ニコンD700【第12回】

やっぱりフルサイズは高感度画質がすごい

Reported by 北村智史


 D700の売りのひとつは、高感度撮影時の画質のよさだ。なんといっても、FXフォーマット(フルサイズ)で有効1,210万画素という余裕綽々のスペックだ。APS-Cサイズの2倍以上の広さの撮像素子で、しかも画素数控え目とくれば、悪いはずがない。

 が、しかし、である。新しく長期リアルタイムレポートをはじめたキヤノンのEOS Kiss X4も、高感度の画質がいい。有効1,800万画素という画素数はAPS-Cサイズでは最多で、画素サイズの小ささを考えれば感度面ではかなりの不利を背負っているはずだ。にもかかわらず、ノイズが少ないものだからびっくりしてしまった。正直なところ、APS-Cサイズのセンサーでここまでやれるなんて……って感じである。

 実際、EOS Kiss X4の画素サイズを計算してみると、撮像画面サイズが22.3×14.9mmで記録画素数は5,184×3,456ピクセル。単純に割り算すると画素サイズは約4.3μm。画素面積は約18.5平方μmとなる。一方のD700は、36×23.9mmで4,256×2,832ピクセルだから、画素サイズ約8.4μm。画素面積は約70.6平方mで、EOS Kiss X4のざっと3.8倍である。

 もちろん、マイクロレンズの集光効率だったり、配線などの遮光部の占める割合、カラーフィルターの透過率といった要素にも左右されるので一概には比べられないが、それでも画素面積が4倍近くも違うのだ。発売時期に1年半もの差があるにしても、これだけの面積の違いを埋めるのはまず無理だろう。

 まあ、ノイズ処理のうまさには定評のあるキヤノンの最新モデルだけに、X4もそれなりに健闘はするだろう。が、どの程度健闘するかは予想もできないし、だったら、撮り比べて見るべし。というわけで、夜のお台場である(って、別にお台場じゃなくたってかまわないんですけどね)。

 さて、「高感度(キヤノンのは「撮影時の」が入る)ノイズ低減」は、どちらも「しない」、「弱め」、「標準」、「強め」から選ぶようになっている。D700はあまり深く考えずに「標準」のまま使ってきたが、EOS Kiss X4は長期リアルタイムレポートにも書いたとおり「弱め」に設定している。

 使用説明書によると、D700はISO2000以上になると、高感度ノイズ低減処理がはたらく。「しない」を選択していても、感度が「Hi 0.3(ISO8000相当)」以上になると、「弱め」よりも弱いノイズ低減処理が行なわれる。一方、EOS Kiss X4はすべての感度で作動する。低感度時はおもに低輝度部(ようは暗い部分)のノイズ低減効果が期待できるとのこと。ちなみに、「しない」にしていても、高感度域では弱いノイズ低減処理がはたらいているらしいのは長期リアルタイムレポートで確認済みである。

 とりあえず、「しない」から「強め」まで、最低感度から最高感度まで撮って見比べることにした。なお、同じ感度、同じ露出値で撮ると、ピクチャーコントロールの設定の関係でD700のほうが少し明るめに仕上がるので、EOS Kiss X4で撮影したカットは1/3EV明るい(シャッター速度が遅い)ものを掲載する。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・D700

