デジカメドレスアップ主義

【特別編】胎動するAF対応マウントアダプター

NEX-7+キヤノンEF-Sレンズ

 マウントアダプターを用いると、レンズとボディは電子的な連動を一切断たれてしまう――。マウントアダプターやオールドレンズの解説記事のなかで、くり返し書いてきた枕詞のようなフレーズ。いよいよこれが過去のものになろうとしている。メタボーンズとテックアートから、AF対応のEF-NEXマウントアダプターが登場した。NEXシリーズにEF/EF-Sレンズを付け、絞り制御、手ぶれ補正、そしてAF動作を実現する製品だ。メーカー純正品では以前からAF対応マウントアダプターがラインナップされてきたが、サードパーティのAF対応マウントアダプターは初登場である。早速その使用感をレポートしてみよう。

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メタボーンズ Eマウント用電子接点付キヤノンEFアダプターVer2

  • ボディ:ソニー NEX-7
  • レンズ:キヤノン EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM
  • マウントアダプター:Metabones Eマウント用電子接点付キヤノンEFアダプターVer2(デジタルホビー)

 メタボーンズはすでに絞りとIS(手ぶれ補正)を制御できる電子端子付きEF-NEXマウントアダプターを発売している。今回の製品は、これをファームアップすることでAF動作を実現したものだ。現時点ではAF動作可能なEF/EF-Sレンズが限られているものの、オフィシャルサイトに対応レンズリストを掲載している。今回はレンズリストに載っているEF-S 10-22mm F3.5-4.5 USMでテストしてみた。

 AF動作はスピードこそ望めないものの、大半のシーンで合焦ランプが点灯する。そして合焦ランプが点灯したカットのピント精度も申し分ない。スナップ用途であれば特に支障なく使えるだろう。ただし、今回試用したマウントアダプターはレンズの着脱がかなりきつめだった。EF/EF-Sマウントは現行規格なので、レンズ側の誤差は少ないはずだ。この点は改善を期待したい。

 IS動作をテストするため、EF-S 18-135mm F3.5-5.6 ISも装着してみた。オフィシャルサイトのレンズリストに未掲載のレンズだが、テレ端の低速シャッターでもブレなく撮影でき、ISの効果を確認できた。また、AFも試用した範囲では問題なく動作していた。なお、作例はAFモードを中央重点にして撮影し、合焦ランプが点灯した時点でシャッターを切っている。

メタボーンズのAF対応EF-NEXアダプターは、デジタルホビーにて4万1,500円。三脚座を搭載する
ボディ側に電子端子を搭載し、AF、絞り、ISの制御が可能。EXIFにレンズ名と撮影情報も反映される
側面のデジタル端子は、将来的にオプション機器(発売未定)を装着するためのものだという
NEX-7 / EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 6,000×4,000 / 1/200秒 / F4.5 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 17mm
NEX-7 / EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 6,000×4,000 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 22mm
NEX-7 / EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 6,000×4,000 / 1/320秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 22mm
NEX-7 / EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 6,000×4,000 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 10mm
NEX-7 / EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 6,000×4,000 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 22mm
NEX-7 / EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 6,000×4,000 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 10mm

テックアート EOS-NEX・iF

  • ボディ:ソニー NEX-7
  • レンズ:キヤノン EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS
  • マウントアダプター:TECHART EOS-NEX・iF(焦点工房)

 テックアートは電子マウントアダプターの新興ブランドだ。販売元の焦点工房によると、開発グループの自社ブランドだという。そして同ブランドの初の製品が、このEOS-NEX・iFだ。本製品はEF/EF-SレンズをNEXシリーズで電子制御するマウントアダプターだ。絞り、手ぶれ補正、そしてAFの制御に対応している。今回はEF-S 18-135mm F3.5-5.6 ISで本製品を試用してみた。

 まずAF動作だが、はじめに大きく前後に動き、その後小刻みに動いて合焦する。撮影シーンにもよるが、かなりゆっくりとした動きだ。EF-S 18-135mm F3.5-5.6 ISとの組み合わせではAFが迷うことが多かった。ズームのテレ側はそれなりに合焦するのだが、ワイド側で合焦しないケースが見受けられる。また、IS(手ぶれ補正)も効かない場面があり、本製品とEF-S 18-135mm F3.5-5.6 ISは相性のよくない組み合わせだったのかもしれない。なお、試写はAFモードを中央重点にして行い、合焦ランプが点灯したカットを掲載している。

テックアートのEOS-NEX・iFは、焦点工房にて2万7,800円。電子端子付きアダプターとしてはリーズナブルな価格だ
ボディ側の電子端子は円形になっている。内部は反射防止処置がほどこしてある
NEX-7 / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 6,000×4,000 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 135mm
NEX-7 / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 6,000×4,000 / 1/1,000秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 67mm
NEX-7 / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 6,000×4,000 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 100mm
NEX-7 / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 6,000×4,000 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 87mm
NEX-7 / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 6,000×4,000 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 18mm
NEX-7 / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 6,000×4,000 / 1/2,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 106mm

まとめ

 今回、登場間もないふたつのAF対応EF-NEXマウントアダプターを使ってみた。メタボーンズは電子端子付きマウントアダプターの先陣を切ったブランドだけあって、AF対応版も動作にそつがなく、実用できるレベルに達していた。AFスピードさえ求めなければ、気持ちよく撮影できるだろう。なお、デジタルホビーではすでに電子端子付きEF-NEXマウントアダプターを購入したユーザーに対し、有償アップグレードを提供する。Ver.1は1万1,800円、Ver.2は6,800円でAF対応版にアップグレード可能だ。ただし、海外の拠点でアップグレード作業を行なうため、2~3週間程度の時間を要するという。

 一方、テックアートの製品は絞り制御こそ問題ないものの、AFと手ぶれ補正に関してはより安定した動作に期待したい。レンズとの相性もあると思うので、動作確認済みレンズのリストを公表してほしいところだ。なお、テックアートは今後の製品として、コンタックスG-NEX、ニコンG-NEXの電子対応マウントアダプターを予定しているという。特にコンタックスGレンズのAF動作は意表を突く展開で、これは大いに期待したい。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp