ニコンD500を買うなら一緒にXQDも!

その1:いま話題のXQDとは?ベンチマークでその実力に迫る!

まさかの“無限RAW連写”……圧倒的な記録速度を検証

カメラ好きの方なら2016年に入って様々な所で「XQD」というワードを耳にした方も多いことでしょう。なんとなく“速いメモリーカードらしいんだけど……”という認識を持っている読者も多いと思いますが、これまで一眼レフカメラ向けの記録メディアとして使われてきたSDメモリーカードやCFと何が違うのでしょうか?

今回はそんなXQDの特徴や、その驚異的な性能について詳しく紹介していきましょう。

次世代の記録メディアとして最近注目されているXQDメモリーカード(XQD)ですが、一眼レフカメラ用の記録メディアとして採用されたのは以外と古く、2012年3月発売のニコンのD4(CFとのデュアルスロット)が最初です。その後継のD4Sにも同じく採用されていたのですが、どちらもプロ向けのフラッグシップ機だったため一般的とはいえませんでした。

スチルカメラで初のXQD採用モデル、ニコンD4。

ところが、今年3月発売のD5、4月発売のD500にXQDが採用されたことにより風向きが変わり一気に注目を浴びることになりました。

ニコンD5。購入時にデュアルXQDスロットモデルを選択可能。
発売以来、大人気のニコンD500。XQDとSDメモリーカードのデュアルスロットを装備する。

XQDの特徴はなんといってもその圧倒的な速さです。既存のSDメモリーカードやCFもカメラの高画素化や高速連写に対応して高速化を進めてきましたが、それらを大きく引き離す転送スピードを誇るのがポイント。

とはいえ、“すごく速い”といっても具体的にどのくらい速いのかが気になるところですよね。

そこで今回はレキサーのXQD「Lexar Professional 2933x XQD 2.0」とニコンD500を用いてベンチマークした結果をご紹介します。

そもそもXQDとは

ベンチマーク結果が気になるところですが、その前にXQDメモリーカードの歴史と特徴についてもう少しだけ紹介しておきましょう。

XQDメモリーカードが発表されたのは今から約6年前の2010年11月で、4K動画や多画素、高速連写に対応するため一部の業務用ビデオカメラや前述のとおりプロ向けの一眼レフカメラ用メディアとして採用されてきました。

この頃はまだ業務用メディアとして使われることが多かったXDQですが、既存のSDメモリーカードやCFの規格上の限界が迫ってきたこともあって注目され始め、今回の一般向けカメラであるニコンD500に採用されたことで一気に有名になりました。

左からXQD、SDメモリーカードUHS-II、同UHS-I。具体的な製品名は、Lexar Professional 2933x XQD 2.0、Lexar Professional 2000x SDHC/SDXC UHS-II(128GB)、Lexar Professional 633x SDHC/SDXC UHS-I(128GB)。

XQDのデータ転送インターフェイスはPCI Expressが使われています。最新のXQDはPCI Express 2.0 x2およびUSB3.0を採用したXQDフォーマットVer.2.0(最大転送速度1,000MB/秒)のものとなり既存メディアとは数字が一桁異なります。

メディアのサイズはSDメモリーカードよりひと回り大きく、CFよりは小さいといったサイズ感で、SDメモリーカードでは外部に露出していた端子が内部に収まっている点も特徴です。

XQDの端子面。

メモリーカードへの書き込みだけでなく、読み出し速度も優れていますので撮影後のPCへの取り込みもスムーズになる点も見逃せません。

Lexarからは、XQD用のUSB3.0カードリーダーも発売済み。

ニコンD500でベンチマーク

ではニコンD500とLexar Professional 2933x XQD 2.0 (440MB/秒)を用いたベンチマーク結果をご紹介しましょう。

D500のメモリーカードスロットはXQD+SD(UHS-II対応)のデュアルスロットなので、今回は比較用に現在SDカードとしては最も高速なLexar Professional 2000x SDHC/SDXC UHS-II(300MB/秒)とUHS-I規格で最も速いLexar Professional 633x SDHC/SDXC UHS-I (95MB/秒)の2機種を用意しました。どちらもSDカードとしては高速なタイプですが結果はいかに!

D500のメディアスロット。XQDとUHS-II対応SDメモリーカードのデュアルタイプだ。
10コマ/秒の連写を行うには連写モードを「CH」(高速連写)にセットする。

連写可能枚数の比較

D500は秒間10コマの高速連写が可能ですが、いくら連写が速くても連写可能枚数が少なければ実用的ではありません。まずは3枚のカードを使用して連写可能枚数を測定しました。

測定条件:高速連写モードでバッファフル(連写が途切れる)まで撮影し、連続撮影可能な枚数を測定。画質はRAWのみ、およびRAW+JPEGの2パターン。RAWは14bitロスレス圧縮、JPEGはFINE★で、以後も同様です。

D500連写可能コマ数
RAWRAW+JPEG
XQD200(無限)108
UHS-II SD10238
UHS-I SD3726

まず驚くのがXQDを使用することでRAW撮影時に無限連写が可能になる点です(実際はD500の設定上限である200回でストップ)。

D500の連続撮影コマ数は200コマまで。XQDならこの上限まで、RAWで記録速度を落とさず連写できる。

一般的に高速タイプといわれるUHS-I対応SDカードのLexar Professional 633x SDHC/秒DXC UHS-I(95MB/秒)が37枚で止まることを考えれば驚異的な数字です。UHS-II規格のLexar Professional 2000x SDHC/秒DXC UHS-II(300MB/秒)の結果も大きく引き離すことになりました。

さすがにRAW+JPEG(最高画質)撮影では無限連写とまではいかないですが、100枚を超える連続撮影が可能で実用上まったく問題のない結果。SDカードではUHS-IIタイプでも38枚と秒間10コマ撮影ではやや心もとない結果です。

つづいて、撮影後にデータの記録が終了するまで(アクセスランプが消えるまで)の時間を測定してみました。撮影後であってもメモリーアクセス中は撮影画像の確認ができないなどカメラ側の機能が制限されるため、どれだけ早くアクセスランプが消えるかという時間も重要です。連続撮影可能枚数ばかりが注目されがちですが、実際の撮影ではこの時間の長さが撮影の快適さを左右するポイントになります。

測定条件:上記結果よりUHS-Iカードでも連続撮影可能な35枚をD500の連続撮影コマ数で設定後、高速連写モードで撮影。撮影終了後からカメラ本体のアクセスランプが消えるまでの時間を測定。XQDについては100枚連写時の時間も測定。

D500書き込み終了までの秒数
撮影枚数RAWRAW+JPEG
XQD35枚(速すぎて)測定不能1.3
XQD100枚(速すぎて)測定不能2.8
UHS-II SD35枚2.04.7
UHS-I SD35枚12.2連写不可

ここでもXQDが圧倒的な結果をたたき出しました。RAWのみの連写ではXQDカード使用の場合、撮影後アクセスランプが直ちに消えるという結果。コンマ数秒の点灯時間はあるのですが、ストップウォッチで手動計測していたため早すぎて計測できませんでした。撮影データがバッファに貯まることなくメモリーカードに記録されているという驚きの結果です。

RAW+JPEG撮影時はわずかにアクセス時間があったものの、35枚撮影時で1.3秒と実用上問題にならない時間。100枚連写時でもわずか2.8秒です。

UHS-II(300MB/秒)はかなり健闘しているものの比べてみると歴然な差で、UHS-I(95MB/秒)ではもはや太刀打ちできないスピードです。繰り返しますがここで使用しているUHS-I(95MB/秒)は現在一般的なSDメモリーカードとしては最も高速なものです。XQDがいかに高速か痛いほどわかる結果となりました。

SDメモリーカードと併用するときは注意

上記ベンチマークではカード単体への記録(順次記録)での結果となります。D500はデュアルスロットのためXQDとSDを併用してバックアップ記録(ミラーリング)やRAW+JPEG分割記録にも対応していますがいずれのモードにおいても順次記録よりも劣る結果となりました。

D500デュアルスロット記録コマ数(RAW+JPEG)
バックアップ記録RAW+JPEG分割記録
XQD+UHS-I SD25枚32
XQD+UHS-II SD2858

RAW+JPEG撮影時、主スロットにXQDを設定しバックアップ記録、RAW+JPEG分割記録で測定した結果、連続撮影可能な枚数は順次記録と比べて大きく劣る結果となりました。SDメモリーカードの転送速度が影響しているだけでなく、カメラ側のメモリーコントローラーがボトルネックになっていることが考えられます。

XQDメモリーカードの性能をフルに発揮するのであれば単体での使用、もしくは順次記録に設定して使用するのが良いでしょう。

デュアルスロットのどちらをメインにするかを選択できる。
副スロットの機能を順次記録、バックアップ記録、RAW+JPEG分割記録から指定可能。

実はSDメモリーカードよりも安い?

圧倒的な性能を発揮したXQDですが、「でもお高いんでしょう?」と考えている方もいらっしゃることでしょう。

確かに、かつては非常に高価なメディアだったのは事実ですが今年になってレキサーではXQDの価格を一気に半額近くまで値下げしたことでそれほど高価なメディアではなくなりました。

今回ベンチマークで使用したXQDのLexar Professional 2933x XQD 2.0(128GB)は現在カメラ系量販店では2万円前後となっています。一方、UHS-II カードであるLexar Professional 2000x SDXC UHS-II(128GB)の価格は3万5,000円前後。なんとSDメモリーカードの方がXQDよりも大幅に高いのです。

量販店での販売価格
製品名量販店での販売価格(税込)
Lexar Professional 2933x XQD 2.0(128GB)20,460円
Lexar Professional 2000x SDHC/SDXC UHS-II(128GB)35,000円
Lexar Professional 633x SDHC/SDXC UHS-I(128GB)10,230円

さすがにUHS-IのLexar Professional 633x SDHC/SDXC UHS-I(128GB)は1万円前後とXQDよりは安いですが、性能差を見てしまうとXQDの2万円というのはそれほど高くないのではないかと思えてしまいます。

ちなみに、D500では対応していませんがレキサーのCFで最も高速なLexar Professional 1066x CompactFlash(160MB/秒、128GB)の販売価格は2万5000円前後と、やはりXQDよりも高いですね。XQDのコストパフォーマンスの高さが際立ちます。

まとめ:D500の高速連写を生かすなら、XQDを選ぶしかない!

以上、XQDメモリーカードの特徴やその性能について、詳しく紹介してみました。

今回の結果から分かるようにD500の高速連写を生かしたいユーザーにとっては選択すべきメモリーカードは性能、価格の両面から考えてもXQD一択と言い切ってもよいのではないでしょうか。

3月に発売されたフラッグシップのD5ではXQDデュアルスロットとCFデュアルスロットの2タイプから選択可能ですが、カメラの性能を生かすのであればXQDモデルに軍配が上がるのではないかと思います。

次回は実際のフィールドでのXQDの使用についてお届けします。

制作協力:マイクロンジャパン株式会社

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催