メーカー直撃インタビュー:伊達淳一の技術のフカボリ!

EOS 7D Mark IIで結実したキヤノンのメカ&AF技術

7D、1DXとの違いや最新のAEシステムも解説

 1〜2年という短いスパンでモデルチェンジされる昨今のデジタルカメラの中で、5年という異例の長寿を果たしたEOS 7Dがついに刷新された。惜しみなく投入された最新技術、特に注目度の高いミラーやシャッターなどのメカ機構、AF性能を中心にそれらの核心に迫った。(聞き手:伊達淳一、本文中敬称略)

キヤノンEOS 7D Mark IIって何?

画面周辺まで広くカバーするF5.6対応オールクロス65点AFと最高約10コマ/秒の高速連写性能が魅力のAPS-Cフォーマットモデル。色で被写体を追尾するEOS iTR AFや、水銀灯や蛍光灯下で露出がばらつかないフリッカーレス撮影など、フラッグシップモデルに迫る最新の機能を搭載。キヤノン独自のデュアルピクセルCMOS AFにより、一眼レフとしては最速クラスのライブビューAFも実現している。

 伊達淳一的EOS 7D Mark IIの気になるポイント
  • ・撮りたい構図でAF撮影できるF5.6対応オールクロス65点AF
  • ・7.2Vのコンパクトなバッテリーで約10コマ/秒の高速連写を実現
  • ・バウンドが少なく、動作音も静かなミラー/シャッター機構
  • ・デュアルピクセルCMOS AFによる高速なライブビュー撮影が可能
本インタビューは「デジタルカメラマガジン12月号」(11月20日発売、税別1,000円、インプレス刊)に掲載されたものに、誌面の都合で掲載できなかった内容を加筆して収録したものです。
近藤一隆氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター
「2,000万画素で連写10コマ/秒、最高ISO16000が最適と考えました」
山名一彰氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター
「レリーズシーケンス短縮やミラーバウンド減少でレリーズタイムラグ55m秒を実現しました」
吉田明光氏
キヤノン株式会社
イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター
「DPP 4で現像すると解像感が増して高輝度側の階調も出しやすくなります」
大中達浩氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二事業部
「動体の決定的瞬間を逃さないための速さとレスポンスを追求しました」
門原輝岳氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター
「測距点の多点化とEOS iTR AFで高い捕捉性能を実現しています」
山本英明氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター
「小さな工夫の泥臭い積み重ねでAF多点化とサイズの維持を両立できました」

 ◇           ◇

――すでに多くの媒体でEOS 7D Mark II(以降7D2)の開発者インタビューが掲載されており、同じような質問ばかりで食傷気味かとは思いますが、製品発売後の掲載ということもあり、これまでの開発者インタビューやカタログではやや漠然としていた部分まで踏み込んでお聞きしたいと思います。

 とはいうものの、やはり最初は、7D2の開発コンセプトについて、EOS 7D(以降7D)ユーザーのどんな声を受け、どのような点を改良してきたのか、お伺いしたいと思います。

大中:7Dの後継機ということで“動体の決定的瞬間を逃さない”スピードやレスポンスを追求し、APS-Cのフラッグシップ機としてふさわしい性能を備えたカメラにする、というのが7D2の開発コンセプトです。既存の7Dユーザーからの要望で多かったのは“高感度画質”と“AF性能”でした。

 AFに関しては、EOS 50Dのオールクロス9点AFからオールクロス19点AFに進化したということで、満足度の高い項目でもあったのですが、その一方で、もっと高いAF精度や動体に対する食いつき、さらにはより広い測距エリアや測距点の高密度化を求める声も多くいただきました。

 また、動画性能についても、7Dが発売された5年前は“EOS MOVIE”の先駆け的な存在でしたが、動画撮影中にAFが使えないなどの制約があり、動画撮影機能について期待する声も多かったです。

――APS-Cのフラッグシップ、というワードが出ましたが、EOS-1D X(以降1D X)と同じように縦位置グリップ一体型にしてモーターやバッテリーを強化し、AFや高速連写機能の強化を図る、という案はなかったのでしょうか?

 その方がボディ+バッテリーグリップというスタイルよりも小型化が期待できますし、縦位置撮影時のボタンやダイヤルの操作性も横位置に近づけられると思うのですが……。

大中:バッテリーグリップ一体型という声はそれほど多くないと認識しています。もちろん、縦位置撮影の向上のためにバッテリーグリップをぜひ使いたい、というお客さまは多くいらっしゃいますが、全体から見るとバッテリーグリップの装着率は2割未満といったところでしょうか。

バッテリーグリップを一体化してしまうと、やはりボディの大きさ、重さ、そして価格の面からも手が届きにくくなってしまいます。システム全体として小型軽量にできるというAPS-Cの良さを引き出す意味でも、グリップは一体型ではなく、必要に応じて選択できる着脱式の方がユーザーメリットがあると考え、グリップ一体型という案は開発当初からありませんでした。