※共通設定:AT-X M100 PRO D / 4,256×2,832 / F8 / WB:オート
ISO100(高感度ノイズ低減:しない)※拡張感度ISO200(高感度ノイズ低減:しない)ISO400(高感度ノイズ低減:しない)
ISO800(高感度ノイズ低減:しない)ISO1600(高感度ノイズ低減:しない)ISO3200(高感度ノイズ低減:しない)
ISO6400(高感度ノイズ低減:しない)ISO12800(高感度ノイズ低減:しない)※拡張感度ISO25600(高感度ノイズ低減:しない)※拡張感度
ISO100(高感度ノイズ低減:弱め)※拡張感度ISO200(高感度ノイズ低減:弱め)ISO400(高感度ノイズ低減:弱め)
ISO800(高感度ノイズ低減:弱め)ISO1600(高感度ノイズ低減:弱め)ISO3200(高感度ノイズ低減:弱め)
ISO6400(高感度ノイズ低減:弱め)ISO12800(高感度ノイズ低減:弱め)※拡張感度ISO25600(高感度ノイズ低減:弱め)※拡張感度
ISO100(高感度ノイズ低減:標準)※拡張感度ISO200(高感度ノイズ低減:標準)ISO400(高感度ノイズ低減:標準)
ISO800(高感度ノイズ低減:標準)ISO1600(高感度ノイズ低減:標準)ISO3200(高感度ノイズ低減:標準)
ISO6400(高感度ノイズ低減:標準)ISO12800(高感度ノイズ低減:標準)※拡張感度ISO25600(高感度ノイズ低減:標準)※拡張感度
ISO100(高感度ノイズ低減:強め)※拡張感度ISO200(高感度ノイズ低減:強め)ISO400(高感度ノイズ低減:強め)
ISO800(高感度ノイズ低減:強め)ISO1600(高感度ノイズ低減:強め)ISO3200(高感度ノイズ低減:強め)
ISO6400(高感度ノイズ低減:強め)ISO12800(高感度ノイズ低減:強め)※拡張感度ISO25600(高感度ノイズ低減:強め)※拡張感度

・EOS Kiss X4

※共通設定:EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / F8 / WB:オート
ISO100(高感度撮影時のノイズ低減:しない)ISO200(高感度撮影時のノイズ低減:しない)ISO400(高感度撮影時のノイズ低減:しない)
ISO800(高感度撮影時のノイズ低減:しない)ISO1600(高感度撮影時のノイズ低減:しない)ISO3200(高感度撮影時のノイズ低減:しない)
ISO6400(高感度撮影時のノイズ低減:しない)ISO12800(高感度撮影時のノイズ低減:しない)※拡張設定 
ISO100(高感度撮影時のノイズ低減:弱め)ISO200(高感度撮影時のノイズ低減:弱め)ISO400(高感度撮影時のノイズ低減:弱め)
ISO800(高感度撮影時のノイズ低減:弱め)ISO1600(高感度撮影時のノイズ低減:弱め)ISO3200(高感度撮影時のノイズ低減:弱め)
ISO6400(高感度撮影時のノイズ低減:弱め)ISO12800(高感度撮影時のノイズ低減:弱め)※拡張設定 
ISO100(高感度撮影時のノイズ低減:標準)ISO200(高感度撮影時のノイズ低減:標準)ISO400(高感度撮影時のノイズ低減:標準)
ISO800(高感度撮影時のノイズ低減:標準)ISO1600(高感度撮影時のノイズ低減:標準)ISO3200(高感度撮影時のノイズ低減:標準)
ISO6400(高感度撮影時のノイズ低減:標準)ISO12800(高感度撮影時のノイズ低減:標準)※拡張設定 
ISO100(高感度撮影時のノイズ低減:強め)ISO200(高感度撮影時のノイズ低減:強め)ISO400(高感度撮影時のノイズ低減:強め)
ISO800(高感度撮影時のノイズ低減:強め)ISO1600(高感度撮影時のノイズ低減:強め)ISO3200(高感度撮影時のノイズ低減:強め)
ISO6400(高感度撮影時のノイズ低減:強め)ISO12800(高感度撮影時のノイズ低減:強め)※拡張設定 

 ざっと全体を見た感じでは、D700のほうが感度1段分くらいノイズが少ない感じ。「高感度(撮影時の)ノイズ低減」を「しない」で撮った画像を見比べると、ISO800まではむしろEOS Kiss X4の方が画素数が多いのとシャープのかけ方がうまいからか、しゃっきりして見える。

