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インタビュー:ミラーレスの「今」と「これから」【パナソニック編】

〜DSCビジネスユニット商品企画担当 総括部長の房忍氏に訊く

 EVF付きのスタンダード機種Gシリーズ、マニュアル動画撮影やマルチアスペクトなどハイエンド仕様のGHシリーズ、EVFを省いて小型化したGFシ リーズ。この3シリーズのLUMIXを順に発売してきたパナソニックだが、昨年末はGHシリーズの代わりにGFシリーズから派生した上位製品のGXシリーズを誕生させた。

パナソニックAVC社DSCビジネスユニット商品企画担当 総括部長の房忍氏

 パナソニックAVC社、DSCビジネスユニット商品企画担当 総括部長の房忍氏に、マイクロフォーサーズ規格に取り組んできた過去3年を振り返りつつ、パナソニックが見据えるミラーレス機の未来について話をしていただいた(聞き手:本田雅一)。

※2011年12月に行なったインタビューをもとにしています。

新ライン第1弾、LUMIX DMC-GX1を投入


――昨年末は“LUMIX DMC-GH3”ではなく、新たにシリーズを創設してLUMIX DMC-GX1を発売しました。これで4ライン構成。GXラインを新たに加えた意図は何でしょう? サイズや製品としてのテイストからいうと、DMC-GX1はDMC-GF2の生まれ変わりという印象も受けます。

 

「LUMIX DMC-G、GH、GFの順に発売しながらプラットフォームを新たにしてきました。そして2011年、開発のサイクルは第3フェーズに入り、GH/G/GFにGXを加え4ライン構成にすることにしました」

「従来は各製品の特徴を維持しながら、世代を重ねるごとに画質、機能、性能を一直線に進化させてきました。しかし顧客の声に耳を傾けると新たなことがわかって来たのです。DMC-GF1を発売したときは、予想以上にハイアマチュアの方々が購入してくださったのですが、GFラインはコンパクトかつシンプルで、小型・軽量化を極めるという目的を与えていました」

ハイアマチュア層の期待に応えるというLUMIX DMC-GX1

――しかし、一方でGFシリーズは当初から、マウントアダプターを介してオールドレンズを楽しむようなマニア層に受けていましたよね?

「ええ、Gシリーズ開発の当初からそのことは想定し、GF1はカメラファンをかなり意識した作りにしていましたが、もう1つの目的も見据えていました。それはコンパクトカメラからのステップアップニーズに応えるという目的です。GFシリーズはこの方向で、DMC-GF2、DMC-GF3と進化させてきました。しかしコンパクトフラットタイプのニーズが想定以上に幅広く拡大してきたのです。そこでDMC-GF1を支持していただいたハイアマチュア層の方々に、DMC-GF2と同程度のサイズでさらに上位モデルの画質や機能を提供しようと考え、新しいラインとして企画・開発したのがGXラインです。これによって当初思い描いていたミラーレスのラインナップがやっと完成しました」

――3ラインナップから4ラインナップへ増やすというのは、なかなか思い切りが必要ですね。ミラーレス機はEVF内蔵の一眼レフカメラに似たタイプのボディよりも、フラットでコンパクトなデザインのボディの方が消費者の反応がいい、ということでしょうか?

「商品ラインナップはグローバル市場の動向を踏まえて、構成しています。特に欧米ではシューティングタイプ(EVF付き)の需要すなわち、GHとGラインのニーズが大きいですね。一方、アジアではコンパクトデジタルカメラのテイストに近づけた方がよいようで、そこを突き詰めていこうとすると、GFラインの向かうコンパクトカメラからのステップアップユーザーの方向とハイアマチュア層の方々から期待されている方向にズレが生じたため、フラットコンパクトにGXラインを加えたのです。その結果としてのGH/G/GF/そしてGXの4ラインとなります。現時点ではこれ以上は考えていません。しかし、まさに市場と一体となった商品開発ですね」

――確かに機能面で上位モデルに近いテイストを盛り込んではいますし、高感度撮影時のノイズが大きく抑えられました。グリップもしやすくな りましたね。一方、外観はDMC-GF1およびDMC-GF2に近いためユーザーからは違いが見えづらい。上位モデルとして、どの部分を一番評価してほしいでしょう?

