【 2016/05/30 】
【 2016/05/27 】
【 2016/05/26 】
【 2016/05/25 】
【 2016/05/24 】

インタビュー:ミラーレスの「今」と「これから」【ソニー編】

〜パーソナル イメージング&サウンド事業本部 副本部長 勝本徹氏に訊く

 いよいよ最後の月を迎えた2011年、振り返ると今年は2つの新しい交換レンズフォーマットが発表された。レフレックスミラーを使わない、いわゆる「ミラーレス」機は、従来のフィルム用カメラシステムとは別の、新しいカメラシステム提案の機会でもある。一眼レフの世界でフォーマットを再定義は、今さら行なうことはできないが、ミラーレスなら大義名分が立つ、というよりもフォーマットを再定義しなければ、ミラーレス化の良さを活かせない。

パーソナル イメージング&サウンド事業本部、副本部長の勝本徹氏

 新たに決めるフランジバックやマウント径、レンズとボディの電気接点と通信手順、そしてもちろんセンサーサイズ。これらはボディのサイズだけでなく、レンズシステムの大きさ/重さに大きな影響を与える。数年後を見据えた時、どのくらいのセンサーサイズなら充分に高画質を主張できるだろうか? あるいは、どのくらいのレンズ、ボディのサイズなら、手軽に使ってもらえるだろうか?

 一度決めてしまうと、簡単に変更はできない。何年か後のカメラを見据えていると考えられるミラーレス機の各種規格は、各社の考え方とポリシーを反映したものと言えるだろう。

 また、キヤノンが映画撮影用カメラ市場に参入したように、静止画と動画のカメラはプロフェッショナル分野を含め、クロスオーバーが進んでいる。交換レンズのフォーマットを基礎にした各社のビジネス環境は大きく変化してきた。

 この2つのトレンドは数年前からあるものだが、今年、大きな節目を迎えたテーマでもあるのではないか。というわけで、これからCES/PMA開幕までの1カ月を使い、レンズ交換式のミラーレス機を発売するメーカーに話を伺っていく。

 初回はソニーのパーソナル イメージング&サウンド事業本部、副本部長の勝本徹氏。勝本氏は現在、Aマウント、Eマウントだけでなく、デジタルイメージング事業の技術関連をはじめとした商品開発を統括している。(聞き手:本田雅一)


NEX-7は1月27日に発売

 今年のソニーは、とにかく天災に負われ続けた。中でもタイの洪水の影響は深刻だ。

 ミラーレス機という視点では、すでにNEXシリーズを立ち上げ、順調にビジネスを進めている。まだ製品発売には至っていないが、オープン化を図ったNEXシリーズ用のレンズマウント規格(Eマウント)には、ソニーがロードマップで示している10本のレンズ以外にも、サードパーティからのレンズ投入がある見込みだ。

 しかし、肝心のNEXシリーズの新型NEX-7がタイ・アユタヤ地区を中心にした洪水の影響で、発売できずにいる。評判の高いα77、α65も同じ理由から、出荷が滞っているのはご存知の通りだ。

α77 α65
NEX-7

 洪水の初期段階では、積み上げていた部品はもちろん、出荷を待っていた製品の段ボールから、まだ浸水していなかった箱を選別し、小舟で出荷したとの話も伝わってきたが、その後は水の中に沈んでいる金型を取り出すなど、さまざまな方法でソニーだけでなく、あらゆる企業が生産能力回復の努力を続けてきた。

 ソニーの場合、カメラを生産していたアユタヤ工場が10月11日に操業停止していたが、これをタイ国内の別工場に移し、11月7日の週から生産を再開させていた。この工場はチョンブリにある生産拠点で、本来はカーオーディオを生産している。チョンブリ事業所内のスペースも調整可能だったため、アユタヤの生産設備をチョンブリに一部、移設したのだ。

 11月24日の取材時点、現場はこういう状況だったという。「金型だけでなく、水の中から引き上げられるものはすべて引き上げ、使えるように掃除と修理を施し、生産設備を可能な限り移設しています。他社も同じだとは思いますが、現場は、それはもう大変な状況です。工場には電気が来ていませんから、空調もなければ工場内には灯りさえありません。真っ暗な工場内、泥水に潜って復旧するために必要なものを捜してという作業ですが、やっと再開できました」(勝本氏、以下かぎかっこ内同)

 11月7日に生産再開しているなら、少しづつでも出荷して欲しいという予約待ちの読者もいるかもしれない。しかし、NEX-7は2012年1月27日に発売が決まったものの、世界中でバックオーダーを抱えている状態だ。各地域にある程度、行き渡る量を作ってからでなければ出荷できない。またチョンブリに製造ラインを移設したとはいえ、規模はごくごく小規模で「やっと作り始めたという状態」とのこと。