 が、ISO1600以上になると少しずつ差が出てくる。ISO3200では、EOS Kiss X4はカラーノイズが気になってくる。また、レインボーブリッジの主塔付近の縦のケーブルがところどころ切れたように再現されているのも目に付いてくる。ISO6400は、EOS Kiss X4はぎりぎりっぽい感じがするのに対し、D700はまだ余裕があるように見える。そのせいか、「高感度(撮影時の)ノイズ低減」のレベルを上げるにつれて、EOS Kiss X4はカラーノイズが減っていく反面、ディテール再現が悪くなっていくが、D700はそんなに大崩れはしない。

 というのを見ての個人的な感想だが、EOS Kiss X4はハード的にはISO1600くらいまでで、ISO3200やISO6400は画像処理でうまくカバーしているように思える。一方のD700はハードの性能でISO6400まで頑張れている感じがする。このあたりが、画素サイズの違いなのかもしれない。やっぱり、フルサイズってすごいなぁ、って感じである。


・D700そのほかの作例
  • RAWデータをLightroomおよびPhotoshopで加工しています。
  • サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの画像を別ウィンドウで表示します。
今回はちょっと趣向を変えてLightroom+Photoshopを使い、オリンパスのレンズ交換式デジタルカメラでおなじみのアートフィルター風に加工したのを紹介させていただこうと思う
D700 / Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 2,832×4,256 / 1/80秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO3200 / 35mm / トイフォト風
E-620の長期リアルタイムレポートで紹介したLightroomのプリセットで現像して、Photoshopでノイズを加えて仕上げている
D700 / Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 4,256×2,832 / 1/25秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO3200 / 35mm / ラフモノクローム風
白トビを抑えるために露出はちょっと控えめ。Photoshopでのぼかしのパラメーターも少しいじっていたりする
D700 / Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 4,256×2,832 / 1/50秒 / F5.6 / +1.3EV / ISO3200 / 35mm / ファンタジックフォーカス風
手ブレ補正がない分、5コマとか7コマとか撮ってブレの少ないカットだけ残す。下手な鉄砲は数打って当てよう作戦である
D700 / Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 4,256×2,832 / 1/10秒 / F5.6 / -1.0EV / ISO3200 / 35mm / ファンタジックフォーカス風
ほんとは窓の部分以外は真っ暗状態なのをライトトーン風に。ISO3200でこれをやってもひどいことにならないのはフルサイズならでは
12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSM / 2,832×4,256 / 1/50秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO3200 / 12mm / ライトトーン風
Lightroom上でホワイトバランスをいじって、雲をわざと毒々しい色に仕上げてみた。後処理だと出したい色に調整できるのが便利
12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSM / 4,256×2,832 / 10秒 / F11 / 0EV / ISO200 / 24mm / ポップアート風
夜景とポップアート(あくまで「もどき」ですけど)を組み合わせると超常現象的な色になってくれる。けっこう遊べる
12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSM / 4,256×2,832 / 10秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 21mm / ポップアート風
彩度を-50まで落としてちょっとレトロ調をねらってみた。のどかな風景だけど、実は結構寒かった。で、風邪引いてGWは寝て過ごした
D700 / Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 4,256×2,832 / 5秒 / F11 / 0EV / ISO200 / 35mm / ファンタジックフォーカス風
肉眼ではあまり気にならない照明の色のバラツキがポップアート風の加工で強調されて、面白い効果になってくれた
12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSM / 2,832×4,256 / 1.6秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 12mm / ポップアート風
画面中央付近の青い光は屋形船の灯り。「デートですか〜!」と叫んでる酔客に「デート中で〜す!」と叫び返すカップルがいたりする。みんな元気だ
12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSM / 2,832×4,256 / 10秒 / F11 / 0EV / ISO200 / 18mm / トイフォト風
ポップアートでホワイトバランスだけ微調整。それにしても、こんなにシャープなレンズだったっけ? って思うくらいのキレのよさ
D700 / Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 2,832×4,256 / 10秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 35mm / ポップアート風
彩度を-75まで下げて、シャドーの色相と彩度を微調整。Photoshopでの加工はせずに仕上げている。
12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSM / 2,832×4,256 / 1/20秒 / F5.6 / -1.0EV / ISO1600 / 12mm / ライトトーン風


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/5/19 00:00