写真展

松村明写真展「Evidence NAGASAKI―ありふれた長崎 爆心1Km―」

(JCIIフォトサロン)

爆風で幹の上部が飛散して四方に枝分かれした樫 竹の久保町©松村 明

松村氏は毎日新聞社写真部に入社し、カメラ毎日編集部で勤務後、九州造形短期大学写真学科の教授を務めるなどして活動してきました。その傍ら、街の移り変わりをテーマに数々の作品を発表しています。

本展では、原爆被害にあった長崎の現在の街並みを、点在する原爆遺構や人物と共にとらえた作品「ありふれた長崎」と、被爆遺構物をクローズアップでとらえた「爆心1Km」の二部構成で展示いたします。

長崎に原爆が投下されて今年で70年という年月が経ちます。被爆者の高齢化や歳月の経過が原爆を過去の出来事として風化させ、街の移り変わりと共にその記憶が薄れているように感じた氏は、原爆の記憶を留めようと撮影をはじめました。

被爆した樹木、爆風で吹き飛ばされた鳥居、原爆の閃光を浴びた石垣など、今も長崎の日常的風景の中に残る被爆の痕跡を氏は丁寧に写しとめています。同時に平和祈念像前で手を合わせる年配者の姿や、カメラの前に立つ被爆者のポートレイトから伝わってくる悲しみは、私たちに原爆の悲惨さを静かに語りかけてきます。

世代を超えて原爆に対しての気持ちを共有することや、直接伝えていくことが難しい状況に立ち至っている現在、あの悲惨な出来事を二度と繰り返さないためにも、過去のこととして忘れていくのではなく、今も続く被爆の苦しみに目を向けてほしいという氏の想いが感じられる作品展です。

(写真展情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:JCIIフォトサロン
  • ・住所:東京都千代田区一番町25番地JCIIビル
  • ・会期:2015年6月30日火曜日〜2015年7月20日月曜日(祝日)
  • ・時間:10時〜17時
  • ・休館:月曜日(祝日は開館)
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1946年京都生まれ。1969年日本大学芸術学部写真学科卒業(学外で写真家長野重一氏に師事)。毎日新聞社写真部に入社し、カメラ毎日編集部で本誌および別冊ニューヌードなど担当。1983年文化庁在外派遣研修員として、ニューヨーク州ロチェスターのイーストマンハウス国際写真美術館で研修。1987年「EMPATHY―日本現代写真10人展―」(森山大道氏ら10人)のキュレーションを手がけ、全米3か所を巡回。1995年毎日新聞で『戦後50年暦の断層』を連載、東京写真記者協会企画部門賞を受賞する。2005年九州造形短期大学写真学科教授に就任し、2013年まで務める。

【写真展】
「眼貌―硬派紙面の顔―」(1992・銀座ニコンサロン)、「関門の街」(2000・キヤノンサロン銀座、同福岡、小倉・岡林ギャラリー)、「眺めの行方」(2005・新宿ニコンサロン)、「ありふれた長崎」(2011・ギャラリー蒼穹舎、アイデムフォトギャラリー[シリウス]、長崎県美術館、福岡アジア美術館)、「松村明退任記念展」(2013・九州産業大学美術館)ほか多数。

【写真集】
『路地を抜けると―神田―』(2003・蒼穹舎)、『ありふれた長崎―あの日から65年―』(2010・窓社)、『Evidence NAGASAKI―ありふれた長崎 爆心1Km―』(2015・冬青社)がある。

(本誌:河野知佳)