「性能・機能を徹底追及した結果としての凝縮感と言えるでしょうか。掌(たなごころ)から溢れないように、しかし“写真愛好家が被写体と向き合う時に過不足なく機能を満たす”という考え方で開発しています。サイズ目標をDMC-GF2に近いところに置いたのは、常に持ち歩いて負荷のかからないサイズ・重量に拘ったからです」

「下位モデルにDMC-GF3があることで、サイズを切り詰めるためにいろいろと機能を落とすような制約がない。グリップ部をホールド性重視にできたのも、DMC-GF3という小型モデルがあるからこそです。電子水準器の内蔵など必要な機能をきちんと入れた上で、熟成が進んできた最新のイメージセンサー、最新の画像処理エンジンを搭載しています。高感度時の画質向上を評価いただきましたが、実は低感度時の画質も向上しています。ハイアマチュアの方々が、実際に持ち出して撮影したときに、高い完成度を感じていただける作り込みができたと思います」

――今後、EVFなしのGF、GXのラインはどのような方向に舵を切っていくのでしょう?

「DMC-GF1、DMC-GF2から見ると、DMC-GX1は性能・機能、加えて操作性を相当充実させたと考えています。一方でDMC-GF3は小型・軽量・使いやすさに振りました。従来、1つの製品でカバーしていた領域が、ここで2つに分かれたということです。GXラインは更にハイアマチュアに向けた高性能モデルとしての進化を図り、GFシリーズは小型・軽量でコンパクトカメラからのステップアップユーザーを受け止める方向を考えています」

――GHシリーズに新機種が投入されなかった一方、DMC-GH2が先日、高感度撮影ノイズ低減をはじめ機能・画質ともに大幅なファームウェアアップデートを果たしました。またDMC-GX1にはフィールドシーケンシャル方式の高解像度EVFが提供されています。この2つのラインをどのように特徴付けていく考えでしょう?

「GHラインは、静止画の描写性能の更なる追求はもちろんですが、多様な作品を生み出すクリエイティブなカメラとして位置付けていきます。マニュアル動画撮影の機能など、DMC-GH2は静止画も動画も、撮影者の意思をきちんと伝えられる作品を撮影するための機能が豊富に盛り込まれていますし、これは今後も踏襲していきます。機能アップに関しては、DMC-GH2には当時、最新の高性能ヴィーナスエンジンと最新のLiveMOSセンサーを搭載していたため、その後の技術進化と市場評価に応じた大幅な改良をファームウェアアップデートという形で提供することができました。現行機種のユーザーにより良いものをご提供するのもメーカーの使命と考えているからです。とは言え、次機種はさらに質的向上を図ってまいりますので、楽しみにしていただきたいと思います」

「DMC-GX1は以前から要望の多かった高解像度144万ドットのライブビューファインダー「DMW-LVF2」を開発し対応しています。このEVFのパネル自体はDMC-G3と同じものですが、接眼レンズは光学性能にこだわって新設計としました。実際に覗いていただくと周辺に至るまでクリアで、その見やすさに驚いてもらえると思います。GHラインはミラーレスハイエンド機としてどんなシーンにもオールマイティに対応できるフラッグシップ機と位置づけています。GXは日常から旅行まで、性能・機能をスポイルせずに持ち歩ける“小さな高級機”の位置づけです。それぞれご自身の目的に応じて選択いただければと思います」

よりクリエイティブなカメラという位置づけのLUMIX DMC-GH2

――すなわちGXシリーズは“よりカメラらしいカメラ”、GHシリーズは“スチルカメラを基本として、より多様な映像を撮影できるクリエイティブツール”といった位置付けでしょうか? ならば動画重視のGHシリーズのみという選択もわかりますが、GXシリーズにもマルチアスペクトセンサーを搭載して欲しいという声もあるのでは?

「GHシリーズには16:9から4:3までのアスペクト比で、レンズのイメージサークルを100%活用できるセンサーを搭載していますが、これはGHシリーズのみの専用設計で通常のフォーサーズ用センサーよりも大きく、コスト面・放熱面の課題があります。DMC-GX1への搭載は現時点では困難ですが、DMC-GX1はハンドリングや基本性能の高さと充実した機能で、十分ご期待に添えると考えています。DMC-GF2では省かれていたモードダイヤルの搭載もそうですし、カスタム設定も充実させています。しかし、3:2での撮影ニーズもありますし、いずれ課題をクリアーできた段階では搭載したいですね」

フォーサーズはバランスの良いフォーマット

――ミラーレス機をもっとも速く投入したメーカーとして、すでに第三世代目の開発が一巡したのですが、今後の進む方向は見えてきていますか?