 確かに、一体型にすれば、よりパワフルなバッテリーやモーターが使えますし、縦位置グリップのグリップ感やボタンやダイヤルのレイアウトの自由度も高まり、できることは増えますが、後継機として、7Dとほぼ同じボディサイズでLP-E6という従来と互換のあるバッテリーを使用することも重要と考え、その制約の中で実現可能な性能を徹底的に追求しています。

シャッターやミラー機構の全面見直しで高速連写を実現

――確かに従来のバッテリーと互換性があるのはうれしいです。ただ、7.2Vのリチウムイオンバッテリーと限られたボディスペースで約10コマ/秒の高速連写を実現するのは、当然簡単な話ではないですよね? そのあたりの技術的な工夫などを教えてください。

山名:ミラーとシャッターが電流を多く使う部分ですが、ミラーもシャッターもそれぞれ消費電力を下げるように工夫をしています。例えば、シャッターにボールベアリングを入れて、スムーズに動くようにすることで、少ないパワーで駆動でき、20万回とシャッター耐久も向上させることができました。

ボールベアリングを採用したシャッター機構
シャッターユニット内に4個のベアリングを採用し、少ない力でなめらかに動くようにすると同時に耐久性の向上も図っている

 また、従来の7Dはバネの力でミラーを跳ね上げていたのですが、このバネをチャージするのに多くの電流が必要でした。7D2では、モーターの動力でミラーを直接連動してミラーアップ・ダウンを行う機構を採用することで、より効率的な駆動を行えるようにしています。

 また、これまではミラーチャージとシャッターチャージをほぼ同じタイミングで行っていましたが、約10コマ/秒の高速連写を実現しようとすると、ピーク電流が大きくなり、7.2Vの電源ではまかないきれなくなってしまいます。

 そこで、ミラーが上がった段階でミラーチャージ、ミラーが下がった段階でシャッターチャージというように、それぞれ電流を消費するタイミングをずらすことでピーク電流を下げています。

 さらに、連写の高速化を図ろうとすると、ミラーをより速く動かす必要があります。しかし、ミラーの動きを速くすると衝撃も大きくなり、ミラーバウンドも大きくなってしまいます。ミラーバウンドが収まらなければ、レリーズも測距も行えませんので、バウンドが収まるのを待つぶん、時間的なロスが生じます。

連写時の高速化を実現するミラー機構
ミラーの動きそのものを高速化するよりも、モーター制御やバウンド防止機構でミラーアップ・ダウン時のバウンドを抑制することで、速やかに次のシーケンスに移行できることが連写の高速化につながっている

 そのため、7D2ではミラーの駆動速度にメリハリをつける手法をとっています。特に、ミラーダウン動作では、動き始めはミラーを高速駆動させ、動き終わりつまり衝突直前にミラーの速度を減速しています。

 これにより、ミラーの衝撃を緩和し、ミラーバウンドを低減させています。また、ミラーダウン動作(駆動+バウンド)をトータルで考えると、バウンド時間が短縮されているため、駆動の時間を長くとることが可能となり、ギヤ比を低速側に持っていくことができて、ピーク電流をさらに低減させています。

ブレーキレバーによるミラーの減速
ミラーダウン時にモーター制御とブレーキレバーで減速してバウンドを抑制することで、即座に次の測距が行える

――ミラーバウンドを抑えるためにゆっくりとミラーを動かすと、レリーズタイムラグや像消失時間的には不利になるような気がしますが……。

山名:ミラー動作(駆動+バウンド)をトータルで考えると7Dよりも短縮しています。レリーズタイムラグが短縮できている理由の1つはこの短縮によります。また、先ほどご説明したように、速く動かしてもミラーバウンドがあると、それが収まるのを待つ必要があります。

 7D2は、ミラーダウン時に適切な減速を行うぶん、ミラーダウンにかかる時間はわずかに長くなりますが、バウンドが収まるまでの時間はむしろ短くなっているため、像ブレは低減しています。そういう意味では、連写時のファインダー像の見え方は従来よりも安定しています。

 また、像消失時間も7Dと比較して若干改善しています。ちなみに1D系は、ミラーをできるだけ速く動かしているので、キヤノンのフラッグシップ機にふさわしい像消失時間を実現しています。

――その1D系の俊敏さが正直うらやましかったので、グリップ一体型の上位後継機が欲しかったのですが……。一方、レリーズタイムラグは、7Dの59m秒に対し、7D2は55m秒とレリーズタイムラグが短くなっていますね?

メインミラーのバウンド防止機構
メインミラーが戻る際、受け止める軸がわずかに下がり、運動エネルギーを相殺することで、バウンドを防止する機構も備わっている

山名:ミラーバウンドが少なくなったことに加え、画像処理エンジンなど電気系の最適化や、レリーズシーケンスの動作1つ1つを少しずつ短縮することで、55m秒というレリーズタイムラグを実現できました。

――EOSは電磁絞りを採用しているので、小絞りになるほどレリーズタイムラグが長くなりますよね? 7D2の55m秒というレリーズタイムラグは絞り開放時の値ですか?

