イベントレポート

【CP+】東芝、新世代FlashAirを発表

専用システムLSIを新規に開発 無線LANの転送速度も強化

CP+2017で東芝は、無線LAN内蔵SDカード「FlashAir」の新製品を参考展示している。システムLSIを新規開発したことで全体的に高速化が図られており、速度を要求するカメラ上級者にも対応できる製品を目指した。

発売は2017年度第1四半期(4〜6月)で、価格は未定。

FlashAirは、無線LANを内蔵して記録した画像をスマートフォンなどにワイヤレスで転送できるSDカード。登場以来、今年で5周年となり、第4世代目となる「SD-UWAシリーズ(W-04)」では、「一から作り直した」(同社)という。実に2年ぶりの登場で初のフルモデルチェンジとなった。

FlashAir SD-UWAシリーズ(W-04)
基本性能を向上させてフルモデルチェンジ

従来は読み書き速度も公表されていなかったが、W-04では最大読み出し速度90MB/秒、最大書き込み速度70MB/秒で、USH-I、UHSスピードクラス3、SDスピードクラスClass 10をそれぞれサポート。UHS-I対応カードの「EXCERIA PRO SD-KUシリーズ」と同等の性能となり、メモリカードとしてのパフォーマンスを引き上げた。なお、価格についても同製品クラスになる見込みだという。

それに加えて、無線LANの性能も向上させ、転送速度は約2.9倍の最大31.4Mbpsとなった。従来モデルが49.4MBの動画転送に37.3秒かかったところを、新モデルでは12.6秒に短縮されているという。会場のデモでは、新モデルが転送完了した段階で旧モデルは33%しか終わっておらず、高速化していることが確認できた。

さらに、ほかの無線LANによる干渉に対しても影響を受けづらくなっているという。会場内に人が増えた昼過ぎ以降にも確認したところ、旧モデルが極端に転送速度が遅くなったのに対し、新モデルは変わらないスピードで転送できており、速度と安定性が大幅に向上していた。

来場者の少ない午前中での比較。左からW-03、W-04。

一般入場が始まり、人が増えると無線LANを使う人も増え、周囲の干渉が増加したためか、W-03(写真左)は一気に速度が低下。W-04(写真右)は安定して通信ができており、大幅な差がついた。

無線LANはIEEE802.11a/b/g/n(2.4GHz帯)で、帯域20MHz幅のHT20だけでなく40MHz幅のHT40にも対応。各国の法規制で扱いが異なる5GHz帯には対応しないが、2.4GHz帯でもこれまでの開発のノウハウを生かして安定性と高速性を実現できたとしている。

今回のカードのパフォーマンス、無線速度の向上などのために、システムLSIを一から新規開発したという。第2世代となるW-02の開発以降、ユーザーからのさまざまな意見を元に改良を加えてきたが、3世代目のW-03で既存のアーキテクチャのままでは進化が難しいと判断。新たな設計による新モデルの投入となった。

パフォーマンスの向上は図られたが、消費電力は従来品レベルということで、逆に早期に安定して画像転送ができる分、カメラのバッテリーに対するインパクトは減少する可能性もあるだろう。

基本的な使い方は従来通り、専用スマートフォンアプリを使って記録画像を選択して転送する。従来はカメラのオートパワーオフが働くと転送が止まってしまうという問題があったが、EyefiのAPIに対応したことで、Eyefi対応カメラであれば、転送中のオートパワーオフを抑制するようになった。

Eyefiはビジネスとしてすでに終了。サービスはKeenaiに移管されており、EyefiアプリもKeenaiアプリに変更されている。W-04ではこのKeenaiアプリに対応。旧Eyefiカードのように、撮影した画像をすべて、撮影する度に転送する機能にも対応した。実際は、FlashAirカード自体の仕組みは変更せず、Keenaiアプリ側が撮影画像を逐次転送するようにコマンドを送っているという。

とはいえ、ユーザー側にとっては、Eyefiと同様の使い方ができるようになった。選択して転送したい場合はFlashAirアプリ、すべて転送したい場合はKeenaiアプリという使い分けもできる。

Keenaiアプリへの対応によって、撮影画像を逐次転送する機能も利用できるようになった

同社のメモリ事業部メモリ営業推進統括部統括部長の髙橋俊和氏は、カメラに無線LANが搭載されるようになり、無線LAN搭載カード市場は下火になってきたとしつつ、W-04で「納得がいくものが出せる」と強調。パフォーマンスや安定性の向上などによって、カメラ内蔵の無線LANよりも快適に使える場合もあると指摘。

株式会社東芝メモリ事業部メモリ営業推進統括部統括部長・髙橋俊和氏

カードとしても中上級者が使える性能に仕上げたことで、これまでは無線LANを内蔵しないコンパクトデジタルカメラをターゲットにしていたのに対し、カメラ内蔵の無線LANをさらに向上させる用途にも使えるとアピールする。

Eyefiの資産を利用できるようになったことで使い勝手も向上。「両者のいいところをミックスして快適に使え、さらに魅力的になった」と高橋氏。今回の新モデルでは、新規ユーザーだけでなく、最初は使っていたがカードの遅さなどで離れていったユーザーに対しても訴求していきたい考えだ。

2月23日に発表されたばかりのUHS-II対応EXCERIA PRO SDXU-Cシリーズの展示もあった。容量256GBで読み出し速度270MB/秒は世界最速だという。

本誌:折本幸治