ミニレポート

シャッター3種類の使い分けを考える

(OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II)

OM-D E-M5 Mark IIには3種類のシャッターがある。ひとつは物理的なフォーカルプレーンシャッターである「メカシャッター」。それから、機構ブレを抑えることができる「低振動モード」時の「電子先幕シャッター」。もうひとつが、「ハイレゾショット」と「静音撮影モード」時の「電子シャッター」だ。

当然のことながら、露光時間(=シャッタースピード)を調節するだけであれば、昔ながらのメカシャッターだけで十分に用は足りる。にもかかわらず、E-M5 Mark IIには、電子先幕シャッター、電子シャッターという、計3種類のタイプのシャッター動作が用意されているわけで、どうしてそうなっているのか、そして、それらをどういうふうに使い分ければいいのか、というのを考えてみたい。

走るクルマをメカシャッターと電子シャッターで撮り比べてみた。厳密には、メカシャッター(フォーカルプレーンシャッター)でもローリング歪みは発生しているはずだが、幕速が速いのでほとんど気にならない。一方、電子シャッターではあからさまに不自然に変形してしまっている。これが電子シャッターの泣きどころだ。
メカシャッター(1/8,000秒)
電子シャッター(1/8,000秒)
高速連写した画像をこんなふうに並べてみた。ローリング歪みがおもしろい画面効果になってくれている

メカシャッターは、撮像素子前面を物理的な先幕と後幕(以降、「メカ先幕」「メカ後幕」と書くことにする)に走行させることによって露光を行なうもので、幕(実際には、複数の羽根状のパーツの組み合わせで構成されている)の走行によって生じる振動が避けられない(個人的には、メカ先幕走行終了時のブレーキングでの振動が、もっとも大きいのではないかと考えている)。

メカシャッターにおいては、このシャッターショックは、露光開始時のメカ先幕の走行に起因するだけに避けようがないが、一眼レフのミラーショックに比べればはるかに小さいために、以前は無視して大丈夫なものだった。しかし、撮像センサーの画素が小さくなるにつれて、徐々に大きな問題として取りざたされるようになってきた。

というのは、シャッターショックを低減するのは容易でないため、それに起因する機構ブレの大きさは変わらないのに、画素サイズが小さくなることで、相対的にブレが大きくなってしまうからだ。仮に、シャッターショックによって2μmの機構ブレが発生したとして、画素サイズが8μmなら0.25ピクセルのブレなので目立たないかもしれないが、画素サイズが半分の4μmになると、0.5ピクセルのブレになるので気になる可能性が高い。そういう問題である。

この厄介な機構ブレを軽減するキリフダとなるのが、電子先幕シャッターだ。露光を開始する先幕を、撮像センサーが持つ電子シャッター機能に置き換えるもので、メカ先幕の走行がない=シャッターショックの発生源がないのだから、機構ブレを根本から解消できる。とてもありがたい機能である。

ただし、先幕が電子で後幕がメカというハイブリッド構成である関係で、高速シャッター時に露光ムラが生じやすいという欠点も持っている。それを防ぐため、E-M5 Mark IIでは、シャッタースピードが1/320秒を超えると自動的にメカシャッターに切り替わるようになっている。いちいち切り替えなくてもカメラが勝手に露光ムラを防いでくれる。お利口さんである。誰にとはいわないが、爪の垢をわけてもらって欲しいと思う。

ちなみにE-P5は、電子先幕シャッター使用時にも、シャッターボタンを全押しすると、いったんメカシャッターが閉じてからメカ先幕が開き、振動が落ち着くのを待って(つまり、わずかながらレリーズタイムラグが長くなる)電子先幕が作動するようになっている。

それに対して、E-M5 Mark IIでは、メカ先幕は作動せずにメカ後幕だけが走行する仕様に変更されている。振動の発生源が減っているというだけでなく、レリーズタイムラグを長くする要因も排除されているということだ。念のためにオリンパスに確認したところ、レリーズタイムラグは、メカシャッター、電子先幕シャッター、電子シャッターともに0.044秒で変化しないとのことである。

3つめの電子シャッターはハイレゾショットのために用意されたもので、先幕だけでなく、後幕も撮像センサーの電子シャッター機能を利用する。振動のもとになる幕の走行がないため、無音、無振動である。実際には、絞りの駆動音があるので、完全な無音ではない(絞り開放ではほぼ無音となる。ボディに耳を当てて全押しすると、電気的なノイズのようなかすかな音で、シャッターが切れたことが分かる程度)。5mも離れれば、静かな場所でも聞き逃しそうなレベルなので、実用上は無視してよさそうに思う。

ハイレゾショットで夜景を撮ってみた。クルマのライトが重なりあって派手なことになるんじゃないかと期待していたら、思ったよりも地味。おまけにテレビ塔まで消えちゃったし(8秒)

なにしろ、撮像センサーを0.5ピクセル単位で正確に制御しないといけないため(E-M5 Mark IIの撮像センサーの画素ピッチは約3.76μmなので、0.5ピクセルは約1.88μmとなる)、それこそ1μm未満の機構ブレも許容できない。しかも、短時間で8回の露光を行なう関係で撮影間隔を短くしないといけないため、メカ後幕のシャッターショックが次の露光に残るようでは困る。そういうわけなので、電子シャッターを採用しているのである。

電子シャッターの強みは、無音、無振動であることのほか、最高速1/16,000秒の高速シャッターが使えることもあるが、動く被写体に対して「ローリング歪み」が出るという泣きどころもある。電子シャッターは、メカシャッターでいうところの幕速(おおざっぱには、シャッターの動作スピードのこと。通例、シャッター幕が画面の端から反対側の端まで移動するのにかかる時間の長さであらわす)に相当するCMOSセンサーの順次読み出しが遅いため、動く被写体が歪んで写ってしまうのだ。

