写真展

地蔵ゆかり写真展「Zigeunerweisen ~ロマの旋律~」

(ソニーイメージングギャラリー銀座)

「ロマ族」は北インド(ラジャスターン地方)を起源とする移動型の少数民族で、居住地はインド、中東地域、アフリカ、ヨーロッパ全域と広範囲にわたります。いまでは定住する人達が多いのですが、かつては各地を放浪しながら、音楽の演奏や舞踏を行ない生計を立てていました。インド北部のラジャスターン州では、いまでもその独特の文化(音楽、舞踏、民芸)を色濃く残したロマ族の人々が暮らしています。

そのロマ族の人々の生活や文化を、かつて音楽家であった地蔵氏の感性で撮影したのがこの作品展「Zigeunerweisen ~ロマの旋律~」です。

現在は写真家として活躍されている地蔵氏ですが、以前は作曲家・編曲家として活躍されていました。その地蔵氏が写真の道に進もうと決意したのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災がきっかけでした。

「長い歴史を経て連綿と受け継がれてきた様々なものが、あの震災によって失われてしまいました。そして同時に多くの不幸が生じました。でも人々は、まだ瘉えない心を引きずりながらも、立ち上がろうとしています。そしてまた、新たな歴史が始まっています。そうした事象を“自分の視点”で残しておきたいと強く思ったのが写真家になるきっかけです」と語ってくれました。その後、地蔵氏は震災へ目を向けながらも、同時に“自分の視点で残す”というスタンスで、悲しい歴史を持ちながらも力強く生き抜く少数民族にもレンズを向けています。その少数民族の一つがインド北部に暮らす“ロマ族”なのです。彼らが奏でる激しいリズムと、哀愁に満ちたうら悲しい旋律が、音楽と縁が深い地蔵氏の心に響くのだと言います。そうした意味からも「作品展のタイトルは、何か音楽と関係のある“響き”にしたかった」……「Zigeunerweisen ~ロマの旋律~」にはそういう地蔵氏の想いが込められているのです。

「少数民族には以前から心惹かれるものがありました。特にロマ族の人達が持つ音楽や舞踊といった文化的なものに惹かれます」と地蔵氏。多くの少数民族に共通するのは、迫害や差別といった悲しい歴史です。それはロマ族も例外ではありません。しかし、少数民族が持つ負の部分だけに焦点を当てるのではなく、また違った角度から彼らを捉えてみたかったのだと氏は言う。地蔵氏は最後にこう言葉を添えました。

「作品展では、ロマ族の暮らしの中に見つけた“強さ”や“美しさ”を私の世界観を通して撮影したものを展示しています。その“強さ”や“美しさ”は、悲しい歴史の中から生まれたものだと感じています。作品を通して、彼らの背景にある“何か”……その“何か”をコントラストとして感じ取っていただければ嬉しく思います」

(写真展情報より)

  • ・会場:ソニーイメージングギャラリー銀座
  • ・住所:東京都中央区銀座5-3-1ソニービル6階
  • ・会期:2014年12月12日金曜日~2015年1月8日木曜日
  • ・時間:11時~19時
  • ・休館:2015年1月1日木曜日

(本誌:河野知佳)