山名:レンズによって事情が異なりますが、7D2のキットレンズとして設定されているレンズであれば、少なくとも開放から3段まで絞っても、ほぼ55m秒のレリーズタイムラグを実現できます。

――それ以外のレンズだと?

大中:レンズによって求められる駆動部の仕様も異なるため一概には言えませんが、常に最適な駆動部を選択することや、制御方法を検討することなどにより進化させておりますので、基本的に古いレンズよりも新しいレンズの方が絞りの動きは速くなっています。

 ただ、ある製品から大きく進化したといったターニングポイントがあるわけではなく、具体的な度合いについてはお答えすることが難しいです。

広範囲に測距点を置けるAPS-Cこそ周辺部のオールクロス測距が効く

――レンズカタログなどにそのあたりの情報を載せてほしいですね。ところで、AFも7Dのオールクロス19点AFから、7D2はオールクロス65点AFに進化していますが、従来の7Dと変わらないボディサイズで、多点化とワイドエリア化を実現できたポイントとは?

山本:AFセンサーの製造工程に微細化プロセスを採用し、限られた面積の中により多くのラインセンサーを配置できるようになった点が大きいです。それにより、19点から65点へと測距点が増え、測距エリアも大幅に広がっている割には、AFユニットサイズを極端には大きくせずに設計できています。

 しかし、画素を微細化できたからといって、すぐに65点と多点化ができるわけではありません。ある1つの技術的なブレイクスルーがあったわけではなく、小さな工夫の泥臭い積み重ねで実現しています。

 例えば、従来、金属であったAFプレートをモールド化しています。一見、モールド化は強度が弱くなると思われがちですが、形状の自由度が増すため、綿密な計算に基づいて設計することでより強く小型にできます。

 そのほかにも、組み立ての際にAFユニットの位置調整を容易に、かつ高精度にできるようにしたり、温度や湿度の変化、衝撃が加わった際にも精度を保てるような構造を採用しています。

 このように数多くの地道な改良と工夫を積み重ねることで、7Dと同等のボディサイズに収まる65点AFユニットを作ることができました。

――AFユニットが7Dよりも大きくなっているにもかかわらず、7Dのボディサイズにどうやって収められたのですか?

山本:周辺ユニットとの位置関係を7Dからすべて見直しています。部品と部品の隙間や、部品の肉厚を求められる強度に応じて最適化するなどして、AFユニットを収納するスペースを稼ぎ出しています。

 7Dとのユニット配置の違いの例を挙げると、7DではAFユニットの下に基板がありましたが、7D2ではその機能を別の基板に統合し、AFユニットの下の基板をなくしています。それにより、7D2のAFユニットは、7Dより1.2倍ほど背が高くなっているにもかかわらず、カメラ全体としては7Dのサイズを維持できています。

 このように、7Dのボディサイズを維持できたのは、周りのユニットを担当している皆さんに協力していただけた、というのもかなり大きいです。全体のレイアウトを考えている山名とは、何度も衝突しながら開発を進めました(笑)。

大中:どのスペースを誰がどう使うか、取り合いになるんですね。

山名:特にミラー担当とAF担当はスペースの奪い合いになりますね。レイアウトが決まると仲良くなりますけど(笑)。

――7Dに比べ、横と斜め方向に測距エリアが広がり、特に縦位置撮影時の構図の自由度が格段に向上していますが、測距エリアを広げるためにAFユニットのどういった部分を改良しているのでしょうか?

山本:先ほどはメカ設計的な観点で説明しましたので、次はラインセンサー配置や光学設計的な観点から、7D2のAFの特長を説明させていただきます。

 こちらが7D2のファインダーをのぞいたときに、ラインセンサーがどのように配置されているかを示した概念図です。一方、こちらは実際のAFセンサー面でのライン配置を示す模式図です。

AFセンサーユニットの仕組み
ボディ下部にあるAFユニットにサブミラーで光を反射。コンデンサーレンズで光束を分離し、AFセンサー上に十字に配置されている各ラインセンサーに的確に光が導かれるように工夫されている

 AFセンサー面では、ラインセンサーが上下方向や左右方向に、それぞれ一対に並んでいるのが分かると思います。ここで、対になるラインセンサーの間隔が広いほど高精度に測距できます。

 AFセンサーの中央に×状に配置されているのが、ラインセンサーの間隔が広く、最も高精度に測距可能なF2.8対応のクロスセンサーです。中央1点は、このF2.8対応の×型クロスセンサーと、F5.6対応の+型クロスセンサーとを合わせ、縦横斜めのデュアルクロス測距が可能です。

