Canon EFレンズ 写真家インタビュー

現場で受けた感動をそのまま写し撮る喜び

鉄道写真:長根広和 with EF11-24mm F4L USM

朝日に紅葉が燃える鳴子峡。紅葉シーズンは列車が徐行運転するので、EOS 5Dsでもブレの心配は少ない。このレンズの解像力には感動する。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 16mm / マニュアル露出(F8、1/200秒) / ISO 800
カラマツ林の中から、ほぼ真上に向かってフレーミング。列車は圧縮されたイメージとなるが、これだけのパースペクティブは11mmならではの表現力だ。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM /11mm / マニュアル露出(F9、1/1,600秒)/ ISO 800
シルエット撮影では、ただ暗く写るだけの地上部分を極力少なくして構図を作り、主題となる風景 = 広大な空を大きく取り入れることが基本となる。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 11mm / マニュアル露出 (F16、1/2,000秒) / ISO 800
待合室のベンチを作品のキーにしたかったので、最短撮影距離でベンチにピントを合わせ た。高い解像力に驚かされた。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM /11mm / マニュアル露出(F8、0.8秒)/ ISO 800
年に一度走るかどうかの只見線SL。この有名なアーチ橋のシンメトリーが撮りたくて、日の出前から撮影ポイントをキープした。鉄橋メインで撮影するのが定番だが、11mmの新鮮な構図を試したかった。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM /13mm / マニュアル露出(F8、0.8秒)/ ISO 640
高原列車として有名な小海線。南アルプスを背景とする撮影地にて撮影。ススキを左隅に配したが、この描写力に感動した。超広角レンズは周辺部の解像力が命。作品のキーを安心して四隅に配置できる。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 12mm / マニュアル露出(F11、1/800秒) / ISO 500

数多くのプロ写真家から信頼を得ているEFレンズの魅力を、写真家本人へのインタビューと作品で探るこの「Canon EFレンズ 写真家インタビュー」。

今回の写真家は、鉄道風景写真で人気の長根広和さん。もともと長根さんは、超広角レンズでの表現を得意とする作家です。発売当初から「EF11-24mm F4L USM」を使っているという、その理由とは?

作品・キャプション:長根広和
聞き手:笠井里香

EF11-24mm F4L USM

EOS 650からキヤノン一筋

−−写真を始めたきっかけや、その頃の機材について教えてください。

鉄道が好きで写真を撮り始めました。最初は家にあった単焦点のフィルムコンパクトカメラなどを使っていたのですが、やはり遠くの被写体を大きく撮れませんし、ズームレンズを使ってみたい、もっと大きく撮りたいという思いがありました。

初めて買った一眼レフはEOS 650。レンズはEF35-105mm F3.5-4.5でした。当時はオートフォーカス機のブームで、他社からもさまざまなAF機が発売されていた時期でした。その中でもEOS 650はスマートで現代的なデザインで、見た目のかっこよさにも魅力を感じて購入したんです。

撮っているうちにさらに望遠側が欲しくなり、EF100-300mm F5.6を購入するなど、機材を増やしていきました。EOS 650のあとはペリクルミラーのEOS RTも買いましたね。以来、ずっとキヤノンのカメラ、レンズを使っています。

当時は、鉄道ファン向けの広告なども多く、鉄道を撮るならキヤノンというイメージも大きかったですし、ジョイフルトレインのブームなど、さまざまな列車があり、被写体には事欠きませんでした。

長根広和さん。1974年横浜生まれ。武蔵工業大学(現 東京都市大学)工学部卒業後、鉄道写真家・真島満秀氏に師事。2009年真島満秀写真事務所を継承し、マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズを設立。青春18きっぷなどのJRヴィジュアルポスターや、鉄道誌、カメラ誌、時刻表表紙写真などで活躍。車両そのものの機能美や力強さを表現した写真に定評がある一方、ドラマチックな鉄道風景写真にファンが多い。「列車の音が聞こえてくるような作品」をモットーに日々鉄道を追いかけている。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。日本鉄道写真作家協会(JRPS)副会長。(撮影:加藤丈博)

−−通常、使用されている撮影機材はどんなものでしょう。

ボディはEOS 5Ds、EOS 7D Mark II、EOS 5D Mark III。レンズはEF16-35mm F4L IS USM、EF24-70mm F2.8L II USM、EF70-200mm F2.8L IS II USM、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM、EF500mm F4L IS II USMを使っています。これにEXTENDER EF1.4xIII、EXTENDER EF2xIIIですね。

