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【新製品レビュー】キヤノンEOS-1D Mark IV

〜1Dシリーズ10年の集大成
Reported by 野下義光

EOS-1D Mark IV。実勢価格は56万1,600円前後

 2001年12月。筆者が初めて購入したデジタル一眼レフカメラが「EOS-1D」(2001年12月発売)でした。それ以来「EOS-1D Mark II」(2004年4月発売)、「EOS-1D Mark IIN」(2005年9月発売)、「EOS-1D Mark III」(2007年5月発売)と歴代EOS-1D系を主力機として使い続けてきた筆者ですが、今回最新の「EOS-1D Mark IV」(2009年12月発売)をレビューさせていただくこととなりました。

前モデルと変わらない操作性

 筆者に限らず、おそらく大部分のEOS-1D系を使っているプロカメラマンが大歓迎したであろうEOS-1D Mark IVの最大のポイントは、EOS-1D Mark IIIと操作系が全く変わっていないことです。ボタン類の数も位置も全く同一で、EOS-1D Mark IIIと同じ感覚で使用することができます。例えば、ボディ上部にある表示パネルの照明ボタンなどは暗闇で手探りで操作することが多々ありますが、ほかのEOS Digitalではこのボタンの位置も変更されてしまいました。しかしこれもEOS-1D Mark IVではEOS-1D Mark IIIと同じで、身体に染み付いた操作感がそのまま活かせます。

 業務で使用する場合、主力機は同型機複数台が基本ではありますが、昨今の経済状況では現実問題としていきなり手持ちのEOS-1D Mark III全機をEOS-1D Mark IVに買い換えるのは困難です。しばらくはEOS-1D Mark IIIと混在させて使用する状況も多いと思われます。操作系が全く同一なのでどちらも同じにというよりは、どちらを使っているのか区別がつかないほどで、導入した当日から少なくともEOS-1D Mark IIIと同じ使い方は可能でしょう。

 現場では疲労困憊・意識朦朧で撮影することもあるので(笑)、無意識でも操作できるように慣れた操作系をそのまま継続してくれるのはプロ仕様機としては重要なことです。動画撮影機能も加わり、操作すべき項目は増えましたが、従来通りのボタン類にうまく組み込んでいる点も評価できます。

測距点

測拠点は再び45点が任意選択可能に

 第二の歓迎すべきポイントが45点のAF測距点を全点任意選択できるように戻ったことです。EOS-1D Mark IIIでは任意選択できるAF測距点が19点となってしまい、クロスセンサー化で精度は向上したもののEOS-1D、EOS-1D Mark II、EOS-1D Mark II Nの45点任意選択から大きくかけ離れてしまいました。EOS-1D Mark IIIの任意選択19点はあらゆるジャンルの同業者から異口同音に大不評でした。点数こそ19点とアマチュア機よりはまだ多めでしたが、もともと45点で配置されていたのを間引いて19点にしたのでフレーミングとの整合性が非常に悪く、例えば11点しかないペンタックス「K20D」などの方が11点を絶妙に配置していたのでずっと使いやすかったくらいです。EOS-1D Mark IVでは元通り45点全てを任意選択できるようになり、さらにクロスセンサーも大幅に増えたのは喜ばしい限りです。

 EOS-1D系の使命でもある連写性能は最高10コマ/秒でEOS-1D Mark IIIと同じ。シャッターレスポンスも筆者はEOS-1D Mark IIIとの違いは感じられませんでした。EOS-1D Mark IIからEOS-1D Mark IIIへ移行した時は、EOS-1D Mark IIIの方が連写速度もシャッターレスポンスも大きく向上し使い始めの頃は違和感さえ覚えましたが、EOS-1D Mark IVはEOS-1D Mark IIIとまったく同じ感覚で使えました。EOS 7Dも最高8コマ/秒ではあるものの、被写体が暗いとすぐに連写速度が大幅にダウンしてしまうので連写を重要視したい場面ではやはりEOS-1D系は安心です。

 でも残念なのがEOS-1D Mark IVでも被写界深度確認ボタンで絞り羽根を絞り込んだ状態のまま連写ができません。EOS-1D Mark IIIの長期レポートで検証しましたが、EFレンズの絞り羽根の駆動が10コマ/秒に追いつけないので最高速連写ができるのは絞り開放時のみ。少しでも絞ると連写速度は落ちてしまいます。既存のレンズの絞り羽根の駆動速度は上げられないのでせめて絞り込んだ状態を保持したまま連写できれば、使える場面は限定されるものの絞り込んでも最高速連写が可能になるはずですが、EOS-1D Mark IVでは残念ながらそれはできない仕様となっていました。

45点全領域の拡大は新機能 不評も多い19点選択だが、EOS-1D Mark IIIと併用する場合は便利かもしれない

注目の高感度性能は?

 次に画質についてです。まず画素数は順当にアップしました。画素数アップに伴うマイナス面は全く感じられません。EOS-1D Mark IIIの1,010万画素では媒体によっては物足りないこともあり、必然的にEOS-1Ds系を使う人も多くいました。とはいえEOS-1Ds Mark IIIほどの画素数(2,110万画素)は要らないという人も多いので、EOS-1D Mark IVの1,610万画素ならわざわざEOS-1Ds系に頼らなくても済み、この機種だけで仕事ができるという人も増えると思います。

APS-Hサイズ相当の1,610万画素CMOSセンサーを搭載 EOS-1D系ならではの信頼性と適度な撮像素子サイズ。さらにSDHC/SDメモリーカードとCFへの同時書き込み。業務での動画撮影機としては最高峰となりうるでしょう

 仕事で撮った画像は、納品後は煮るなり焼くなり(笑)どのように扱われるかカメラマンがあれこれ言う範疇ではなくなることも多く、上がってビックリするようなトリミングがされていることも時々あります。実際はノートリミングでフレーミングして撮る方が楽ではありますが、依頼仕事は使いやすいカットを撮ることも使命なので後々使いやすいようにトリミングの幅を持たせて撮ったりもします。画素数アップはその分トリミング耐性のアップにも繋がるので、特に報道の分野では歓迎されることでしょう。

 画質で特筆すべきは高感度性能の大幅な向上です。筆者が使用したEOS Digitalでは「EOS 5D Mark II」が最高の高感度性能でしたが、EOS-1D Mark IVはそれをも凌いでいます。この高感度性能はそのままライブビュー画面にも活かされています。光学ファインダーを覗いても真っ暗な被写体でもライブビュー画面は非常に有効です。EOS 5D Mark IIもかなりがんばってくれましたが、EOS 5D Mark IIではノイズだらけとなるような暗さでもEOS-1D Mark IVはしっかりと被写体を映し出してくれました。この高感度性能は動画にも活かされるので、映像分野でも期待大と思われます。

 EOS-1D Mark IIIでは不満だった細かい機能もしっかり改善されていました。例えば、シャッター速度の上限および下限の設定。EOS-1D Mark IIIではなぜか中途半端に制限が設けてあり、せっかくの機能も実戦ではほとんど役立てることができませんでした。一方、EOS-1D Mark IVではこの制限も取り除かれ、新たに設けられたISOオートも組み合わせると非常に有効な使い方ができます。

 例えばポートレート撮影で、被写体ブレを防ぐため経験上シャッター速度の下限は1/125秒に設定。絞りは開放F1.4のレンズで描写も良く必要以上にはボケず適度なボケは得られるF2〜2.8に設定。ISOは100〜400。この設定でISOオートにするとプログラムAEで撮影できます。絞りやシャッター速度による写真表現は予め設定しておけるので、あとは表情やポーズなど被写体に集中力を注ぐことができます。高感度性能のアップはRAW現像時の増感耐性もアップするので極力白飛びは起こさせない分割測光の性格と合わせ、RAWなら完全に露出もオートで撮影できるようになりました。

EOS-1D系としてはISOオートを初採用。高感度は拡張機能でISO102400相当まで設定可能。月明かりでのポートレート撮影も夢ではなくなりつつある!? シャッター速度の上限と下限を同一にしてシャッター速度を完全に固定することもできるようになった。終日スタジオでストロボ撮影する場合などシャッター速度をロックできるので便利
マニュアルホワイトバランスの登録数がEOS-1D Mark IIIの3個から5個へ増量。地味な機能ですが意外と重宝する機能でもあります。細かい機能もさらに充実しました 数多くのカメラマンに撮影を依頼する出版社側にこそ必要な機能。この機能が各プロ仕様機に浸透すれば喜ばしい
オートライティングオプティマイザも装備。RAW現像時に再度設定できるのであるとありがたい機能だ これはEOS 7Dの電子水準器。水平と垂直の目安が全く無い白ホリの撮影など、EOS-1D・EOS-1Ds系にこそ欲しかった機能だがEOS-1D Mark IVには残念ながら未搭載

まとめ

 EOS-1D Mark IIIではEOS-1D Mark IIよりも連写性能アップやクロスAFセンサーを増やすなど性能面では大きな進化を遂げてはいたものの、せっかくの性能も機能面で活かしきれず不満点続出でした。しかし、EOS-1D Mark IVは些細な不満はあるものの、性能も機能も充実させつつ操作系は継続。実際にEOS-1D Mark IVでは試していませんが、歴代EOS-1Dでは一瞬海に水没させても全く平気なタフさもきっとEOS-1D Mark IVでも継承されているでしょう。