 もちろん、日に日に状況は回復しているため前倒しで予定は進んでいるようだが、部品を供給するパートナー企業の被災もひどく、必要な部品を揃えるための努力を続けている。

「何をどう計画して生産するかではなく、部品が揃ったものから順に、作れる分だけでも作っていくという状況」ではあるものの、一時は年内の出荷が絶望視されていたので、大きく前進していることは間違いない。なお、α65、NEX-7、NEX-5Nもチョンブリ工場での生産が始まっており、こちらも12月中の再出荷を予定している。

 またアユタヤ工場も「1mの盛り土をしていたため、他工場よりも先に排水を完了し、掃除を始めている」という。簡単に復旧できるわけではないが、状況は改善しつつある。

「1日でも早く、1台でも多く届けようということで、望みを捨てず、腐らずに毎日やっています」


AとE、それぞれの位置付け

 さて、マウント規格に関しては、みなさんご存知の通り、ミノルタの設計したシステムから引き継いだAマウント、そしてNEXシリーズのEマウントと2つのレンズシステムを持っている。Aマウントは35mmフィルム向けだが、主流はAPS-Cサイズセンサーであり、NEXシリーズと同じだ(勝本氏はNEXシリーズに35mmフルサイズのセンサーも"アリ”だと発言しているため、センサーサイズでのAマウントとEマウントの差異化は意識していないと思われる)。

−−同じ質問を実は1年前にもしましたが、Eマウントのオープン化を果たし、他社からもミラーレス機向けのレンズマウント規格が生まれています。再度、AとE、それぞれの位置付けと今後について話していただけますか?

「Aマウントは互換性を維持したまま、電子技術のメリットを積極的に取り入れることで、従来のAマウントが提供してきた機能、性能を越えていきたいと考えています。電子技術を取り入れることで、Aマウントの互換性を維持したまま、前へと進んでいけます。Aマウントのカメラは一眼レフだから成熟しているイメージがあるでしょうが、まだまだこれから進化します」

−−勝本さんは一眼レフのシステムとEVFの融合に、将来に対する確信のようなものを持ってらっしゃるようですね。

「トランスルーセントミラーテクノロジを導入したのも、電子技術を取り入れることによって、カメラの新しい可能性を追求できると考えたからです。OLEDをEVF用のディスプレイとして採用したのも、やはりデバイスの進化によってファインダーの可能性をきわめていきたいとの意思からです」

「出来のよい光学ビューファインダ(OVF)は、もちろん見やすいのですが、レンズを通したそのままの風景しか見せることができません。OVFの見栄えに近づきつつ、撮影前に撮影後のシミュレーションや各種インフォメーションを伝えることができるEVFの利点を活かしたいと考えています。従来、メカニカルな制限、光学設計上の制約などによって決まっていた部分を乗り越えたいからです」

α77、α65、NEX-7は、新開発の有機ELファインダーを搭載した(8月24日の発表会より)

−−今後、Aマウント機はトランスルーセントミラーテクノロジ搭載機が主流になっていくのでしょうか?

「全機種にはならいないまでも、高付加価値路線のモデルに関しては、トランスルーセントミラーテクノロジを積極的に採用していきたいと考えています」

独自のトランスルーセントミラーテクノロジー。概念図はα55だが、新モデルα77およびα65にも引き継がれている

−−そうなってくると、OVFだからこそ一眼レフを使っている、というユーザーから敬遠されないでしょうか? たとえば見え味はともかく、表示遅延はゼロにはできませんよね。

「遅延は見た目にはわからないレベルになっています。液晶パネルをビューファインダーに使っていた時は、無視できない程度に反応が遅かったのですが、OLEDでは応答速度が速い。フレームレートも大幅に上げているため、動きの速い被写体でも見やすくなっています。なにより実際に撮影後、記録されるだろう絵が、ホワイトバランスも、露出も、目の前で見ながら撮影できるというのは大きいと思います」

「もちろん、同じことはミラーレス機でもできるのですが、AFに関して位相差センサーを使える点が大きい。連写しながらAFを追いかけていくことが、ミラーレス機ではできませんから、動きものには圧倒的に有利という側面もありますしね。一眼レフの操作性、撮影感覚をそのままに、電気的に改善できるところではOVFを越えていくことができます」

−−Eマウントに関しては?

「Eマウントは、もともと“コンパクトな一眼をやりたい”というところから出発していますから、そこを追求していきます。第2世代では従来機の操作性や性能、画質を磨き込むのはもちろんですが、上位製品としてNEX-7を追加しました。実際にNEXシリーズを発売してみると、もっと趣味性の高いカメラが欲しいという要求が意外に多かったんです。趣味性が高いといっても、Aマウントとはやや方向性が異なります。コンパクトで、パッと気軽に持っていきたくなる、しかし趣味性の高いカメラというコンセプトでNEX-7を作りました」

−−Eマウントのカメラは今後、どのような方向に発展させたいと考えているのでしょう? カメラボディは、必須コンポーネントのサイズが、より小さなセンサーのカメラと変わらないこともあり、ほとんどハンディはないでしょう。しかし、Eマウントがコンパクトさを目指す規格というなら、レンズシステムの大きさは無視できません。

