Zoner Photo Studio 11。画面内のウィンドウはカスタマイズ可能だ |
写真の管理ソフトにはいろいろな製品があるが、今回はジャングルが8月に発売した画像編集統合ソフト「Zoner Photo Studio 11」を紹介する。写真の管理のみならず、3D写真、HDR(ハイダイナミックレンジ)イメージ、パノラマ写真などの作成機能を備えているほか、フォトレタッチにも対応。「低価格で多機能」が本ソフトの特徴だ。対応OSは、Windows 2000/XP/Vistaとなっている。
パッケージ版の価格はProfessional版が1万290円、Home版が6,980円。ダウンロード版はそれぞれ7,980円と5,229円。なお、写真共有サイト「Zorg」に登録(無料)すると、Professional版を5,460円で、Home版を3,780円でダウンロードできる。
Home版は、Professional版からHDR合成機能、RAW編集機能、DNG対応、フィルターのバッチ処理、トーンカーブ、口径食削除、マスク機能、Photoshopプラグイン対応、RGB 16ビット対応などを省いたバージョンだ。
Zoner Photo Studioを開発したのは、1993年に創立したチェコの画像処理ソフトメーカー「Zoner Software」だ。日本法人もVer.8から直販を中心に販売してきたが、今回、店頭での取り扱いを本格的に開始するためジャングルと提携した。
カラーラベルにも対応 |
Zoner Photo Stuidoは、アドビの「Lightroom」やアップルの「Aperture」などとは異なり、個々の画像を登録することなく管理するタイプだ。管理画面はWindowsのエクスプローラー風なので、迷うことはないと思う。画像のサムネイルは、キャッシュを作成してくれるので2回目以降の表示は高速だ。もちろんヒストグラムやExif情報の表示も可能。チュートリアル機能も付属しており、行ないたい処理を選ぶと操作方法が表示されるので、初心者でも比較的簡単に使い方を覚えることができるだろう。さらに、5段階のレーティングや9種類のカラーラベルによる分類も可能となっている。
このソフトのおもしろい機能に「統計」がある。フォルダ内にある写真のExif情報を基に、各項目をグラフ化してくれる機能だ。どの絞りで撮った写真がどれだけ多いのか、といったことが瞬時にわかる。焦点距離も表示できるので、自分が何mmの画角が好きなのかもわかって、なかなか興味深い。
Exif情報を基に統計を取ることができる。自分がよく使用する絞り値や、焦点距離がわかる |
さらにGoogle MapsとGoogle Earthに連動する機能もあり、位置情報付きの画像があればGoogle MapsかGoogle Earthに位置を表示させることができる。また、写真に対して手入力での位置情報付加も可能だ。
なお、画面のサムネイル、プレビュー、Exif情報表示、チュートリアル、フォルダツリーなどの位置はカスタマイズできるので、自分の使いやすい配置にすることが可能になっている。
画像の位置データをGoogle Mapsで表示可能 |
■試してみるとおもしろい3D機能
ここで、Zoner Photo Studioの大きな売りになっている3D画像、HDRイメージ、パノラマ作成について触れてみよう。
昨今は富士フイルムが3D対応デジタルカメラを出すなど3D映像が注目されている。Zoner Photo Studioでは、撮影位置をずらした2枚の写真からアナグリフによる3D写真を作成できる。アナグリフとは、赤と青の色つきメガネを使用することで立体に見える方式だ。
作成は簡単で、カメラの位置を横に数cm~数10cm程度ずらして撮影した画像をZoner Photo Studioで合成するだけだ。ウィーザード形式で進めることができるので迷うことはないだろう。2枚の画像の位置の微調整なども可能だ。
3D用の画像を読み込んだところ | 作成した3D画像 |
アナグリフは、赤青メガネさえあれば見ることができる簡便さがある。普通のディスプレイで表示できるため、ブログなどに貼付けて公開するのもおもしろい。実際に試してみると、かなり奥行き感が再現されてリアルだった。
なお、Zoner Photo Studioのパッケージ版には赤青めがねが1個付属している。また、ZonerのWebサイトからは1つ300円で購入することも可能だ。なお、ジャングルのWebサイトでは赤青めがねの作り方を公開しているので、自作してみても良いだろう。
HDRイメージは、同じ被写体を複数の露出で撮影した画像を合成することで、広いダイナミックレンジの写真を作成する機能だ。Photoshop CS4を始め、Photomatix ProなどのHDRイメージ作成に特化したソフトも出ているが、Zoner Photo Studioはより簡単にHDRイメージを作成できるようになっている。こちらも3D写真作成機能と同じウィザード形式で作成可能。合成できるのは最大3枚までだったり、Photomaticx Proほど細かい調整機能はないが、「気軽にHDR画像を試してみたい」という向きには適している。
HDRイメージ用の写真を読み込んだところ | 合成して完成したHDRイメージ |
パノラマ機能も、ジャングルの専用ソフト「パノラマメーカー」ほど多機能ではないものの、ほぼ自動的に合成ができる。こちらは3枚以上でも合成可能だ。試したところでは、なかなか繋がりがよく問題の無いレベルだった。HDR合成機能もそうだが、Zoner Photo Studioでは飽き足らなくなったら専用ソフトを新たに買うのもいいだろう。
パノラマ用の画像を読み込んだところ。焦点距離を入力する必要がある | 結合したところ |
完成したパノラマ写真(横1,024ピクセルにリサイズしています) |
■DNGコンバーターによるRAW現像にも対応
一方、Zoner Photo Studioは本格的なフォトレタッチ機能も搭載している。一般的なフォトレタッチソフトにある機能に加えて、レイヤーを使用した合成やグラデーション追加が可能なほか、メッシュによるモーフィング変形機能も搭載している。赤目補正や画面に映り込んだゴミの修正に便利なスタンプ機能も利用可能だ。
フォトレタッチを行なうための「エディタ」画面 | 周辺光量落ちを補正できる「非口径食処理」を適用したところ |
樽型や糸巻き型の歪曲収差も補正可能 | トーンカーブによる補正も行なえる |
また、カメラファンにとって嬉しいのが口径食の緩和機能だ。周辺光量落ちを補償することができる。そのほかにも、ノイズ除去、歪曲収差補正、色収差補正なども搭載している。
RAWの閲覧、現像は主要な約150機種に対応している。基本的にWIC(Windows Imaging Component)コーデックを使用しているが、WICコーデックに対応機種が無い場合はdcrawを使用する仕組みになっている。なお、アドビのDNGコンバーターをインストールすることで、RAWをDNGに変換して扱うことが可能だ。
設定画面でDNGコンバーターにパスを通すと、WICコーデックが用意されていないRAWファイルも現像可能になる | DNGコンバーターを利用することで、WICコーデックに非対応のシグマのRAWファイル「X3F」も現像できる |
Zoner Photo Studio 11は、趣味で写真を扱う上で必要と思われる写真管理、フォトレタッチ機能の多くが詰まったソフトだ。これだけ多機能で5,460円(Professional版、Zorg特別価格)というのは驚きで、非常にコストパフォーマンスの高いソフトといえる。30日間機能制限無しで使用できる体験版が用意されているので、興味のある人は試してみるといいだろう。
2009/9/7 12:54