写真展

“サプール”がテーマの写真展、西武渋谷店で開催中

ハイブランドを着こなすアフリカ発のジェントルマンたち

“サプール”のひとりダニエル・セブランさん(左)、写真家の茶野邦雄さん(右)

2009年、イタリア人写真家ダニエーレ・タマーニがイギリスで出版した写真集「Gentlemen of Bacongo」で欧州の人々が彼らを知った。SAPEUR(サプール)。コンゴでお洒落にスーツを着こなす不思議な集団だ。

そんな彼らに興味を持ち、写真家の茶野邦雄さんが撮影した写真展が西武渋谷店で開催されている。「THE SAPEUR コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン」だ。

タマーニが彼らのファッションセンスに着目したのに対し、茶野さんは人間性、自由かつユーモラスなキャラクターに目を留めた。会場には50名を超すサプールたちを被写体にした約150点が並ぶほか、撮影現場の映像、彼らのインタビューやダンスシーンなども上映される。

また会場に隣接するB館4〜6階のメンズフロアでは写真展にあわせて「シブヤサップスタイル」の商品を揃え、新たな着こなしを提案しているそうだ。

  • 会場:西武渋谷店A館7階 特設会場
  • 住所:東京都渋谷区宇田川町21-1
  • 会期:2016年3月29日(火)〜4月10日(日)
  • 入場料:500円
  • 時間:10時〜21時(日曜・祝日は〜20時、最終日は〜17時。入場は閉館時間の30分前まで)

サプールとは、ムードメーカーでエレガントな人々の集団との意味を込めた造語だ。駐日コンゴ共和国のレゾナー一等参事官によれば「1970年代から世界に知れ渡るようになった」という。

同国民の平均月収は3万円に満たない。その中でファッションを楽しみ、時にフランスから手に入れたブランド品でコーディネートする。大サプールの一人の名はイブ・サン=ローランだ。

この写真を撮影した茶野さんは沖縄を拠点に活動する。オリオンビールの仕事に携わっている関係で、世界中のビールメーカーのCMをチェックしていた。2014年1月、ギネスが目を惹く映像を流していた。それがサプールとの出会いだ。

「その年にNHKでもドキュメンタリー番組を制作し、日本でも話題になった。きっかけはタマーニの写真集からですね」

茶野さんはただ現地に飛んで撮影を行なうだけではなく、大使館などと折衝し、彼らをきちんと海外に伝えることを考えた。サプールを日本に呼ぶ交渉で、大使とともにコンゴ共和国の大臣に会う手はずを整えた。

「1日目はすっぽかされ、次の日も時間通りには来ない。大使と二人、延々と酒を飲みながら待ったよ」

茶野さんも「僕も沖縄スタイル。“てーげー”だから彼らとは波長が合う」と話す。

撮影では演出はまったくしない。ありのままの彼らに対応し、面白かったら撮る。

ただメインビジュアルに使ったカットは、オリンピックカラーをあしらって撮ることを考えた。そこで5人には、それぞれ青・黄・黒・緑・赤のスーツを着てくるように繰り返し依頼した。

「青を着るはずの人が緑色で来た。再度、説明を繰り返すと『ブラウンでどうだ?』と真顔で言う。その日はどうしてもブルーを着たくなかったらしいんだけど、そうしたおかしなところが彼らの魅力なんだ」

内覧会の様子

この撮影ではライカQを使用した。それまではデジタル一眼レフをメインにしていたが、ちょうど入手できたそうだ。

そして「サプールを撮るためにあるようなカメラだ」と茶野さんは言う。余分な機能がなく、自分が使いたい操作が直感的にできることで、撮影に集中できるからだ。

会場には写真とともに、さまざまなメッセージも綴られている。サプールの好きな色は白と赤。白は平和、赤は血液を表す。肌の色は違っても誰もが同じ色を持つからだ。

このイベントのため、来日したサプールの1人、ダニエル・セブランさんは話す。

「サプールにとって争いは論外だ。平和であれば国は発展する。サッカーはグラウンドで、ボクシングはリングでやるように、サップは平和の上でやるものだよ」

(市井康延)