写真展

吉田裕之写真展「和美写美」

(ハッセルブラッド・ジャパン ギャラリー)

©Hiroyuki Yoshida

昔、江戸のはずれに新吉原あり。四方を掘りに囲まれ、大門からのみに出入りが限られた隔離された世界。そこで流行りのファッションは歌舞伎に取り入れられて庶民の中に、またそこで流行った歌は江戸の町を賑わし、歌人や絵師などがこぞって描き伝え、文化を生み出す中心となった。

町の中心にいたのが吉原遊女。光が当たる反面、その分大きな影もあったであろう。しかし、彼女たちの誇りとしての『粋』や『張り』が、江戸の文化に影響をあたえたのは間違いなかったであろう。

もはや伝承や写真、浮世絵などから覗くことしかできなくなってしまった御伽の国。その資料などから事実を知れば知るほど光が増して、いつしか吉田氏の頭の中にもその幻想の国が存在していた。今回は、光の中で輝く女性を夢見て作品づくりが始まった。彼の頭の中にある美人画 『和美写美』のお披露目である。

制作にあたり、はじめは浮世絵や日本画の作品に用いられている平面的で遠近法を用いない作品、その中でも独特の形で世界に広がることになった浮世絵を写真にすることにテーマを絞った。展示方法に『掛け軸』の形を取り入れることにより、写真独特の絵のサイズから離れ、広がりのある空間(そら)によって余韻を感じられる作品に仕上がった。江戸時代から現代へ。

江戸時代に始まった浮世絵が時代の流れで包装紙などとしてヨーロッパに渡たり、ゴッホやマネなどに影響を与えてでき上がった作品に対するオマージュとして、現代の包装紙である段ボールにプリントをした作品も合わせて展示している。 軸装は、額装屋と相談して広島の職人に発注。着物は古着を使用。各作品はエディション12で数字の代わりに十二支の落款を用いている。

今回の展示は吉田氏の初の個展。今後も掛け軸写真をモチーフに活動していくのでご期待いただきたい。

(写真展情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:ハッセルブラッド・ジャパン ギャラリー
  • ・住所:東京都渋谷区神宮前1-10-32
  • ・会期:2015年9月8日火曜日~2015年10月2日金曜日
  • ・時間:12時~18時
  • ・休館:土曜日・日曜日
  • ・入場:無料

プライベートビュー

2015年9月24日木曜日18時~20時

作者プロフィール

1967年生まれ。幼少期より西洋の宗教画や日本画、浮世絵の影響を受け画家を目指していたが、祖父の影響をうけて多摩美術大学建築科に進学。在学中の図書館で、建築の資料写真やジャンルー・シーフのファッション写真との出会いから写真に興味を持つことに。当時、学費を稼ぐ必要があったため、働きながら勉強のできるアルバイトでスタジオに入る。写真の魅力に惹かれて大学を中途退学、フォトグラファーを目指しスタジオに就職。

1989年よりフリーのアシスタントとなり、さまざまな分野のフォトグラファーに師事。1994年独立し雑誌等の人物写真をメインに活動。2011年同業種のフォトグラファー数名とsharaku projectを結成し活動を開始、同時に個展に向けて創作活動を始める。

(本誌:河野知佳)