 ◇           ◇

というところを踏まえて、いくつか実験してみた。1つめは、それぞれのシャッターでのブレの度合いの比較である。カメラは三脚に固定して、電子レリーズを使ってシャッターを切っている。

三脚はわざとセンターポールをめいっぱい伸ばしてブレやすい状況を作っている。手持ちで手ブレ補正をオンにした状態でのテストもおもしろそうだったが、バラツキが大きくなるだろうことを考えると比較が難しいと思われるので、ここでは三脚を使用した。手ブレ補正はオフにしている。

三脚はマンフロット190T+3ウェイ雲台を使用し、脚は伸ばさずにセンターポールだけ伸ばしている。この状態でいろいろ試してみたところ、1/60秒前後がもっとも画質の差が大きかった。といっても、50%縮小で見れば判別できない程度の違いだが、どうせならめいっぱいの高画質で撮りたい、と考えるのであれば、電子先幕シャッターなり電子シャッターを使うほうが気分よく撮れるだろう。(サムネイルは等倍切り出し画像です。クリックするとオリジナル画像を表示します)
メカシャッター(1/60秒)
電子先幕シャッター(1/60秒)
電子シャッター(1/60秒)

予備実験の結果をまとめると、1/250秒よりも低速側で少しずつ影響が出はじめ、1/60秒付近でもっとも目立つようになる。といっても、ピクセル等倍で見比べると分かるぐらいの違いで、ブレとして認識できるレベルではない。正直いって、「あ、少しアマいねぇ」程度の差でしかない。しかも、違いが分かるのはピクセル等倍で見比べての話で、50%縮小だとまず見分けはつかない。

ただし、条件によってはもっと大きな違いが出る可能性は十分にある。特に、手持ち撮影の場合、手ブレ補正機構の誤作動によってブレが大きくなる可能性も考えられるので、もうちょっとややこしい話になるはずだ。

ついでなので、連写時の振動の影響についてもチェックしてみた。露出をばらすときに連写+AEブラケットをよくやるのだが、その際の画質への影響が心配だったからだ。ごらんいただいたのは、今度は連写したシーケンス2コマ目である。

E-M5 Mark IIの連写モードは、最高10コマ/秒(メカシャッター時)または最高11コマ/秒(電子シャッター時)の「連写H」と、最高5コマ/秒の「連写L」の2種類ある。電子先幕シャッター時は連写Lのみなので、計5パターンの結果を見比べてみた。

3種類のシャッター、2種類の連写スピードの組み合わせで連写したシーケンスの2コマ目を掲載する(電子先幕シャッターでは連写Lのみとなるため、計5種類となる)。シャッタースピードは1/60秒。(サムネイルは等倍切り出し画像です。クリックするとオリジナル画像を表示します)
メカシャッター・連写H:2コマ目(1/60秒)
電子シャッター・連写H:2コマ目(1/60秒)
メカシャッター・連写L:2コマ目(1/60秒)
電子先幕シャッター・連写L:2コマ目(1/60秒)
電子シャッター・連写L:2コマ目(1/60秒)
メカシャッター、電子先幕シャッターともに、はっきりとしたブレが見られる。このブレは、3コマ目以降も同じ傾向だった。メカシャッターよりも、電子先幕シャッターのほうがブレが大きいが、どうしてそうなったのかは不明である。

メカシャッターと電子先幕シャッターの画像は、ブレと思われる明らかな解像の低下が認められるのに対し、電子シャッターの画像は1コマ目と変わらない。メカシャッター、電子先幕シャッターの両方ともがほぼ同じ結果となっているので、前のコマの露光後のメカ後幕の走行およびメカチャージ(たぶん、後者のほうが影響は大きいはずだ)の振動が原因だと考えてよさそうだ。

こちらは、メカ先幕走行時の振動よりもかなり大きく、50%縮小で見ても違いがわかる。もちろん、これも、テスト条件によって結果に違いが出る可能性は十分ある。ちなみに、シャッタースピードが十分に高ければ、メカシャッターの2コマ目以降も問題はなかった。

参考までに、高速シャッター時の画像もごらんいただこう。メカシャッターと電子シャッターの連写Hの2コマ目で、シャッタースピード1/320秒(1/60秒のカットとは光線が違うのはご勘弁を)。メカシャッターと電子シャッターの画質の差は無視できるレベルで、つまり、高速シャッターでは機構ブレは気にしなくていいということである。
メカシャッター・連写H:2コマ目(1/320秒)
電子シャッター・連写H:2コマ目(1/320秒)

というのをまとめてみると、

  • シャッタースピードが1/320秒以上であれば、連写でも単写(1コマ撮り)でも機構ブレは気にする必要はない。ローリング歪みが起きないメカシャッターでOK。
  • シャッタースピードが1/250秒以下で単写の場合は、電子先幕シャッター(ローリング歪みが問題ない条件なら電子シャッターでも可)を使ったほうがいい結果が得られる。
  • シャッタースピードが1/250秒以下で連写の場合、ローリング歪みが出にくい条件では電子シャッターがおすすめ。出やすい条件では画質は我慢してメカシャッターを使いましょう。

といったところ。

ワタシ的には、動きものはほとんど撮らないが、やっぱりローリング歪みが出ると気持ち悪いので、手持ちで単写のときは電子先幕シャッター、連写+AEブラケット時は電子シャッター、というふうに使い分けようと思っている。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら