気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

PENTAX K-3【第1回】

新世代プラットフォームを得たKマウント・フラッグシップ

 先日までペンタックスKマウントデジタルカメラのトップモデルの座にあったK-5 IIsは、光学ローパスフィルターを完全に取り払うことによって、APS-Cサイズのセンサーでありながら35mmフルサイズセンサー搭載機に負けない画質を持つ名機として静かな支持を集めてきた。しかし、K-5 IIsを構成する基本プラットフォームは2009年発売のK-7から受け継いでおり、より新しいプラットフォームを持つライバル機種に比べて見劣りする点も多く、機能面の古さは否めなかった。

 この遅れを挽回する方法は、最新の技術水準に立ったプラットフォームを開発する以外にはなく、その課題に取り組んだ結果として登場したK-3は、まさしくペンタックスユーザーが待ち望んでいたニューモデルだ。

HD DA 40mm F2.8 Limitedを装着したPENTAX K-3。

 外形デザインはK-7/K-5系で確立されたKマウントDSLRのイメージを踏襲しつつ、改良されたファインダーやUHS-I対応デュアルスロット搭載などによるコンポーネントの大型化にあわせ、各部を調整しながら上手にまとめあげている。聞くところによれば、今回K-3を担当した工業デザイナーは、かつてK-7の外形デザインを担当し、今日まで受け継がれてきたスタイリングの基本を生み出したご本人だそうだ。つまりK-3のデザインは、K-7の時にはできなかったことも含め、4年の歳月を経て、もう一度ブラッシュアップしたものと言えるのだろう。

 機能面の向上については本誌の「新製品レビュー」(近日掲載)にゆずり、ここではスペック以外の線から、手にとって初めてわかることを中心に話を進めていこう。

 まず、最初にわかる変化はグリップが大型化されたことだ。寸法の違いは極々わずかなものだが、少々小さ過ぎたK-5 IIsのグリップをベースとして、幅をわずかに詰め、長さをほんの少し伸ばした適正なサイズに直されている。手の大きな男性の場合、K-5系のグリップでは中指や薬指の先がボディにあたり、長時間の撮影で指先が痛くなってしまうことがあった。

 その点、K-3のグリップはK-5系よりも前後に少し伸ばされ、指先のアタリが軽減されている。地味な変更だが、手の大きな私にとっては嬉しい改良だ。一方でグリップの幅は少しスリムになっているので、小さな女性の手にも持て余すことはないと思われる。親指がかかる背面のサムレストも従来よりはっきりと盛り上がった形状になり、DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDMのような重量級レンズをつけても、安定したカメラホールドができるようになった。

背面のサムレストがはっきりとした突起になり、指がかりがよくなった。ボディ前面のグリップの大型化より、こちらの変更の方がホールドの向上には効いていると思う。

 グリップ側の形状がかなり変わったのとは対照的に、ボディ左側や底面についてはK-7/K-5の形状をほぼ踏襲している。そのため、K-7のボディ形状に合わせて設計されたLブラケット:BL-K7(KIRK製)を問題なくK-3にも流用できた。

 LブラケットはQuickTimeVRやステッチング撮影に必須の機材なので、K-3用の発売を待たずに既存のK-7用が使えることは大変ありがたい。ただ、このBL-K7は製造が中止されており、新たに入手することは難しい。

 この他にK-7/K-5用Lブラケットの有名な製品としてはReally Right Stuff(RSS)のBK7-Lがある。こちらも一時生産中止になっていたが、現在は再生産され入手できるようだ。ただし、残念ながらRRSのBK7-Lは位置決め用の2つのフランジのうち、ボディの前側をつかむ方がK-3のラインとマッチしておらず、少し削ってやらないと取付けできないようだ。この辺りのこともいずれヒトバシラとして検証してみたい。

 グリップの形状変更に合わせる形でバッテリーグリップも新型に切り替わった。といっても、形状をボディに合わせたことが主な変更点で、機能はほとんど変わらない。新しいバッテリーグリップであるD-BG5はボディと共通のリチウムイオン電池D-LI90Pを1本、または単三型電池を6本使う。

バッテリーグリップD-BG5

 一目で分かる変更点として、縦位置グリップの中央あたりがえぐられている。これにより、握った時に指先が三脚ネジ(ダイヤルノブ)にあたることを防ぎ、ホールドが向上した。なお、バッテリーホルダーは旧機種用のD-BG4と同じもので、共用可能のようだ。バッテリーグリップ付のK-3とK-5を同時に使う場合にもホルダーを区別する必要はなく、余計な混乱は生じない。両機種を併用するユーザーにとってはありがたい配慮だと思う。

手前がK-3用のD-BG5で、その奥がK-7/K-5用のD-BG4。
左がK-3用のD-BG5で、右がK-7/K-5用のD-BG4。

 K-3とK-5のグリップ形状の違いを知るためには、このように新旧のバッテリーグリップを並べ、後方斜め上から見比べるのが一番わかり易いかもしれない。新しいD-BG5のほうが、K-3のグリップ形状に従うように、右側のグリップエンドがわずかに長く幅が狭くなっている。背面のグリーンボタンとAFボタンの配列が従来と逆になっていることもわかる。慣れるまで違和感はあるかもしれないが、多くの場合は新しいレイアウトの方が使いやすいはずだ。

 たまたま、発売当日(11月1日)にK-5 IIsの記事でも紹介したkawolさんのライブがあったので、初期設定だけを済ませたK-3を携え、撮影させていただいた。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDM / 1/80秒 / F4 / 0EV / ISO3200 / マニュアル露出 / WB:3,330K / 170mm

 この日は照明が特に暗かったのでISO3200を基準感度として撮影した。そのため前回記事のISO1600〜ISO2000とはイーブンの比較にはならないが、まずまずの高感度性能を保っていることは感じていただけると思う。

DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDM / 1/50秒 / F4 / 0EV / ISO3200 / マニュアル露出 / WB:3,330K / 88mm
DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDM / 1/80秒 / F4 / 0EV / ISO3200 / マニュアル露出 / WB:3,330K / 118mm
DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDM / 1/80秒 / F4 / 0EV / ISO1600 / マニュアル露出 / WB:3,330K / 60mm

 正確なフレーミングを可能にする100%視野率のファインダーはもちろん変わらず。接眼光学系が刷新されたことにより、ファインダーのキレのよさは、さらに磨きのかかったものとなっている。倍率がわずかに上がったのに加え、視野の平坦性が向上していることを感じる。視度補正機構も従来のスライド式から、アイピース右側のダイヤルで調整するスタイルに改められ、カメラを構えたまま右親指を伸ばして調節することが可能になった。全体として、ピントの山をつかみやすく、かつ、長時間の撮影でも疲れにくいファインダーに仕上がっている。

 この日の撮影で明らかになったことがもう1つある。静粛性が依然として素晴らしいということだ。K-5 IIsと比較すると音質が少し硬くなっているのものの、カシッという短い音がするだけで、それに続く残響がほとんどない。ミラーショックの少なさは特筆すべきもので、K-5系ではわずかに掌に伝わってきたコトンという感触もなく、ただシャッター音だけがカシッと聞こえる。今までにない不思議な感覚だ。

 たまたま同じ現場に入っていたカメラマンはEOS 7Dに御手製の防音カバーをつけて撮影していたのだけれども、3mくらい離れた位置で、カバーの中のEOS 7Dが立てるシャッター音よりも、私が顔の前でレリーズしたK-3のシャッター音の方が静かな程だった。発売前の噂で「シャッター音がK-5 IIsより少し大きい」と聞き、ライブ撮影に使うには厳しいかと思っていたが、それは杞憂に過ぎなかった。

DA 17-70mm F4 AL [IF] SDM / 1/125秒 / F6.3 / 0EV / ISO250 / 絞り優先AE / WB:オート / 70mm
DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDM / 1/500秒 / F6.3 / 0EV / ISO250 / 絞り優先AE / WB:オート / 250mm
DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDM / 1/100秒 / F13 / 0EV / ISO160 / TAv / WB:オート / 250mm
DA★ 60-250mm F4 ED [IF] SDM / 1/1,600秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 250mm

 遠距離を一定速度で動く被写体で高速動体性能を云々するのはナンセンスだが、河を渡る新幹線を流し撮りするいつものテストの最中に、ファインダー像が安定し被写体を追いやすいことに気がついた。新設計されたというミラーダンパーの効果により、ミラーが定位置にバシッと止まるので、8.3コマ/秒の最高速で連写している最中も被写体像がきちんと見えるからだろう。数字として現れにくい点だけれども、一眼レフの要であるミラー機構の刷新は、カメラとしてのフィールを大きく向上させている。

 あいにく晴天に恵まれず、充分なコントラストのない光線状態でのファーストショットになったことは少々気の毒だったが、それぞれのレンズなりの描写の違いなどはK-5 IIsの時よりもはっきりと作例写真に現れているように思う。撮像素子サイズがAPS-Cのままで2,400万画素に向上したことで、回折の影響を受けやすくなっていることも懸念されるが、今回は深く絞り込んで撮影できる光量がなく判断を留保せざるを得なかった。いずれ条件を整えてキチンと検証するつもりだ。

DA 17-70mm F4 AL [IF] SDM / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO320 / 絞り優先AE / WB:オート / 43mm
HD DA 40mm F2.8 Limited / 1/160秒 / F3.5 / -1EV / ISO320 / 絞り優先AE / WB:オート / 40mm
HD DA 40mm F2.8 Limited / 1/800秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO320 / 絞り優先AE / WB:オート / 40mm
HD DA 40mm F2.8 Limited / 1/60秒 / F10 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 40mm
HD DA 40mm F2.8 Limited / 1/25秒 / F8 / -0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 40mm
HD DA 40mm F2.8 Limited / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO1000 / 絞り優先AE / WB:オート / 40mm
HD DA 40mm F2.8 Limited / 4秒 / F11 / -2.3EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:太陽光 / 40mm
HD DA 40mm F2.8 Limited / 1/25秒 / F3.5 / -1.7EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 40mm

 画質について現時点でコメントするなら、暗部の階調に優れるということが印象に残った。同じ光学ローパスフィルターレス素子搭載という観点から比較すると、K-3とK-5 IIsのあいだには、ローパスレス化によるモアレや偽色の頻発を抑制するための技術的アプローチに違いがある。K-5 IIsでは、撮像素子が捉えた映像をデジタルデータに変換する際に、画像エンジンの内部でモアレ除去処理をかけてそれを抑えたのに対し、K-3では、ユーザーの判断により適宜ローパスセレクターを使うことを前提に、画像エンジンでのモアレ除去処理を省略したという。結果として、より高品位な映像を記録することが可能になり、優れた階調表現を得ているのだと考えられる。

 スカイツリーの写真は三脚を立てて小雨の中で撮影したが、ライトアップの影になって暗く落ち込んだ構造部や、展望室の窓の微妙な明るさの違いなどがよく捉えられている。あるいは、オレンジ色の放電灯に照らし出された電柱のある街角の写真を見ると、左手の暗い窓ガラスの中に、鉄冊の落とす影と、それ自体の映り込みが複雑に絡み合っているのが、はっきりと描写されている。これらに現れている暗部階調再現の優秀さはK-3の優れた特性として挙げるべきだろう。

 ◇           ◇

 正直なところ、数年前までは、ペンタックスのカメラというのは他社のライバルにくらべ、あまり認知されていないことは否めなかった。しかしその状況の中で、例えばコレジャナイロボモデルやカラーモデルの展開に象徴されるような話題性のある製品や、K-01やQシリーズのような他社にない製品を投入してアピールすることで、徐々にではあるけれども「PENTAX」というブランドが認知されるようになってきたと感じる。

 そこで新たに興味を持った写真ファンが実際にペンタックスのレンズ交換式カメラを手にした時に、がっかりするようなことがなく、「あぁなるほど」と納得するような具体性を持った新機種が求められていたのだが、K-5 IIsではその点で少し、明快な訴求力が足りなかった。しかし、今度のK-3は違う。

 ローパスセレクターをはじめとする新採用のテクノロジーや改良点は数え上げればきりがなく、この稿でそのすべてに触れることはかなわないと思うが、私自身がこのカメラを使いこなすためにも、ひとつひとつ検証し、その都度紹介していきたい。

大高隆

1964年東京生まれ。美大をでた後、メディアアート/サブカル系から、果ては堅い背広のおじさんまで広くカバーする職業写真屋となる。最近は、1000年存続した村の力の源を研究する「千年村」運動に随行写真家として加わり、動画などもこなす。日本生活学会、日本荒れ地学会正会員

http://dannnao.net/