切り貼りデジカメ実験室

カシオEX-FR100+ラジコンカーで“超低視点”動画

スケールスピード「時速336km」の迫力ある映像に

ラジコンカーの先端にカシオ「EXILIM EX-FR100」を装着。ラジコンのコントローラにもFR100のコントローラを装着しているから、モニターで映像を見ながらラジコンカーが操作できる。昨今はドローンによる空撮が流行っているが、その「逆」の発想をしてみたのだが、地上スレスレのネズミのような視点から、疾走するラジコンの迫力ある動画を撮ることができる

おもちゃ会社時代の発想をデジタルで実用化

編集部から「新発売のカシオEX-FR100で何かできませんか?」というリクエストをいただいて、さて何をしようかと考えてみたのだが、まずドローンに搭載して空撮するのは面白そうだけど、手法としてはもう一般化していて私としては面白くない。

そこで思い出したのだが、遙か昔の1980年代半ば、ラジコンカーに110フィルムカメラが搭載された「ラジカメ」というおもちゃが発売されていたのだった。ラジカメはコントローラーによってラジコンカーを操縦しながら、搭載されたカメラを上下に動かし、さらにシャッターを切って本当に写真が撮れるのだ。当時はラジカメのTV CMも放映されていたから、その存在を覚えている読者もおられるかも知れない。

そして何を隠そう私は大学卒業後に、そのラジカメを発売していたヨネザワというおもちゃメーカーに就職していた過去があるのだ(笑)。私が入社した頃ラジカメは既に生産中止だったが、サンプル品を動かす機会があった。

ところが実際にラジカメを操縦してみると、コントローラーのシャッターボタンを押してから、カメラのシャッターが切れるまでに数秒ものタイムラグがある。搭載された110フィルムカメラも粗悪品で、これではほとんど実用にならず、ガッカリした記憶がある。

そこで今回は、遠隔操作可能なカシオの「EXILIM EX-FR100」の特性を活かし、これをラジコンカーに搭載して「ちゃんと実用になるラジカメ」をこの手で製作してみることにした。

かつてのラジカメはもちろんスチル写真しか撮れず、また凡庸な画角の標準レンズを搭載していた。これに対してFR100はスチルに加えてムービーも撮影可能で、しかもライカ判換算16mm相当という異例の超広角レンズを搭載している。このFR100をラジコンカーに装着して、走らせながらムービーを撮れば、かなり面白い作品が撮れるのではないか? と思ったのである。

―注意―
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カメラとレンズのセッティング

FR100はご覧のように、レンズや撮像素子を備えた「カメラ」と、液晶モニターやシャッターボタンを備えた「コントローラー」に分離・合体可能なデジタルカメラだ。カメラとコントローラーはWi-Fiで接続され、遠隔操作でスチルやムービーの撮影が可能だ。さまざまな用途が考えられるが、まず第一に思い付くのがドローンによる空撮だろう。しかしそれはもうありきたりな手法ので、今回はその「逆」を考えてみた
そこで用意したのがこの軽トラのラジコンカーだ。これにFR100のカメラ部を取り付ければ、「超低視点」で路上を疾走する動画が撮影ができるはずだ。数あるラジコンカーの中で軽トラを選んだのはAmazonでいちばん安かったのと、何となくカメラが取り付けやすそうな形状に思えたからだ
さて改造だが、まず軽トラの屋根にドリルで穴を開ける。ここに三脚止めネジを使って、カメラを固定する
ドリルで開けたネジに三脚止めネジをねじ込んでカメラを固定する。なかなか上手い具合にカメラとラジコンカーが合体できた。走らせてみると安定性もなかなか良い……が! ここで大問題が発生。しばらく快調に走っていたラジコンが急にストップし、ウンともスンとも言わなくなってしまった。電池交換してもダメで、分解して中をチェックしてみたのだが、断線なども特になく原因がわからない。穴を開けたから返品もできないし、どうしよう……
途方に暮れても仕方ないので、気を取り直して近所の量販店に行って、かわりのラジコンを買ってきた。値段は軽トラの倍近くしたが、今度はバギータイプで前後サスペンションも装備した本格派だ。改造方法だが、今度はラジコンが動かなくなった際に返品できるよう、本体に穴を開けたりしない方針で考えてみることにした
そこでまずボディーを外し、両面テープ(スポンジタイプ)とガムテープ(幅を半分に裂いている)を使って、カメラをこのように固定してみた。いかにも特殊車両といった感じでカッコイイが、しかし先ほどの軽トラタイプよりもカメラ位置が高くなってしまった。私としてはできるだけ低視点から、スリルある疾走動画が撮りたいのである
そこでカメラをいったん外して、バギーの先端にこのようにして取り付けてみた
裏から見るとこんな感じだが、細く切ったガムテープを2カ所で巻き付けている
カメラを先端に付けると、ボディーも装着できるようになって一石二鳥だ。カメラの色とラジコンの色がコーディネイトされて、なかなかカッコイイ。これでバギーの運転席とほぼ同じ高さの視点から、動画撮影ができる
ラジコンのコントローラーにはFR100のコントローラーを装着する。そのためにFR100の純正オプション「EAM-2マルチアングルクリップ」を用意する
ラジコンのコントローラーの突起部分に、EAM-2のクリップを挟み、外れないようその部分をガムテープで留める
FR100のコントローラーにEAM-2を差し込むと、「モニター付きコントローラー」が完成する
完成した「カメラ付きラジコンカー」のセット。カメラから送信されたライブ画像を見ながら、ラジコンカーをコントロールできる。見た目的にも不自然さがなく、このまま市販されてもおかしくない感じだ(笑)これでどんな動画が撮影できるのか、非常に楽しみだ

カメラの使用感と実写作品

今回の動画作品は「動き」を見ていただくためにサイズを縮小して掲載しているが、自分としては思った以上に面白い作品が撮れて大満足している。まさに人間の視覚を超えた低位置からの動画で、スピード感があって迫力満点だ。



坂のある歩道橋を渡って、湘南台公園に入ってみた

スピード感がある第1の要因は、何と言ってもFR100に搭載された16mm相当の超広角レンズのおかげだ。画角が広ければ広いほど、高速で流れゆく地面がより多く映り込み、スピード感が増すのだ。

第2の要因はスケールスピードだ。このラジコンカーの最高速度は「時速12km」で、模型としては1/28スケールとパッケージに書いてある。つまりこのラジコンカーの速度を1/1スケールに換算すると(これをスケールスピードという)12kmの28倍で「時速336km」にも達するのだ。

ラジコンカーのスケールが1/28だとすると、それが走る地面の凹凸も28倍に拡大されることになり、舗装道路もかなりのガタゴト道になる。しかしそれでいて動画のブレが少なく安定しているのは、バギータイプならではのサスペンションもさることながら、FR100に装備された手ブレ補正機能の効果が大きいと言えるだろう。

FR100はコントローラーにモニターを搭載しているのも特徴だが、今回はあまりのスピード感のため、モニターを見ながら操縦(撮影)するのは不可能で、普通にラジコンカーを目視しながら操縦することになった。

この操縦がなかなか大変で、安価な「トイラジコン」のためアクセルは「前進・後進」のみ、ハンドルは「左・右」のみで微調整ができない。加えて最高速度12kmで疾走するラジコンカーを、私は小走りで追いかけながら操縦しなければならず、撮影のたびにヘトヘトになってしまった。

結果として後から購入したバギータイプのラジコンカーは、壊れることなくけっこうな距離を走ってくれて、おかげでいろいろな場所で何本もの動画を撮ることができた。

もちろんFR100も優れた耐ショック性能のおかげで、今回のような酷使でもビクともしなかった。このカメラは直線が歪まない超広角レンズを搭載しているため、撮影されたムービーには特有のリアリティーがある。逆光にも強く、太陽が画面に写り込んでもハレーションやフレアが極力抑えられ、極めて優秀なレンズだと言える。

実は私はこれまで動画作品を撮るのがどうも苦手だったのだが、今回の撮影でその苦手意識がだいぶ克服された気分でいる。要は「動き」の面白いものを見つけて撮ればいい、と言う当たり前のことに気付いただけだ。

今回掲載した動画作品は、リサイズして始まりと終わりにフェードを入れただけだが、私は動画加工するのも初めての経験で、えらく苦労してしまった。使用ソフトはiMovieだが、動画ならではの概念を理解するのが、初めのうちは難しいのだ。つまりパソコンにインストールされたソフトを、自分の頭の中にもインストールしなければならないのだが、それにはリラックスして自分の頭を柔らかくしておかなければならない。

しかしそのように慣れてしまえばソフトの扱いは簡単だし、いろいろな操作項目も理解できるようになってきて、動画加工そのものも楽しくなってくる。そのようなわけで、今後はデジカメのムービー機能もいろいろ試していけたらと思っている。

糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ フォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。毎週土曜日、新宿三丁目の竹林閣にて「糸崎公朗主宰:非人称芸術博士課程」の講師を務める。メインブログはhttp://kimioitosaki.hatenablog.com/ Twitterは@itozaki