インタビュー
海野和男さん新作写真展「蝶・舞う」ショートインタビュー
被写体への想いを込めた約50点 技術の進化が蝶の飛翔撮影を身近に
2017年3月22日 07:00
昆虫写真家・海野和男さんの新作写真展「蝶・舞う」が3月31日より東京と大阪のオリンパスギャラリーで順次開催される。約50点を展示する本展の開催に先んじて、作品のテーマや制作時のエピソードを海野さんにお聞きした。
東京と大阪の両会場では、海野さんによるギャラリートークも開催予定だ。東京会場は4月1日14時から、大阪会場は4月15日14時から。
――今回の展示のテーマをお聞かせ下さい。
蝶は自由気ままに飛び回っているように見えますが、実は生きるために必死でメスを求め、食事を求めて飛んでいます。手が届きそうで、届かない。そんな存在がぼくにとっての蝶です。
この2年間、子どもの頃に憧れた蝶を求めて世界の熱帯雨林に何回となく通いました。アフリカのカメルーンに3回、タイに4回、マレーシアには何度も通いました。これにホームグラウンドの長野県小諸市周辺で撮影した蝶を加え、優雅な舞姿を中心に写真展を構成しました。また会場のモニターでは、スローモーション動画「蝶の舞い」(約30分)も同時に展示します。
――作品を撮影された主な機材をご教示下さい。
「OM-D E-M1」と「OM-D E-M1 Mark II」が中心です。レンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO」、「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」、「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」、「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」と、テレコンバーターの「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」です。
――作品の主な撮影地はどこでしょうか。
ここ2年間で、アトリエのある小諸市周辺と、マレーシア、タイ、カメルーンを巡って撮影しました。
――被写体としての蝶の魅力とは?
蝶は世界に約2万種が存在しており、地域によって、また、環境によって異なる種類が生息しています。羽に美しい色や模様を持ち、仲間同士で群れたり、テリトリーを争ったり。
普通に近づいてシャッターを切ろうとすると飛んで逃げてしまうので、それを無心で追いかけ、こちらの"撮りたい"という気持を抑えて、蝶と駆け引きしながら、シャッターチャンスを狙っています。撮らせてくれる蝶がいたら、徹底的につきあえば、触れるところまで近寄ることができます。
そんなふうにして、彼らの持つ多様性を写真で切り撮る醍醐味は、どんな被写体にも勝ると思います。
――今回の作品の撮影で、最も印象に残っているエピソードを教えて下さい。
アフリカ西部を訪れ、初めて見る蝶たちの虜になってしまったことと、タイ北部を25年ぶりに訪れ、昔とずいぶん変わっていたのに驚いたことです。
マレーシアでは数十年ぶりに「オオハゲタカアゲハ」と「エンペドバナタイマイ」に出会いました。今回は満足する写真が撮れなかったのですが、ほとんど撮影されていない蝶で、しかもぼくの憧れのアゲハの仲間ですので、今回の写真展に展示ができて、とても嬉しいです。
――蝶の撮影において、ここ数年で大きな技術変化はありましたか?
シャッターを半押しして、蝶が飛ぶのを狙ってシャッターを押すと、14コマ遡って撮影できる「プロキャプチャーモード」の登場や、手持ちで撮影できる高性能の超望遠などの登場で、蝶の飛翔の撮影が身近になったことです。
少し前までは夢だったような機能が現実となり、1日に1枚撮影できれば大成功だった昔が遠い過去のような気がしています。とはいっても、蝶の気持ちになって、相手の動きに任せて撮影するのは昔から変わらないです。
――ギャラリートークで予定している話題を教えてください。
なぜ、そのチョウに憧れたかはもちろん、蝶の生態、それぞれの作品をどんな風にして、どんなモードで撮影したかという技術的な話も多く交えて、1枚1枚解説します。チョウの撮影のコツなどもお話ししたいと思っています。