ミニレポート

サイレントモード+連写を手ブレ防止に活用する

(パナソニックLUMIX DMC-GX7)

 思うところあってLUMIX DMC-GX7を手に入れた。日常を記録するために、軽量で画質のいいカメラが欲しかったからだ。

 仕事カメラであるPENTAX K-3の性能は素晴らしいものだ。しかし、TPOによっては、一眼レフを構えるのがはばかられる時もある。それでも、iPhoneのカメラではなく、きちんとしたカメラで写真を残したい。GX7はそんな場面にも、しっくりと馴染んでくれる。

 以前は、動画撮影のために所有するLUMIX DMC-GH2に、オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZを着けて持ち出す事が多かった。しかし、GH2は高感度画質が優れず、オリンパスレンズとのコンビでは手ブレ補正も効かないので、室内や夜の撮影はまず無理な相談だった。そんな事情がある中、GX7で手ブレ補正がボディ側に組み込まれたことは、導入への大きな後押しになった。

あらゆるレンズで手ブレ補正が有効。だが……

 本来、パナソニックのシステムは手ブレ補正機構をレンズ側に備える。しかし、広角ズームや単焦点レンズでは、これが省略されたものが多い。GX7なら、そうした純正レンズや他社製レンズも含め、あらゆるマイクロフォーサーズ用レンズで、撮像素子シフトによる手ブレ補正が働く。

明るい単焦点レンズとボディ内手ブレ補正の組み合わせで、アベイラブルライト撮影の可能性は大きく広がる
オリンパスを始めとする、他社製レンズでも手ブレ補正が効き、その場の光を生かした撮影が可能……なのだが

 ただ惜しい事に、GX7の手ブレ補正は、撮像素子シフト方式で先行するオリンパスと比べると、効果が弱いという声が高い。後発ゆえのメカニズムの熟成不足とささやかれているが、シャッターボタンのストロークがわかりにくく、半押しから押し切る感覚が少々曖昧である事も、手ブレを助長する一因かもしれない。

 しかし、シャッターを押す動作が手ブレに影響するのは最初の1コマだけであり、ドライブモードを「連続撮影」にして連写すれば、2コマ目以降には影響しない。

サイレントモード+連写で手ブレを防ぐ

 シャッターを押しっぱなしで連写すれば手ブレが抑制できることは、モータードライブ付の銀塩一眼レフの頃から、ある種の奥の手として知られていた。だが、一眼レフの連写はシャッター音がうるさく、手ブレ防止のためだけに使うのははばかられる。

 その点、GX7のサイレントモードは、ほぼ完全な無音で連写できる。つまり、手ブレを抑える目的で連写したとしても、誰にも迷惑をかけることはない。

 連写する事で、本当に手ブレ防止の効果があるかどうか、実際に試してみよう。実験方法は、暗めの室内の明るさを再現した照明の下で、連写と単写(シングル)で10コマずつ撮影し、1シリーズとする。それを5回繰り返し、最も典型的な結果が現れたシリーズのセットを参考として掲載する。

 いずれもサイレントモードで、もちろん、手ブレ補正はONで撮影した。感度はISO400、絞りF4.5で、シャッター速度は1/8秒だ。

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです

連写・高速(H)

シングル(単写)

 結果を見ると、まず言えるのは、連写したシリーズのほうが全体に手ブレが少なく、ブレているものでも、上下のブレは十分に抑えられているという事だ。それに対し、シングルで撮影したシリーズは、シャッターを押す時に生じる動きを抑えきれず、上下に大きくブレてしまっている。

 確率でみると、連写のシリーズでは10コマ中の5コマ(50%)が、ピクセル等倍で見てもブレが気にならないレベルまでシャープに写っている。それに対し、シングルの方は、わずかに1コマ(10%)がそのレベルに届いたに留まる。

連写スピードの適正な設定は?

 連写のコマ速度は「高速」、「中速(ライブビュー有)」、「低速(ライブビュー有)」の3段階から選ぶ事ができる。手ブレ抑制に活かそうとする場合、この中のどの設定が一番適当だろうか。

設定できる連写速度は3段階。一番左のsH(超高速)モードがグレーアウトされているのはRAW同時記録で撮影テストしたからだが、sHモードはゴルフスイングなどの分解写真向けで、シャッター速度が1/40秒以上に制限される。暗所での手ブレ防止としては意味がないので、今回は除外した

 名称からすると一見「ライブビュー有」の後者2つが有利とも思われる。しかし実際に撮ってみると、被写体の動きが見えるせいで、反射的にそれを追ってしまい、手ブレが誘発されるようだ。

「高速」の場合、ライブビューではなくクイックビューのコマ落としで表示される。それでも被写体状況の確認には十分なので、私の感覚では「高速」にセットするのが一番撮影しやすかった。

 いずれにせよ、ファインダーで被写体を追いかけようとしない事が、手ブレ防止という意味では肝心だ。

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 公平に見れば、今回のネタである“連写することで手ブレを抑えるテクニック”の効果は、限定的なものだ。手ブレ補正機能が当たり前になった現在では、熟練したカメラマンならば「そんな気休めに頼らず、シングルモードで慎重にシャッターを切った方が確実」と考えるかもしれない。

 しかし、シャッターボタンを押す動きがブレの一因であることは間違いなく、連写によって、これを回避できることは確かだ。また、結果として得られる多数のショットから、ブレが少ない1枚を選ぶ事ができるという、副次的なメリットもある。サイレントモードとの組み合わせなら、周囲に迷惑をかける事もないのだから、眉唾と思いながら、頭の隅に置いておいても損はないだろう。

大高隆

1964年東京生まれ。美大をでた後、メディアアート/サブカル系から、果ては堅い背広のおじさんまで広くカバーする職業写真屋となる。最近は、1000年存続した村の力の源を研究する「千年村」運動に随行写真家として加わり、動画などもこなす。日本生活学会、日本荒れ地学会正会員

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