AFセンサー上には、上下または左右に向かい合った2つのラインセンサーが一対となって並んでいる。これが十字に配置されているのがクロスセンサーだ。このラインセンサーを分割して、複数の測距点にしている
EOS-1D X
EOS 7D Mark II
EOS 7D

――F2.8対応のセンサーはこんなに距離を離す必要があるんですね。周辺にF2.8対応の測距点があったらいいのにと思っていましたが、とても周辺にF2.8のラインセンサー、ましてやクロスで配置する余裕なんてないですね。

大中:1D XでもF2.8対応の測距点は中央縦5点のみですが、左右計20点にF4対応のクロス測距点を採用しており、こちらもF5.6対応の測距点よりも高精度に測距が可能です。1D Xはいわゆるオールクロスではありませんが、F2.8、F4対応の測距点数が多く、総合性能は7D2のそれよりも優れています。

 1D Xはフルサイズなので、画面全体に対して測距エリアが狭く、AFエリア全体を使って被写体を追尾させるというよりは、撮影者の意思で測距点を決めて撮影するスタイルを想定していて、ピントの精度を重視する仕様になっています。

 一方、7D2はAPS-Cなので、より周辺まで広く測距点が配置されていて、画面内を左右に動き回る被写体を追尾させるなど、より周辺の測距点が果たす役割が重視されると考え、周辺までオールクロス測距にこだわりました。

山本:測距エリアを広げるには、各ラインセンサーを長くする必要がありますが、他のラインセンサーに入射する光が混入しないようにしなければなりません。

 例えば、AFセンサーのライン配置を見ると、ほんの少しくらいラインセンサーを伸ばしても、AFセンサーがわずかに大きくなるだけのように見えます。しかし、実際は、伸ばしたセンサーにほかのセンサーへの光が混入してしまいます。

 クロス測距では特に、縦線検出センサーへの光が横線検出センサーに混入してしまうという、設計的な困難があります。それを避けるためにAFセンサー面を後ろに下げてAFユニット全体を大きくすると、わずかなラインセンサーの延長が、全体に大きく影響を与えます。

 そこで7D2では、各ラインセンサーの間隔やセンサー面に届く光学像の大きさについて入念に最適化し、AFユニットの大型化を最小限にとどめています。

 また、撮影レンズの光束を有効に使うために、AF光学系は中央と左右の3つに分割し、中央は中央、周辺は周辺で、それぞれ専用の光学系としています。それにより、広くなった測距エリアの端部まで適切に光が届き、精度良く測距できるようになっています。

 ただ、コンデンサーレンズで光を3つに分割しているため、その境目では光が遮られてしまいます。測距点の配置で、中央と左右のゾーンの間に少し隙間が空いているのは、この境目に当たる部分なのです。

――なるほど。左右と中央のゾーンで少し隙間が空いているのは、そういう理由だったんですね。ただ、領域拡大時にはこの隙間でアシスト測距点が切れてしまうし、ゾーンAFでも測距点を1つずつ左右にずらせないのが残念です。どうしてこのような仕様になっているのでしょう?

門原:使おうと思えば使えますが、アシスト測距点として利用するには、基準となる測距点に対し間隔が空きすぎていると考え、ゾーンをまたがないような仕様にしています。

――ところで、クロス測距とライン測距でそんなに違いがあるのですか?

山本:シーンによってはあります。クロス測距の方が被写体の絵柄で左右されにくく安定した測距が可能です。ラインセンサーだと全然測距できないかというと、そんなこともないのですが、サーボAFで動体を連続的に追うときなどの安定性にはクロス測距が効いてくると思っています。

――ピントの精度という点でもクロス測距の方が上ですか?

山本:チャートなどの、ある1本の線にピントをどれだけ正確に合わせられるか、というテストでは、ラインもクロスも同じような精度で測距できます。しかし、いろいろなシーンでの精度をおしなべて比較するとクロス測距の方がより高精度に測距できます。

測距点が増えてもカメラが迷わない。新しいアルゴリズムを採用したAF技術

――カタログやWebページの製品説明でよく分からないのが“AIサーボAF III”です。AIサーボAFの世代が上がって性能が向上している、ということはなんとなく伝わるのですが、初代からII、IIからIIIと、具体的にどのようにAIサーボAFが進化しているのか教えてください。

門原:開発の担当部門としては、TもIIもIIIもなくて、継続した技術なんですね(笑)。

大中:“AIサーボAF”というのは、動体を追尾するためのAFモードで、T、II、IIIというのは、動体追尾のアルゴリズムや機能が進化したというのを打ち出すために、商品企画部門で命名したものです。

門原:“AIサーボAF II”を初めて搭載したのはEOS-1D Mark IVです。それ以前のAIサーボAFとどこが違うのかというと、さまざまなシーンを想定して動体予測制御を行っているのですが、プロカメラマンをはじめ多くのお客さまのご意見をもとに、これは有効な測距結果、これは排除した方が良い測距結果というのを選り分けるアルゴリズムを加え、できるだけ実際の撮影に適応した使うべき結果を見極める力を付けたのが“II”です。

――AIサーボAFの性能というのは、被写体の動きに対して選択した測距点でどれだけAFが正確に追従できるかという縦方向の動きをとらえる能力と、測距点から被写体が外れたときや測距点の自動選択時など、どの測距点を選択するかという横方向の動きを判別する能力に大きく分けられると思いますが、今のお話はどちらですか?

門原:縦方向です。被写体が急に方向転換したり、一時的に障害物で狙っている被写体が隠れたときなど、その時点で得られた測距結果だけで判断するのではなく、それまでの結果を時間軸方向でとらえて解析し、不要なAF制御を排除することで、より安定したAIサーボAFが行えるようになりました。

――AIサーボAF IIからIIIへの進化はどんな部分ですか?

門原:1D Xで初めてIIIを搭載しましたが、IIIで特徴的なのは“AFカスタム設定”の搭載です。代表的な6つのシーンを選ぶことで、動体予測制御に深く関係している3つのパラメーターをそのシーンに最適化できるようになりました。

 また、内部的には、演算で採用する時間軸方向の(測距結果の)データだけでなく、横方向や時間に関する敏感度を柔軟に可変できるようにしたことで、被写体の急激な速度変化に対する適応や、狙っている被写体以外のものにピントを合わせてしまう失敗が少なくなっています。

――測距エリアが広がり、測距点数も増えれば、誰でも簡単に動体が撮れるようになるんじゃないかと期待してしまいますが、現実はそう甘くないですよね。

門原:測距点数が増えて高密度になれば、ピントが中抜けするリスクは減りますが、その一方で、狙っている被写体以外のものにピントが合ってしまう可能性も増えます。

 そこの取捨選択に対して、かなり神経を使っています。測距点数が増えると失敗する傾向は減るけれども失敗する要因も増えるという難しさはあります。

 そこで、1D Xや7D2に搭載したのが“EOS iTR AF”です。RGB測光センサーで被写体の色や人の顔を認識し、撮影者が狙っている被写体を色で追尾できる機能です。

――キヤノンのAIサーボAFは、測距点自動選択時でも、まず撮影者が選択した測距点で被写体をとらえてからシャッターボタン半押しで追尾を開始する、というのがお約束でしたが、7D2では、AIサーボAF時の開始測距点を「自動」で選択してくれる設定が初期値になっていますね。

 これは、ワンショットAF時と同様、基本的には手前の被写体にピントを合わせるような仕組みなのでしょうか?

門原:そのとおりです。

――昔のキヤノンのAIサーボAFは、測距点自動選択にしてもまず最初に中央で被写体をとらえる必要があり、その頃はなんて妙な仕様なのだろうと思っていました(笑)。

 その後、開始測距点を自由に選択できるようになり、撮りたい構図でAIサーボAFを開始できるようになってからはすっかりこのスタイルに慣れたのですが、狙っている被写体を明確にカメラに伝えられるという意味では、この方法は実に理にかなっていますね。

 7D2の開始測距点の自動選択も使ってみましたが、EOS iTR AFを使って人物撮影するときはかなり便利ですが、遠近が混在するシーンで野鳥のような小さな被写体を狙う場合、意図しない測距点が選択されてしまう場合も多く、個人的には従来のスタイルに設定を変えて使っています。

 とはいえ、小さな1点で被写体をとらえるのが面倒……、いや難しい場面もあります。そこで提案なのですが、AIサーボAFの開始測距点の選択時に、領域拡大やゾーンAFのような広い測距点が使えれば良いと思います。

近藤:確かにそのような使い方ができれば、よりこのモードを活用しやすくなるかもしれませんね。

――ところで、7D2では測距エリアが周辺まで広がり周辺の被写体にもAFで追えるようになった一方、これまでよりも余計なものにピントが合ってしまうリスクも高くなり、それを排除するアルゴリズムを強化する必要があったと思いますが、そのあたりはどうでしょう?

門原:先ほど説明したように、演算結果の連続性や信頼性を重視して、どの測距点を選択すべきかを判断しています。確かに7D2は測距エリアが広がっていますが、測距点自動選択時は至近優先が基本とはいえ、特異なケースは排除するようにしています。

 また、7Dと70Dはどちらも19点AFを搭載していますが、特にワンショットAFでの測距点自動選択のアルゴリズムは70Dでかなり改善を図り、7D2にもその思想を採り入れています。

 そういう意味では、7D2は、1D Xよりも測距点自動選択が使われるケースが多いと考え、1D Xで培ったAF技術にエントリー系のAF技術も統合し、さまざまな要素を採り入れたAFに仕上がっています。

――AIサーボAF撮影で意図しなかった被写体が選択された場合、選択フレームに被写体をとらえ直し、シャッターボタンを半押しし直してAIサーボAFをやり直すことになりますが、その際、シャッターボタン半押しからすぐにシャッターを切っても動体予測駆動が効くのでしょうか?

