写真展

下平竜矢写真展「星霜連関」

(ニコンサロン)

10年ほど前、作者が青森県八戸市に住んでいたある日、古い神社で獅子舞を見た瞬間、揺らぎのようなものを感じた。その名付けることのできない未知なる感覚は、五感によって感じるのとは違うものを残して遠ざかっていった。

それ以来、作者はその未知なる感覚の正体とは何かを探している。人類の最初に生まれた人々は風景や土地、石や木や水などさまざまなものの表層に現れる可視と不可視の境に何を見て、何を感じていたのだろうか。その感覚は、訳も分からずに感じた未知なる感覚とは何か違う種類のものだったのだろうか。

その後、作者は関東に戻り、さらにその数年後、三重県伊勢市に移り住み撮影を続けてきた。移動する中でさまざまな土地や風景に立つことで喚起される直観は、天と地を繋ぐコスモロジーが作者の肉体を媒介にして合一していると思うには十分なものだった。土地の持つ地場や地霊とも呼ばれる、肉眼では見ることのできないものから与えられる一種啓示のようなものは、自然への共感とともに畏れと信仰のようなものを感じさせた。その感覚は作者が獅子舞を見た時に感じた未知なる感覚とも近いところで重なり、そこで生じた揺れがシャッターを押させる契機となっているように思えて仕方なかった。

作者はその未知なる感覚を、印画の上に現すことができたら、これ以上の喜びはないと思っている。モノクロ約40点。

(写真展情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:新宿ニコンサロン
  • ・住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • ・会期:2015年11月10日火曜日~2015年11月23日月曜日
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

  • ・会場:大阪ニコンサロン
  • ・住所:大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
  • ・会期:2015年12月3日木曜日~2015年12月9日水曜日
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1980年神奈川県生まれ。2003年東京ビジュアルアーツ卒業。03年~04年Gallery Niepceの運営に参加。08年から11年にTOTEM POLE PHOTO GALLERYの設立メンバーになる。

主な写真展(個展)に、03年「アリアドネ」、04年「孤独な鳥の太陽」(以上Gallery Niepce)、05年「幻を見た」(Luny Frog) 、08年「星霜連関」(コニカミノルタプラザ) 、09年「全景/ATLAS」(大蔵寺)、同年「遠景 あるいは、目に見えるものとして」、11年「スナップ08-11」(以上TOTEM POLE PHOTO GALLERY)、15年「星霜連関」(ZEN FOTO GALLERY)がある。

主なグループ展に、10年「祭り」(ZEN FOTO GALLERY)、12年「錐十字」(雅景錐)、13年「Landscape of Particle」(新潟絵屋)、同年「影像2013」(世田谷美術館 区民ギャラリー)がある。

写真集に『Family』『祭り』『ELEMENT』『風土 vol.1』『星霜連関』、連載に11年7月から12年6月「週刊読書人」(「彩祭流転(シリーズ「星霜連関」より)」がある。

(本誌:河野知佳)