「NEXを始める際、いろいろな考えがありましたが、”一眼”のイメージが持つ画質を確実に引き出したいと考えて、APS-Cを選びました。もちろん、もっと小さいレンズが欲しい要望があるの理解していますから、何か解決策を考えますよ」

「ただ、同時にレンズのバラエティを増やして欲しいという要求があるので、まずは発表している10本の交換レンズを揃えていきます。Eマウントに賛同してくださっているレンズメーカーもありますから、かなり幅広い要望に応えられるラインナップになると思います。LA-EA2を出したことで、ほとんどのAマウントレンズでAF撮影ができるようになりました」

ソニーがフォトキナ2010で参考出品したEマウントレンズ。これらのうち今年、Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA、E 30mm F3.5 Macro、E 50mm F1.8 OSS、E 55-210mm F4.5-6.3 OSSが正式発表になった

−−現状、APS-Cサイズの画質が魅力的というのは、確かにその通りかも知れません。しかし、5年後にセンサーの性能が向上し、レンズの硝材や加工技術などが向上していると考えると、システムが完成する頃には、もう少し小さなサイズがスイートスポットになるかもしれません。将来の見込みといった視点で見た時はどうでしょう?

「今のところAPS-Cサイズであることのメリットが大きいと考えています。もちろんもっと小さなサイズのイメージセンサーでも今より高画質にできる技術も進化すると思いますが、4Kなど、より高画質化のニーズも進んでいくと思いますので、総合的に考えていきつつ、レンズの小型化も検討します」

−−それは実際に、レンズを大幅に小型化できる見込みを持っているということでしょうか?

「同じセンサーサイズでも、より小さなレンズを設計できるようになると見込んでいます。さらに、Aマウントシステムとの互換性、画素数の将来像を考慮し、動画などいろいろな機能を詰め込むにも、APS-Cサイズの大きさがあった方が、カメラとしての将来性があると考えています」

「それにAマウントとEマウントは、使い勝手や機能の違いによるキャラクターの差こそあれ、画質面では両者で全く同一のものにしたいと考えています」


それぞれのユーザーの声に応えたい

−−現在はEマウントレンズに力を入れていますが、Aマウントについては?

「ソニーとして、どちらかに意識して軸足を移すつもりはありません。まずはレンズの本数にまだまだリクエストをいただいていいるので、Eマウントのレンズを集中的に開発しています。とはいえ、Aマウントレンズのラインナップには、まだご希望に応えられていないレンズもありますし、リニューアルも求められているので、そうしたユーザーからの声に応えていかねばなりません」

−−AマウントとEマウント、販売比率はどのくらいなのでしょう?

「これにはご存知の通り、地域性があります。日本とアジアではAマウントよりもEマウントの方が強い。ミラーレス機の比率は、およそ3〜4割の間です。欧州もミラーレス機が伸びていますが、ミラーレス機の比率が高まっていく速度は違います。傾向として常にミラーレス機の比率が上がっているものの、まだ1〜2割の間くらいです。NEXシリーズのスタート時点では、北米より欧州市場の方がEマウント比率が高かったのですが、その後、北米の数字も伸びたので、両市場とも大きな差はありません」

「もっとも、比率の変化はありますが、市場全体が伸びているので、両規格ともに増えているという状況です」

−−Eマウント、Aマウントともに、ファインダーの電子化が大きなコンセプトの軸になっていますが、ファインダーの電子化で、勝本さんが一番やりたいことはなんでしょう?

「カムコーダーを使ってきた方には電子ビューファインダーは違和感がないので、静止画のカメラしか経験のない方にもいずれ慣れていただけると思います」

「静止画に関しては、“撮る前にどれだけ結果を把握しやすいものにするか”を追求していきたいですね。ファインダー内に、たくさんの情報をオーバーレイできますし、撮影結果のシミュレートもできる。OVFは、あるがままの風景を、そのまま見せてくれますが、実際に撮影される絵とは違います。だから、カメラについての知識を集め、どんな写真になるだろうか? という感覚を磨くことで思うような写真を撮ってこられてきたわけです」

−−小型のデジタルカメラでは、スマートフォンとの連携機能を搭載する製品が話題になり始めていますが、レンズ交換式にも同じニーズがありますよね?

「スマートフォンとの連携はどのような可能性があるかちゃんと考えていきたいと思っています。コンパクトデジタルカメラの視点でいうと、スマートフォンはライバルという部分もあるりますが、レンズ交換式カメラの領域を含めてどのようなニーズがあるかしっかり探っていきたいと思います。そのようにしてユーザーの方が知識とノウハウでカバーされてきたことを目に見えるようにしてサポートするようにできることで、より良い写真や動画を撮れる道具を追求していきたいと思います」




(本田雅一)

2011/12/14 00:00