門原:演算の都合上、だいたい3回くらい測距を行う必要があります。それにかかる時間は明るさによって異なり、暗くなるほど時間がかかりますが、屋外であればコンマ数秒もかかりません。

――動体予測駆動というのは、シャッターボタンを全押ししてからシャッターが切れるまでの時間差(レリーズタイムラグ)で動体が移動するぶんだけ先回りしてレンズのピント位置を調整する、という技術ですが、ファインダーで動体を追っている最中でも、動体予測駆動の分だけピント位置がずれているのでしょうか? それともシャッターボタンを全押ししてシャッターが切れる直前にピント位置を調整するのでしょうか?

門原:カメラに向かってくる被写体であれば、ファインダーをのぞいている間の前ピンへの調整とシャッターが切れる直前での調整がされます。光学ファインダーでのわずかなピントのズレがはっきり分かるかといえば、ほとんど分からないと思います。

――任意選択できるAFフレームの数を、21点、9点と減らすと、被写体がAFフレームとAFフレームの間に入った場合、ピントが中抜けするリスクは高まらないのでしょうか? また、AFフレームの数が少なくなるぶん、演算処理が少なくなり、被写体への追従性能が高まることはありますか?

門原:21点、9点を選択した場合でも、自動選択時は65点すべてを使いますので、中抜けするリスクは変わりません。一方、任意選択時には、間にあるAFフレームは存在しないものとして動作します。

 あえていえば、選択できる測距点数を減らすことで、測距点を端から端へ移動しやすくする意図で設けた機能です。

――AIサーボAF時のレリーズ特性を「ピント優先」にするのと、連続撮影速度を遅くするのと、どちらが各コマにピントが合う確率は高まりますか?

門原:いろいろな被写体への適応を考えると、レリーズ特性は「バランス重視」でご使用いただきたいのですが、例えば暗いときに連続撮影速度よりピントを優先させたい時などは「ピント優先」にしていただいた方が良いと思います。

――「ピント優先」「レリーズ優先」というのは、ピントの甘さをどこまで許容するかというしきい値設定のようなものですか?

門原:違います。「ピント」か「撮影チャンス」のどちらを優先するかです。AIサーボAFは動体を撮影するためのモードですから、ワンショットAFのように蓄積時間を長く取ることができません。「ピント優先」というのは、この蓄積時間にも配慮した設定です。

――蓄積とは何ですか?

門原:ラインセンサーからの信号を得るための蓄積時間です。蓄積時間を長くすれば、暗い被写体でもラインセンサーからの信号をよりはっきりと認識できるので、ピント精度を高めることができます。

 蓄積時間が短い場合、ラインセンサーからの信号がやや不鮮明になり、特に暗いシーンなどはピントが甘くなるケースも出てきます。

気になるエクステンダーによるAFへの影響は?

――7D2のAF性能を最大限に引き出せる望遠レンズを教えてください。

門原:なかなか答えるのが難しい質問ですが、個人的にはEF 300mm F2.8L IS II USMや超望遠シリーズなどがおすすめです。

――エクステンダーを装着するとAFスピードはどうなりますか? II型とIII型でAFの速さは違いますか?

門原:被写体を探しにいくサーチ駆動は遅くなります。カタログに記載されているように、1.4Xで1/2、2Xで1/4のスピードに低下します。

 ただ、被写体をとらえてからの追従に関しては、それほど速くレンズを駆動する必要はありませんので、追従性能についてはそれほど遅くはなりません。

 エクステンダーのII型とIII型で、AFスピードに違いはありません。II型と比較してIII型の向上点は、高解像・高コントラストな高画質を実現した光学性能、高耐久・高堅牢構造の実現、新開発フッ素コーティングにより汚れや水滴が付きにくくなったことの3点です。

――AFマイクロアジャストメントで、ワイド端、テレ端それぞれで補正値を設定できるようになりましたが、中間の焦点距離域はどのような補正になるのでしょう?

門原:線形の補間になります。

――歪曲収差補正を行うと、AFフレームが表示されません。理由は分からないでもないのですが、AFフレームの位置が大きく変わるほど歪みが大きなレンズがあるとも思えませんし、大まかでも良いのでどのAFフレームが選択されていたかが確認できれば、AFカスタム設定を考える際に判断材料が増えると思うのですが……。

近藤:歪曲収差補正を行うと、周辺部が少しトリミングされるため、どうしても元の画像と微小なズレが発生してしまいます。それほど大きなズレではないのですが、不正確なAFフレーム情報がデータとして残ってしまうと、お客さまに誤解を与え無用な混乱を招いてしまう恐れがあります。

 キヤノンとしては、不正確な情報を残さないというスタンスで、カメラ内で歪曲収差補正を行った場合にはAFフレーム情報を残さない仕様にしています。ただ、RAWもしくはRAW+JPEGで撮影した場合には、RAWの方にはAFフレーム情報が記録されていますので、歪曲収差補正もAFフレーム表示も両方欲しいという場合は、RAWで撮影していただければと思います。

――7D2は7Dよりも連続撮影枚数が増えていますが、RAW+JPEGではコマ速が速くなったぶん、連写できる時間はむしろ短くなっています。

 そこで、少しでも連続撮影枚数を増やそうとRAW記録のみで撮影し、あとでDPP 4(Digital Photo Professional 4.0)で同名のJPEGを現像するというスタイルを試してみたのですが、調子に乗って3,000枚も撮影してしまうと、撮影時のパラメーターで一括現像するだけでも15時間以上かかってしまいました。

 10コマ/秒で処理できるデュアルDIGIC 6の演算処理能力の高さを思い知りましたが、できることならこのデュアルDIGIC 6のパワーをRAWのボディ内一括現像に生かせればもっと快適になるのにと思います。範囲指定、全カット、レーティングなどで指定した複数のRAW画像を、RAWと同名のJPEGでボディ内RAW現像できると良いのですが……。

近藤:ありがとうございます。ご意見は、今後の開発に役立てたいと思います。

――ちなみに、DPPのバージョン3と4では、画質、処理スピードなどに違いはありますか?

吉田:同じ設定で現像した場合、DPP 3では斜線にジャギーや偽色がやや目立ちやすい傾向がありますが、DPP 4で現像するとジャギーが目立ちにくく、なおかつカメラよりも解像感も向上します。高輝度側の階調が出しやすくなっているのもDPP 4の特徴です。

 従来のDPP 3ですと、高輝度側の階調を出そうとしても色がきれいに出ないという問題がありましたが、色も階調もきっちり出せるようになりました。ただ、現像の処理速度は、高度な画質処理を行って、画質の向上を図っているぶん、DPP 4の方が処理時間は長めです。

――ローパスフィルターレス仕様にしなかったのは? モアレや偽色のリスクが高まるのは分かりますが、7D2のように尖ったユーザーが使う機種だからこそ、ローパスフィルターレス仕様の究極の解像性能を引き出してほしかったと思うのですが……。

吉田:ローパスフィルターを外した方が解像感を引き出せるのは確かですが、解像感だけでなく、モアレや偽色も含めたトータルの画質を判断すると、APS-Cで20メガピクセルという画素ピッチでは、まだモアレや偽色の影響が大きいと考え、従来どおりローパスフィルターを採用しています。

――7Dと比べると、7D2は画素数が増えているにもかかわらず、高感度画質は向上していますね。一般的なシーンであればISO6400も十分きれいだと思いますが、野鳥の羽根の解像など非常にディテールにこだわった撮影では、やはりノイズリダクションの影響で細部がボヤッとしてしまい、個人的にはISO1600あたりが積極的に使える上限感度かな、という印象を持っています。

 高速連写を求めるユーザーの多くは、1D X並の高感度性能も求めていると思うのですが……。連写スピードや連続撮影枚数、高感度性能、ピクセル等倍でもキレの良い解像などを考えると、画素数は7Dと同じ18メガピクセルに留めるという選択肢もあったと思いますが、70Dと同じ画素数にしたのはどうしてでしょう?

近藤:おっしゃることはよく分かります。ただ、一方で画素数も増やしてほしいという要望もございますので、トータルバランスを考えると、20メガピクセルで10コマ/秒、最高感度ISO16000というのが最適と判断しました。

 また、70Dで採用したデュアルピクセルCMOS AFを7D2にも搭載していて、ライブビューでも非常に高速な像面位相差AFが効くのが特徴ですが、この70Dで培ったデュアルピクセルCMOS AFのノウハウを生かしやすかったというのも、画素数を20メガピクセルにした理由の1つです。

フリッカーによる露出・色合への影響を防ぐフリッカーレス撮影機能

――EOS iSA SYSTEMとはどういう機能ですか? EOS iTR AFと何が違うのでしょう?

大中:被写体を認識する機能です。測光センサーに、画像認識できるRGBセンサーを用いて人間の顔や被写体の色を認識して、その情報をAEやAFに活かすシステムです。

 EOS iSA SYSTEMを活用したAF機能が“EOS iTR AF”です。被写体情報をAFの測距点選択・追尾に活用しています。AE機能には特別な名称を付けていませんが、RGBセンサーで画像認識したデータを解析して、主要被写体や光源の色を判別し、それに応じて適切なAE制御を行っています。

 また、EOS iSA SYSTEM とは別になりますが、7D2で新たに搭載したフリッカーレス撮影も、測光センサーを利用しています。蛍光灯や水銀灯のフリッカーをこのRGB測光センサーで検知し、フリッカーによる露出や色合いへの影響が少ないタイミングでシャッターが切れるようレリーズタイミングを調整する機能です。

フリッカー光源の光量変化
蛍光灯や水銀灯は、電源周波数に同期して明滅している。AEセンサーでこの明滅を検知し、もっとも明るくなる瞬間にシャッターが切れるようレリーズタイミングを自動的に調整するのが、フリッカーレス撮影機能だ

――オートホワイトバランス(AWB)には活用していないのですか?