「今後は4つのラインが持つコンセプトをしっかりと追求していきます。DMC-G1の発売から3年が経過し、我々が想定していた以上に早く、ミラーレス機の市場での認知が拡がってきています。DMC-GF3とDMC-GX1に分かれたのも、想定以上にユーザー層が幅広くなってきたためです。コンパクトデジタルカメラとデジタル一眼レフカメラの間に位置する製品に収まらず、使い方の幅が拡がり、ユーザー自身が声を挙げて“こんなカメラが欲しい”というようになってきました。まだまだ、ミラーレス機の市場は化けていくと感じています」

――各社ともミラーレス機は一眼レフ市場と競合しないと話してきましたが、ここまで来るとデジタル一眼レフカメラの市場そのもに影響を与え始めるのでは?

「単純に実売の数字からみると、すでにデジタル一眼レフカメラの市場はミラーレス機が浸食しています。2011年は予期せぬ災害が立て続けに起きたため、単純に評価はできませんが、それを考慮した上でも、業界全体の伸びと両カテゴリの伸び率の差は、ミラーレス機へとトレンドが動いていることを示していると思います」

「ひとつの理由は、DMC-G1を発売した2008年秋の時点では、ユーザーがミラーレス機という、どんな製品なのかよくわからない、新しいものに対する“身構え”のようなものがあったのですが、時が経つにつれて、それがなくなってきたことが大きいと思います。最初にこのジャンルを始めたパイオニアとして、ミラーレスが市場に定着したのは非常に嬉しいですね」

――オリンパスと共同でマイクロフォーサーズというフォーマットを作ったわけですが、振り返ってみて、フォーマットとしてのマイクロフォーサーズをどう自己評価していますか?

「フォーサーズはオリンパスさんの規格でした。我々はそこに後から加わったのですが、当社としてフォーサーズ規格を始めた頃には、センサーの進化見込みなどから、きっと“いい絵が出るだろう”という見通しは出ていました。フォーサーズというセンサーのサイズは、面積で35mmフルサイズに比べて約1/4。一般的なコンパクトデジタルカメラの約8倍です。フォーサーズ専用設計のレンズとの組み合わせで、想像以上の描写が得られることはご承知のとおりです。結果論というかもしれませんが、このサイズが合理的であると考えて規格に落とし込んでいった人たちは慧眼だったと思います」

「マイクロフォーサーズは、当社とオリンパスさんで共同企画したものですが、高精細という面ではすでに十分な高画素化も実現できていますし、よく言われるボケに関してもレンズの選択を含めてシステムトータルでは充分に実現できています。さらにサイズもコンパクトにできる。交換レンズ式のカメラを考えたとき、デジタル時代のイノベーションを想定してミラーレス化を推進し、センサーサイズに最適なフランジバックを設定し、ボディだけでなくレンズ展開も含めて、性能向上とコンパクト化のバランスを見極め、規格のすべてを刷新しよう、と判断したわけです。結果論ですがこの判断は正しかったと思っています」

「ミラーレスシステムのトータルバランスも非常によいものになっています。スペーサーを噛ませば、過去のほとんどのレンズが使えますし、焦点距離を2倍すれば35mm判換算での画角を認知できる。性能、機能、ハンドリングなど、いろいろな意味でのベストがマイクロフォーサーズのフォーマットだと信じています」

――そのフォーサーズ規格を元に、“フルデジタル化”されたミラーレスのLUMIX Gシリーズが生まれたわけですが、動画撮影機能はともかく、現在のような超高速かつ高精度のAFについて、実現が見えていたのでしょうか?

「ミラーレス機が評価され、定着するための鍵が、AFにかかっていると当初から判断していました。高精度で定評のあるコントラストAFが、位相差を凌駕するほど超高速になり、動画にも対応できれば、一眼レフカメラに対してイノベーションになるだろうと。明るい大口径レンズでピントが来ないという一眼レフカメラの悩みもこれで解消できるわけです。実際、当社のレンズ、LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 ASPH.の絞り開放でジャストなAFの写真を見るとホントに感動ものです。もちろん動画時のAFもコントラストAFのなせる業です。コントラストAFには今後も、大きく進化の余地がありますよ。まだまだ先が楽しみなシステムです」

――動画用という意味ではマイクロフォーサーズ規格を用いたデジタルシネマ用のAFシリーズという動画カメラを用意していますね。

「AG-AF105ですね。シネマ用のデジタルカムコーダーとして、非常に高い評価を得ているようです。マイクロフォーサーズは、従来からシネマに使用されていたプライムレンズのイメージサークルとの相性が非常に良く、ほぼ同一画角で使用できます。映画製作の現場での使用率はかなり高まっているようです。クレジットされているわけではないので、あまり知られていないのですが、実はAFシリーズに加えてDMC-GH1とDMC-GH2も映画製作にかなり使用されています」

マイクロフォーサーズ規格のデジタルシネマカメラAG-AF105

――ニコンが位相差AFの機能を持つイメージセンサーをNikon 1に採用しましたが、イメージセンサーにAF機能を組み込むことには興味はありませんか? パナソニックには、自社でイメージセンサー部門を持っているという強みもあると思います。

「位相差AFを併用することでオートフォーカスが劇的に改善するなど、新しいイノベーションをもたらす見込みがあるのであれば、もちろん取り組みます。しかし、現時点では採用するに足る技術的優位性はありません。当社としてはコントラストAFの進化をさらに追求していきます。もちろん、将来はどう技術が化けるか不確定な部分もありますから、絶対にやらないというわけではありませんが」

ユーザーの琴線に触れるようなアイディアを盛り込みたい

――電動ズームのLUMIX G VARIO PZ 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.は、コンパクトさと画質の両立に驚きました。当初からボディサイズと標準ズームのバランスについて指摘はありましたが、3年前の段階でここまでのコンパクト化ができるとの見込みを持っていたのでしょうか?

「電動化は当初からターゲットの1つとしてマイクロフォーサーズ規格に盛り込んでありましたし、サイズもある程度はコンパクトになるだろうとは考えていました。しかし、3年前にこの商品のサイズが目標として見えていたかというと答えはノーです。実際にはここまでのコンパクトさが実現できるとは正直想像していませんでした。マイクロフォーサーズ規格をスタートさせた時は、広角レンズが小さくなるため、その利点をきちんと活かしていこうと。そういう考えですね。その後のレンズシステム拡充も、利点を活かせるスペックを選んできました。マニアックですが、8mmの魚眼(LUMIX G Fisheye 8mm F3.5)がこんなに小さく……というのは、わかる方にはわかってもらえるでしょう」

「いずれにしろ、画質や機能を向上させながら、かつレンズを小さくすることは、もっとも力を入れてきたことのひとつです。レンズがコンパクトならば、撮影時にカメラバッグに入れるレンズ本数も増やすことができますから、システム選択に気を使う必要がなくなりますよね。軽量化は今後も継続的に取り組んでいきます。たとえば、先ほどの電動ズーム。アルミ切削の軽量マウント部品を使っています。軽量化というとプラスチックマウントを想像しがちですが、耐久性に疑問符がつきますから、耐久性、軽さに拘ってこのようなマウントにしています」

電動ズームができるLUMIX G VARIO PZ 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.

――電動ズームが受け入れられたことで、今後のレンズ展開にも影響が出てくるでしょうか?

「現在で14本のレンズラインナップとなりました。まずは2012年にハイアマチュア向けの大口径ズームレンズが2本出てきますから、それを期待していただきたいと思います。それだけでなく、電動レンズ、単焦点レンズ、パンケーキレンズ、ライカレンズなど、今後も引き続き新しい要素を加えながら、新たなレンズを提案していきたいと思っています。技術は“掛け合わせ”ですから、ひとつうまくいけば、別の優れた技術と掛け合わせて、また別の新しい製品を生み出せます。いろいろなアイディアが出てくると思いますよ。マイクロフォーサーズ規格のレンズ群はかなり充実してきましたから、今後はユーザーのレベルに応じて選択肢の幅がより拡がっていくと思います」

――超高速のコントラストAFが実現できたのは、センサーからの省電力かつ高速な読み出しが可能になったことがありますが、さらに高速化することでミラーレス機は大きく進化しそうです。そのあたりはどのように見込んでいますか?

「オートフォーカスに関しては、すでに位相差AFを越えているとはいえ、今のスピードに満足しているわけではりません。センサーの進化とエンジンの進化の両輪が回る事で、高速化だけでなく、画質を大幅に改善することもできます。今後さらに進化していくと思います。特に画質面での貢献は大きいでしょうね」

――そんな進化の“余白”が大きいミラーレス機で、2012年はどんな商品を作っていきたいとお考えでしょう?

「ミラーレス機のよいところは、物理的な制約が少ないことです。この利点をきちんと活かしていきます。そして、もっと愉快な製品にしていくことが目標ですね。マニアライクな製品にも、初級者向けの製品にも、共通して言えるのは撮影して愉しいこと。レンズ交換式カメラを身近なものにした実用品だけでは、面白くありません。“あ、コレ欲しいな”と、そんな心の琴線に触れるようなアイディアを盛り込んでいきます」

「とはいえ、やりたいことを全部盛り込み、完成はしたけれど、価格はボディ単体で30万円になりました、では誰も使ってはくれません。みなさん価格に対しては相当シビアです。われわれ作り手がやりたいことをやり、愛好家の皆様に満足いただける愉しい製品にしながらも、きちんと現実的な価格の製品をご提供していきたいと思っています」




(本田雅一)

2012/1/16 00:00