EF11-24mm F4L USMは、発売してすぐに使い始めました。

−−撮影時に主に使用するカメラの設定を教えて下さい。

撮影モードはマニュアルです。必要に応じてシャッタースピード、絞りをすぐに変えることができますから。
あまり設定などカスタマイズはしていません。高速連続撮影に設定し、あとはピント合わせをAF-ONボタンに割り当てていわゆる親指AFとして使っています。

ピントはAFをメインに使用しています。ライブビューでのコントラストAFを使用し、EOS 5Dsであれば16倍に拡大し、置きピンで合わせます。鉄道がメインの被写体の場合には、線路の砂利にピントを合わせて走ってくるのを待つのですが、この方法でピントを合わせるとより精度が高いと思いますね。

ピクチャースタイルは風景、ホワイトバランスは太陽光が基本です。やはり長い間フィルムで撮影してきましたから、太陽光での撮影が体になじんでいて、まずデーライトフィルムの感覚で考えるんですね。夕方や天候の悪いときにはオートに設定することもあります。

記録はRAWのみで、撮影後にはすぐバックアップを取ります。

その場の空気感まで写し取る描写力

−−EF11-24mm F4L USMは発売直後から使っているとのことですが、率直な感想を聞かせて下さい。

私はもともと広角レンズがとても好きで、EF16-35mm F4L IS USMのほか、EF14mm F2.8L II USMやEF8-15mm F4L フィッシュアイ USMなども使ってきました。

超広角レンズを使うというと、その画角いっぱいに広く撮ろうとする方も多いと思うのですが、私が広角レンズを使って表現したいのは「迫力」のある画なんです。近付いてそのパースを生かす、例えば木の幹にグっと近付いて景色を包み込むように撮る。歪みが出ても、視覚効果としてそれが迫力につながるんですね。

EF11-24mm F4L USMではこれまで以上に広角であるにも関わらず、魚眼レンズのような歪みはない。これはとても面白いと思います。歪みがないため、駅の待合室なども建築写真のように撮影することができます。

アーチ橋が多い路線である日田彦山線。11mmのパースペクティブを利用して、アーチ橋の迫力を出してみた。レンズはほぼ真上を向いている状態。地元の人に「空を撮っているの?」と声をかけられた。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 11mm / マニュアル露出(F10、1/1,600秒) / ISO 800

−−超広角レンズといえば気になるがフレアやゴーストです。逆光での撮影時、フレア、ゴーストの程度はいかがでしたでしょうか?

フレア、ゴーストは出にくいと思いました。出ても、すごく小さいですし、ともすると気付かないかもしれません。

−−防塵防滴となっていますが、悪天候時などでそのメリットは感じられますか?

私はたくさん雨が降っても撮影してしまうのですが、レンズのなかに水が入ってしまうようなこともありませんし、安心感はありますよね。

前、後玉にはフッ素コーティングが施されているので、レンズを拭くと独特のツルツル感があり、汚れにくいですね。これだけの広角レンズだと、少しでも絞るとゴミが写ってしまうこともありますから、こういった機能面はいいと思います。

−−描写力についてはいかがでしたでしょう。

EOS 5DsとEF11-24mm F4L USMでの撮影では、写真がただ写るというだけでなく、その場の空気感まで写ります。撮影後にPCのモニターで写真を見たときに、自分の目で見た景色はもっと素敵だったのにと思うことがありましたが、高画素機を使用するようになってからはそういったことがありません。これを体験してしまうと、もう戻れないですね。現場での感動がそのまま写真として記録できるわけですから。

ただ、11mmという超広角だと、列車はどうしても小さくなってしまいますから、存在感を出すためには光を読まなければなりません。夕陽のなかを走る列車がせっかくいい位置に走ってきていても、陰になってしまえば景色と同化してしまいますから。そこをコントロールするのは自分自身でもありますが、天候など、さまざまなタイミングが合えば最高ですね。

高画素機で撮影するとこれまで以上に周辺までしっかりと像が見えてしまいますが、ブレに気をつけ、シャッター速度をできるだけ速くして動きを止めるなど、きちんとすべきことをして撮影すると、本当に素晴らしいです。EF11-24mm F4L USMは周辺までしっかりと描写してくれますね。

風景を主題とし、その中に鉄道を入れる撮影では、あくまでメインは風景なのですが、鉄道の存在感をしっかりと出し、そこに鉄道が走っているということがひと目で分かるような写真を心がけています。説明してやっと気付くようではダメなんです。列車が走っていることがすぐに分かる、そして行ってみたい!と思うような作品にしたいんです。

四季折々の素晴らしい景色のなか、自然と鉄道に視線を誘導できるような構図を決め、数時間に1本しか来ないような列車を待ちます。列車の位置を考えて構図しますので、撮影する場所というのは比較的決めやすいんです。ただ、光は刻一刻と変化し、それまで雲ひとつない青空だったはずなのに、列車が来る瞬間に小さな雲がかかって、陰になってしまうということもあります。

