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デジカメドレスアップ主義:工業用レンズという選択肢

FUJIFILM X-Pro1 + LM16XC
Reported by 澤村徹

  • ボディ:FUJIFILM X-Pro1
  • レンズ:興和 LM16XC 16mm F2
  • マウントアダプター:三晃精機 X-Pro1用Cマウントアダプター
  • ストラップ:shawn & megu camera leather strap + pad
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 Cマウントといえば、16mmフィルムムービーカメラのシネレンズを思い浮かべる人が大半だろう。では過去のマウントかというと、実はそうではない。現在でもCマウントは、工業用レンズのマウントとして広く用いられている。勘のいい人はもうお気づきだろう。Cマウントアダプターを介せば、ノンレフレックス機に工業用レンズが装着できる。今回はFUJIFILM X-Pro1とコーワ製工業用レンズを組み合わせ、その描写力を楽しんでみよう。

 工業用レンズとは、いわば産業用ロボットの目だ。工場のライン上の製品を撮影し、異常がないかチェックしたり、撮影画像を元にパターンマッチングなどを行なう。こうした用途は被写体を正確にとらえる必要があるため、工業用レンズは隅々までシャープに写るのが特徴だ。所定のイメージサークルを、所定の解像度で確実にとらえる。これが工業用レンズの使命である。

 今回取り上げるコーワのXCシリーズは、4/3型800万画素センサーに対応した工業用レンズだ。Cマウントを採用しており、マイクロフォーサーズに装着すると理想的な撮影環境となる。加えてこのレンズはイメージサークルが広く、APS-Cセンサーでもケラレが最小限ですむ。そこで今回は、APS-C機のX-Pro1と組み合わせてみた。描写傾向については後半で解説しよう。

 本レンズは工業用レンズだけあって、外観や仕様が写真用レンズと大きく異なっている。まず、最小限のスペースで設置できるように、きわめてスリムな鏡胴だ。XCシリーズは12/16/25/35/50mmという全5本のラインナップで構成されているが、どれもスリムなデザインを採用している。写真用レンズのように滑り止めのラバーやローレットはなく、代わりにリングの動きをロックするネジが付属する。工業用レンズはフォーカスと絞りを固定して設置することが大半なので、このような仕様なのだ。写真用レンズと異なるバックグランドで進化してきたことが伝わってくる。なお、コーワXCシリーズは業務用機材となるため、一般個人ユーザーへの販売窓口は限られている。現在はmukカメラサービスが個人向けに販売を行なっている。

LM16XCはmukカメラサービスにて10万8,150円。他の焦点距離のレンズも販売している LM16XCのスペックは16mm F2となる。XC全シリーズが開放F2の単焦点レンズだ
フォーカスと絞りの刻印がかなり離れている。基本的に写真用途は意識していないレンズだ フォーカスと絞り、それぞれのリングにロック用のネジがある。締めるとリングを固定できる

 X-Pro1用Cマウントアダプターは三晃精機のものを選んでみた。X-Pro1用マウントアダプターは主要メーカーから各種マウントに対応したものが登場している。ただし、意外なことに現時点でCマウントアダプターをラインナップしているのは、主要メーカーでは三晃精機だけだ。外周に大きなえぐりを設けたデザインは、三晃精機ならではのオリジナリティといえるだろう。

 shawn & meguのcamera leather strap + padは、ざっくりとした素朴なテイストが魅力のストラップだ。肩当て部分のレザーがとてもやわらかく、使いはじめから体によくなじむ。金具はすべてソリッドブラスを使い、レザーといっしょに経年変化が楽しめるように配慮している。

三晃精機のX-Pro1用Cマウントアダプターは1万円。カラーはシルバーのみ shawn & meguのcamera leather strap + padは9,800円。吊り環に装着するタイプだ
留め具はすべてソリッドブラスだ。一眼レフ向けの耐重性を備えている 肩当ての中央にはブランドロゴが入っている。ラフなカッティングで素朴なストラップだ

 さて、工業用レンズの描写はどのようなものだろう。先入観としては硬質でかっちりシャープに写る印象が強いが、実際には総じて軟調なレンズだ。コントラストは低く、発色も控えめ。典型的な中間調寄りのレンズである。イメージサークル内は周辺部まですぐれたシャープネスをキープし、ディテールの再現性は申し分ない。絞り込んでもカリカリせず、全域を通じて軟らかいシャープネスだ。白飛び、黒つぶれ、ディテールのつぶれを避け、データ的に理想的な像を取り込むレンズといえるだろう。

 開発者によると、XCシリーズはすべて共通の光学性能を目指して設計しているという。実際に12/16/25/50mmの4本を試してみたところ、中間調寄りの軟調というテイストはすべての焦点距離に共通していた。この点は写真用レンズと大きく異なる部分だ。写真用レンズは、広角、標準、望遠、マクロなど、焦点距離ごとに主用途となる被写体向けの画作りが求められる。一方、工業用レンズは純粋に画角だけが変わり、描写傾向は一定だ。当然ながらボケの美しさも考慮していないが、そのわりに若干二線ボケが出る程度で、単焦点レンズとしてまずまずの表現力といえるだろう。

 コーワXCシリーズは、端的にいうとニュートラルな描写だ。もう少しおもしろみがほしいのであれば、APS-C機と組み合わせてみよう。オーバーイメージサークルになるためケラレが若干残るものの、周辺光量落ちに似た描き方で、ニュートラルな画に妙味をプラスできる。その一方、周辺部の流れは抑えめで、けっして破綻した画にはならない。オールドレンズファンであれば、XCシリーズはオーバーイメージサークルで楽しむと気持ちがのってくるだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしの撮影画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。
X-Pro1 / LM16XC / 4,896×3,264 / 1/340秒 / F2 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 16mm X-Pro1 / LM16XC / 4,896×3,264 / 1/600秒 / F8 / +0.67EV / ISO200 / WB:オート / 16mm
X-Pro1 / LM16XC / 4,896×3,264 / 1/340秒 / F5.6 / -0.67EV / ISO200 / WB:オート / 16mm X-Pro1 / LM16XC / 4,896×3,264 / 1/4000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 16mm
X-Pro1 / LM16XC / 4,896×3,264 / 1/480秒 / F2 / -0.67EV / ISO200 / WB:オート / 16mm X-Pro1 / LM16XC / 4,896×3,264 / 1/3200秒 / F2 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 16mm


(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。カメラならびにデジタル関係を得意するフリーライター。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、ひと癖あるカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。近著は「OLYMPUS PEN E-P2/E-P1カスタムブック」「GR DIGITALカスタムブック」(ともに翔泳社)他。http://metalmickey.jp

2012/6/28 00:00