「LUMIX G Fisheye 8mm F3.5」が6月30日に発売された。マイクロフォーサーズ初の魚眼レンズとあって、待ち望んでいた魚眼好きの読者も多いだろう。先日試用する機会があったので、インプレッションをお届けしたい。
個人的に対角魚眼レンズは、なんらかのマウントで欲しいと考えていた。ただし、具体的な撮影目的や実現したいアイデアはない。告白すると、「もう少し小さくて軽いなら常用してみたい」程度の購入意欲だ。いくら魚眼レンズが単焦点レンズとしては大きめとはいえ、低レベルな興味の持ちようで恥ずかしい。
その点、LUMIX G Fisheye 8mm F3.5はとても小さい。35mmフルサイズ用、APS-Cサイズ用、フォーサーズ用のいずれと比べても軽量でコンパクトだ。重量は約165g。APS-Cサイズ用の10mm F2.8 EX DC Fisheye HSM(シグマ用)が475g、フォーサーズ用のZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeが485gなので、このジャンルではずば抜けて軽い製品ということになる。
その割にLUMIX Gレンズ共通の高級感もたたえており、DMC-GH1との見た目のマッチングも良い。マウント面は金属製。レンズ前面の大きさからすると小さくまとまっているところや、コロンとした見た目にも惹かれるものがある。
レンズフードは組み込み式。一桁のライカ風焦点距離表記が新鮮だ | カブセ式のフロントキャップが付属 |
DMC-GH1に装着。前玉の直径が大きくてかっこいい | 別の角度から。なかなかマッチしている |
APS-Cサイズ用の10mm F2.8 EX DC Fisheye HSM(右)と比較 |
最短撮影距離は10cm。マウント面からの数値なので、レンズ前面のすれすれまで被写体に近づけることになる。フリーアングル液晶モニターを使ったマクロ撮影が楽しそうだ。近接時のAFも速くてスムーズ。同じパナソニックのLEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm F2.8 ASPH. MEGA O.I.S.には敵わないものの、フォーカスリングの操作感も悪くない。
画質も良好。画面の中心はもとより、絞り開放から周辺までくっきり写るのが気持ちよい。絞り開放では周辺光量が軽く落ちるものの、F4で解消。解像のピークはF4かF5.6だろう。RAW、JPEGともパープルフリンジがほぼ見られず、逆光時に極端な輝度差が生じるエッジに出る程度だ。正直、いまどきの魚眼レンズの画質レベルに、感銘を受けてしまたった。
面白いのは、レンズ後部にフィルターを挟み込む機構があること。所定の大きさに切ったシートフィルターを装着するためのもので、利用法としては、NDフィルターによる減光が思い浮かぶ。近距離の被写体を撮影する際、背景をぼかすために絞りを開けたいが、最低感度でも露出過多になる……こんなシチュエーションでの使用が考えられるだろう。ちなみに絞りは7枚羽根の円形絞りだ。
マウント面。フィルターホルダーにはシート状のフィルターを差し込める | 例えば、富士フイルムのND 0.6。ND4相当の減光(2段分)が可能だ |
こんな感じで装着できる。少し大きすぎた |
フィルターホルダーに装着できるのは、1辺が21.5〜22mmの正方形で、さらに四隅をそれぞれ切り落とした状態。レンズの説明書にほぼ実物大と思われる寸法図があるので、それに倣って作業することになる。難しい点は特にないが、それなりに面倒といえば面倒だ。
前面へのフィルターの取り付けが不可能で、しかも画角が広く、フィルターをレンズ前面にかざすと手が映り込んでしまう。そうした苦しい事情を何とかするための機構、という考え方もできるが、とにかくフィルターが使える点は評価したい。
動画も面白かった。例えば、クルマの助手席から前に広がる光景を録画すると、右側にいる運転手の一部から、左のミラー、左横をすぎる他車までを収められる。画面横を移動する物体が伸び縮みしながら通り過ぎていく表現は、魚眼動画ならでは面白さに感じた。
というわけで、マイクロフォーサーズ用のレンズとして文句なしの製品。あえて難癖をつけるとすれば、定価で9万9,750円という値段だろう。トイカメラチックな気楽さで魚眼レンズを楽しみたい、あるいは魚眼レンズに興味があるので軽く試してみたいと考えている人には、自分も含めてなかなか手を出しづらいものがある。やはり明確な撮影目的を持つようになってから、購入を検討しようと思った次第だ。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
・アスペクト比
イメージサークルよりも一回り大きな撮像素子を採用したことで、アスペクト比を変更しても、同じ画角で撮影できるのがDMC-GH1の特徴(1:1を除く)。16:9での画角180度が新鮮だ。
一般的なレンズ交換式ミラーレス機のアスペクト比変更の例として、LUMIX DMC-G1でも撮影。3:2や16:9では左右が切れて、DMC-GH1より画角が狭いのがわかる(1:1での撮影機能はない)。
16:9 DMC-G1 / 8mm F3.5 EX DG Circular Fisheye / 約3.2MB / 4,000×2,248 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 |
・絞りによる描写の違い(遠距離)
シャープなのはF4かF5.6。回折現象のためか、F16以降は目立って甘くなる。開放F3.5は周辺部が若干暗い。
※共通設定:DMC-GH1 / LUMIX G Fisheye 8mm F3.5 / 約5.5〜6.4MB / 4,000×3,000 / 0EV / ISO100 / WB:オートF3.5 | F4 | F5.6 |
F8 | F11 | F16 |
F22 |
・絞りによる描写の違い(近距離)
ほぼ最短距離での撮影(F22は割愛)。
※共通設定:DMC-GH1 / LUMIX G Fisheye 8mm F3.5 / 約4.0MB〜約4.2MB / 4,000×3,000 / +1EV / ISO100 / WB:オートF3.5 | F4 | F5.6 |
F8 | F11 | F16 |
・逆光
DMC-GH1 / LUMIX G Fisheye 8mm F3.5 / 約5.2MB / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート |
2010/7/12 00:00