アイファイジャパン「Eye-Fi X2」

RAWデータやジオタグに対応した無線LAN機能搭載メモリーカード

Eye-Fi X2シリーズ

 アイファイジャパンが20日に発売した「Eye-Fi X2」シリーズは、2008年末に日本で発売した無線LAN内蔵メモリーカード「Eye-Fi」の後継機種。ワイヤレスチップは従来からのIEEE 802.11b/gに加え、802.11nに対応。無線電波の到達距離および送信速度が向上した。記録メディアとしては、最低転送速度6MB/秒を保証するClass 6に対応。容量も最大8GBまで用意した。

 X2シリーズは次の3つの製品をラインナップする。新機能の全てを利用でき、記録容量が8GBの「Eye-Fi Pro X2」、Pro X2からRAW画像転送とアドホック接続機能を省略した「Eye-Fi Explore X2」、Explore X2から公衆無線LAN接続およびジオタグ埋め込み機能を省略し、容量を4GBとした「Eye-Fi Connect X2」だ。

 実勢価格はPro X2が1万5,800円前後、Explore X2が9,980円前後、Connect X2が6,980円前後。

セットアップ

 PCにEye-Fiカードを挿入したリーダーを接続すると、自動でセットアップソフトが起動する。アカウント作成の画面になり、画面の指示に従って画像アップロードのテストが成功すれば設定は完了だ。

Eye-FiカードとUSBカードリーダー。この状態でパッケージに入っているそのままPCに差し込んでセットアップを行なう

 なお、Eye-Fiカードは1枚につき1つのユーザーアカウント(転送先)を設定する仕組みになっている。1枚ごとに個別のユーザーアカウントを設定することもできるが、1つのユーザーアカウントで複数のEye-Fiカードを管理することも可能である。

転送の仕組み

 Eye-Fiカードの転送方法のひとつは、Eye-FiカードとPCを同じ無線LANルーターに接続した状態で画像をPCに直接転送するというもの。利用には無線LANルーターが必要となる。有効1,210万画素のコンパクトデジタルカメラで撮影したJPEG画像の転送時間は、試用した環境では1枚あたり5秒前後だった。X2シリーズでは新たにAVCHDなどのハイビジョン動画や、3D静止画(.mpo形式)の転送にも対応する。

JPEG画像を転送しているところAVCHD動画を転送しているところ。表示はアイコンのみ

 Eye-Fiカードは、カード内に新しい画像がある場合、一定のインターバルで接続可能な無線LANネットワークを探し続ける。接続可能なアクセスポイントを発見すると転送を開始し、1枚の転送が完了すると続けて転送を行なう。Eye-Fiカード内に未転送の画像がなくなると、ネットワークを探すのをやめるようになっているという。

 この動作は後述する公衆無線LAN接続やアドホック接続においても同様で、いずれの転送方法でも任意のインターバルやタイミングで画像の転送を開始することはできない。

各種サービスへ投稿

 ファイルをPCヘ転送したあとは、Eye-Fi CenterからオンラインストレージやSNSなどの外部サービスに画像(もしくは動画)を送ることができる。利用にあたり、それぞれのサービスが有するアルバム機能について設定を行ない、そこに選択したファイルが転送されるようにする。

Eye-Fi Centerの画面

 対応サイトは、30days Album、Blogzine、cocoaギガストレージ、Evernote、Facebook、Flickr、Picasaウェブアルバム、YouTube、Gallery、gooブログ、はてなフォトライフ、livedoor Pics、mixi、My Album、MobileMe、Movable Type、my Picturetown、フォト蔵、Snapfish、TypePad、VOX、CANON iMAGE GATEWAYなど。

写真の転送先を設定する画面転送先ごとに詳細を設定できる
Evernoteに送信しているところ転送完了の表示。セリフのバリエーションがあって面白い
作成されたEvernoteのノート。自動で「Eye-Fi」のタグが付いた

 PC上の「Eye-Fi Center」で任意の画像と送信先のサービスを選択する。外部サービスのログイン情報を入力し、転送先の設定を行なうと、そこに自動でアップロードされていく仕組みだ。操作は利用する外部サービスによって異なるが、アルバムの名前、公開範囲、タグ、サイズなどをあらかじめ指定できる。

 すべての画像が転送されては困るという場合は、Eye-Fi Centerから「カメラ側でプロテクトをかけた画像のみ転送」といった設定にもできる。これまではEye-Fi Centerでアップロード画像を個別に選択するしかなかったので、より便利になったといえよう。

 なお、最上位のPro X2で利用できるRAWファイルの転送はPCへの直接転送に限られ、外部サービスへの送信などは行なえない。

カメラ側で送信する画像を選べるようになった設定に失敗するとこのようなメッセージが

 また、自動送信を行なう場合、あらかじめ設定した容量に達すると、古いファイルから自動的に削除する「エンドレスモード」機能を備える。カメラのインターバル撮影機能と組み合わせることで、ライブカメラのような使い方も可能だろう。ファイルの削除はEye-Fiがネットワークに接続していない状態でも行なわれるが、転送済みでないファイルは残すようになっている。

エンドレスモードの設定画面

公衆無線LANアクセス

設定完了時のメッセージ。これもバリエーション豊富

 Eye-Fi Pro X2と同Explore X2は、公衆無線LANサービスの「fon」と「FREESPOT」に対応。製品に1年間の利用権(その後も料金を支払えば継続使用可能)が付属する。外出先からも、対応する公衆無線LANサービスのホットスポットがあれば画像の送信を行なえる。

 公衆無線LANアクセスポイントの利用時に保存先のPCの電源がオフになっていると、画像は一旦Eye-Fiのサーバーに送信・保存される。そして、保存先のPCの電源がオンになった段階で常駐ソフトの「Eye-Fi Helper」がEye-Fiサーバーと通信し、画像をダウンロードする仕組み。Eye-Fiサーバー側の保存容量に制限はないとのことだ。

 また、Pro X2の新機能「アドホック接続」を利用すると、ネットワークの存在しない場所(無線LANルーターがない場所)でもカメラからノートPCなどに写真を直接転送できる。これにより、屋外でもデジタル一眼レフカメラのワイヤレストランスミッターを使用したような作業が可能になる。

 なお、アドホック接続の利用には、Eye-Fi Center以外にもPC上でアドホックネットワークの作成などの設定を行なう必要がある(操作はOSにより異なる)。

“測位待ち”なしでジオタグ付加

 Pro X2およびExplore X2が対応する新機能。SKYHOOK Wirelessが提供するWi-Fi測位システムの「WPS」(Wi-Fi Positioning System)を利用し、撮影画像に位置情報(ジオタグ)を埋め込む。GPSと異なり、位置情報の取得に待ち時間が発生しない点を特徴とする。

 WPSの概略は、Eye-Fiがアクセス可能な無線LANスポットを、SKYHOOK社の持つ「どの無線LANルーターがどこにあるか」というデータベースに照会し、Eye-Fiカードが認識している無線LANルーターそれぞれの位置から位置を割り出してタグをつけるというもの。ルーターの数が多いほど正確な情報がわかる仕組みだ。

 細かな位置情報を利用できる地域は限られており、日本では今のところ一部地域のみの対応にとどまっているという。東京都千代田区の編集部にて試したところ、地図上での誤差は10mほどだった。


地図上の位置をEye-Fi Centerで確認できる

 ジオタグ機能はサーバーとの通信を行なう必要があるため、直接転送の場合はEye-Fi Centerが画像を受け取った時点でEye-Fiサーバーとやり取りを行ない、位置情報を付加する。その場合は転送先のPCがインターネットに接続している必要がある。

 また、公衆無線LANの使用時などEye-Fiカードと転送先のPCが同一ネットワーク上にない場合は、全てのデータを一度Eye-Fiサーバーに送り、位置情報を埋め込んだ上でPCからダウンロードする仕組みになっているという。

対応機種は要確認

 Eye-Fiカードの対応機種は「SDメモリーカード対応ならだいたい使える」とも言われているが、公式に非対応とされているデジタルカメラも存在する。Webサイトで一覧を確認されたい。

 試しに手元にあった非対応機種の「GR DIGITAL III」でEye-Fi X2を使ってみたところ、電源オン直後にしばらくボタン操作を受け付けず、メモリーカードの残量不足警告が出るなどの現象が見られた。やがて撮影可能になるのだが、それまでに数十秒は待たされるため、実用には厳しいレベルだった。

 逆に、初代Eye-Fiでは非対応となっている「オリンパス・ペンライトE-PL1」はEye-Fi X2を特に問題なく使用できるなど、対応する機種も従来製品とは異なる場合があるようだ。

 ここはやはり、対応を謳う機種が確実だろう。近頃は「Eye-Fi連動機能」を搭載する機種も増えてきており、何よりメーカーが公式に対応を謳っているため安心である。

 Eye-Fi連動機能にもいろいろなパターンがあり、「動作状況のアイコンを表示する」、「転送終了までオートパワーオフを無効にする」、「電池残量が少ない場合は転送を行なわない」、「転送のオンオフを手動で設定できる」などの設定が機種ごとに存在する。

対応機種のひとつ、ニコンD90の設定画面対応機種はコンパクトデジタルカメラからデジタル一眼レフカメラまで幅広い

 これまでデジタルカメラで撮影した画像をその場でアップロードするには、PCと通信端末が必要だった。即時的に写真をアップロードしたい場合、やむなく画質に目をつぶって携帯電話のカメラを併用していた方は、私も含め少なくないのではないだろうか。

 Eye-Fi X2では、カメラ本体から公衆無線LAN経由で画像を送信し、その後のハンドリングを携帯電話などの通信端末から行なうといった連携も可能になる。Eye-Fiのメリットは、もはや単にメモリーカードを出し入れする手間が省けるだけではない。

【2010年5月25日】アドホック接続の利用手順に関する記述を訂正しました。



(本誌:鈴木誠)

2010/5/25 00:00