列車がきて、通り過ぎる、ほんの1秒程度の間にすべてが決まってしまい、自分自身でシャッターチャンスは決められません。ですから、うまくいったときはとても嬉しいですね。

青森県と秋田県の日本海に沿うようにして走る五能線。夕日の美しい路線として人気がある。超広角なので列車が小さくなってしまうが、その存在感を出さなければ鉄道写真と言えない。車体がギラリと光る瞬間を狙った。EOS 5Dsは秒間約5コマの連写性能があるのでベストな瞬間を捉えられる。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 11mm / マニュアル露出(F8、1/800秒) / ISO 400
日本海の夕暮れと特急「しらゆき」。私が注目したのは夕日ではなく雲の表情。少しでもダイナミックに取り入れたい願いは、広い画角が叶えてくれた。超広角かつ速度の速い特急列車。高速シャッターが必須であり、それはブレ防止にもつながる。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 13mm / マニュアル露出(F5、1/1,600秒) / ISO 800

−−11mmで歪みなく撮れるというこれまでになかった画角についてはいかがでしょうか?

広角側の焦点距離1mmというのは画角の差がとても大きく、11mmというある意味では非現実的な焦点距離は、これまで16mmでは足りない、もう少し広ければ夕陽が入るのに……といった場合などにとても重宝します。歪曲収差もかなり抑えられていると思います。

もう少し入れたかったものが入れられないというストレスから解放される分、自分に言い訳はできなくなりますし、腕次第ということにもなりますが、難しい反面、現実の世界をそのまま写し込める、とても楽しいレンズだと思いますね。

EOS 7D Mark IIとの相性も良し!

−−APS-CセンサーのEOS 7D Mark IIでもこのレンズをお使いですね。

ええ、新幹線など速い列車の走行シーンを連写してみました。EOS 5Dsよりも連写に強いEOS 7D Mark II(約10コマ/秒)ですと、速い列車も間違いなく撮ることができます。しかも、EF11-24mm F4L USMのレンズのセンター部分、いちばん描写のよいところを使って、広角(約18mm相当)で撮影できるわけです。とても贅沢ですよね。

APS-C専用のEF-SレンズにはLレンズがラインナップされていないこともあり、EOS 7D Mark IIを持っている方にもぜひ使って欲しいです。

EOS 7D Mark IIの高速連写で得られた1枚。見かけのスピードが高速なので超広角は1/4,000秒以上が必要。1枚撮影はかなり高度なため高速連写の力を借りる。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF11-24mm F4L USM / 11mm(18mm相当) / マニュアル露出(F5.6、1/8,000秒) / ISO 1600

−−超広角11mmを使えるズームレンズということで、今後の撮影に対して、どんな可能性を感じられましたか?

広角レンズが好きで、以前からEF16-35mm F4L IS USMなども使ってきましたので、もうひとつ切り札が増えたというようなイメージではあるのですが、これまでこれを入れて撮りたいと思っても、入れられなかったものを構図に加えることができるというのは大きなメリットだと思います。

フィルムのころには、大判カメラなどを抱え、シートフィルムを持って、布幕をかぶり、必死でピントを合わせ、撮影していたこともありますから、それに比べればカメラも小さくなり荷物も小さくなりました。シャッター速度は1/8,000秒まで使え、手持ちでも撮ることができます。いまのデジタルカメラであれば、速いシャッター速度を使えるので、より動きを止めた撮影ができて手ブレ抑制にもつながりますよね。

自分が現場で受けた感動をそのまま写すことができる。もちろん本物にはかないませんが、たとえ失敗しても、また違う場所で撮ってみよう、また来年撮ろうという気持ちを大切にしたいと思っています。チャレンジのしがいがあるレンズですから、粘り強く、長く使っていきたいですね。

月刊誌「デジタルカメラマガジン」でも連動企画「Canon EF LENS 写真家7人のSEVEN SENSES」が連載中です。今回紹介した長根広和さんをはじめ、EFレンズを知り尽くした写真家によるレンズテクニックと作品が収録されています。

笠井里香

出版社の編集者として、メカニカルカメラのムック編集、ライティング、『旅するカメラ(渡部さとる)』、『旅、ときどきライカ(稲垣徳文)』など、多数の書籍編集に携わる。2008年、出産と同時に独立。現在は、カメラ関連の雑誌、書籍、ウェブサイトを中心に編集、ライティング、撮影を務める。渡部さとる氏のworkshop2B/42期、平間至氏のフォトスタンダード/1期に参加。