写真展
ゲルハルト・カッスナー写真展「ベルリナーレの肖像 2003-2015」
(東京アートミュージアム)
Reported by 本誌:河野知佳(2015/8/21 08:30)
ゲルハルト・カッスナーがベルリナーレでスターに会い、写真を撮る時間は極めて短い。
しかし、彼はその短時間で、凝縮された特殊な表現を生み出すのである。その際重要なのは技術ではなく、写真に再現される「現在」という時間そのものである。周知のように写真や映像の世界に主体はない。写真家が自身の視点をモデルに反映させ、見えない主体となるからである。もしくは、ジャン・リュック・ゴダールの表現を借りれば、「カメラは、全く対照的な双方向の場所を反映させるものである。」そのように見てみると、カッスナーのベルリナーレの肖像は、完璧な技術を駆使したものに見える。高度な集中力と、短い時間で出来上がるのである。スタジオ撮影は3‐5分程度、時にはそれよりも短い時間で終了することもある。しかしその撮影の際、多くの場合に、写真家とスターは初対面であり、彼らは瞬時に共同作業を見出さなければならない。肖像はまた、カッスナーがモデルに対していかに真摯であるか、という彼の誠実さ、カメラの前で働く人々に対して抱く彼の直観を媒体するものでもある。
ゲルハルト・カッスナーとは、控えめであることを知っている、だからこそ、自身をモデルの中に投影させることができる。しかし同時に、決定的な色合いには極めて鋭い眼識を持っている写真家だ、と言うことができるのではないだろうか。この彼の資質が、写真の中に繊細で対話的な緊張感を生み出すのである。彼の肖像写真を一連のシリーズとして、または、各映画に整理して見てみると、それが認識できる。それから写真の中に見えない対象物や、時代の語り部、写真家カッスナーに対する感情が湧き上がってくるのである。カッスナーはベルリナーレの肖像を13年間撮り続けている。映画監督から俳優まで、既に1756枚もの肖像画を撮影している。その中には国際的スターも数多くいる。それをもって彼は国際映画とベルリナーレの時代の語り部となっているのである。(文)バーバラ・ヴァイゲル
(写真展情報より)
展示写真は、2003 Nicole Kidman、2003 George Clooney、2003 Kristin Scott-Thomas、2004 Kim Ki-Duk、2004 Ji-Min Kwak、2004 Nicholson Jack、2004 Bai Ling、2006 Gondry Michel、2011 Ethan Cohen & Joel Cohen、2011 Hailee Steinfeld、2011 Jeff Bridges、2012 Lea Seydoux、2013 Nicolas Cage、2014 Tilda Swinton、2014 山田 洋次 Yoji Yamada、2014 黒木 華 Haru Kuroki、2014 Nick Cave、2015 Audrey Tautou、2015 Helen Mirren、2015 Anton Corbijn他。
会場・スケジュールなど
- 会場:東京アートミュージアム
- 住所:東京都調布市仙川町1-25-1
- 会期:2015年9月5日土曜日~2015年11月1日日曜日
- 時間:11時~18時30分(入館18時まで)
- 休館:月・火・水曜日
- 入場:一般500円/大学生400円/高校生400円/小中学生300円