デジカメアイテム丼

セットアップがスピーディーなナットロック式三脚

マンフロット190T

190Tシリーズは、マンフロットとしてはとてもめずらしいナットロック式。カーボンとアルミ、3段と4段の計4タイプがラインナップされている。

今回、紹介するのは、マンフロットの新型三脚「190T」シリーズだ。新型といっても、発売されたのは1月の半ばなので、そんなに“最新”感はないかもしれない。

マンフロットの三脚といえばレバーロック式が主流で、セッティングの早さが持ち味である。ナットロック式の三脚も、以前はあったのかもしれないが、ワタシ個人は記憶にない。あったとしても相当に久々なのではないかと思う。ちなみに、マンフロットでは「ツイストロック」と呼ぶようで、型番の「T」がそれをあらわしている。

ラインナップは、カーボンの3段と4段、アルミの3段と4段の4タイプで、いずれもXPRO3WAY雲台を組み合わせたキットでの販売のみとなっている。

主な仕様(雲台を含む。価格は税込)

4タイプとも全高は173cm、センターポールを縮めた状態では148cm。縮長は3段が72cm、4段が62cm。重さはカーボンが2.4kg、アルミが2.8kgである。ワタシが買ったのは、いちばん安いアルミの3段タイプで、大手量販店の店頭価格は、だいたい税込3万2,000円程度である。

ナットロック式のメリットは、レバーロック式よりも機構的にコンパクトにできることだ。ロック用のパーツやレバーのようなかさばる部品がない分、スリムなシルエットになるし、多少だが軽量化もできている。

レバーロックタイプよりも見た目がシンプルでスリムに仕上がっている。少しだけど軽い。こんなふうに、ところどころに赤の差し色が入っているのもおしゃれっぽい。
センターポールを縮めた状態の高さは4タイプともに148cm。公称177cmのワタシには、ちょうどいい高さである。買ったのはアルミの3段で、自重は2.8kg。レバーロック式よりも200g軽い。
脚の付け根のシルバーのレバーを引き下げながら開脚する。開脚角度は、25/46/66/88度の4段階。
開脚と可倒式センターポールを組み合わせての最低地上高は9cm。テーブル三脚並みのローアングルが狙える。

同社のウェブサイトにあるスペック情報によると、カーボン、アルミともに、レバーロック式よりも3段タイプで200g、4段タイプで250g軽く仕上がっている。小さめの単焦点レンズ1本分ぐらいだが、持ち歩きを考えれば少しでも軽いほうがありがたい。

とかいいつつ、アルミを選んだのは、脚の伸びがよかったからだ。これは店頭でいろいろ試してみて感じたことなのだが、190シリーズのカーボンは、脚の伸びがもうひとつよくない印象で、レバーロック式でもナットロック式でも、緩めてから手で引っ張って脚を伸ばすというという作業が欠かせない。

それがアルミだと、重さがある分伸びがいい。実物に触れるまでは、軽さを考えてカーボンにしようかとも考えていたのだが(2万円ほど高くなるが、400g軽くなるのだ)、アルミの脚の伸びのよさを体験した途端に、重さは我慢しようという気になった。それぐらい、脚の伸びが気持ちいいのである。

ナットをひねる角度はおおざっぱに見て60〜90度ほど。軽く手首を返すぐらいの角度を、くいっとひねると、脚が自重でしゅっと伸びてくれる。“くいっ、しゅっ、くいっ”という感じで、とてもスピーディーである。

緩めた状態でも脚パイプは回転しない仕様で、それも操作の快適さにひと役買っている。この“くいっ、しゅっ、くいっ”が気持ちよくて、買って持って帰ってから小一時間ほど遊んでしまったほどである。

アルミだと自重で伸びてくれるのでセッティングが早い、というのを紹介したくて動画を撮ってみた。カーボンだともうひとつ伸びがよくないので、スピードはだいぶ違ってくる。



畳むときも早い。3段なら6つ、4段なら9つのナットを全部緩めて、ひょいっと上下逆さまにする(逆さまにしてからナットを緩めてもよい)。そうすると、脚パイプの自重で一気に短くなってくれる(持ちどころを間違えると指とかを挟んで痛いめを見るので要注意である)。セッティングの早さでは、レバーロック式にも負けないだろう。



