インタビュー

Eyefi Mobi Proインタビュー

機能アップと今後の展望について聞く

アイファイジャパンは、無線LAN内蔵SDカード「Eyefi Mobi Pro」を発表した。RAWファイルの転送や選択転送などの機能向上に加え、無制限で写真を保存できるクラウドサービス「Eyefiクラウド」では、4月中に自動で画像を解析してタグ付けをして管理を簡単にする「スマートタグ」機能なども提供する。発表にともなって来日した米EyefiのCEOであるMatt DiMaria氏に、Eyefi Mobi ProやEyefiクラウドについて話を聞いた。

スマートフォン時代に合わせた“シンプルさ”

――Eyefi Mobi ProにはRAW転送、選択転送、ルーター経由の転送機能が追加されましたが、従来のEye-Fi Pro X2にもありました。

Eyefi Mobiを発売しても、X2と並行して販売してきました。そこでユーザーがどの機能を使っているか研究してきました。機能自体は同じものですが、ファームウェアやアプリ、クラウドサービスが一新されていますので、新しい製品と考えてもらっていいです。

Eyefi Mobi ProとPro X2では、できることは同じですが、目的とするゴールが違います。Mobiは、「簡単にセットアップできること」がスタートで、とにかく簡単に動作して、やりたいことができる、シンプルにできるのがMobiの良さです。

逆にPro X2はいろいろできましたが、それゆえに複雑な製品になりました。それを解決するようにしました。

もともとEyefiカードは(現在の一般的な)スマートフォンが登場する以前からありました。Eye-Fi Pro X2の基本思想は2005年からあり、iPhoneより早かったのです。Mobiは2013年からで、スマートフォンが登場してから作っているので、内部は変わっています。

Eyefi Mobi Pro製品発表会より

――Eyefi Mobiの登場以来、カードの売上はどうですか。

Eyefiは非公開企業なので具体的な数字は開示しません。ただ、対前年比では70%の成長です。大きな要因は販売地域が拡大したことで、2014年が5カ国での販売だったところ、今年はすでに40カ国で販売しています。ユーザーがアクティベートした国は80カ国になりました。

――新しいEyefiクラウドサービスでの利用数はどの程度でしょう。

同じく非公開です。何百万枚も保存されています。

――無制限の画像が保存できるということで、サーバー容量はどうでしょう。

もともと無制限のストレージサービスを提供しており、以前の経験からはじき出した容量と近い数字が出ています。ユーザーはストレージの容量を気にせず、とにかく写真を撮るのを楽しんで欲しい、というのが我々のメッセージです。容量を心配するのは我々だけでいいのです。

基本的にユーザーが快適に使えるよう、月額5ドル以下で提供したいと思っていて、ストレージの使用量は指標ではなく、どれだけ写真を撮ってくれているか、どれだけ写真にアクセスしているかを指標に考えています。

まだ、Eyefiクラウドを提供開始してから1年が経っていないので、ユーザーが(Eyefiクラウドの年間契約を)継続してくれるかどうかはまだ見えませんが、ユーザーの利用率はどんどん伸びています。今後、多くのユーザーが年間契約を継続してくれると期待しています。

そのためにEyefiクラウドには今後も継続した機能向上を図りますし、ユーザーの使い勝手を高めていきたいと思っています。Eyefi Mobi Proを米国で発売して1週間で、前年売上数の半数が販売されました。ユーザーはこういう製品を待ち望んでいたのだと思います。

“メモリーキーパー”、“写真家”、“プロ”がターゲット

――Eyefiクラウドにアップロードされる画像は、デジカメで撮影された画像とスマートフォンで撮影された画像のどちらが多いですか?

デジカメです。Eyefiを使うユーザーは写真を愛しているユーザーで、デジカメも愛しています。スマートフォンのカメラは手軽ですしどんどん良くなっています。しかし、「写真を撮ろう」と決めたときにはカメラを使います。我々のコアとなるユーザーは、写真の60%をデジカメで、40%をスマートフォンで撮ると考えています。

――スマートフォンで撮影される枚数が年々増えていますが、Eyefiクラウドではまだデジカメ写真の方が多いんですね。

ユーザーには写真家のようにたくさんの写真をカメラで撮影するユーザーも多いです。多くのスマートフォンユーザーのメインの目的は通話で、写真というわけではありません。カメラ業界にもたくさんのユーザーがいて、撮影を主目的にしています。

ただ、若い人にとっては最初のカメラがスマートフォンということもあって、将来的には大きなボリュームになるとは思います。それでも、写真を好きになった若い人はカメラを使うようになるのだと考えています。

友達と飲んでいるときや、とっさの面白いネタを撮影するときにはスマートフォンは適しています。それでも、カメラがなくなることはありません。今後、カメラはよりインテリジェントになり、スマートフォンはよりカメラに近づいていくかもしれません。その両方がユーザーです。

――今後、スマートフォンでの撮影が主流になると考えていますか?

私はこの市場をピラミッド型で考えています。最大のボリュームゾーンは「ソーシャル」で、ユーザー数も多いですし、たくさんの写真が撮られます。とてもいいサービスもあり、FacebookやInstagramなど、無料のサービスがスマートフォンで利用できます。ただ、この写真はとても寿命が短いのです。我々のサービスは、こうした用途向けには設計されていません。

次が「メモリーキーパー」です。これは写真を保存する層です。この層も非常に多く、我々の重要な顧客です。その次が「愛好家」の層です。この方達は、写真を撮るのが好きで、写真を撮るために旅行したりします。人数は少なくなりますが、写真を撮る枚数は多くなります。ここからRAW形式で撮影する人が増えます。

最後が「プロ」です。ここは小さい市場で、全世界で30万人ほどでしょう。ソーシャルの層は恐らく3億人ぐらいいると思います。我々はメモリーキーパーからプロまでをターゲットにしています。

我々のサービスはソーシャル用途でもいいですし、問題はありませんが、我々はターゲットにしていません。スマートフォンのEyefiアプリからソーシャルサービスへの投稿も簡単にできるようにしていますが、InstagramやFacebookを使ってもいいですよね。

Eyefiアプリでは、例えばExifデータが詳細に確認でき、こうした情報もEyefiクラウドに同期されますので、(Eyefiクラウドの新機能である)スマートビューやスマートタグで写真を管理できます。そういった点が違うところです。

――(LUMIX DMC-CM1を見せながら)パナソニックが販売しているスマートカメラのようなカメラについてはどのようにお考えですか?

とてもクールだよね。今後選択肢が増えて、値段も下がってくると思います。従来の一眼レフだけでなく、アクションカムのようにカメラの形もどんどん変わってくるでしょう。写真を撮るどんなデバイスでも、我々のサービスは適していると思います。

一眼レフカメラにEyefiカードを挿入すれば我々のお客さまですし、コネクテッドカメラ(通信機能を内蔵したカメラ)でもGoProのようなアクションカムでも、スマートフォンでも、写真を撮ればEyefiサービスを利用するお客さまになります。

――こうした新しい形のカメラが増えてくると、御社のビジネスはSDカードビジネスよりもEyefiクラウドのようなサービスがビジネスの中心になりませんか?

異なるデバイスにはそれぞれ異なるニーズがあります。我々はお客さまにフォーカスしており、お客さまをサポートしようとしています。どのようなデバイスを選ぼうとも、最適な製品やソリューションを提供したいと考えています。

今、6億台ぐらいのカメラが世界中にあり、無線LAN機能を持っていません。そのため、Eyefiカードを提供します。Eyefi Mobi Proはそうしたカメラに接続性を提供しますが、同時に我々は革新的なソフトウェアとサービスも提供します。

このハードウェア、ネットワークとソフトウェア、サービスというコンビネーションは、シンプルで、簡単で、自動的で動作して、これが人々が望んでいることです。Eyefiカードは対前年比で70%も伸びており、とても大きなビジネスですし、この分野のリーダーです。ソフトウェアとサービスを提供することで、さらに伸ばしていきたいと考えています。

Eyefiクラウド新機能「スマートタグ」

――今後提供予定のスマートタグですが、どの程度の精度が出るのでしょうか。

スマートタグの概要。10の大きなカテゴリに、全80のサブカテゴリを用意。ローカライズも進める

とてもとてもとても高い精度です。我々は継続してチューニングしており、誤認識は非常に低いパーセンテージです。写真全体の30%しかタグ付けできないが、100%の精度が出せる場合と、80%にタグ付けできるが精度は50%という場合、精度の方を優先しています。もちろん、目標は100%の写真に対して100%の精度でタグ付けできることを目指してます。

写真がアップロードされ、それを解析していけばいくほど、そしてユーザーがタグを修正すればするほど、それを踏まえてアルゴリズムを調整していくので、精度はどんどん上がっていきます。

――タグはEyefiクラウドのみに記録されるとのことでしたが、例えばLightroomのようなPC用の管理ソフトに読み込むことはできないのでしょうか。

答えはイエスです。自然なステップとして、タグの入出力はサポートするようにしたいと考えています。

小山安博