 初代のEOS-1Dが発売され丸10年目をこのEOS-1D Mark IVで迎えることになると思いますが、まさに10年の集大成とも言える非常に完成度の高いプロ仕様機だと思います。

SDメモリーカード系とCFのデュアルスロットを採用 SDHC/SDメモリーカードとCFの自動切換え設定時に、片方のメディアがいっぱいとなった旨の表示は自然に消えるようになった。EOS-1D Mark IIIでは次のシャッターを切るまでずっと表示され続けて非常に目障りだった点も改善された
撮影可能枚数表示(画面右下)が4桁となった。従来は3桁ですぐに「999」となって撮影可能枚数不明となったが、4桁なら最大「9999」までは表示可能

実写サンプル

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します(連写サンプルをのぞく)。

画質比較

・EOS-1D Mark IV(左)とEOS-1D Mark III(右)

EOS-1D Mark IV / EF 24-70mm F2.8 L USM / 4,896×3,264 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 24mm EOS-1D Mark III / EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 24mm
EOS-1D Mark IV / EF 24-70mm F2.8 L USM / 4,896×3,264 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 70mm EOS-1D Mark III / EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 70mm
EOS-1D Mark IV / EF 70-200mm F4 L IS USM / 4,896×3,264 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:太陽光 / 189mm EOS-1D Mark III / EF 70-200mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:太陽光 / 189mm
EOS-1D Mark IV / EF 70-200mm F4 L IS USM / 4,896×3,264 / 1/2,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:太陽光 / 160mm EOS-1D Mark III / EF 70-200mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/2,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:太陽光 / 160mm
EOS-1D Mark IV / EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,264×4,896 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 24mm EOS-1D Mark III / EF 24-70mm F2.8 L USM / 2,592×3,888 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 24mm
EOS-1D Mark IV / EF 70-200mm F4 L IS USM / 4,896×3,264 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 200mm EOS-1D Mark III / EF 70-200mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 200mm
EOS-1D Mark IV / EF 70-200mm F4 L IS USM / 4,896×3,264 / 1/100秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 116mm EOS-1D Mark III / EF 70-200mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/100秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:太陽光 / 116mm

高感度比較

・EOS-1D Mark IV

※共通設定:EOS-1D Mark IV / EF 70-200mm F4 L IS USM / 4,896×3,264 / F8 / 0EV / マニュアル / WB:太陽光 / 89mm

ISO1600 ISO3200 ISO6400
ISO12800 ISO25600(拡張設定) ISO51200(拡張設定)
ISO102400(拡張設定)

・EOS-1D Mark III

※共通設定:EOS-1D Mark III / EF 70-200mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / F5.6 / 0EV / マニュアル / WB:太陽光 / 89mm

ISO1600 ISO3200 ISO6400(拡張設定)

・EOS 5D Mark II

※共通設定:EOS 5D Mark II / EF 70-200mm F4 L IS USM / 5,616×3,744 / F8 / 0EV / マニュアル / WB:太陽光 / 116mm

ISO1600 ISO3200 ISO6400
ISO12800(拡張設定) ISO25600(拡張設定)

・EOS 7D

※共通設定:EOS 7D / EF 70-200mm F4 L IS USM / 5,184×3,456 / F8 / 0EV / マニュアル / WB:太陽光 / 70mm

ISO1600 ISO3200 ISO6400
ISO12800(拡張設定)

連写速度比較

・EOS-1D Mark IV(10コマ/秒)

※共通設定:EOS-1D Mark IV / EF 24-70mm F2.8 L USM / 4,896×3,264 / F2.8 / 0EV / マニュアル / WB:太陽光 / 38mm

※サムネイルをクリックすると長辺640ピクセルにリサイズした画像を表示します

・EOS 7D(8コマ/秒)

※共通設定:EOS 7D / EF 24-70mm F2.8 L USM / 5,184×3,456 / F2.8 / 0EV / マニュアル / WB:太陽光 / 30mm

※サムネイルをクリックすると長辺640ピクセルにリサイズした画像を表示します




野下義光
(のしたよしみつ)熊本県生まれ、千葉県育ち。国立木更津工業高等専門学校機械工学科卒業後、エンジニアとして大手コンピューター会社に5年勤務。その後、夢を捨てきれず写真界へ身を投じる。現在ジュニアアイドルを中心にWeb、DVDジャケ写などで活躍中。フルデジタルの写真集も多数手がけている。趣味はネットオークション(笑)

2010/3/30 00:00