吉田:もちろん活用しています。AWBやオートライティングオプティマイザ(ALO)なども広義のAEに含んでいます。さらに、7D2の測光センサーには、赤外光を検知するIR画素が含まれていて、AWBやALOのさらなる精度向上やピクチャースタイル「オート」に活用しています。

 従来のAWBでは、屋外で自然の緑が多いシーンを撮影すると、緑がグレーっぽくなりくすんだ印象になることがありました。赤外光情報を活用することで、屋外の緑をより正確に検知することが可能になり、緑の再現性が大きく向上しました。

 ALOやピクチャースタイル「オート」では、赤味を強調し雰囲気のある夕景にする機能が備わっていますが、これも赤外光を検知することで夕景であることを正しく判断できるようになりました。

――先ほど測光センサーでフリッカー検知を行っているという話が出ましたが、ライブビューでも撮像センサーを使ってフリッカーを検知できないのでしょうか?

吉田:フリッカーは電源周波数の倍の周波数(50Hzの場合は100Hz)で明滅しているので、明るさの変動を読み取るためには、少なくともその倍以上での高速な読み出しが必要になります。撮像センサーからの読み出しはそこまで速くないのが現状です。

――GPSユニットをオンにしている場合、カメラの電源がオフになっている場合でもバッテリーを消耗するのがちょっと不便に感じます。ロガー機能はもちろんオフでの話です。

近藤:撮影場所が変わっても、カメラの電源を入れてすぐに位置情報を取得できるようにと考え、電源を切った状態でもある一定間隔で測位を行っています。

 電源を切った状態では必要以上に電流を消費しないようにしておりますが、GPSの測位が上手く行えない場所、室内などでは、測位に失敗した際にリトライを行うため、バッテリーの消耗が多くなる傾向があります。

――QボタンでGPS機能のオン/オフができると便利なんですけどね。

近藤:7D2では、マイメニューの登録可能数が増え、複数のタブを作成して機能を分類することができるようになりましたので、ぜひマイメニューを活用していただければと思います。

大中:おっしゃるとおり、カメラの電源をオフにしていたのに、GPS機能をオンにしていたらバッテリーがなくなっていたということは起こりえます。

 電源を入れてからの測位に時間がかかっても構わないので、電源オフ時には完全にGPS機能もオフにするカスタム設定があったら良いという声もいただいていますので、今後の製品開発へ生かしたいと思います。

――本日はありがとうございました。

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―取材を終えて― 明確なターゲットと機能がAPS-C一眼レフの存在意義を高めた

野鳥や飛行機、スポーツなど、動く被写体を撮影するアマチュアカメラマンにとって、最高のAFと連写性能を誇るフラッグシップモデルは憧れの存在。しかし、実売で50万円を軽く超える価格と、陳腐化が早いデジタルカメラだけに、ポンとフラッグシップを買える人はそう多くはないだろう。

それだけに、APS-Cフォーマットの高速連写モデルに、フラッグシップに限りなく近い性能を求めてしまうのだが、最近は(高い値段で売れる)フルサイズに新製品が集中。APS-Cフォーマットは安くなければ売れない(とメーカーは思っている)ので、なかなか気合いの入った高性能機が登場せず、いわゆる性能と価格のバランスを重視した鋭さに欠ける製品ばかりで、下手をすればミラーレスに市場を奪われかねない状態になりつつある。

そんな閉塞的状況の中、5年ぶりのモデルチェンジを果たしたEOS 7D Mark II。EOSシリーズ最多のオールクロス65点AFとEOS iTR AFを搭載してくるとは完全に予想外。約10コマ/秒の連写スピードや常用ISO16000の高感度も、一世代前のフラッグシップモデルEOS-1D Mark IVを超えている。

しかも、EOS 7Dとほぼ同サイズのボディで、だ。今回の取材では、高速連写と多点AFを実現するための技術的な工夫だけでなく、そのAF性能を引き出すためのポイントについてもいろいろ質問してみたが、いかがだっただろうか?

ちなみに、パワーのあるバッテリーで力任せにミラーを動かすEOS-1D Xの方が、像消失時間が短く、力強さが感じられるのに対し、EOS 7D Mark IIは瞬発力は欠けるものの、ミラーやシャッターの動きにムダがなく、動作音も非常に静かで上品だ。

AFカバーエリアも左右斜め方向に大きく広がっていて、フォーカスロックを併用しなくても撮りたい構図のままでAF撮影できる。これらは、フラッグシップモデルにはない魅力だ。

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。