高さもほどがいい。ワタシ的アイレベルにはやや低めだが、少し背を丸めればファインダーをのぞくのに不都合はない。それに、持っているカメラのモニターが、バリアングルやチルト式だったりするので、多少低くてもまったく困らない。

逆に背の高い三脚で、ちょうどいい高さにするのに脚の長さを調節しないといけないとかのほうが、いちいち手間がかかって面倒くさい。190Tシリーズぐらいの高さのほうが、毎回めいっぱい伸ばせばいいだけなので、普通に使う分にははるかにらくちんなのである。

ただし、気になる点もいくつかある。ひとつは、90度可倒式のセンターポールまわりの剛性がやや不足気味に感じられるところ。上に伸ばしたときは悪くないが、横倒しにした状態では振動が残りやすい印象を受けた。ブレを抑えるのに、操作後に完全に振動がおさまるまで待たないといけないというのは、三脚としてはうれしくない。

センターポールを横倒しにできるのがおもしろいところ。ただし、この状態での剛性はあまり高くないので、ブレには注意が必要だ。

また、メカが複雑なせいで、ロックを緩めたときの遊びが大きく、高さ調節がスムーズにやれないのも気になった。

それから、セットされている3ウェイ雲台の、上方向への可動範囲の狭さにも不満を感じた。同社のウェブサイトによると、フロントティルト(前後方向)の可動範囲は-30度から+90度。つまり、見上げる方向が30度までで見下ろす方向が90度までである。フルサイズの28mmレンズの水平(長辺)方向の画角が65度ぐらいだから、縦位置に構えて画面の下端に水平線を入れて空だけを撮るようなアングルである。

クイックシュー式の3ウェイ雲台「XPRO3WAY」が同梱。というか、くっついた状態で売られている。こちらもなかなかの人気商品らしい。やはりところどころに赤が差し色に使われている。
前後と左右はフリクションコントロール付きで、重量級の機材にも対応できる。ちなみに、雲台のみの耐荷重は8kgだ。
この雲台の欠点は、上方向が約30度までしか動かせないところ。建物などを見上げて撮りたいときなどには可動範囲が足りなくなるのだ。

ブツ撮り用に使っているハスキーの3Dヘッドは、iPhoneに入れている水準器アプリで測ってみたところだいたい44度(三脚につっかえなければ60度ぐらいまでいける)だったから、それに比べると30度という数字はだいぶ物足りない。実際、樹木や建物を仰ぎ見るように撮りたいときや、朝夕の空などをどーんとフレーミングしたいときなどに、むっとなってしまうことが何度もあった。

もちろん、カメラを前後逆向きに取り付けるとか、センターポールを横倒しにするなどで対応はできるのだが、そういう裏技的なものに頼らずに、素直に上を向いてくれるのが理想だと思う。まあ、ぜいたくをいいはじめればキリはないのだが。

カメラを前後逆向きに取り付ければ上向き90度までいける。が、操作はかなりやりづらいし、いちいちクイックシューのプレートを付け替えないといけないのも面倒くさい。
それなら、と思いついたのが、センターポールを横倒しにする方法。これならカメラを付け替える必要もないし、雲台の操作もやりやすい。
2本のパン棒は伸縮式で、携帯時には短くしておける。3ウェイなのにかさばらないのはいい。

本音をいえば、もう少し軽いほうがありがたいが、なにぶん、雲台だけで1kgもあるものだから仕方がない。それでも、3kg弱のアルミ三脚で、耐荷重が6kgあるのだから悪くはない(三脚単体の耐荷重は7kgだが、雲台の重さが1kgあるので、載せられる機材の重さは6kgまでとなる。ちなみに、雲台単体での耐荷重は8kg)。

セッティングの早さと気持ちよさ、3ウェイ雲台ならではのフレーミングをきちっと決められる確実さに加えて、持ち歩きがそんなに苦にならない程度の重さで、しかも価格は手ごろ。これだけ好条件がそろった三脚は、あまりないのではないかと思う。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら