インタビュー
Nikon 1 V2に光学ローパスフィルターはあるのか?
(2012/12/21 15:41)
Nikon 1 V2の1インチセンサー(ニコンCXフォーマットの撮像素子)について、いくつかの疑問に答えていただける機会を得た。
話をうかがったのは、株式会社ニコン 第一マーケティング部 第三マーケティング課 井上雅彦氏、第一開発部 第二開発課 高橋秋彦氏、第一開発部 第四開発課 竹村朗氏。
上記3名のご担当は、井上氏が商品企画、高橋氏が撮像素子および画像処理エンジン、竹村氏がAF関連となっている。
ハイアマチュアの要望をとりいれた
--Nikon 1 V2(以下V2)の話の前に、CXフォーマットのコンセプトを改めてお話しください。
井上:FXフォーマット(35mm判相当)、DX(APS-Cサイズ相当)に加えて、新しい価値をお客様に提供したいとの考えから導入したのが、CXフォーマットです。「きれい」「はやい」「使いやすい」をバランス良くまとめたのがCXフォーマットになります。
井上:例えば「はやい」の特徴としては、AF追従で最大約15コマ/秒、AF1コマ目固定で最大約60コマ/秒という連写性能が挙げられます。像面位相差AFによるAFの速さも特徴です。
--確かに、連写性能はFXフォーマットやDXフォーマットを一部超えていますね。しかもバシバシAFが合う。
井上:そういったレスポンスの良さも含め、「撮り逃しがない」もコンセプトのひとつでした。
井上:次に「使いやすい」ですが、例えば、レンズを含めたシステムでのコンパクトさが、CXフォーマットの優位性です。システムを小型にすることで、いままで「一眼レフカメラは大きくて重い」と、避けてこられたお客様にもアピールできるのでは、と考えています。
--V2は内蔵ストロボやコマンドダイヤルが装備されていたりと、V1より既存のデジタル一眼レフカメラに近くなっています。これはそういったニーズがあったらからでしょうか。
井上:はい。一眼レフカメラを使われているような、ハイアマチュアのお客様からの要望を取り入れています。グリップが大きくなったのもそうです。
--Nikon 1 V1(以下V1)と違い、一眼レフカメラに近いスタイリングになっていますが、これも既存のニコンユーザーからの意見が寄せられた結果ですか?
井上:いえ、これは狙ってやったわけではありません。使いやすさを考えながら小型化していくと、自然とこのかたちになったのです(笑)。望遠レンズのことを考えるとグリップはしっかりしたものになりますし、内蔵ストロボもやっぱりこの位置(いわゆるペンタ部)にきますね。
--マニアックなニコンユーザーが半ば強要したのかと思ってました(笑)
光学ローパスフィルターはない!
--V2から採用された新しい撮像素子には、どういったメリットがあるのでしょうか。
高橋:まず有効画素数が約1,010万から1,425万に増えています。高解像、解像感を上げることが狙いでした。画素ピッチは狭くなっていますが、高感度画質が悪くなるのは抑えてます。センサーの性能もありますが、画像処理エンジンの方でがんばった部分もありますね。
--光学ローパスフィルターは装備されているのでしょうか。
高橋:光学ローパスフィルターはありません。
--V2の代から光学ローパスフィルターがなくなったのですか?
高橋:はい。V1、J1、J2のセンサーには光学ローパスフィルターがついています。V2は解像感を出したかったことから、踏み切りました。
--モアレ対策はどのようにしているのでしょう。
高橋:レンズの解像が良いほどモアレはでやすくなります。V2の場合、出るには出ますが、実用上問題ない範囲だと判断しました。モアレ除去などの特別な処理はしていませんが、偽色を抑える画像処理の効果などもあり、光学ローパスフィルターありなしの比較実写では、モアレの見えに大差ありませんでした。
--ローパスフィルターを失くすことによって、像面位相差AFに何か変更が生じましたか?
竹村:特にありません。ただ、V2からはAF速度をさらに高速化しています。位相差AFエリアの数は73点で同じです。
--位相差画素が画質に与える影響は、どのくらいのものでしょうか。
高橋:位相差画素のある場所には通常画素はありませんが、上手い具合に処理して画質の劣化がないようにしています。単に補間して埋めているだけではありません。具体的にどのようにしているかはいえないのですが……
--他社のミラーレス機のハイブリッド式(位相差AF+コントラストAF)に比べて、Nikon 1のAFは素早いイメージがあります。その秘密は?
竹村:他社の機種では位相差AFである程度合わせ、最後にコントラストAFで調整するパターンが見られますが、Nikon 1では(コントラストAFを使用せず)最後まで位相差AFで合わせることができます。これが速さにつながっていると思います。被写体にもよりますが、室内程度の明るさ、または屋外では夕方なら位相差AFが働きます。