビュー撮影や再生時にも見やすい液晶モニターであると感じる。
画像処理エンジンは最新のDIGIC 6をデュアルで搭載。これにより、最高10コマ/秒の高速連写を実現したほか、常用ISO感度もISO100〜16000までとなった。高感度の画質に関しては次の実写編で言及したいと思う。
7D Mark IIの大きな特徴として挙げられるのがGPS機能の搭載だ。Exifに位置情報を付加できるだけでなく、撮影ルートをデータとして記録できるロガー機能も搭載される。オートパワーオフ時や電源オフ時にも記録可能なので、旅行などで行程を記録しておきたいときなどに使うと重宝するかもしれない。
ただし、Wi-Fi機能は装備されない。EOS 6DではGPSの搭載と一緒にWi-Fi機能も装備されたが、7D Mark IIではGPSのみの装備となる。スマートフォンやタブレット端末との連携が一般的となってきた今、Wi-Fi機能もあればもっと良かったのにと思うところである。
操作性に関してはほぼ満点といってよいだろう。私はEOS 5D Mark IIIを使用しているが、操作で迷うことは皆無であった。そもそも新設された測距エリア選択レバー以外のボタンやダイヤル類の配置はEOS 5D Mark IIIとまったく同じと言ってよい。操作ボタンのカスタマイズ機能も同等なので、カメラが変わってもまったく同じように使えるのは嬉しい。
ハイアマチュアモデルとはなっているが、プロの業務使用にも応えてくれるカメラといってよいだろう。
本体の大きさは約148.6×112.4×78.2mmで、重さは約910g。従来機となるEOS 7Dと比べると厚みが4mmほど増しているが、それ以外はほぼ同レベル。一眼レフカメラだけにグリップ部も大きく、ホールド感に不満はないが、どちらかと言えば太めのグリップ部は長時間の撮影では疲れやすいと感じた。ただし、このあたりの印象は手の大きさやカメラの持ち方によって変わってくるので、あくまでも私の印象と思ってほしい。
次回は感度や解像力といった画質に関しての内容を実写画像とともにお伝えしたい。実写編もどうぞご期待ください。